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パーティ③
しおりを挟む会場が沸く中、私はシルバーグレーのドレスを揺らしながらその道を歩き、王座に座る皇帝の前へと跪いた。
その私を見下ろすように立ち上がった皇帝は、私の頭上で手をかざす。
「…此れ。第五継承権を受け継ぐ者。
今日この時より、エミレィナ・ヴィサレンスの名を正式に認め、その正当なる血筋の保証を後押ししよう。
この場に集まった全ての者が彼を認め、助けの柱となる。彼も同様に皆の助けとなり、その役目を果たすことを我、アレクサンダーの名の下に捧げよ。
……いいか?エミレィナよ。」
「…勿論でございます。」
小さく確認された声に、私は頷き、肯定の意を伝える。
すると叔父であるアレクサンダー様は優しく微笑んでくれた。
「…善い。」
「それでは正式に顔合わせを行おう。
順列に従い、折を合わせてくれ。
その後にエミレィナから言葉を頂戴する。」
その言葉が放たれると、あっという間に私の元へときたのは、筆頭貴族であろう王族の髪に近い髪色をした公爵家だった。
「エミレィナ様。
此度の御就任、誠にめでたく思っております。
我がヴィルヴァン家は、王家の血を多少ではありますが受け継いでいる身…。
身を捧げ、真意を持ち、王家への忠誠心は右に出る者などおりません。
あなた様が皇帝と思い同じく、そして我らの力を欲される時は、余すことなくその力の全てを捧げ、支えとなるつもりでございます。
あなた様のご活躍を願っております。」
シャンパンゴールドに近い金髪の髪を揺らす彼らは、王家の血を継いでいるらしい。
でもそれは現皇帝より以前の王家の者のことだろう。
王家として認められるのは主となる王族の兄弟、そしてその子までであり、今で言えば私たち従兄弟の範囲内だけで、仮に私の子が生まれたとすれば、その子は王家の者とはならない。
次に王家として認められるのは、ロレンザ様とミレンネの子だけだ。
「ヴィルヴァン公爵様…。
……はい。まだまだ未熟な身ではありますが、精一杯、王族としての役割を果たしていきたいと思いますわ。」
「それならば安心でございます。」
私はそのような会話を繰り広げ、その後、かなりの時間を費やしながらも笑顔を途切らせることなく私の前に挨拶に並ぶ貴族達の対応した。
その間、会場では様々な場所で談笑が行われており、私の主人であるグリニエル様も、色々な方に囲まれてはいたが、護衛として隊長が付いているため、心配をすることなく、私は目の前のことに集中することができたのだ。
「ライル伯爵家、現当主のサザイルと申します。後ろにいるのが娘のステファニーで御座います。エミレィナ様。此度は御就任おめでとうございます。」
「えっ…ステファニー?」
「はい…。」
ライル伯爵の挨拶へと差し掛かると、毎日見ていた顔が見えて、ついつい声をかけてしまった。
「……ステファニーをご存知で…。
…娘はその…。伯爵家の娘でありながら、貴族としての心がなっておりませんで…。
今は行儀見習いとして王家への御奉仕に行かせているところでございます。」
「ま、まぁ…そうなのですか。」
「…。」
行儀見習い。そう括るにはあまりにも仕事の出来が良すぎる。それに、他国からの訪問者、そして王族となる私に当てられたところを見ると、随分と評価はされているだろうに、父親である伯爵からはあまり良いようには思われていないようだった。
「…ステファニーは私の身の回りの世話をしてくださったのです。とても気配りができてとても品があって、凄く不思議でしたの。
こんなに素晴らしいのに勤めに行かせるというのは、さぞ伯爵様も心から傷んだのでしょう。」
「…ええ。貴族である以上、貴族らしい振る舞いをさせたいというのに、本人は一向に考えを改めないもので、身を切る思いでございます。」
「…。」
「……ええ。ですが、ステファニーの行いは、王家の支えとなっております。
ですから、それも貴族としての務め。
そう思っていただけると嬉しいですわ。」
「っ…。しかし!」
「……?」
笑ってはいるものの、無言の圧力を向けると、伯爵は理解してくれたように言葉を留めた。
「…いいえ。
その通りでございます。」
彼は伯爵家。どうやっても王族となった私へ言い返すことは不可能だ。
「ただ、勤めている女性を娶りたいという方はおりませんので…。私は娘に幸せになってほしいだけなのです。」
目を伏せる伯爵は、ただ娘を心配し、想っているのだと分かる。
「…嫁ぎ先の心配をなさっているのでしたら、私から掛け合ってみましょう。
ですが、結婚することだけが女性の幸せとはなりません。
ステファニーが幸せと思うことを応援してあげて欲しいと思いますわ。」
「…ええ。おっしゃる通りでございます。」
「…。」
「ステファニー。」
「…はい。」
「…綺麗よ。」
「あ、ありがとうございます。」
ステファニーに結婚願望があるかは分からない。しかし、彼女が仕事を好きでやっていることは分かるため、深くは追求しないでその場を終えた。
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