脚フェチ王子の溺愛 R18

彩葉ヨウ(いろはヨウ)

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最悪の双子④

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私が目を覚ますと、そこは見覚えのある場所だった。






幼き頃から何年も暮らしたその部屋であることに気づくと、無事に戻って来れたことが伺える。





きっと双子の魔法がとけ、クローヴィスが移転させてくれたのだろう。
私は、全て終わったことにとりあえず安心し、窓を見た。


カーテンから差し込む光は細く、まだ日が昇ったばかりだと分かる。



「…上手くいったのよね?」




気がかりはいくらでもある。

みんなは無事なのか。

攫われた人たちは家に帰せたのか。




魔族たちは…そして双子はどうなったのか。



そして何より、身を呈して私に魔力を分けてくれた彼は大丈夫だったのか。



私はそう思いながら体を起こした。


「…ふぅ…。」


体が重い。
しかし動けないわけではない。


「あ、そうだわ…。
……アネモス聞こえてる?」





ふと、私のそばにいるはずのそれに声をかける。



『……なんじゃ?』



「…力を貸してくれてありがとう。
お礼が言いたかったの。」




私は枕を腰と壁の間に立てて背を預け、そのまま会話を続けた。



『フッ。我はエミレィナの力。
其方に使われんで誰に使われればいいのじゃ。』


アネモスの力に頼っている。
そんなことを気にするなという様に、アネモスは自分を私の一部だと表現してくれた。


「うふふっ…ありがとう。」


『以前よりも心地良かったぞ。
やはりヴィサレンスの血は抗えぬ。
恋心ひとつで主を纏う空気は違うからの。』









「…。恋なんてできないと本当に思っていたのだけれど…。」



『だから言ったのじゃ。
周りに目を向けろと。』



「本当にそうね…。
あ、それと、ソアレはいるかしら?」

同じ精霊であるアネモスであれば、まだソアレが私のそばにいてくれているのかがわかると思って聞いた。


『知らん。ソアレは太陽の精霊。
誰しもがその恩恵を受けているが、応えているのは初めて見た。主が太陽の精霊に特別気に入られてたなんて気付かなんだ…。
今の主の纏ったものからは以前と同じものしか感じぬ。だからやつがそのまま体に留まっているかは分からん。
……そもそも、宿っていることに気付いていたならばらもっと前に、主に伝えておったわ。』




「まあ…そうよね。」



ソアレはまだ私の中にいるのだろうか。
それも分からないのに、私の中に彼が宿っていると言えるのだろうか。









『………我は太陽の精霊。
本来なら1人の者に力を貸すなどあり得ないことだ。を果たしたまでであって、別にお前を気に入ってこうやっているわけではない…。』



「っ…ソアレ。
まだいてくれていたのね。」


『………小娘よ。我の話を聞いていたか…?
我はお前を気に入ってここにいるわけではない。勘違いするなよ。』


「ええ。でも、力を貸してくれたわ。
ありがとう。ソアレ…。」





『……ふんっ……。
我はもうすぐ此処を立つ。
止めようだなんて思わないことだな。』


ソアレは太陽の精霊の割には随分と冷たく私を突き放す。
しかし私はそれでも構わなかった。





「十分よ。
…あなたがそう決めたということは、闇の力はもう消滅したということでしょう?」



『っ…。』


『…そうだが…、我を留めようとは思わないのか?』



「んー、ならないわ。
私にはあなたを使う程の魔力はないし…。
いつか、従いたくなる人に会えるといいわね。」


『……。』


私は優しく彼にそう告げると、彼は一瞬黙った後、喋り出した。



『…我が仕えるためには条件が多すぎる。
仕えたいと思っても、条件が合わなければそうすることはできない…。』


「…条件?」


『…娘は知っていて我の名を呼んだのだろう?
我は聖女と勇者の間にしか仕えない。
勿論あの双子も例外ではなかったが、闇に飲まれた者に仕えることはできぬし、我1人ではそれを止めることはできなかった。』




「……それはなんとなくだけだったけど、やっぱりそうなのね。」



『…闇と光は対となる存在。片方が飲まれても片方が止められれば、こんなに長いこと彷徨う必要はなかったんだが…。』







「…なんだか難しいわね。」



『……はぁ…。
何も知らぬ小娘では仕方あるまい…。
今から20年前。
聖女レティシアーナは双子が復活することを知り、15年の封印か、20年の封印かを悩んだ末に、自身の命を犠牲にして双子を20年、封じることを選んだ。』



「…え?」





それは誰も知らず、誰にも知らされていなかった真実。私はそれを今更ながら教えられた。




『レティシアーナは愛した者が勇者であることに感謝した…。
そして禁忌の理由を知った上で、賭けに出たんだ…。』



「…賭け?」



『聖女と勇者の子は闇に落ちるか光に満ちるかいずれかにひとつ……。確率としては半分だ。しかし、レティシアーナは自身の子どもは必ず光を手にし、その双子を止めると我に豪語した。
…我はもしそうであるならば力を貸してやるとその時約束したんだ。』



「待って…。ソアレはレティシアーナと…私の母と話ができたの?」



『勿論だ。
我が気に入った唯一の人間。
……それであって仕えることのできなかった亡き主だ。』



「っ…。」

ソアレが仕えたかった人間はもういない。
それどころかそれが私の母と分かった時、私はなんだか心の奥がドクッとした。



『レティシアーナは優れていた。
そして万人に対する愛情が深い。
私が目をつけるのは当たり前のことだった。』



「…。」



『だが、あいつにもできないことがあった。…それが双子の呪いの浄化だ。』



『呪いの力は我の力を用いなければ使うことはできない。だからレティシアーナはお前に願いを託した…。』



「…!」



母が信じていたのは勇者であるアルフレッドではなく、私だった。

彼女は生まれてもいない私を信じ、全てを委ねて命を終た。それが信じられなかった。



「生まれてもいない私を、…母が信じた?」




『ああ。…だが、我は信じられなかった。
命をかけて双子を封印したとして、もしその子までもが闇に落ちたらどうするのかと、何度もレティシアーナを止めようとした。
…しかし、レティシアーナは折れなかったんだ。』



「…。」


『それに20年も封印するのに魔力は膨大に必要で、子には一切魔力が渡らない。
それを伝えても、あいつは諦めなかった。』



「魔力が…渡らない?」


『…意図して魔力を受け渡さないことは可能だ。子を産んですぐ双子を封印するのに使う魔力。そして子を産むときに消費する魔力。
それを考えると、子に受け渡せる魔力は微量。
生まれてくる子どもに我を従わせる為の素質はあっても、双子の闇は浄化できないと言ったんだ。』



「…。」


確かに、私の魔力では全然足りなかった。
それどころか、グリニエル様の魔力を全て使う羽目になったのだ。








『…レティシアーナは言った。
……20年あれば、エミリーは恋をしてヴィサレンスの血を彩る。そして、必ずや魔力をカバーすることができる。と。』



「っ⁈」




『…不思議だろう。
未来なんて不確かなものを、自身の目で見たように告げる様はとても可笑しかった。
そして、我はついに折れた…。
信じてみたかったという方が正しいか。
そして、小娘、お前がやってみせたんだ…。』




「…。」






『しかし、レティシアーナが15年の封印を選択しておけば、お前の記憶に残るくらいは生きることができただろう。それに父であるアルフレッドはお前と過ごすことを諦め、双子が封印されている西北に留まった。
……父母は残酷だ。…2人が憎いと思わないか?』





ソアレは可笑しいことを聞く。
今まで母の話をしてくれていたのに、急に私の奥底に眠るモヤモヤとした気持ちを突くように私に問うた。




その問いに、私は正直に応える。









「…憎くは…ないわ…。
…まあ、正直、なんでいないんだろうって不思議だったけど…。
でも、2人の選択は私が双子を封印するために必要だったことなのだと思うの…。」



『…っ。』


「それに、2人がそばにいたら、私は今の様にグリニエル様のそばにいたいと強く思わなかったかもしれない。
…親がいなかったからこそ、気付けた愛は沢山あるわ…。」




『そうか…。
…お前は変わっているな。』




「…そうかしら…。
本当は優しいのに意地悪なフリをしているソアレも変わり者だと思うわ。」


『っ…!』




「とにかく、力を貸してくれてありがとう。
母との約束を守ってくれて、私を信じてくれてありがとう。」




『………。
魔力を受け渡した小僧はまだ目を覚ましていない…。ギリギリまで魔力を使ってしまったが、命の心配はいらない。1週間もすれば目が覚めるだろう…。
我からはそれだけだ。
もう起き上がれるなら早く行ってしまえ…。』




「グリニエル様がまだ…。そうなのね。
分かった…。ありがとう、ソアレ。
とりあえず行くことにするわね。
色々教えてくれてありがとう。」











私は隣にある衣装部屋で、1人でも着替えられる様にと騎士服に手を掛ける。


するとコンコンと自室の扉が鳴り、ローザが入ってきた。



「っ…エミレィナ様!
もう立ち歩いても大丈夫なのですか⁈
あ…皆さんに報告を…っ」



ローザは私の世話をするために来たのだろう。手にはタオルやら色々なものが握られており、それを置く間もないまま、また扉の向こうへと行こうとする。




「待って、ローザ。
…私が自分で行くから、支度を手伝ってもらえるかしら?」


「は、はい。かしこまりました。」




私がそうして着替えを済ませている間、残された2人が会話していることには全く気付かなかった。










『……主に伝え残していることがあるのではないのか?』


『構うものか…。
きっと気づいていることだろう…。』







『そうじゃろうか…。
エミレィナは鈍いからの。
母が力を授けなかったのは、ヴィサレンスからの縛りを緩める為でもある…。
そう伝えれば良かっただけではないか。』




『鈍くともバカではない。
最後の最後まで我を求めなかった。
…ということは己が力を持つべきでないと気付いたということだ…。
強すぎる力は戦いの火種となる。
…だから我はどこに留まるのも正解ではない…。』







『……。それで。
エミレィナを嫌いになることはできたかの?』






『…はぁ……。
……そうしたかったんだがな…。
一緒に過ごせば過ごすほど…話せば話すほどレティシアーナの影がちらつく…。
あの子がもっと歪んでいてくれたら、我はこんなにも彼奴に固執しなかったんだがな…。』



『あの子が素直だから、光を導いたのじゃ…。
それに、もう契約は済んでおる。
そばにいなくともいつでも助けに来れるんじゃろ?』




『…ふん…。
………近くにいられるお前が妬ましい。』



『太陽の精霊ともあろうものが嫉妬するのか。
闇に落ちぬ様に、嫉妬はほどほどにするんじゃな。』



アネモスはソアレを揶揄う様に言う。



『…。口の減らない小童が…。
我はもう行く…。さらばだ……。』





そうして、2人の会話は途絶え、そんなことを知らない私は、そのままローザに支度を済ませてもらう。



「目を覚ましたら先にケインシュア様のところに来る様にと言伝を受けております。」


「…分かったわ。ありがとう。」




「いえ…。エミレィナ様が目覚めてほんとに良かった…。ローザは心配したのですよ?」


「…ごめんね。」



私は、髪をとかしながら涙ぐむ彼女の手に自分の手を重ねて、眉を下げながら笑みを返した。


「…っ…。さあ、終わりましたよ。」



「ありがとうローザ。
行ってくるわね。」



「いってらっしゃいませ。
エミレィナ様。」



私はその足で
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