王太子は想わせ令嬢の虜〔R18〕

彩葉ヨウ(いろはヨウ)

文字の大きさ
23 / 76

リリベルの最後のお出かけ

しおりを挟む



次の日、
私はウィルとの久しぶりの外出に
ウキウキしていた。



街へ行くと知らされていた為、
ワンピースドレスを着て馬車を待つと、
ヴァージル家の馬車で迎えにきたウィルと共に馬車に乗った。










「…リリィ。」
「なあに。ウィル。」

ウィルと出かけるのはいつぶりだろうか
と馬車の小窓から外を眺めていると、
ウィルが口を開く。


「リリィは、もうすぐ王太子妃だな。」


殿下と婚儀を挙げればそうなるので、
ええそうね。と返事をした。


「婚約をしてしまえばオーウェン公爵邸に
帰ることも少なくなって、
そのまま嫁ぐことになると聞いた。
私は、リリィがそれを
寂しがっているんじゃないかと
ずっと気がかりだったんだ。」


「っ!」




ウィルを振り返るとウィルは反対のドアについている小窓から外を眺めていた。



「…、」



ウィルの言った通りだった。



私は1ヶ月を切っている婚約を
早過ぎるのではと思っていた。



殿下のことは愛している。
それなのにモヤモヤした気持ちがあったのだ。


それは邸宅にいるお父様や妹、
侍女たちと離れることが
寂しかったのだと気づいた。






「ウィル…」


ウィルは気付いてくれていた。



私の寂しさを。



「…っ」



「だからこそ、婚約する前に
自由に街を歩かせたいと思った。
…今回のことはオーウェン公爵には承諾いただいているから、リリィのしたいことをしようか。」




こちらを振り返り、
優しく微笑むウィルはどこか寂しそうだ。





「嬉しいわ、でも、
折角優勝して得た休みなのにいいの?
もっとやりたいこととかあるんじゃ…」


ウィルには続けた休みなど殆どない。
だからこそ、そんな貴重な休みを
私に使ってくれることにが申し訳ないのだ。



「リリィとは執務では会えるけど、
こうやって一緒に出かけることはなくなってしまう…
だからどんな手を使っても
殿下に勝って休みが欲しかったんだ。」

殿下に対してなのか、
ウィルは申し訳なさそうに笑っていた。

そして、その言葉を聞いてウィルとは
もう出かけたりできないのだと思った。

執務でいつも会っているからか、
全然気づかなかったと急に寂しくなった。




「さあ、リリィ笑って。
想いあっている2人が結婚できるんだ、
そんな幸せなこと他にないよ。
この休みでやりたいことをして、
笑顔で婚約できるように私と一緒に考えよう。」

ウィルには敵わない。
ウィルは私の1番の理解者で、
他に替えることのできない
大切な幼馴染だと心の中で思った。

「ウィル、ありがとう。」

その言葉を聞いたウィルは静かに笑っていた。

「さてリリィ。今日は何をしようか?」

気を取り直して予定を決める。

「ウィル。私行きたいところが沢山あるの。
良いかしら?」

「ああ。今日はとことん付き合うよ。」













私は沢山の店を回る。

それはもう目に付く店を全て回るのだ。

「この時計素敵じゃない?」

今選んでいるのはルーナンのプレゼント。

革のベルトで作られたシックな腕時計。

私は邸宅にいる全ての人にプレゼントをしたいと思って次々と店を巡っていた。

「ルーナンは時間にルーズだから良いんじゃないか。リリィがプレゼントすれば、ルーナンもちゃんと付けるだろうし。」

ルーナンは時計を見ない。
それだけ植物が好きだと言うことなのだろうが、
困ることもある。だから腕時計を選んだのだ。

次はマーサに探すわ!そう言って次の店に入る。
みんなの買い物を終える頃には、
既に昼の時間を過ぎていた。




買い物した物は全てヴァージル家に送ってもらうことにしているため、荷物はない。

オーウェン家に送られてしまっては、
プレゼントの存在がバレてしまうため、
一時的にヴァージル家に置いておいてもらうのだ。


大幅にズレてしまったランチをするため、いつも行っているカフェへと入る。
そこでウィルはベーコンサンドイッチを買い、私も真似て同じものを買う。





「リリィ。今日はいつものじゃないのか?」

いつものとはパンケーキのことだ。





「今日はいいの。ウィルと同じものを食べたいと思っていたんだもの。」


そういうと、ウィルは少し驚いていたが笑ってくれた。


人が疎の店内でランチをする。
たまにはこんなに静かなのもいいなと思った。

食べ終わってゆっくりと紅茶を飲む。

私は小さなショルダーバッグから、
先程買った包装されている小さな箱を
取り出す。

青い包装用紙に黄色のリボンを付けたシンプルなもの…それをウィルに差し出す。





「……これは?」

「さっきウィルにバレないようにこっそりと買った物なの。」



開けてもいいか?というウィルに、
コクンと頷く。



リボンを解き、箱を開けると中には万年筆が入っている。


「うわ、リリィが選んだんだよな?」

万年筆はネイビー色で艶々している、
使いやすいものを選んだ。

「ウィルがいつも使ってくれるものって何だろうと考えて万年筆にしたの。」と笑ってみせる。

「リリィ、とっても嬉しいよ。
ありがとう。」



ウィルの笑顔は私を落ち着かせる。

初めて会った時からずっとそうだった。

楽しい時も、辛い時も隣にいてくれたウィルと、もう並んで歩けなくなるのだと思うと目頭が熱くなった。


「ウィル。今まで本当にありがとう。
ウィルがいなかったら私は…」


そう言って涙が流れた。


「さっき言ったばかりだけど、
想いあって結ばれるんだ。
それは悲しいことではない。
私はずっとリリィの騎士だ。
いつでも頼っていい。」



殿下がリリィを悲しませることがあれば、
私が殿下を許さない。と安心させてくれた。





しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

男として王宮に仕えていた私、正体がバレた瞬間、冷酷宰相が豹変して溺愛してきました

春夜夢
恋愛
貧乏伯爵家の令嬢である私は、家を救うために男装して王宮に潜り込んだ。 名を「レオン」と偽り、文官見習いとして働く毎日。 誰よりも厳しく私を鍛えたのは、氷の宰相と呼ばれる男――ジークフリード。 ある日、ひょんなことから女であることがバレてしまった瞬間、 あの冷酷な宰相が……私を押し倒して言った。 「ずっと我慢していた。君が女じゃないと、自分に言い聞かせてきた」 「……もう限界だ」 私は知らなかった。 宰相は、私の正体を“最初から”見抜いていて―― ずっと、ずっと、私を手に入れる機会を待っていたことを。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...