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リリィのお茶会
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次の日私はスッキリとした気持ちで起きた。昨夜の夜会はフィーのお陰で大事に至らずに済んだ。そしてレオンの我慢のお陰でゆっくり眠ることができたのだ。
私は静かにレオンの寝顔を見る。毎日見ていても飽きないほどのイケメンだなと思っていると、視線を送り過ぎたのか、レオンが起きる
「ん…リリィ。おはよ。」
眠そうな目を擦りながら私に擦り寄ってくるのが堪らなく可愛い。私はレオンの頭を優しく撫でる。すると気持ちいいのかそのまままた眠りについてしまった。
起こすのも可哀想なので、そのまま起きるのを待つ。
流石にこれ以上は準備が間に合わないと思った頃にレオンを揺り起こした。
「レオン。そろそろ起きないと。」
するとハッとしたレオンが起きた。
「いや、すまない。また眠ってしまうなんて。」リリィがそばにいるだけでこんなにも安心して眠れるとはな。と言われて私は嬉しくなった。
私はフィリネルから昨日渡されたドレスを着てみる。Vネックになったドレスで、片側に深いスリットが入っている。
それを着てみると殿下が悶えていた。
「っ。れ、レオン。ちゃんと見て頂戴。変じゃないでしょう?」
変ではないから自信を持って歩きな。と昨日フィリネルに言ってもらったように、レオンにも言ってもらいたいのだ。
「…リリィ。変じゃない。とても素敵だ。誰にも見せたくないほどに似合っている。」
そう言われて安心する。そうでなければただ恥ずかしいと思ってしまうのだ。
サウスユークのデザインはとっても可愛い。しかし、今まで着ていたドレスとの露出度が違う為、少し恥ずかしいのが欠点なのだ。
侍女のアマリアが入ってきて、一瞬驚いた顔をしていたが、説明するとすぐに理解してくれたようだった。アマリアも同様に暑いようで、いつもはしないのに袖を捲っていた。
アマリアの念入りな支度が始まる。どこで誰とすれ違うかもわからない。グリニエルの王太子妃が手を抜いていいものではないのだ。
支度を済ませてリオネルと合流する。
「おはようございます。王太子妃様。」礼をした後に顔を上げたリオネルが顔を赤く染めていた。
「…よく、殿下のお許しが出ましたね。」
「私だって着なれないのだから、もっと平然とした態度を取ってくれる?そんな顔されたら私だって恥ずかしくなっちゃうじゃない。」
そう言うとリオネルは深呼吸をして、いつもの爽やかな笑顔を向けてくれた。
お茶会の場所へと案内され、扉をノックして入る。綺麗な礼をし、国王夫人とフィリネルを見た。
すると2人はストレートビスチェのドレスとハートカットのドレスを着ていて、私の露出度とは天地の差ほど違かった。
護衛としてついてきたリオネルは少し違う方向を見ているようにしている。そのくらいはさせてあげようと、私はリオネルをそっとしておいてあげた。
「いらっしゃい、リリベル様。」夫人は笑顔で笑ってくれた。
「この度は素敵なお茶会に招待して頂き、とても光栄にございます。よろしくお願い致します。」
「固い話はいいから、グリニエルのファッションのことを知りたいわ。グリニエルではどんなドレスなら流行るかしら?」
フィリネルはファッションのこととなると熱い。夫人も楽しそうにドレスの話をしていた。
「グリニエルではもうすぐ寒くなってきますので、長袖のドレスなどいかがでしょう?」
「長袖か、サウスユークではあまり作ることがないからまずデザインからおこしてみるよ。」好きなことをしている時のフィリネルはキラキラと輝いていて可愛らしかった。
「私さ、小さい頃グリニエルの王太子殿下を拝見したときに、ピーンときてたのよ。将来王太子殿下を見たらドレスの案が浮かびそうって!本当会えて良かったわ~。」
レオンに会いたがっていた理由がはっきり分かったところで夫人が口を開いた。
「そういえば、グリニエル国王が婚約者を持ったと聞いたのだけれど。」どんな方なのかしら?と夫人が聞く。
「ええと、歳は離れておりますが、仲睦まじく暮らしておりますわ。」
嘘は言っていない。国王陛下は他国にもクロエの存在を公にしたいと思っているのだが、それはゆっくりと仲の良い国だけに留めた方がいいと思うのだ。どこでクロエのことが漏れるかもわからないのだから嘘は言わず、慎重に答えた。
「…そんなの許せないわ。」
ボソッと言った夫人の言葉には、怒りが込められていた。
「エドウィン陛下はサラノアだけを愛しているものだと思っていたのに、ガッカリだわ。」
相当怒っているのか、持っていたカップを音を鳴らしながら皿に置く。
私は少し気になって聞いてみた。
「陛下とサラノア様をご存知なのですか?」
すると私の予想をしていた答えとは違う答えが返ってきた。
「私とエドウィン陛下は婚約者だったの。いわば政略結婚の予定だったわ。でも、エドウィン陛下は町娘であるサラノアに一目惚れをしてその話は白紙になった。サウスユークの王家は代々、政略結婚と決められていたから結婚が無くなって驚いたわ。」
私の知る歴史のさらに裏側が明かされていく。
「それで、サラノアがどんな女性か気になってグリニエルに行ってみたの。そしたらエドウィン陛下は私の知るエドウィン陛下ではなかったわ。人の心を持たないとまで言われた冷たい人が、可愛い女性の手を取り、ニコニコと幸せそうにしていたの。」
「サラノアも幸せそうにしていて、恋愛って美しいのだと思った。だから私も好きな人と結婚したの。だから私にとって2人は憧れだったのに…。エドウィン陛下はサラノアしか愛せない人であって欲しかったわ。」
その言葉を聞いて私は続けた。
「ならば心配要りませんわ。エドウィン陛下と婚約したのはサラノア様の生まれ変わりなのです。」
ニコッと笑いかけると暫く沈黙があった。
しかし、私の言葉が本当なのだと分かってくれたのか、夫人は笑い出した。
「うふふっ。運命とは面白いものね。良かったわ。エドウィン陛下の愛はそんなものだったのかと思っていたから、勘違いで本当に良かった。サラノアが幸せなら、それでいい。」
陛下とサラノア様にどれだけ憧れを抱いているのか、なんとなくだが伝わってくるようだった。
「エドウィン陛下との婚約者だったと言うことは…」当時のサウスユークの皇女様のはず。
「そう。私がサウスユークの王族の直系よ。夫は国王に就いてるけど、権力があるのは私。だから対談も息子のエルが一緒なのよ。」
「私には兄がいたのだけれど、亡くなってしまって、仕方なく私が跡を継いだの。夫は優しい人だからあまり国政に向いていない。今も沢山の反対を受けることがあるの。だからエルに早く王座を譲る予定なのよ。」
エルが婚約者を持ったらすぐに王座に就くという理由が分かり、その国によって抱える悩みや問題は違うのだと思った。
「エル自身は政略結婚を望んでいるわ。でもフィーには恋愛結婚をして欲しいの。好きな人と結ばれる幸せを知って欲しい。だからって少し自由に育て過ぎた気もするけどね。」
そう言って笑っていた。
「そのおかげで自由に服作りをしたりできているから、お母様には感謝しかないですわ。それに…」
スッと立ち上がったフィーはリオネルに抱きついた。
「好きな人もできたんですの。」そう言って笑う姿は恋する乙女だった。
国王夫人の手前、腕を振りきれずにいるリオネルに助け舟を出してやる。
「フィー。申し訳ないけど、リオネルはまだ15になったばかりなの。腕は確かだけど、まだ婚約できる歳でないの。」
元々大人びた顔をしているリオネルは、よく成人に間違われてしまうので、訂正した。
「えー、そうなんだ。でも歳下でも職がなくても私は気にしないですよ。」そう言って今にも襲いそうな程顔を近づけていく。
確かにフィーなら、職がなくても養ってくれそうだと納得する。せっかくのいい話なので、チラリとリオネルを確認した。すると顔に助ケテクレと書いてあったので、更に続けた。
「リオネルは奥手なので、文通などから始めるといいかと思います。」そのアドバイスを聞いて、フィーはなるほど。と考えていた。
フィリネルと国王夫人とのお茶会を終えて、部屋へと戻る。ドレスの案はこれから試作を重ねていくことになり、私は今回、グリニエルに持ち帰るスレンダーなドレスを受け取った。
部屋に戻る途中にリオネルに聞く。
「フィーはいい子よ。縁談になってもいい話だと言うのにどうして嫌がるの?」
するとリオネルは口を開いた。
「フィリネル皇女は真っ直ぐで、努力家でキラキラしていると思います。ですが、私は急に会った方とそういう仲になることが想像できないだけです。」
リオネルが言うことも分からなくはない。私もレオンに一目惚れだと言われて最初は信じなかったからだ。
「いつかそうなるかもしれない。なんて期待持たせるような不確かなことは言いたくないのです。」
その言葉を聞いて、リオネルは誠実だなと思った。
私は静かにレオンの寝顔を見る。毎日見ていても飽きないほどのイケメンだなと思っていると、視線を送り過ぎたのか、レオンが起きる
「ん…リリィ。おはよ。」
眠そうな目を擦りながら私に擦り寄ってくるのが堪らなく可愛い。私はレオンの頭を優しく撫でる。すると気持ちいいのかそのまままた眠りについてしまった。
起こすのも可哀想なので、そのまま起きるのを待つ。
流石にこれ以上は準備が間に合わないと思った頃にレオンを揺り起こした。
「レオン。そろそろ起きないと。」
するとハッとしたレオンが起きた。
「いや、すまない。また眠ってしまうなんて。」リリィがそばにいるだけでこんなにも安心して眠れるとはな。と言われて私は嬉しくなった。
私はフィリネルから昨日渡されたドレスを着てみる。Vネックになったドレスで、片側に深いスリットが入っている。
それを着てみると殿下が悶えていた。
「っ。れ、レオン。ちゃんと見て頂戴。変じゃないでしょう?」
変ではないから自信を持って歩きな。と昨日フィリネルに言ってもらったように、レオンにも言ってもらいたいのだ。
「…リリィ。変じゃない。とても素敵だ。誰にも見せたくないほどに似合っている。」
そう言われて安心する。そうでなければただ恥ずかしいと思ってしまうのだ。
サウスユークのデザインはとっても可愛い。しかし、今まで着ていたドレスとの露出度が違う為、少し恥ずかしいのが欠点なのだ。
侍女のアマリアが入ってきて、一瞬驚いた顔をしていたが、説明するとすぐに理解してくれたようだった。アマリアも同様に暑いようで、いつもはしないのに袖を捲っていた。
アマリアの念入りな支度が始まる。どこで誰とすれ違うかもわからない。グリニエルの王太子妃が手を抜いていいものではないのだ。
支度を済ませてリオネルと合流する。
「おはようございます。王太子妃様。」礼をした後に顔を上げたリオネルが顔を赤く染めていた。
「…よく、殿下のお許しが出ましたね。」
「私だって着なれないのだから、もっと平然とした態度を取ってくれる?そんな顔されたら私だって恥ずかしくなっちゃうじゃない。」
そう言うとリオネルは深呼吸をして、いつもの爽やかな笑顔を向けてくれた。
お茶会の場所へと案内され、扉をノックして入る。綺麗な礼をし、国王夫人とフィリネルを見た。
すると2人はストレートビスチェのドレスとハートカットのドレスを着ていて、私の露出度とは天地の差ほど違かった。
護衛としてついてきたリオネルは少し違う方向を見ているようにしている。そのくらいはさせてあげようと、私はリオネルをそっとしておいてあげた。
「いらっしゃい、リリベル様。」夫人は笑顔で笑ってくれた。
「この度は素敵なお茶会に招待して頂き、とても光栄にございます。よろしくお願い致します。」
「固い話はいいから、グリニエルのファッションのことを知りたいわ。グリニエルではどんなドレスなら流行るかしら?」
フィリネルはファッションのこととなると熱い。夫人も楽しそうにドレスの話をしていた。
「グリニエルではもうすぐ寒くなってきますので、長袖のドレスなどいかがでしょう?」
「長袖か、サウスユークではあまり作ることがないからまずデザインからおこしてみるよ。」好きなことをしている時のフィリネルはキラキラと輝いていて可愛らしかった。
「私さ、小さい頃グリニエルの王太子殿下を拝見したときに、ピーンときてたのよ。将来王太子殿下を見たらドレスの案が浮かびそうって!本当会えて良かったわ~。」
レオンに会いたがっていた理由がはっきり分かったところで夫人が口を開いた。
「そういえば、グリニエル国王が婚約者を持ったと聞いたのだけれど。」どんな方なのかしら?と夫人が聞く。
「ええと、歳は離れておりますが、仲睦まじく暮らしておりますわ。」
嘘は言っていない。国王陛下は他国にもクロエの存在を公にしたいと思っているのだが、それはゆっくりと仲の良い国だけに留めた方がいいと思うのだ。どこでクロエのことが漏れるかもわからないのだから嘘は言わず、慎重に答えた。
「…そんなの許せないわ。」
ボソッと言った夫人の言葉には、怒りが込められていた。
「エドウィン陛下はサラノアだけを愛しているものだと思っていたのに、ガッカリだわ。」
相当怒っているのか、持っていたカップを音を鳴らしながら皿に置く。
私は少し気になって聞いてみた。
「陛下とサラノア様をご存知なのですか?」
すると私の予想をしていた答えとは違う答えが返ってきた。
「私とエドウィン陛下は婚約者だったの。いわば政略結婚の予定だったわ。でも、エドウィン陛下は町娘であるサラノアに一目惚れをしてその話は白紙になった。サウスユークの王家は代々、政略結婚と決められていたから結婚が無くなって驚いたわ。」
私の知る歴史のさらに裏側が明かされていく。
「それで、サラノアがどんな女性か気になってグリニエルに行ってみたの。そしたらエドウィン陛下は私の知るエドウィン陛下ではなかったわ。人の心を持たないとまで言われた冷たい人が、可愛い女性の手を取り、ニコニコと幸せそうにしていたの。」
「サラノアも幸せそうにしていて、恋愛って美しいのだと思った。だから私も好きな人と結婚したの。だから私にとって2人は憧れだったのに…。エドウィン陛下はサラノアしか愛せない人であって欲しかったわ。」
その言葉を聞いて私は続けた。
「ならば心配要りませんわ。エドウィン陛下と婚約したのはサラノア様の生まれ変わりなのです。」
ニコッと笑いかけると暫く沈黙があった。
しかし、私の言葉が本当なのだと分かってくれたのか、夫人は笑い出した。
「うふふっ。運命とは面白いものね。良かったわ。エドウィン陛下の愛はそんなものだったのかと思っていたから、勘違いで本当に良かった。サラノアが幸せなら、それでいい。」
陛下とサラノア様にどれだけ憧れを抱いているのか、なんとなくだが伝わってくるようだった。
「エドウィン陛下との婚約者だったと言うことは…」当時のサウスユークの皇女様のはず。
「そう。私がサウスユークの王族の直系よ。夫は国王に就いてるけど、権力があるのは私。だから対談も息子のエルが一緒なのよ。」
「私には兄がいたのだけれど、亡くなってしまって、仕方なく私が跡を継いだの。夫は優しい人だからあまり国政に向いていない。今も沢山の反対を受けることがあるの。だからエルに早く王座を譲る予定なのよ。」
エルが婚約者を持ったらすぐに王座に就くという理由が分かり、その国によって抱える悩みや問題は違うのだと思った。
「エル自身は政略結婚を望んでいるわ。でもフィーには恋愛結婚をして欲しいの。好きな人と結ばれる幸せを知って欲しい。だからって少し自由に育て過ぎた気もするけどね。」
そう言って笑っていた。
「そのおかげで自由に服作りをしたりできているから、お母様には感謝しかないですわ。それに…」
スッと立ち上がったフィーはリオネルに抱きついた。
「好きな人もできたんですの。」そう言って笑う姿は恋する乙女だった。
国王夫人の手前、腕を振りきれずにいるリオネルに助け舟を出してやる。
「フィー。申し訳ないけど、リオネルはまだ15になったばかりなの。腕は確かだけど、まだ婚約できる歳でないの。」
元々大人びた顔をしているリオネルは、よく成人に間違われてしまうので、訂正した。
「えー、そうなんだ。でも歳下でも職がなくても私は気にしないですよ。」そう言って今にも襲いそうな程顔を近づけていく。
確かにフィーなら、職がなくても養ってくれそうだと納得する。せっかくのいい話なので、チラリとリオネルを確認した。すると顔に助ケテクレと書いてあったので、更に続けた。
「リオネルは奥手なので、文通などから始めるといいかと思います。」そのアドバイスを聞いて、フィーはなるほど。と考えていた。
フィリネルと国王夫人とのお茶会を終えて、部屋へと戻る。ドレスの案はこれから試作を重ねていくことになり、私は今回、グリニエルに持ち帰るスレンダーなドレスを受け取った。
部屋に戻る途中にリオネルに聞く。
「フィーはいい子よ。縁談になってもいい話だと言うのにどうして嫌がるの?」
するとリオネルは口を開いた。
「フィリネル皇女は真っ直ぐで、努力家でキラキラしていると思います。ですが、私は急に会った方とそういう仲になることが想像できないだけです。」
リオネルが言うことも分からなくはない。私もレオンに一目惚れだと言われて最初は信じなかったからだ。
「いつかそうなるかもしれない。なんて期待持たせるような不確かなことは言いたくないのです。」
その言葉を聞いて、リオネルは誠実だなと思った。
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