【R18 】後宮で新しいお妃様の付き人になったけど秘め事が刺激的すぎる

蒼月 ののか

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皇太子

 ――百合と話がしたい。
 
 翠妃様が離宮に来られてから二日経った、今日の昼のことだった。

 居間は、とりあえず最低限生活に事足りるだけの品々が揃っていたが、豪華とは言えない小さめのテーブルと、シンプルなソファー。

 そこに、皇太子様が座っていた。

 隣に、少し緊張した面持ちで、ちょこんと寄り添うように座っているのは翠妃様だ。
 薄紅の伝統衣装をまとっている。
 この季節に合った涼し気な装いだった。

「百合はどこまで知っているんだ?」

 何について聞かれているのか、はっきりとせず、わたしが答えに窮していると、

「百合は何も知りませんよ」

 先輩侍女が代わりに答えてくれた。

「そうか……。
 では、少し長い話になるかな。そこに座って」

 促されて、わたしはテーブルを挟んで反対側に置かれた椅子に座らせていただく。

 なんだろう、どんな話になるのかな……。

「この国の皇帝一族にはね、予知能力があるんだ」

 は?

 今、なんて言った?
 なんの話だ、わたしをからかっている?

 もしかして、何か試されている?

 頭に?マークを浮かべ、受け答えできないでいるわたしをよそに、皇太子はなお続けた。

「この国ができた時から、歴代の皇帝には、未来が見える力が備わっているんだ。
 こういう選択をすると、こうなるという未来の可能性が無数に見える。
 その中で、国や国民にとってより良い未来になるような舵取りを皇帝はしているんだ」

 なんとも、荒唐無稽な話であった。

 その予知能力は、国の大事に関わることに、特に強く発現するのだそう。
 個人個人の未来がすべて見えるという訳ではないそうな。

「百合は、歴史を学んでいたんでしょう?
 おかしいとは思わなかった?
 この国が、先の二度の大戦に関わらずにいられたこと。
 地政学的には重要な位置にいてもおかしくないのに、世界史の流れにほとんど出てこないこと。日本ともほとんど関わらないよね」

 全て、歴代の国王が国を守るため、できるだけ他国と関わらない選択を続けてきたからだそうだ。

 台風や大地震、火山の噴火。
 地理的に少なくはないが、大災害は必ず予知できる。
 だから被害は最小限に抑えられてきた。

 にわかには、信じられないけど……。

 それに、どうして今、わたしにその話をするのだろう。

「これは知っているかもしれないけど、碧蘭は父上の側室になるはずだったんだ。

 一昨日、我が父ながら情けないことに、碧蘭は結構酷いことを父にされてね。
 私はそれを見逃す事ができなかったんだ。

 私には、碧蘭が、私の側にいてくれる未来も見えていたしね。
 間違ったことをしたとは思っていないよ」

 翠妃様を見つめる皇太子様の目は優しかった。

「だけどね……、

 ほとんどの国民は、そうは思わないんだよね。
 皇帝のすることは絶対だから。
 碧蘭本人ですら、皇帝の元を去って、私と一緒になることに、罪の意識を抱いてしまっているんだ。

 百合は日本から来たから、この国の王宮の人間とは違う価値観を持っている。
だから、皇帝の行いをおかしいと思ってくれるだろう。そういう人が碧蘭の近くに必要なんだ。
 碧蘭の味方でいてやってほしい」

「あの、差し支えなければ、翠妃様が陛下にどんな酷いことをされたのか教えていただけませんか?」

 『判断を間違わない』と年配侍女に言わしめた皇帝陛下が、側室候補とはいえ、一人の少女にどんな酷いことができるのたろう……。

「それは……」

 言いよどむ皇太子様に、翠妃様が口を開いた。

「皇帝陛下と王妃様のまぐわいを、目の前で見せつけられました」 

 次はお前ともこうするのだから、よく見ておくのだよ……と。

 最初から最後まで、目をそらすことを許されなかったという。

「やっぱり、おかしいことだったんですよね」

 可愛らしい声は、小さく震えていた。
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