ポンコツパーティでゲーム実況。~灰ゲーマーすぎて?現実とゲーム世界の境界を破壊してしまった~

タッタ

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皆川未亜≒ミイア?

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授業中はほとんど睡眠時間だ。
堂々と机にうつ伏せになっている俺を起こして授業を受けさせようとする熱心な教師はこの学校にはいないらしく、俺は遠慮なく春眠を謳歌することができていた。
わざわざ持ってきたフカフカクッション×2のお陰で、お尻は痛くてもどうにか座っていられる事ができた。

「昨日の配信見たぜ。面白かったな。アーカイブ残しておいてくれよ。俺、エイレイン様のファンなんだ」

涎のひっついた唇を擦っていると、男子生徒が声をかけてきた。名前はなんだっけな。えーと。

「あ、ああ。ご視聴サンキュ。忘れずに残しておくよ。でもな、あんまり大きな声で配信の事を言わないでもらえるか?」

「えっ、なんで?」

「あんま、知られたくないからな」

「なんでよ。人気あんじゃん。お前があのチャンネルの配信者って知れたら騒がれるぜ」

「だから、それが嫌だっての」


「俺だったらすぐ言いふらしちまうけどな。お前やっぱ変わってんな」

「うるさい。ほっとけ」

俺みたいな陰キャのコミュ障が人に騒がれたい訳ないだろ。

「ところでさ、エイレイン様ってよ、かなりのレアキャラらしいぜ。ツイッターでも遭遇情報がほとんど上がってねえらしい。流石俺のエイレイン様」

お前のではなく、俺のパーティーメンバーなんだが。なんか腹立つな。

「そうなのか。彼女はいつの間にか緊急クエストで合流してそのままなし崩し的にパーティーに入っていたな」

「彼女、とか言うな。馴れ馴れしい。お前の彼女じゃねーし」

ウリウリと、名前の思い出せない男子生徒は俺と肩を組んでくる。お前の方がよっぽど馴れ馴れしいって。

「俺の彼女ではねーけど、お前の彼女ではもっとねーよ」

「うるせー。夢くらい見させろっての。どこで出会ったんだよ。おい」

「えーと、アッタリア坑道で落盤事故のイベントがあったんだけどその時だったと思うぞ」

「よっしゃ。さっそくアッタリア坑道に通ってみるわ」

そうだ。思い出した。この軽薄な男の名は陽太だ。森谷陽太ようた。学校を休みがちな俺に話しかけてくる数少ない生徒だ。
しばらくゲームの話で盛り上がったが、休み時間も終わりに近づいた頃に陽太が言った。

「よう、ところで翔斗。1年5組の皆川未亜って知ってるか?」

「知らない。その子がどうかした?」

「それがさ。ミイアちゃんなんだよ」

「どうした。俺が言うのもなんだけど、現実とゲームの区別はしっかりつけおいたほうがいいぞ」

「いや、本当にミイアちゃんにクリソツな女の子なんだよ。ちょっと今から見に行こうぜ」

陽太に連れて行かれた先には確かにミイアがいた。ミイアに似た子というよりもJKのコスプレをしたミイアそのもののようだった。

「な、マジだろ?」

「ああ、マジだな。怖いくらい似すぎてる」

友達と談笑していた彼女の視線が一瞬ついとこちらを流れる。流れた視線は、はっとしたようにまた俺に戻ってくる。いわゆる二度見だ。しばらく視線はこちらに固定されていたが、やがて友達によって引き戻される。

「おい、彼女今、お前の方見てなかったか?」

「そんなバカな。たまたまだろ」

そうは言ってみたが内心マジか? と、ドキドキしていた。
まさかそんな事はあり得ないが、俺の事を知っているのだとしたら。
彼女がゲームに登場する魔法使いのミイアで、僕が魔法戦士ショーだと認識できたとしたら……。
あり得ない。そんな事はあり得ない。ショーと俺の外見は全然違う。多少似せて作ってはいるけれどショーを見てそれが僕であると分かるほどの類似性はない。

残念だけれど、ショー君は俺よりイケメンだし、やっぱり彼女はただの他人の空似。人じゃなくてゲームキャラだけど。

「ショー君……。でしょ?」

「は?」

妄想に取り付かれていた俺は彼女の接近に気づかなかった。ミイア、いや、皆川未亜は僕にプレイヤーネームを突きつけてきたのだった。

「職業魔法戦士。冒険者ランクB。ゲーム内のサブ職業が農家さん……」

「え、え……、なんで……?」

混乱していた。なぜ彼女がショーの事をこれほど知っていて、俺の事をショーのプレイヤーと分かっているのか。

陽太はなぜか知っているが、俺はおおっぴらにゲーム配信の事を人に話したことはない。むしろ、バレないように隠しているくらいだ。

「なんで、って、だって、私だもん」

「マジで?」

そんなタイミングだと知ってか知らずか、始業のチャイムが校舎にこだました。



放課後、校門を潜ると声をかけられた。
皆川未亜。ミイアだった。

「ショー君。ここにいたんだね。探したよ」

「お、おい。なんの事だ?」

「あっ、しらばっくれてるね。私。ミイアちゃんだよ」

自分の事を人差し指で示しながらそうのたまう。

「からかうのは止めてくれ。ミイアはゲームの中のキャラクターだし、ショー君も俺のプレイキャラの名前だ」

「だから、ミイアなの。私が」

クリクリとした大きな眼が真っ直ぐに俺を見据える。その表情は不満そうで、ほっぺたを少し膨らませている。背はかなり彼女の方が低いので、こちらを見上げるような格好になる。

何かのドッキリだろうか。陽太と組んで俺を嵌めようとしているんじゃないだろうか。そんな考えが頭を巡る。
当然だ、こんなことにわかに信じられない。信じられる訳が無い。

「何考えているか分かるよ。当てよう」

にひにひと笑いながら、俺の胸元に人差し指の腹をくっつける。

「お腹空いた。でしょ」

「いや、全然違う」

「え、嘘。じゃあ、イチゴパフェご馳走してね」

「なんでそうなるんだよ。……、てか、マジ?」

この反応。このやりとり。この既視感。ゲーム内でミイアとやった会話そっくりだ。

「分かりましたね。じゃあ、イチゴパフェ~」

「いや、どっちにしてもイチゴパフェの流れじゃねえだろ。ま、いいか」
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