地味教師とヤンキーくんのチグハグな2人の逢瀬

もちもちもちお

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にゃんこちゃんなんですねー

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絢斗くんに支えられながら無事保健室に到着する事ができた。道中涙が止まらない彼を慰めながらだったので少し時間が掛かってしまったが、僕の事をそれだけ想ってくれているのだと思うと抱き締めたくて仕方がない。
時刻的にもう既に授業は始まっているに違いない。僕の代わりに誰がなんの授業をしているのだろうか。後でお詫びをしなければ。

養護教諭の田中先生は僕達の訪問に初めは驚きはしていたものの、段々とニヤリと笑みを作っていった。こんな時なのだからもう少し収めて欲しいものだけども。まぁ、無駄に空気が暗いよりかはマシか。

先生が言うには鼻の打撲らしく、数日安静にしておけば特に問題はないとの事だ。折れていないみたいで良かった。念には念という事で鼻の上に湿布を貼られ一先ずは治療は終わったのだ。
絢斗くんは治療の間も今も僕に凭れ掛かったまま腕を絡めさせている。涙は止まったらしいのだが、まだグズグズとしていた。

「……本当に、高城先生の前だとにゃんにゃんなんですねー。そういえば、アレどうでした?」

アレ。
アレか…。
以前この人から貰った温感ローションについてか。彼の前でその話をするのは大分恥ずかしいけども。きっと話をしないと今後何度も聞かれそうだし。
はぁ…と一つ息を吐いて僕の胸元にうりうりと顔を押し付けている絢斗くんの髪を撫でた。

「そう…ですね。……よ、良かったですよ。本人も気持ちよさそうでしたし。」
「本当ですかぁ?!また何かいいものがあったらプレゼントしますねぇ♡」
「……勘弁してくださいよ。」

あーもう、これで完全に僕とこの子が身体の関係があるということがバレてしまったわけだ。見ておくれ、彼女の満足そうなお顔を。絢斗くんもちょっとだけ頬っぺを赤らめている。話の内容は分かったようだ。気を紛らわせる為にいつもの僕の指をいじいじとしている。

「そうだ、今週は高城先生まともにメガネも掛けられないだろうし、鼻の痛みで日常生活もいつも通りに過ごせないだろうから。浅見くん高城先生のこと……手伝ってあげてね。」
「!!わかった!!」

良いお返事である。明らかに何か意図がある提案に思えるけども、言っている内容は確かに間違いは無い。
彼の優しさを利用しているみたいで心苦しいけども、助けてもらう場面は…少なくは無いのだろうな。



鼻血が両鼻から出てしまい、しかも結構な量だった。その為カーディガンとワイシャツも血塗れで着れない。という事でまた運動着を着ることに。念の為コンタクトは持参していたのでそれを装着をした。久々の感覚だ。普段の眼鏡よりもクリアな視界に違和感が拭えない。

状況説明をしなくてはならない為に絢斗くんを連れて職員室に行く事にした。まさか金田さんもいるんじゃ…と若干ビビり散らかしていたが、今現在は別室にてご家族を待っている状態なのだとか。

「高城先生、大丈夫……そうでは無いですね。浅見くんは怪我は無い?」
「姫路先生…たはは、打撲だそうです。」
「……………俺はへーき。」

姫路先生からあの後の流れは大まかに聞くことが出来た。案の定…金田さんは取り乱した状態であったらしく、今は落ち着きはしているものの自身が行った行為については未だ認めていないようだ。本来ならば僕が出向いた方が良いのだろうが、無駄に興奮させてしまう可能性もあるとの事で、それは後々だそう。

「浅見来たか。お前の話も聞きたいからちょっと来てくれるか。」
「………行ってくる。」
「うん、頑張って。」
「…………………ん。」

本件の事情聴取をしているらしい先生方に呼ばれ、彼は一目僕の方をチラッと見てから向かっていってしまった。今回は彼は何も悪いことはしていないのだから、大丈夫な筈。もしも絢斗くんが悪い…みたいな流れになってしまったのならば僕が証言をすればいいだけだ。大丈夫、大丈夫だ。



その後は特に僕の方では何かをするという事も無く…と言うよりも安静にしているようにと他の教員から有難いお言葉を頂き帰りのSHRまで職員室に籠っていたのだった。絢斗くんは既に教室に戻されているらしい。空気感的に彼が不利になるような問題は無かったようだ。

姫路先生に心配されながらも教室に入ると…これはデジャブと言うやつだろうか。

「!?!?じ、地味セン!?!?イケメンすぎるんだけど!!!」
「誰だお前!!俺たちの地味センを返せーー!!!」
「やばっ………え、リアコしそう……。」
「怪我しとる!!うわぁぁぁぁ金田万死だぞぉぉぉー!!!」

あぁ。そういえば見た目が何時もとは違うのだったか。すんごい生徒達が机から身を乗り出して湧いてしまっている。そこまでか、そこまでなのか。ここまでこんな僕の顔に対して喜んでくれるのならば…こっちの方が良いのかな。中身は何時もの僕なんだけども。

「やっぱり絢斗はおこなんだね。」
「……………うぅぅ、そーだろ!」

あ、やっぱりやめた方が良いみたいだ。
可愛い子が頬っぺたをぷくぅっと膨らませて、僕の事を見ている。
可愛い。嫉妬してくれているんだ。誰もいなければぎゅぅって抱き締めていたよ、絶対に。
彼のあの様子を見るにもうメンタル的には回復をしているようだ。安心した。



ワイワイとしていたが、何とかクラスのみんなをほぼ強制的に帰宅させる事が出来た。すんごい渋っていたが、姫路先生が最終的に「全教科の抜き打ちテスト、そんなにしたいの?」の一声でそそくさと居なくなったのは流石といえる。本当にこういう所は見習いたい。僕にはまだ体得出来ない技だ。

なんやかんやあって、本日の業務も早い段階で終える事が出来て帰宅するか…と職員駐車場に向かったのだが。

「眼鏡!!買って帰るぞ!!」
「へ?」
「………俺のゆーしなのに、ベタベタ触られるのやだもん。」
「………………もぉー、わかったよぉ。でもまだ付けられないよ?」
「わ、わかってる…!」

僕の車の横に仁王立ちで待っていたらしい絢斗くんがそこにいて、そんな事を言ってきたのだった。相変わらずぷんぷんとしてる。
どうやら田中先生の言う事を信じているのか僕のお手伝いをする気満々のようで。こちらが何を言う前に浅見家にお泊まりすることになってしまった。平日の夜も彼と一緒に過ごせるのは嬉しいのだが、一緒にいれない夜はきっとより寂しく感じてしまうんだろうなぁって、ちょっと思ってしまう。

そういえば、この件に関して浅見両親にも当然連絡はいったらしい。けども「息子が大怪我をしていなければ、後は先生方に任せます」との事だそうだ。冷めているのだなぁと思えてしまったが、絢斗くんからしたらいつもの事らしい。本当に大怪我をしたらどんなに大きな仕事があろうとも投げ出して来るのだとか。そうか、ちゃんと大切に…されているのか。それに関しては知れてよかった。

浅見家に帰宅後、お風呂も着替えもどこに行くにも後ろにてててー!と着いてきてくれて何度も胸がんぐぅぅぅっ!!とキュートアグレッションを起こしてしまって大惨事だ。
こんな状態でえっちするわけにもいかず、ほっぺをもちもちするなりぎゅっと抱きしめるなりして、気を紛らわせるのに精一杯な僕である。

「…はやく、元気になってくれな。」
「はぁい。…今回は絢斗くん悪くないんだから。そんなにしょんぼりしないで。」
「………でも俺のせいで怪我させちゃった事に変わりはねぇし…ごめんな。」
「いーんだよ。アレだよ、好きな子を護れた男の勲章ってやつだよ。」

後はもう寝るだけという時に、するっと彼は僕の脚の上に乗ってそんな事を言ってきた。教室ではもう元気そうに見えたのだが、やはりまだモヤモヤは残っていたらしい。優しい彼だから、引きずってしまっているのだろう。本当に良い子だ。ヘアセットもしていないから、髪全体のボリュームは無い。だからか、飼い主に叱られた猫みたいにへにょってなっているように見えた。元気を出して欲しい。僕は絢斗くんを助けれた事に後悔はないのだから。
鼻を付けないように頬にキスを贈った。

「!!ゆーしは、ズルい。」
「なんで?」
「……そんなに格好いい事言われちゃ、嬉しいって思うしかねーじゃん。」
「ふふっ、そう思ってくれたなら良かったよ。」
「…………ちゅー、は出来んの?」
「激しくなければ、大丈夫だよ。」

おずおずと、恥ずかしそうに尋ねてきた。そこまで気にしなくても良いのに。痛みももう殴られた時より随分と引いてるし。
目の前に半開きになっている唇。そこから覗く可愛い犬歯をカチカチと指先で軽く弾いた。

「…ちゅー、して?」
「いーよ、しよっか。」

頬に手を添えて、唇同士を重ね合わせた。彼も気にしているのだろう、何時もよりも控えめだ。…痛むのは僕だけだし。痛みが増したとして、我が校にはあの田中先生が居るのだから何とかしてくれるだろう。そんな事を考えながら普段通りにグッと顔を押し付けたのだった。
ちゅる♡ちゅる♡と舌を吸い上げて味わう。キスの段階だと言うのにピクピクと反応していて、愛らしくて仕方がない。

「んっ!♡……むっぅ………はふぅっ♡んっ♡んっ♡…ゆー、しぃっ……♡ぁむぅっ♡んっ♡♡」
「んー?」
「…ぷはっぁ♡おれのこと、まもってくれて、ありがと、な?格好良かった…うれしぃ…だいしゅき…♡♡」
「かわぃ…!うん、どーいたしまして。」

幸せそうにそう微笑んでくれた。
これが、これが見たかったんだよね。
彼を護れて良かった。
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