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冬の始まり
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「………よし、買えた。気に入ってくれるかな、絢斗くん。」
例年よりも早い初雪が舞い落ちる。
己の手のひらの中に一つの箱。
愛しいあの子に贈る僕からの思いである。
藤本くんと桐谷くんによってあんな一件もあったが、校内では穏やかに冬休みに移行することが出来たのである。向こうの学校側から特にクレーム等の連絡もないあたり、藤本くん達が上手く何とか処理をしたのであろう。
陽乃和高校内でも何の話題も上がらなかったので、みんなも特に言わなかったみたいだ。…本当は報告をした方が良いのだろうが、僕達はこれでいいんだ。
クリスマスの日に終業式も無事終え、生徒達は明日から待ちに待った冬休みである。三年生のみんなはきっと最後の控える受験の追い込みをするのだろう。二年生や一年生はきっと思い思いに友達と会うなり、出された宿題をどう処理するかを考えて過ごしていくみたいだ。青春そのものである。
そして、絢斗くんに至っては海外出張から一時帰国したご両親達と過ごすみたいだ。数日前に無事家に帰ってきたと話していたし、今日はクリスマスだ。あのお二方ならばパーティでも開くのではないかな。
後日その様子の話でも聞けたら良いな、なんて思っていた。愛しい彼が楽しく話してくれる姿が目に浮かぶ。僕はその様子が見れれば大満足である。
なぁんて、呑気に考えていた。
「…………なんて?」
「あ、その…母さん達がな?ゆぅしを…ご招待しろって……。」
「……………………………なんて?」
絢斗くんをお家に送った時に、そんな話をされてしまったのである。
思考が追い付かない。
家の近くのパーキングに停め、彼の顔を改めて見た。ちょっと居心地悪そうなお顔をしていた。可愛いお顔をしているのだ、にこにこして欲しいが、それどころでは無い。なんなら僕の方がきっと酷い顔をしていると思う。
「あの…家族水入らずですし…。三人で過ごした方が…。」
「父さんと母さんが会いたいんだって。俺も…クリスマスだし、ゆぅしと一緒にいたいなって…話したら連れてきなよ!って。」
「……うぐぅ……なんでそんなかぁいいこと言うの?」
腕を絡められ、鼻先をちょんっ♡と付けられた。可愛い…なんでこの子はこんなにも愛らしい事をしてくるのだろうか。
自覚あるだろう、間違いなく。
えっちの時は僕の言う事なんでもほいほい聞いてくれるが、それ以外の時はこう可愛いことをされてしまうと僕がほいほい聞いてしまうのを彼は自覚している。
こんなにも可愛いお強請りをされたら…頷く以外の選択肢なぞ無いのだ。
だが……彼のご両親と再会というのは中々にハードルが高い。
僕も…こればっかりは……無理じゃないかなぁ。罪悪感というか、申し訳なさというか。いや、どちらも意味は一緒か。どちらにせよそういった感情が湧き出すのだ。大切な息子さんにあらぬ事を教えこんでしまっているのだから…。まともに目を見て話す自信がないのだ。
…どう考えても無理だ。
会うなんてとても厳しいと思う。
「おねがい、ゆぅし…♡」
「あとでちゅーしてね。」
「もっちろん♡♡たくさんしよーなぁ♡」
負けました。
無理だって。
天使に人間風情が叶うわけないじゃん。
やって来ました、浅見家。
どういう訳なのか玄関を開けた先には…。
「「いらっしゃーーい♡♡」」
「………ご無沙汰しております。」
「やだなぁ、固いよ高城くん。」
「お父さんそう言わないの!ほら、玄関で話すのもなんだし、お食事にしましょ。今日は…泊まっていくわよね?」
にっこにこの笑顔全開な絢斗パパとママがお出迎えをしてくださったのである。
初手でコレできた為か、心臓が急速にバクバクと脈を打ってしまった。危うくへたりこみそうであったのだが、隣に絢斗くんがいるのだ。
何とか持ちこたえることが出来たけど…。
「へぁっ!?え、え?!泊まり!?」
「いつも泊まってるんでしょ?それにクリスマスなのだし、泊まらないってなるとけんちゃんしょんぼりしちゃうと思うのよねー?」
そうお母様が言うと絢斗くんは頷き、また腕をぎゅっと掴まれてしまった。
マジか…!!!
流石に今日はご飯食べてささっとご帰宅させて頂こうと思っていたのだが…無理そうである。
……腹を括るしかないな。
絢斗くんも期待をしてくれているみたいだしね。彼の前では少しでも格好良くいたいから。
「わ、分かりました…。」
こうして外堀も内堀も見事に埋められて、またもや負けてしまったのであった。
流石浅見家。
息子の為ならば隙が無さすぎる。
豪華な夕飯もいただき、今回もまたお父様と晩酌をさせてもらったのである。
今日はクリスマス仕様ということもありお酒の種類も豊富で、おつまみも中々高級品ばかりだ。よく知らないが高そうなチップスに…生ハムに…これは…キャビアか!?初めて食べる。全ていただくことが些か躊躇してしまうレベルであった。
構わずに僕に食べさせ飲ませようとしてくれるので頂きますけども…。
緊張もあり味がしない…。
「そういえば、けんちゃんから聞いたんだが進路は専門学校にしようかと考えてるみたいなんだってな。」
「あ、そうみたいですね。」
そうか、ちゃんとご両親にも話をしていたのだな。良かった。常に家にいらっしゃる訳じゃないから話しにくいとかもあるかなぁとか考えていたが、問題はなかったみたいだ。偉いね。
「調理系に行きたいとか。きっと高城くんに美味しいご飯を作ってあげたいんだな。いやぁ…やっぱり本当に妬ける。」
「あの……その。」
「怒ってないさ。単に羨ましいなぁと思っててね。ほら、将来的には君はけんちゃんと一緒に居るだろ?居るよな?」
「は、はい!!」
圧が……怖い!!
彼の威圧の強さはお父さん譲りなのだな…。
「だろ?だけど高城くんと一緒になるってことは結果として俺達の元から離れるということに…なるだろ。一人っ子だし、その分愛情を沢山注いできたつもりだ。だが、愛情を注いだ分…やはり離れるとなるとその分寂しいんだ。幸せになって欲しいとは勿論思ってるけど。」
「……それは、はい。」
「親と一緒にいる時間よりも今後長く君と一緒にいる事になるだろ。それが…たまらなく羨ましいんだ。」
「……。」
それは…確かに親側からしたら当然の気持ちだろうなと思う。彼等からしたら僕は完全なる馬の骨というやつだ。今まで全力で愛情を注いでいた子が、いきなりぽっと出の奴にかっ攫われる様なものだし。そりゃぁ…面白くないと思うのは当然の事だ。
「ははっ、だからさ母さんと話したんだ。高城くんとけんちゃんが安定して暮らせるようになったら、海外出張は辞めようかという話になってるんだ。」
「そ、そうなんですか?」
「うん。ラブラブで暮らしてるところに突撃してやろうって話してる。」
!!
なんてこった。
「…そ、それは…ふふっ、楽しくなりそうですね。」
「そうだろう?楽しみにしててくれ。」
ニッ!!とお父さんは笑ったのだった。
その笑顔が……絢斗くんそっくりである。
彼が…もう少し大人になったらお父さんにより似るのかなぁとか考えてしまった。間違いなくイケメンではあるのだろうけど。
ゆったりと話す言葉の全てが、彼への愛情にとても溢れており、つい笑みがこぼれてしまった。
普段離れていても常に彼が愛されている。そして今後の人生、今まで離れていた分を埋めようとする作戦とか。
年上の方々に申し訳ないと思うが…微笑ましく愛おしいと思えてしまった。
その全てがとてつもなく尊く見えたのだ。
良いなぁ…家族って。
「…やっぱり、お父さんお酒強いなぁ…。」
フラフラになりながらも絢斗くんのお部屋に帰ってきたのだった。
知らない銘柄のワインとか日本酒とか…話しながら沢山いただいてしまった。どれも全て飲みやすくてついつい飲みすぎてしまった。
「………ありゃぁ。」
部屋に入ってみれば…今回は僕の布団は敷かれていなかったのだ。
そうだよな、前回二人でベッドに入っていた所を見られたのだから。
うぅ…恥ずかしい。
けど、フラフラだし…。
なによりも眠い。
「……一緒に寝よ、ゆぅし。」
「はいはい。」
絢斗くんは今の今まで起きていたみたいで、布団からお顔だけを出して僕の方を見つめてきていたのだった。
そして腕を掴んで布団に入るように催促してきたのである。無いものは致し方ないし…諦めて大人しく隣にいつも通りお邪魔したのであった。
「父さんと喧嘩しなかったか?へーき?」
「へーきだよ。ふふっ。」
「ん?」
「んへへ…将来さ、僕と絢斗くんが一緒に住むでしょ?」
彼を腕の中に抱き込み、そっと彼のキラキラとした稲穂色の髪を撫でた。
…アルコールが思ったよりも回っているらしい。瞼が重くなってきてしょうがない。意識もうつらうつらとしてきた。
腕の中の絢斗くんが…何故か顔を赤らめている…気がする。部屋が暗くてもわかるくらいだ、だいぶ赤い。だいじょーぶかな。
「ぅ、うん…。」
「そこに突然お父さんとお母さんが突撃するって言ってたんだ。」
「えぇ?そうなのか?」
「うん。きっと僕はその時もまだまだヘタレだろうからビビるんだろうなぁって。でも、みんな絢斗くんのことが大好きだから、絢斗くんの話ばかりしながら美味しいご飯を食べたり、その時には君も一緒にお酒飲んだりしながら過ごすのかなって。ふへへ…それって、すっごく……楽しそうだなってさ……。」
意識がより微睡んできた。
半分眠りかけているのだろうか…夢想をしているのかもしれない。伝えた景色が朧気に瞳に映し出された。
……うん、みんな楽しそうにしている。愛おしい彼を囲んで幸せに、キラキラと…和やかにしていて…。早くこうなりたいなって。四人で旅行とかも、してみたいなぁ。
その為に貯金とか……頑張りたい。
今度は僕達側が何かイベントしてみるのも……ありだよね。
「…やっぱり………けんとくんと、一緒にいると………将来がたのしみでしか…ないんだよなぁ……。」
「…………そ、そっかぁ………ふへぇ……けんとも……そーおもうよ……。」
ポロリと、頬に添えていた手のひらに温かい…滴がこぼれ落ちたのがわかった。
涙?
「……ないてる?」
「ごめっ………幸せすぎて……ないちゃったぁ…。」
「ふふっ…………僕もいま、すんごい幸せだなぁ……。」
悲しみの涙では無かったらしい。良かった。そう安心すると…より一気に眠気が襲いこみ、瞼をそっと閉じたのだった。
意識が飛ぶ前に、絢斗くんが小さく…呟いた声が鼓膜に届いた。
「あいしてる、ゆぅし……。」
そう言ってくれた気がした。
僕も心の中で『愛してる、絢斗くん』と返したのであった。
「……これ。」
「んへへ…クリスマスだったし、贈りたかったんだ。」
「……ぁう…。」
絢斗くんの手には、藍色のと黒色の手袋。
黒色のファーが縁に着いており中はモコモコの裏起毛仕様である。これならばきっと手が悴むことは無いだろう。
一目見た時から似合うだろうなぁと思っていたので、今回思い切って購入しプレゼントしてみたのだ。
贈られた絢斗くんは眦を赤らめて瞳をうるうるとして、今にでも泣き出してしまいそうなお顔をしている。
「う、嬉しい…!ど、どーしよ…俺まだ何も…。」
「い、良いんだよ、僕があげたかっただから。」
「うぅぅ…でも…。」
次いで何か絢斗くんが声を発そうとしたその瞬間…。
「なら、プレゼントはけんと♡が定番じゃないかしら♡」
「確かに定番だが…お釣りがくるレベルだぞ?けんちゃんだもん。大量のお釣りがでるぞ!」
真横でご両親が見守っていたのである。
分かっていたが……すっげーー恥ずかしいんですけども!!!
「そうか!!ゆぅし、俺の事…あげる♡」
「…うぅぅぅ…あ、有難く……はい、貰います。」
「「ハッピーメリークリスマスだね♡」」
「うん!!!」
「………はひぃ…。」
プレゼントを渡せたのは良かったけども…。
やっぱり、やっぱりすごーーーく恥ずかしい!!!!!
これだから浅見家は!!!!
例年よりも早い初雪が舞い落ちる。
己の手のひらの中に一つの箱。
愛しいあの子に贈る僕からの思いである。
藤本くんと桐谷くんによってあんな一件もあったが、校内では穏やかに冬休みに移行することが出来たのである。向こうの学校側から特にクレーム等の連絡もないあたり、藤本くん達が上手く何とか処理をしたのであろう。
陽乃和高校内でも何の話題も上がらなかったので、みんなも特に言わなかったみたいだ。…本当は報告をした方が良いのだろうが、僕達はこれでいいんだ。
クリスマスの日に終業式も無事終え、生徒達は明日から待ちに待った冬休みである。三年生のみんなはきっと最後の控える受験の追い込みをするのだろう。二年生や一年生はきっと思い思いに友達と会うなり、出された宿題をどう処理するかを考えて過ごしていくみたいだ。青春そのものである。
そして、絢斗くんに至っては海外出張から一時帰国したご両親達と過ごすみたいだ。数日前に無事家に帰ってきたと話していたし、今日はクリスマスだ。あのお二方ならばパーティでも開くのではないかな。
後日その様子の話でも聞けたら良いな、なんて思っていた。愛しい彼が楽しく話してくれる姿が目に浮かぶ。僕はその様子が見れれば大満足である。
なぁんて、呑気に考えていた。
「…………なんて?」
「あ、その…母さん達がな?ゆぅしを…ご招待しろって……。」
「……………………………なんて?」
絢斗くんをお家に送った時に、そんな話をされてしまったのである。
思考が追い付かない。
家の近くのパーキングに停め、彼の顔を改めて見た。ちょっと居心地悪そうなお顔をしていた。可愛いお顔をしているのだ、にこにこして欲しいが、それどころでは無い。なんなら僕の方がきっと酷い顔をしていると思う。
「あの…家族水入らずですし…。三人で過ごした方が…。」
「父さんと母さんが会いたいんだって。俺も…クリスマスだし、ゆぅしと一緒にいたいなって…話したら連れてきなよ!って。」
「……うぐぅ……なんでそんなかぁいいこと言うの?」
腕を絡められ、鼻先をちょんっ♡と付けられた。可愛い…なんでこの子はこんなにも愛らしい事をしてくるのだろうか。
自覚あるだろう、間違いなく。
えっちの時は僕の言う事なんでもほいほい聞いてくれるが、それ以外の時はこう可愛いことをされてしまうと僕がほいほい聞いてしまうのを彼は自覚している。
こんなにも可愛いお強請りをされたら…頷く以外の選択肢なぞ無いのだ。
だが……彼のご両親と再会というのは中々にハードルが高い。
僕も…こればっかりは……無理じゃないかなぁ。罪悪感というか、申し訳なさというか。いや、どちらも意味は一緒か。どちらにせよそういった感情が湧き出すのだ。大切な息子さんにあらぬ事を教えこんでしまっているのだから…。まともに目を見て話す自信がないのだ。
…どう考えても無理だ。
会うなんてとても厳しいと思う。
「おねがい、ゆぅし…♡」
「あとでちゅーしてね。」
「もっちろん♡♡たくさんしよーなぁ♡」
負けました。
無理だって。
天使に人間風情が叶うわけないじゃん。
やって来ました、浅見家。
どういう訳なのか玄関を開けた先には…。
「「いらっしゃーーい♡♡」」
「………ご無沙汰しております。」
「やだなぁ、固いよ高城くん。」
「お父さんそう言わないの!ほら、玄関で話すのもなんだし、お食事にしましょ。今日は…泊まっていくわよね?」
にっこにこの笑顔全開な絢斗パパとママがお出迎えをしてくださったのである。
初手でコレできた為か、心臓が急速にバクバクと脈を打ってしまった。危うくへたりこみそうであったのだが、隣に絢斗くんがいるのだ。
何とか持ちこたえることが出来たけど…。
「へぁっ!?え、え?!泊まり!?」
「いつも泊まってるんでしょ?それにクリスマスなのだし、泊まらないってなるとけんちゃんしょんぼりしちゃうと思うのよねー?」
そうお母様が言うと絢斗くんは頷き、また腕をぎゅっと掴まれてしまった。
マジか…!!!
流石に今日はご飯食べてささっとご帰宅させて頂こうと思っていたのだが…無理そうである。
……腹を括るしかないな。
絢斗くんも期待をしてくれているみたいだしね。彼の前では少しでも格好良くいたいから。
「わ、分かりました…。」
こうして外堀も内堀も見事に埋められて、またもや負けてしまったのであった。
流石浅見家。
息子の為ならば隙が無さすぎる。
豪華な夕飯もいただき、今回もまたお父様と晩酌をさせてもらったのである。
今日はクリスマス仕様ということもありお酒の種類も豊富で、おつまみも中々高級品ばかりだ。よく知らないが高そうなチップスに…生ハムに…これは…キャビアか!?初めて食べる。全ていただくことが些か躊躇してしまうレベルであった。
構わずに僕に食べさせ飲ませようとしてくれるので頂きますけども…。
緊張もあり味がしない…。
「そういえば、けんちゃんから聞いたんだが進路は専門学校にしようかと考えてるみたいなんだってな。」
「あ、そうみたいですね。」
そうか、ちゃんとご両親にも話をしていたのだな。良かった。常に家にいらっしゃる訳じゃないから話しにくいとかもあるかなぁとか考えていたが、問題はなかったみたいだ。偉いね。
「調理系に行きたいとか。きっと高城くんに美味しいご飯を作ってあげたいんだな。いやぁ…やっぱり本当に妬ける。」
「あの……その。」
「怒ってないさ。単に羨ましいなぁと思っててね。ほら、将来的には君はけんちゃんと一緒に居るだろ?居るよな?」
「は、はい!!」
圧が……怖い!!
彼の威圧の強さはお父さん譲りなのだな…。
「だろ?だけど高城くんと一緒になるってことは結果として俺達の元から離れるということに…なるだろ。一人っ子だし、その分愛情を沢山注いできたつもりだ。だが、愛情を注いだ分…やはり離れるとなるとその分寂しいんだ。幸せになって欲しいとは勿論思ってるけど。」
「……それは、はい。」
「親と一緒にいる時間よりも今後長く君と一緒にいる事になるだろ。それが…たまらなく羨ましいんだ。」
「……。」
それは…確かに親側からしたら当然の気持ちだろうなと思う。彼等からしたら僕は完全なる馬の骨というやつだ。今まで全力で愛情を注いでいた子が、いきなりぽっと出の奴にかっ攫われる様なものだし。そりゃぁ…面白くないと思うのは当然の事だ。
「ははっ、だからさ母さんと話したんだ。高城くんとけんちゃんが安定して暮らせるようになったら、海外出張は辞めようかという話になってるんだ。」
「そ、そうなんですか?」
「うん。ラブラブで暮らしてるところに突撃してやろうって話してる。」
!!
なんてこった。
「…そ、それは…ふふっ、楽しくなりそうですね。」
「そうだろう?楽しみにしててくれ。」
ニッ!!とお父さんは笑ったのだった。
その笑顔が……絢斗くんそっくりである。
彼が…もう少し大人になったらお父さんにより似るのかなぁとか考えてしまった。間違いなくイケメンではあるのだろうけど。
ゆったりと話す言葉の全てが、彼への愛情にとても溢れており、つい笑みがこぼれてしまった。
普段離れていても常に彼が愛されている。そして今後の人生、今まで離れていた分を埋めようとする作戦とか。
年上の方々に申し訳ないと思うが…微笑ましく愛おしいと思えてしまった。
その全てがとてつもなく尊く見えたのだ。
良いなぁ…家族って。
「…やっぱり、お父さんお酒強いなぁ…。」
フラフラになりながらも絢斗くんのお部屋に帰ってきたのだった。
知らない銘柄のワインとか日本酒とか…話しながら沢山いただいてしまった。どれも全て飲みやすくてついつい飲みすぎてしまった。
「………ありゃぁ。」
部屋に入ってみれば…今回は僕の布団は敷かれていなかったのだ。
そうだよな、前回二人でベッドに入っていた所を見られたのだから。
うぅ…恥ずかしい。
けど、フラフラだし…。
なによりも眠い。
「……一緒に寝よ、ゆぅし。」
「はいはい。」
絢斗くんは今の今まで起きていたみたいで、布団からお顔だけを出して僕の方を見つめてきていたのだった。
そして腕を掴んで布団に入るように催促してきたのである。無いものは致し方ないし…諦めて大人しく隣にいつも通りお邪魔したのであった。
「父さんと喧嘩しなかったか?へーき?」
「へーきだよ。ふふっ。」
「ん?」
「んへへ…将来さ、僕と絢斗くんが一緒に住むでしょ?」
彼を腕の中に抱き込み、そっと彼のキラキラとした稲穂色の髪を撫でた。
…アルコールが思ったよりも回っているらしい。瞼が重くなってきてしょうがない。意識もうつらうつらとしてきた。
腕の中の絢斗くんが…何故か顔を赤らめている…気がする。部屋が暗くてもわかるくらいだ、だいぶ赤い。だいじょーぶかな。
「ぅ、うん…。」
「そこに突然お父さんとお母さんが突撃するって言ってたんだ。」
「えぇ?そうなのか?」
「うん。きっと僕はその時もまだまだヘタレだろうからビビるんだろうなぁって。でも、みんな絢斗くんのことが大好きだから、絢斗くんの話ばかりしながら美味しいご飯を食べたり、その時には君も一緒にお酒飲んだりしながら過ごすのかなって。ふへへ…それって、すっごく……楽しそうだなってさ……。」
意識がより微睡んできた。
半分眠りかけているのだろうか…夢想をしているのかもしれない。伝えた景色が朧気に瞳に映し出された。
……うん、みんな楽しそうにしている。愛おしい彼を囲んで幸せに、キラキラと…和やかにしていて…。早くこうなりたいなって。四人で旅行とかも、してみたいなぁ。
その為に貯金とか……頑張りたい。
今度は僕達側が何かイベントしてみるのも……ありだよね。
「…やっぱり………けんとくんと、一緒にいると………将来がたのしみでしか…ないんだよなぁ……。」
「…………そ、そっかぁ………ふへぇ……けんとも……そーおもうよ……。」
ポロリと、頬に添えていた手のひらに温かい…滴がこぼれ落ちたのがわかった。
涙?
「……ないてる?」
「ごめっ………幸せすぎて……ないちゃったぁ…。」
「ふふっ…………僕もいま、すんごい幸せだなぁ……。」
悲しみの涙では無かったらしい。良かった。そう安心すると…より一気に眠気が襲いこみ、瞼をそっと閉じたのだった。
意識が飛ぶ前に、絢斗くんが小さく…呟いた声が鼓膜に届いた。
「あいしてる、ゆぅし……。」
そう言ってくれた気がした。
僕も心の中で『愛してる、絢斗くん』と返したのであった。
「……これ。」
「んへへ…クリスマスだったし、贈りたかったんだ。」
「……ぁう…。」
絢斗くんの手には、藍色のと黒色の手袋。
黒色のファーが縁に着いており中はモコモコの裏起毛仕様である。これならばきっと手が悴むことは無いだろう。
一目見た時から似合うだろうなぁと思っていたので、今回思い切って購入しプレゼントしてみたのだ。
贈られた絢斗くんは眦を赤らめて瞳をうるうるとして、今にでも泣き出してしまいそうなお顔をしている。
「う、嬉しい…!ど、どーしよ…俺まだ何も…。」
「い、良いんだよ、僕があげたかっただから。」
「うぅぅ…でも…。」
次いで何か絢斗くんが声を発そうとしたその瞬間…。
「なら、プレゼントはけんと♡が定番じゃないかしら♡」
「確かに定番だが…お釣りがくるレベルだぞ?けんちゃんだもん。大量のお釣りがでるぞ!」
真横でご両親が見守っていたのである。
分かっていたが……すっげーー恥ずかしいんですけども!!!
「そうか!!ゆぅし、俺の事…あげる♡」
「…うぅぅぅ…あ、有難く……はい、貰います。」
「「ハッピーメリークリスマスだね♡」」
「うん!!!」
「………はひぃ…。」
プレゼントを渡せたのは良かったけども…。
やっぱり、やっぱりすごーーーく恥ずかしい!!!!!
これだから浅見家は!!!!
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感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
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https://www.pixiv.net/artworks/100148872
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