地味教師とヤンキーくんのチグハグな2人の逢瀬

もちもちもちお

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【side浅見】今年もよろしくして下さい、愛しい人よ

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わちゃわちゃとしていたらいつの間にか年も開けていたらしい。思わず全員で笑ってしまった。あっさりし過ぎだろうと。
そんな事を話しながら無事お参りも終わり、神社の敷地内に用意された大きな焚き火で暖まろうという話になった。
よく見てみるとテントも設営されており、甘酒やら御神酒類の飲み物。そしておでん等の温かい食べ物が用意されていた。全員でそれを受け取り、焚き火近くのベンチに並んで腰掛ける事にした。

パチパチと火が弾ける音に耳を傾けた。他の参拝客も俺達同様に火の周りに集まって談笑しながら、寒いなぁとか、今年は何をしようか等の話をしていた。
隣で優志も御神酒を口にしながらほっと一息を吐いているようである。彼が掛けている眼鏡に揺れる焔が映り込んでいた。
微かに口角が上がっている。穏やかな表情だ。なんだか、その光景が平和そのものな感じがしてドラマのワンシーンみたいで、つい見入ってしまう。
お酒の美味しさに喜んでいるのかと思うが、きっとそうでは無いのだろう。
山根や東を中心に彼に話しかけてくる友人達と一緒にこの年越しという時間を共に過ごせているのが…嬉しいんだ。
今までの話によると、友人という存在はここ数年間居なかったらしいし。より一層今のこの一時を甘受しているのだろうな。彼が嬉しそうにしていると、俺もつい綻んでしまう。このままずっと彼にとっての幸せな日々が続けばいいのにと、願ってしまう。
初詣の時のお祈りはこれにしよう、そう決めた。

「ゆぅし、たのし?」

そう問い掛ける。
間違いなく愚問なのは分かっているが、彼の口から聞いてみたかったんだ。
一瞬きょとんとした顔をしていたが、途端にふんわりと花が咲き誇るかのような笑みを浮かべたのである。
それを真正面から受けてしまった俺の顔に一気に熱が走った。焚き火の熱さではない。こいつのせいだ。
あぁもう…、コンタクトも前髪を上げていないというのにこの破壊力。本当に罪深いやつだ。もっと自分の顔の良さを自覚するべきだと思う。
…その証拠に一瞬、間があった。
自分と彼の周りの人物達が息を飲んだ音が微かに聞こえた気がしたのである。
ほら、ホイホイじゃないか。
だが、目の前の彼はそんな事全く気付いていないのだろう。その綺麗な笑顔のまま言葉を発したのであった。

「うん。すっごく楽しくて幸せだよ!………どわっ?!?」
「「「「高城先生ーー!!!」」」」

あぁぁぁもう…。
一斉にみんなが優志に飛びつき、揉みくちゃにしたのであった。
これ、結構剥がすの大変なんだからな!
あと、何度も言うけど優志は俺のだから!!!触んな!!



一悶着も二悶着もあったが、何とか優志を救出する事が出来たのであった。幸いみんな持っていた神社側からの食事時に使用していた紙皿やら紙コップは空であった。なので服に降りかかる等の大惨事は起きる事は無かった。ラッキーである。

無駄に洗濯物を増やす事が無く一安心だなぁと考えながら追加の甘酒を飲んでいたら、隣から何やらガサゴソと怪しい音が聞こえてきたのであった。

「高城くん…。」
「うぉっ!?どうしたの山根くん?!」
「うぅーーー…。」

視線を移してみれば…なんだこれ。
先程の俺以上に顔を真っ赤にさせて瞳をうつらうつらとさせた山根が、優志に凭れ掛かり首元にスリスリと顔を擦り付けていたのだった。雰囲気からして日本酒で酔ってしまっているみたいだが…え、な、何しちゃってんだこいつ!?

「お泊まり…浅見ばっかりずるい…。」
「え。」
「う゛ーーー…。ずるいんだよぉ…僕も高城くんちに泊まる!!泊まるんだぁぁ…泊まってもいいって言ってくれるまで…僕離さないぞぉ…。」
「え、え、まって!!!」

ぎゅぅぅぅ!!と腕を抱き締めだした山根。完全に周りは置いてけぼりである。
特に俺と金田。笑われてもおかしくないレベルにきっと今ぽかんとした顔をしていたに違いない。
けれど、なんとか頭を振り思考を戻した。
…薄々前から妙に山根は優志と一緒にいたがるなとは思っていたのだ。ちゅーもしたがるし。
あくまでも彼からすれば友情なのだろうが、傍から見たら…優志の事大好き♡としか見えない。彼を映す瞳が常にハート状態な気がする。あれだ、俺と同族の香りがするのだ。非常に癪だが。
お互いにここまでの友人は初めて、らしいし。二人ともパーソナルスペースが掴みきれていないのだろう。
だとしてもだ…恋人の俺からすれば面白くない。ひっっじょうにつまらない。

「や、山根くん…泊まりたいって思ってくれてるのは嬉しいけど…。僕、今日と明日は実家なんだよ…。」
「…そーなのか?」
「うん。ごめんよ。」

近い!!!!
もうあと数ミリでちゅーするレベルの顔の近さなんだが!?優志も優志でなんでこいつに限ってそこまで距離を詰めても大丈夫なんだよ。え?友達ってそんなもんなのか!?藤本の一件の事忘れたのかこいつ。隙をつかれてまたちゅーされるぞ。事故ちゅーされちゃうかもだぞ。
綺麗系な山根の大きな瞳に付属してる長い睫毛が揺れる。真っ直ぐに俺の彼氏様を見つめている。そこら辺の野郎ならばきっと即ノックアウトしてしまうだろう。それぐらいの威力がある。

「なら、三日目。三日目の夜泊まりたい。いーか?」
「け、絢斗くん…次第です。」
「浅見も一緒に泊まろ。三人で寝よ。」
「え゛っ!?!?」

まさかの流れ弾がこちらに被弾したのであった。お、俺もなのか。
優志が居れば…まぁ、良いけど。
何度も言うがあくまでも山根は優志の事を友人として、今の所は見ているみたいだし。俺が近くにいれば、いざと言う時に対処は…可能か。それならば…うん。

彼の事は基本的に誰にも渡すつもりは無いし、今後一生俺だけに縛り付けておきたい気持ちは確かにある。
だがその反面、彼が幸せそうに日々を送る機会を失わせたくないという気持ちもまたあるのだ。
許可を出す為に頷こうとしたその瞬間…。

「ま、待って!!!それなら俺も泊まりたいです!!!!!」
「「「え。」」」
「それ、俺達もだよな??」
「そーだよねー?そこまで話しておいて俺達除け者ってのは無しだよねー?」

結果、男子会が発足されてしまったのでした。
当然女性陣からのブーイングは不可避であった。
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