おしかけ妻と宮様の愛猫

虹色すかい

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22.ひのみかど(七)



「……腕、痛くありませんか?」

「痛くないよ」


 柄にもなくしんみりとした話をしてしまったから、いつもと変化のない八条宮の声色にほっとする。


「だから、あなたは夜の火を始末して眠るのか」

「はい。でも、明かりがないと不便ですよね。すみません、勝手をして」

「不便ではない。火の見回りが必要ないから、朝までぐっすり眠れるようになって、肌艶がよくなったと女房たちも喜んでいた」

「本当ですか?」


 女房たちの顔が頭を巡って、沙那は思わずぷっと吹きだした。八条院の女房は皆、それぞれ個性はあっても善良で品行方正だ。機知に富んでいて、たわいもないおしゃべりも真剣な話も面白くて飽きない。

 沙那の笑いがおさまるのを待って、八条宮が言った。


「ここはあなたの邸でもあるのだから、夜の火も暮らす場所もなんでも自由に決めていい。ここから庭を眺めるのが好きなら、北の対屋に戻らずにずっといればいいんだ」


 沙那は、胸の前で組んだ腕を解いて八条宮の単衣の胸元を握りしめる。優しい言葉が心にしみて、上手く感謝の気持ちを伝えられない。沙那がぐっと涙をこらえていると、くるりと体が反転して、仰向けになった体に八条宮が覆いかぶさってきた。


「自由に決めてもいいと言ったが、少しだけ訂正してもいいかな」

「は、はい」

「俺が、あなたと一緒にいたい。だから、暮らす場所を北の対屋から主寝殿に移してくれないか?」


 八条宮の真剣な表情に、沙那は左胸がぱんっと弾ける音を聞きながら、こくこくと首を縦に振る。額の傷も火事のことも、不吉で忌むべきものなのに、八条宮は全く気にしていないようだ。沙那は、それがとても嬉しかった。


「ありがとうございます、依言様。今日は、おいしい宮中のお菓子にこの世で一番好きなもの、それからほかにも、たくさんの幸福をいただきました」

「それは、俺のほうだよ」


 八条宮が沙那の喉元に顔をうずめる。そして、首の肌を吸いながら沙那の腰ひもを解いて、単衣の合わせから手をしのばせた。手のひらで胸のふくらみをなでられて、沙那の体がぴくりと反応を示す。


「待ってください、依言様。むむむ、む、胸は、その……っ!」

「俺は気にしないと言ったはずだが」

「でも、恥ずかしくて。こっ……、心の準備が」

「そうだ、沙那」

「……はい?」

「もうすぐ、宮中で菊見の宴がある。あなたにも内裏からの書状が届くはずだから、女房たちと衣装を選んでおいて」

「わたしもその宴に行くのですか?」

「そう。あなたは宮家のしつで従三位の位にあるから、俺と一緒に帝の御前にあがるよ」


 会話に気を取られているうちに、単衣の衿が左右に開かれる。むき出しになった胸を隠そうとすると、あっさり腕をつかまれて敷布の上にのけられた。


「その話をしなくてはいけなかったのに、すっかり忘れていた」

「帝の御前にわたしが……。なんだか、とても緊張します」

「俺に胸を見られたり触られたりするよりも緊張するの?」

「そ、それは……!」


 くすっと笑って、八条宮が沙那にくちづける。帝と胸を比べるなんて失礼にも程がある、なんて思う暇もなく口の中を舌で蹂躙されて、胸の先端を指先で押しつぶされた。


「んん……っ」


 弾かれたりこねられたり、指弄されているうちにそこが固くなって刺激に敏感になる。それから、下腹部がじんとうずいて、触られていないはずの秘苑が湿る感じがする。

 単衣の裾を手繰った八条宮に太腿をなでられると、ぞくぞくとした気持ちよさが沙那の体を駆け巡った。


「はぁ……っ、ふ……っ」


 手が、肌の上をすべるように腿の内側をなでて下生えの奥に触れる。きゅっと閉じた脚の間で陰芯を探り当てられて、沙那は無我夢中で八条宮の衣をつかんだ。


「沙那、力を抜いて」

「は、はい」


 吐息まぎれの短い会話をして、また唇が重なる。
 口の中を舐め回されて、徐々に短く弾んでいく呼吸。思うように息継ぎができなくて、頭がくらくらとしてしびれるように麻痺する。

 そこに陰芯や蜜口を擦りあげられる刺激が加わると、恥ずかしいとか行為への戸惑いとか、もうなにも考えられなくなった。

 下腹部の熱が増して、指で触られているところから全身に快感が広がっていく。沙那の体から余計な力が抜けると、八条宮の指が昨夜の余韻の残る洞に沈んだ。


「は、っ……ふぁ、んん……っ」


 くちゅくちゅと淫らな水音を立てながら、指が気持ちのいいところを責めたてる。昨夜までなにも知らなかった狭い隘路をおし広げるように、指を増やされた。

 口の中では舌と舌がもつれて、きつく吸われて、体の奥を指先で丹念に擦られる。そして、どこかへさらっていくような快楽が波のようにおし寄せた瞬間、八条宮の親指が蜜に濡れて固くなった陰芯を押しつぶすようにして皮をむいた。


「ふんん――ッ!」


 視界が真っ白になって、自分の息の音も聞こえない。体がふわりと宙に浮いて、自分のものではないかのような感じがする。


「入れるよ」


 優しくて心地いい声が耳元でささやいて、蜜口に熱いものが当てられた。ずぷりと一気に貫かれて、朦朧としていた沙那の意識が鮮明になる。


「あぁああ……ッ!」


 昨夜のようなつらさはない。代わりに沙那を襲ったのは、また視界が弾けてしまうような鮮烈な快感だった。


「はぁ、っ」


 八条宮の吐息が聞こえて、お腹の下のほうがきゅんとうずくのを感じる。八条宮が、沙那の反応をうかがいながら動き始めた。


「痛くない?」


 沙那が頷くと、八条宮が体重を乗せるように腰を動かす。指とはまるで違う重量の熱塊が奥を突きあげ、肉襞を削る。動きは段々と激しくなって、ぐちゅぐちゅとした粘性の音を響かせながら沙那の体を揺さぶった。


「ああっ……んんッ」


 中を突きながら、八条宮が沙那の乳房を揉んでつんと尖った先端を指で弾く。また下腹がきゅんとして、さらなる快感が体中に飛び散った。


「……だ、め……っ」


 なにがだめなのが、わけの分からない拒否が口をついて出る。なにも悲しくないのに、目尻から涙がこぼれる。


「……沙那」


 八条宮が、沙那に覆いかぶさって繋がったまま抱きしめた。沙那は、反射的に八条宮の背に手を回す。


「依言様、大好きです」


 沙那が言うと、体の中にいる八条宮がぴくっと反応した。


「俺もあなたが愛おしいよ」


 体を起こした八条宮が、再び腰を動かし始める。さっきよりも激しい、膣壁をえぐるような抽挿に、沙那の体は快楽に耐えきれずがくがくと震えた。


「あぁあ……んっ、あぁんっ」


 体と一緒に視界が揺れて、意識が白いもやに飲み込まれる。奥で熱い飛沫が弾けるのを感じながら、沙那は絶頂した。

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