春のやさしい月明かりのように

虹色すかい

文字の大きさ
4 / 7

第四話 黒幕

しおりを挟む


 ◆◇◆


 起居を共にせよ。
 翌朝、陽王の一言で詞嬪に紫永宮の一室が与えられ、すぐに明夷宮の宮女が身のまわりの荷を運んできた。珠月は、腫れて重たく目に被さるまぶたを指で持ち上げた。


「何をしている」


 配膳を終えた宮女を下げ、陽王が珠月の顔を覗きこむようにして言う。
 何をしているのかなんて、こちらが聞きたい。もしかして、夢でも見ているのだろうか。珠月は一度目を閉じて、ゆっくりと開けてみた。しかし、状況に変わりはない。

 泣きすぎたせいで、視界が狭まって少し霞む。そこに見える豪華な宮廷料理。どうやら、本当に陽王と朝食の席に着いているらしい。


「食せ」

「は、はい」


 食せ、と言われても。生薬を煎じた甜茶てんちゃを口にするのが精一杯だ。


「いつもそうなのか?」

「はい?」

「食が細いのかと聞いている」

「い、いいえ。そうでは」

「ならよい」

「あの……」

「何だ」

「儒積は」

「今日、詞華へ戻るそうだ」

「そう……、ですか」


 機械仕掛けのような会話はそこで途絶える。しょんぼりと珠月が肩を落とすと、それきり、陽王は食事が終わるまで喋らなかった。

 この日から、寝台を起き出てから就寝するまで、陽王が紫永宮にいるときは常に一緒に過ごさなければならなくなった。陽王が政務で留守にしている間は自室でゆっくりできたが、常に三人の宮女がそばにいて、一人きりになる時間はない。そうか、と珠月は納得する。明夷宮に閉じ込めて衛兵に見張らせるより、自ら監視しようという魂胆なのだ。

 紫永宮に暮らし始めてもうすぐ三ヶ月が経とうかというある日。
 珠月はいつものように寝所に入り、寝台に座って書物を読んでいる陽王の隣に腰掛けた。ふと、自分から香油の匂いがして少し距離をとる。

 後宮の習わしなのだろうが、宮女たちが用意する香油はいつになっても好きになれない。
 そばの燭台にふっと息を吹きかけ、陽王が寝台に横たわる。そして、珠月と呼ぶ。珠月はゆっくりと上半身をひねって振り返り、陽王と視線を合わせた。

 陽王は、ふたりきりのときだけ名を呼ぶようになった。


「明日から那濫をそなたに預ける。那濫と一緒なら、王宮を好きに歩いてもよい」

「好きにって」

「言葉の通りだ。暖かくなってきたことだし、私が政務の間は自由にしてよい。ただし、王宮の外には行くな」

「あの、では、明夷宮に戻ってもよろしいでしょうか?」

「ならぬ。紫永宮ここで起居せよと命じたはずだ」

「いえ、そうではなくて。あなたの侍衛と一緒に」

「……あ、ああ、それならよい。今宵は冷える。早くこちらへ」


 一つに束ねた長い髪を左の肩にかけ、陽王の隣に仰向けになる。無様に泣きじゃくったからか、陽王は触れることもしないし伽も強要しなくなった。目を閉じてじっとしていると、すぐに規則正しい寝息が聞こえてくる。隣で朝を迎えるようになって、彼は寝付きが早いのだと知った。





 昇陽の王宮では、王が妃の宮へ通うのが通例である。
 陽王が紫永宮で詞嬪と寝食を共にしていることは、噂好きな宮女たちの恰好の餌となった。噂は王宮の外まで広がり、牢獄の門番まで野暮な話をする有様だ。

 緋尚ひしょうは、詞嬪とは詞華の王女のことかと牢番に尋ねた。三人の牢番は、牢の格子に手足を鎖で繋がれた囚人を馬鹿にするように指をさして笑った。


「良かったな。奥方が陽王に取り入って、お前を助けてくださるんじゃないか?」

「いいや、それはないだろう。陽王はこいつに怒り心頭だからな」

「そうは言うが、詞嬪様へのご寵愛は格別だって噂だ。詞嬪様が閨で頼めば……」


 緋尚は、ぎりぎりと奥歯を噛みしめる。
 貧しい国の王子に生まれたのが不幸だった。司将軍のもと詞華で贅沢な暮らしを謳歌するはずが、鎖に繋がれ、餌のような飯を食い、下級の門番に笑われる畜生に成り下がってしまった。

 それにしても、珠月は幸運な女だ。戦火を生き延びたうえに昇陽王の妃におさまるとは。こんなことになるのなら、優しい夫など演じずに抱いておけばよかった。陽王は、穢れた女を妃にはしないはずだ。くそっ。

 げらげらと笑っていた牢番が、慌てて姿勢を正す。武官を引き連れて、陽王がやってきた。


「これはこれは陽王」


 ぼさぼさで不潔な黒髪に隠れた顔に卑屈な笑みを浮かべ、緋尚が格子越しに陽王の衣をつかもうとする。だが、両の手首に掛けられた鎖が引っかかって手が届かない。陽王の精悍な顔立ちを観察するように、緋尚は目をこらした。


「麗しい陽王よ、珠月にご執心だそうだな」

「貴様には関係のないことだ」

「我が妻を横取りしておいて、なんて言い草だ。珠月に会わせろ」

「妻? 女には情を持たぬくせに。それに、残念だが貴様は処刑されたことになっている。どうやって死人に会わせろと?」

「さすが、昇陽の王だな。我々と違ってやることが周到だ。だが、俺のお陰で珠月の純潔をいただけただろ? そこにひれ伏して俺に感謝したらどうだ」

「そう噛みつくな、緋尚。貴様への礼として、今日はよい知らせを持っきてやったのだ。詞嬪の代わりといっては何だが、司将軍に会わせてやろう」

「司将軍だと? まだ生きておられるのか」

「ああ。嬉しくて言葉も出ないだろう」


 陽王の笑みに、背筋をぞっと寒気が走る。嫌な予感は昔から外れたことがない。こいつは、を現実にするためにここに来たのだ。

 陽王が目配せすると、牢番たちは媚びたように笑って緋尚を後ろ手に縛った。そして、暴れて抵抗する緋尚のみぞおちを殴って牢の外へ引っ張り出した。


「詞嬪様、どちらへ?」

「明夷宮へ。荷の中に陽王の上衣がなかったのです」

「上衣?」

「ええ。随分前にお借りしたままになっていて」

「そうでしたか。ご案内いたしましょう」

「ありがとう」


 珠月は、那濫について紫永宮を出た。
 木々の枝が新しい芽をつけている。もう季節は春間近のようだ。せっかく良い気候ですので、と那濫が遠回りをして王宮を案内してくれた。

 いらかを争うように、意匠を凝らした美しい宮が並んでいる。どの宮も立派な門構えで、まるで王都の貴人たちが住む街並みを見ているかのようだ。
 いくつかの宮を通り過ぎたとき、珠月はふと足を止めた。人の気配が全くないことに気付いたからだ。


「いかがされましたか、詞嬪様」

「他の妃たちはどちらにお住まいなの?」

「他の妃とは? 陽王の妃は詞嬪様だけですが」

「明夷宮の宮女に聞いたのです。陽王には、わたしの他に六人の妃がいるのだと」


 那濫は眉間にしわを寄せた。そして何かを思い出したように、ああと言った。
 確かに、他国の王族から献上されて六人の姫が入宮したことがありました。ですが、その日のうちに陽王の命令で国に戻されました。陽王は、人質を使うやり方をとても嫌っておられますので。

 那濫の答えに、珠月は呆然とする。どういうこと。それから明夷宮に着くまで、珠月は上の空で歩く羽目になった。


「陽王は、人の心を持っていないのだと思っていたわ」


 明夷宮の宮女から上衣を受け取り、紫永宮へ向かいながら珠月が言った。那濫は表情を変えず、そうですかと一言だけ返した。迷路のように植木が並ぶ庭にさしかかったとき、那濫が寄り道をしましょうと言い出した。珠月がきょとんとすると、那濫は答えを待たずに紫永宮とは真逆の方向へ曲がった。


「とんだ食わせ者だな、陽王」

「ほら、愛しい司将軍との再会だ。いつまでも拗ねてないで、素直に喜んだらどうだ。何なら、縄を解いてやってもよいぞ。熱い抱擁でも交わすか?」

「くそっ」


 緋尚が連行されたのは、四方を不気味な赤い壁に囲われた広場だった。閻魔の台座と揶揄される、罪人を裁いて処する場所だ。緋尚はごくりと生唾をのむ。ここに連れてこられたら最期、生きては帰れない。

 衛兵に背を押されて石畳の上に転げると、そこには同じように両手を縛られた司将軍が座っていた。緋尚が、司将軍にすがりつくように身を起こす。司将軍は緋尚を無視して、陽王の姿を目で追った。


「蕾怜よ、なぜ俺を生かしておく。さっさと殺せ!」


 司将軍が、かっと目を見開いて叫ぶ。
 陽王は無表情のまま司将軍に近づき、身をかがめてその髪を乱暴につかんだ。もはや兄でも将軍でもない。この男はただの裏切り者。私利私欲を満たすために詞華を滅ぼした下衆だ。


「わめくな、兄上」

「お前を討とうと企んだ俺を、まだ兄と呼ぶのか? やはりお前は、王の器ではない! お前のような軟弱な男が、大国を治めるなどできるはずがない!」


 怒りで手が小刻みに震える。愚かな二人のせいで、故郷ともいうべき詞華を失い、珠月との間には決して埋まることのない溝ができた。

 しかし最も愚かだったのは、兄を信じて全軍の兵権を与え、緋尚と珠月の婚姻を阻止できなかった自分だ。我が子のように目をかけてくれた詞華王に報いることができなかった。陽王は怒りをこらえ、司将軍から離れた。





「待ちなさい、那濫。ここは王宮の外ではないの?」

「はい」

「引き返しましょう。王宮を出てはいけないと言われているのですよ。陽王に知られたらどうするのです?」

「そのときは私がとがめを受けます。詞嬪様に知っていただきたいのです」

「何を」

「真実をです」


 那濫のあとをついて、珠月は木の枝をかき分ける。高くそびえる塀伝いに歩き、小さな門から外に出る。そこは、白い石畳の広場だった。衣についた葉を払い落とし辺りを見回す。


「詞嬪様。ここからは背筋を伸ばして堂々とお歩きください」

「どういうことです?」

「私は陽王のもとへ詞嬪様をお連れする侍衛です」

「はあ……」


 言われた通りに、妃らしい身のこなしで那濫の後ろを歩く。しばらくすると、衛兵が近付いてきた。那濫は、陽王の命で詞嬪様をお連れしたと何喰わぬ顔で言い、広場をまっすぐ進んだ。

 朱塗りの小さな門をくぐる。すると、向こうにたくさんの役人が並んでいて、その手前に陽王と後ろ手に縛られてひざまずく二人の男が目に入った。赤い壁が何とも気味が悪い。

 陽王が気付いて駆けてくる。少し間を置いて、ひざまずく二人の男が振り返った。


「珠月!」


 片方の男が叫び、自由のきかない体をよじって立ち上がろうとする。嘘。珠月は驚きのあまり口を抑えた。聞き間違えるはすがない。夕焼けの空色のように儚げで上品な面影は全くないが、毎夜手を握って眠ってくれた夫の声。そして夫の隣にいるのは、両親の首をはねた司将軍だ。


「那濫! なぜ詞嬪を連れてきた!」


 陽王が鬼のような形相で那濫に詰め寄り、すぐに紫永宮に詞嬪を連れて行けと声を荒らげる。珠月は震える手で陽王の腕をつかんだ。


「こ、これは何事なのです?」

「知らぬほうがよい。すぐ紫永宮へ戻れ」

「いいえ、お願いです。なぜ、処刑されたはずの夫がそこで罪人のようにひざまずいているのか、わけを教えてください」


 陽王に食い下がる珠月を見て、緋尚が笑いだした。気が触れたかのような笑い方に、その場にいた者たちが一様に怪訝な顔で緋尚に視線を集中させる。ひとしきり笑い終えた緋尚は、顔を歪ませて口を開いた。


「知らぬほうがよい。いえ、教えてくださいだと。おいおい、見せつけてくれるなよ。こっちが恥ずかしくなるだろ」


 茶化すように陽王と珠月の言葉を真似て、緋尚が再び大声で笑う。記憶の中の夫からは想像もできない姿に、珠月は唖然として言葉を失った。

 衛兵たちが緋尚を取り囲み、暴力的に押さえつける。


 あれは、誰。


 珠月の足が、がくがくと震える。陽王が、青ざめた珠月を支えるように体を寄せ、衛兵に向かってやめよと言った。


「優しい方、だった……のに」


 珠月の虚ろな一言に、緋尚が唾を吐く。緋尚は芋虫のように石畳の上を這い、首をもたげて珠月を見上げた。


「俺がなぜ罪人のようにひざまずいているのかだと? 詞華王を唆してお前の夫になり、司将軍を手引きした罪人だからさ」


 世間知らずの王女め。緋尚は、面食らって顔を硬直させる珠月をあざ笑った。そして、陽王の制止に逆らって大声を上げる。


「詞華王は、陽王を王女の夫にと望んでいた。二人の間に男児が生まれ、いずれその子が詞華を治めてくれるなら、詞華は昇陽の一部になっても構わないと愚かな夢を語っていた。だから、司将軍と共に謀ってやったのだ。誰もが欲しがる豊穣な詞華の大地を手に入れ、陽王を討つためにな!」


 緋尚の笑い声が頭の中で反響する。天が崩れるようだった。地が立っていられないほど大きく揺れ、視界が暗転し、身体から力が抜けていく。そのまま珠月は、糸がぷつりと切れるように意識を失った。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

届かぬ温もり

HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった····· ◆◇◆◇◆◇◆ 読んでくださり感謝いたします。 すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。 ゆっくり更新していきます。 誤字脱字も見つけ次第直していきます。 よろしくお願いします。

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

お飾り王妃の死後~王の後悔~

ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。 王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。 ウィルベルト王国では周知の事実だった。 しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。 最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。 小説家になろう様にも投稿しています。

【完結】旦那様に学園時代の隠し子!? 娘のためフローレンスは笑う-昔の女は引っ込んでなさい!

恋せよ恋
恋愛
結婚五年目。 誰もが羨む夫婦──フローレンスとジョシュアの平穏は、 三歳の娘がつぶやいた“たった一言”で崩れ落ちた。 「キャ...ス...といっしょ?」 キャス……? その名を知るはずのない我が子が、どうして? 胸騒ぎはやがて確信へと変わる。 夫が隠し続けていた“女の影”が、 じわりと家族の中に染み出していた。 だがそれは、いま目の前の裏切りではない。 学園卒業の夜──婚約前の学園時代の“あの過ち”。 その一夜の結果は、静かに、確実に、 フローレンスの家族を壊しはじめていた。 愛しているのに疑ってしまう。 信じたいのに、信じられない。 夫は嘘をつき続け、女は影のように フローレンスの生活に忍び寄る。 ──私は、この結婚を守れるの? ──それとも、すべてを捨ててしまうべきなの? 秘密、裏切り、嫉妬、そして母としての戦い。 真実が暴かれたとき、愛は修復か、崩壊か──。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 いいね❤️励みになります!ありがとうございます!

【書籍化】番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました

降魔 鬼灯
恋愛
 コミカライズ化決定しました。 ユリアンナは王太子ルードヴィッヒの婚約者。  幼い頃は仲良しの2人だったのに、最近では全く会話がない。  月一度の砂時計で時間を計られた義務の様なお茶会もルードヴィッヒはこちらを睨みつけるだけで、なんの会話もない。    お茶会が終わったあとに義務的に届く手紙や花束。義務的に届くドレスやアクセサリー。    しまいには「ずっと番と一緒にいたい」なんて言葉も聞いてしまって。 よし分かった、もう無理、婚約破棄しよう! 誤解から婚約破棄を申し出て自制していた番を怒らせ、執着溺愛のブーメランを食らうユリアンナの運命は? 全十話。一日2回更新 完結済  コミカライズ化に伴いタイトルを『憂鬱なお茶会〜殿下、お茶会を止めて番探しをされては?え?義務?彼女は自分が殿下の番であることを知らない。溺愛まであと半年〜』から『番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました』に変更しています。

【完結】裏切られたあなたにもう二度と恋はしない

たろ
恋愛
優しい王子様。あなたに恋をした。 あなたに相応しくあろうと努力をした。 あなたの婚約者に選ばれてわたしは幸せでした。 なのにあなたは美しい聖女様に恋をした。 そして聖女様はわたしを嵌めた。 わたしは地下牢に入れられて殿下の命令で騎士達に犯されて死んでしまう。 大好きだったお父様にも見捨てられ、愛する殿下にも嫌われ酷い仕打ちを受けて身と心もボロボロになり死んでいった。 その時の記憶を忘れてわたしは生まれ変わった。 知らずにわたしはまた王子様に恋をする。

誰も愛してくれないと言ったのは、あなたでしょう?〜冷徹家臣と偽りの妻契約〜

山田空
恋愛
王国有数の名家に生まれたエルナは、 幼い頃から“家の役目”を果たすためだけに生きてきた。 父に褒められたことは一度もなく、 婚約者には「君に愛情などない」と言われ、 社交界では「冷たい令嬢」と噂され続けた。 ——ある夜。 唯一の味方だった侍女が「あなたのせいで」と呟いて去っていく。 心が折れかけていたその時、 父の側近であり冷徹で有名な青年・レオンが 淡々と告げた。 「エルナ様、家を出ましょう。  あなたはもう、これ以上傷つく必要がない」 突然の“駆け落ち”に見える提案。 だがその実態は—— 『他家からの縁談に対抗するための“偽装夫婦契約”。 期間は一年、互いに干渉しないこと』 はずだった。 しかし共に暮らし始めてすぐ、 レオンの態度は“契約の冷たさ”とは程遠くなる。 「……触れていいですか」 「無理をしないで。泣きたいなら泣きなさい」 「あなたを愛さないなど、できるはずがない」 彼の優しさは偽りか、それとも——。 一年後、契約の終わりが迫る頃、 エルナの前に姿を見せたのは かつて彼女を切り捨てた婚約者だった。 「戻ってきてくれ。  本当に愛していたのは……君だ」 愛を知らずに生きてきた令嬢が人生で初めて“選ぶ”物語。

離婚した彼女は死ぬことにした

はるかわ 美穂
恋愛
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。 もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。 今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、 「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」 返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。 それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。 神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。 大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。

処理中です...