34 / 43
奪われたパートナー 2
しおりを挟む
警戒を解かない私に、ルルシーラ様が何かを言いかけました。しかしそれより先に、
「トキネ!」
慌てた様子でこちらへやってくるのは――グロリア様!
「トキネ、遅くなってごめんなさいね。ルルシーラ様、ごきげんよう」
「……ごきげんようグロリア」
にっこりと微笑むグロリア様に、ルルシーラ様は舌打ちしそうな表情で応えます。
態度のよくない王女様のことを無視して、グロリア様は私だけを見ました。
「トキネ……アーレンはやっぱりヴェレッタ様のところへ?」
「………」
私はうつむきました。それだけで十分伝わったようです。
グロリア様は「元気を出して」と優しく私の背中を撫でました。
「あのね、ヴェレッタ様は癇癪持ちなのよ。思い通りに行かないと、魔力を暴発させてしまう性の方なの。だからアーレンも、あまり無下にはできなくて……」
「そうそう、無下にできなくて、愛人関係を続けているのよね」
「ルルシーラ様!」
グロリア様の悲痛な声がすべてを表していました。
ああ……そっか。
アーレン様が女性を抱く初心者でなかったのは、本当はこのせいなんだ……。
胸につきんと太い針が刺さるような痛み。ずきん、ずきん。痛みは増すばかりで消えてくれない。
でも、でも――
私は首を振り、ルルシーラ王女様に言いました。
「でも、私を愛してるとアーレン様は言ってくださいましたから。私は信じます」
なんて空虚な言葉。肝心のアーレン様は、ヴェレッタ様と行ってしまったというのに。
「トキネ……」
それでも、私は前を向きます。自分からアーレン様を疑うようなことはしたくなかった。
『信じてくれ』と言った彼を、疑いたくなんかなかった。
疑ったらその瞬間に、アーレン様を大好きと言う資格が、なくなってしまう気がして。
ルルシーラ王女は小馬鹿にしたように扇子で口元を隠し笑いました。
「健気だこと。でも無意味この上なくてよ」
「何と言われても構いません。私の心は、私が決めます」
少なくともこの王女様に言われて心が揺らされるなんて、癪じゃないですか!
アーレン様はヴェレッタ様とただおしゃべりに行っただけ。そう思うことに虚しさも感じるけれど、無理やりにでもそう信じるんです!
ヴェレッタ様がこのパーティに来ると知っていた、それでも「お前をパートナーとして連れて行く」と言ってくれたアーレン様を、私が信じなかったら誰が信じるんですか!
「トキネ、その通りよ」
グロリア様が力強く私をバックアップしてくれました。「アーレンも、今回ばかりはトキネのことを思って行動するはずよ。信じましょう」
「はい!」
「下らないこと」
王女様が呆れたようにため息をついた、そのとき――
「そこな娘! トキネと申したな!」
威勢のいい声が飛んできました。
ルルシーラ王女がまた一瞬、鬼のような形相になりました。すぐ扇子で隠してしまわれましたけど。
見ると、威風堂々としたジュレーヌ皇女殿下が足音も立てずこちらへやってきます。緑柱石色の瞳はきらきら輝いて、胸を張り颯爽と歩くその風情に、私も自然にひざまずいてしまいそうです。
「ジュ、ジュレーヌ皇女様。私に、何か」
どきどきしました。緊張で口の中が乾きます。大丈夫、グロリア様もいる! そう思っても背筋がむやみにピンと張って疲れるほどです。
ジュレーヌ皇女様はにこにことして、
「今宵はそなたと話をしにわざわざ国から来たのだ。少しは付き合え」
と言いました。「おや、アーレンはどうした?」
「ア、アーレン様は今ちょっと、所用で」
「パートナーを放り出すとはあやつもひどいことをするものだな。まあよい、いたらいたで色々うるさそうだ」
そしてジュレーヌ皇女はすぐ後ろに控えていた男性を紹介しました。
「これは私が国から連れてきた護衛だ。私から離れられんのだが、まあ人形だとでも思って気にしないでくれ」
その言葉に合わせて、男性は無言で会釈します。いつの間に太陽の間に入ってきていたのでしょうか。たしかにその背の高い人物は貴族とも違う服装をし、いかにも兵士然としています。
たった一人で他国のパーティに乗り込んでくるとなると、やはり護衛は必要なものなんですね。
というか、よくよく考えたらジュレーヌ様はたった十二歳。心細くないのでしょうか。
「トキネ! そなたの元いた世界の話をしてくれ。やはりこの世界とはまったく違うのか!?」
……この皇女様はどうやら鉄の心臓をお持ちのようです。私の感覚で心配しちゃ駄目みたい。
「え、ええと。そうですね、ちょっと違いますね」
「具体的にどのように違うのだ? そなたの国の人間も皆同じような背格好なのだろう?」
「ううーん、同じようといえば同じようなんですが」
説明しろと言われると難しい! 人間にしっぽや獣耳が生えてます、とか言えたらどんなに楽だったか。
でも実際にはこの国と私の世界の差異は微妙すぎます。
こちらの世界は漫画やアニメみたいです、とか言ったところで通じるわけもなし。
ジュレーヌ様が唇をとがらせてしまわれました。つまらん、と言いたげに。
いけない。このままじゃ皇女様の不興を買ってしまう。
「私の国は、自動で動く馬のない馬車みたいなものがありますよ!」
苦し紛れにそう言ってみました。
すると皇女様はようやく目を輝かせて、
「それは技術なのか!? それとも、魔力なのか?」
「ぎ、技術です。あの、私の世界には『魔力』はありません。私もこっちの世界に来て初めて魔力を知ったくらいですから」
「何だと……! 魔力ではなく技術で、馬のない馬車が造れたのか!?」
皇女様は目を見張って私の話に食いつきました。
隣でルルシーラ王女様まで目を白黒させています。たぶん私の話した内容が、彼女にも信じられないことだったのでしょう。
「まあ。本当なの、トキネ? それはすごいわね」
とグロリア様まで。私は少し誇らしく思って笑顔になりました。
ジュレーヌ様は腕を組みます。その真剣な顔はいっぱしの大人のようで、こちらはルルシーラ王女とは別の意味で皇女様らしくありません。
「そうか……技術でそういうものを作るのは不可能じゃないということだな。それはいいことを聞いた」
あれ、なんか十二歳らしからぬことを言っているような。
「国に帰ったら開発を考えさせよう。トキネ、その技術の細かいことを教えてくれはしまいか?」
「そ、その……ごめんなさい、私にもよく分からなくて」
車の作り方なんて知るわけありません。自転車でさえ造りはよく分かってない私です。
「うむ、そうだろうな。そなたは一介の市民然としているものな。いや、しかしそうか……技術はまだまだ進歩できるということだな」
ひょっとして私、帝国という大きな国にとんでもない火種を投じてしまったのかも……。
今さらそう思いましたが、言ってしまったことはなかったことにできません。私は「なるようになれ!」と思いつつ、心の中で悪いことにならないよう祈りました。
「それにしても今、不思議なことを言ったな? そなたは魔力があるのに、元の世界では魔力が存在しないのか」
ジュレーヌ皇女は小首をかしげます。そんなしぐさをするとかわいらしい。
「はあ。多分、魔力は本当にアルファンドジェラルド限定のものなのかと……あの、他国に出ると魔法は使えなくなるという、アレで」
今さっき得たばかりの知識で無理やりそう言ってみます。
でも、たぶん日本で魔法を使えないのは本当にそういうことなんだと思うんです。アルファンドジェラルドという土地だけが、魔力を形にすることができる。
この小さな土地の、摩訶不思議な現象なんでしょう、魔法、というものは。
アーレン様は「最初から外国で生まれた魔法士の場合、何が起こるか分からん」と言っていましたが、私はたぶんそれでも“外国”では魔法は使えないんじゃないかと思います。
「トキネ!」
慌てた様子でこちらへやってくるのは――グロリア様!
「トキネ、遅くなってごめんなさいね。ルルシーラ様、ごきげんよう」
「……ごきげんようグロリア」
にっこりと微笑むグロリア様に、ルルシーラ様は舌打ちしそうな表情で応えます。
態度のよくない王女様のことを無視して、グロリア様は私だけを見ました。
「トキネ……アーレンはやっぱりヴェレッタ様のところへ?」
「………」
私はうつむきました。それだけで十分伝わったようです。
グロリア様は「元気を出して」と優しく私の背中を撫でました。
「あのね、ヴェレッタ様は癇癪持ちなのよ。思い通りに行かないと、魔力を暴発させてしまう性の方なの。だからアーレンも、あまり無下にはできなくて……」
「そうそう、無下にできなくて、愛人関係を続けているのよね」
「ルルシーラ様!」
グロリア様の悲痛な声がすべてを表していました。
ああ……そっか。
アーレン様が女性を抱く初心者でなかったのは、本当はこのせいなんだ……。
胸につきんと太い針が刺さるような痛み。ずきん、ずきん。痛みは増すばかりで消えてくれない。
でも、でも――
私は首を振り、ルルシーラ王女様に言いました。
「でも、私を愛してるとアーレン様は言ってくださいましたから。私は信じます」
なんて空虚な言葉。肝心のアーレン様は、ヴェレッタ様と行ってしまったというのに。
「トキネ……」
それでも、私は前を向きます。自分からアーレン様を疑うようなことはしたくなかった。
『信じてくれ』と言った彼を、疑いたくなんかなかった。
疑ったらその瞬間に、アーレン様を大好きと言う資格が、なくなってしまう気がして。
ルルシーラ王女は小馬鹿にしたように扇子で口元を隠し笑いました。
「健気だこと。でも無意味この上なくてよ」
「何と言われても構いません。私の心は、私が決めます」
少なくともこの王女様に言われて心が揺らされるなんて、癪じゃないですか!
アーレン様はヴェレッタ様とただおしゃべりに行っただけ。そう思うことに虚しさも感じるけれど、無理やりにでもそう信じるんです!
ヴェレッタ様がこのパーティに来ると知っていた、それでも「お前をパートナーとして連れて行く」と言ってくれたアーレン様を、私が信じなかったら誰が信じるんですか!
「トキネ、その通りよ」
グロリア様が力強く私をバックアップしてくれました。「アーレンも、今回ばかりはトキネのことを思って行動するはずよ。信じましょう」
「はい!」
「下らないこと」
王女様が呆れたようにため息をついた、そのとき――
「そこな娘! トキネと申したな!」
威勢のいい声が飛んできました。
ルルシーラ王女がまた一瞬、鬼のような形相になりました。すぐ扇子で隠してしまわれましたけど。
見ると、威風堂々としたジュレーヌ皇女殿下が足音も立てずこちらへやってきます。緑柱石色の瞳はきらきら輝いて、胸を張り颯爽と歩くその風情に、私も自然にひざまずいてしまいそうです。
「ジュ、ジュレーヌ皇女様。私に、何か」
どきどきしました。緊張で口の中が乾きます。大丈夫、グロリア様もいる! そう思っても背筋がむやみにピンと張って疲れるほどです。
ジュレーヌ皇女様はにこにことして、
「今宵はそなたと話をしにわざわざ国から来たのだ。少しは付き合え」
と言いました。「おや、アーレンはどうした?」
「ア、アーレン様は今ちょっと、所用で」
「パートナーを放り出すとはあやつもひどいことをするものだな。まあよい、いたらいたで色々うるさそうだ」
そしてジュレーヌ皇女はすぐ後ろに控えていた男性を紹介しました。
「これは私が国から連れてきた護衛だ。私から離れられんのだが、まあ人形だとでも思って気にしないでくれ」
その言葉に合わせて、男性は無言で会釈します。いつの間に太陽の間に入ってきていたのでしょうか。たしかにその背の高い人物は貴族とも違う服装をし、いかにも兵士然としています。
たった一人で他国のパーティに乗り込んでくるとなると、やはり護衛は必要なものなんですね。
というか、よくよく考えたらジュレーヌ様はたった十二歳。心細くないのでしょうか。
「トキネ! そなたの元いた世界の話をしてくれ。やはりこの世界とはまったく違うのか!?」
……この皇女様はどうやら鉄の心臓をお持ちのようです。私の感覚で心配しちゃ駄目みたい。
「え、ええと。そうですね、ちょっと違いますね」
「具体的にどのように違うのだ? そなたの国の人間も皆同じような背格好なのだろう?」
「ううーん、同じようといえば同じようなんですが」
説明しろと言われると難しい! 人間にしっぽや獣耳が生えてます、とか言えたらどんなに楽だったか。
でも実際にはこの国と私の世界の差異は微妙すぎます。
こちらの世界は漫画やアニメみたいです、とか言ったところで通じるわけもなし。
ジュレーヌ様が唇をとがらせてしまわれました。つまらん、と言いたげに。
いけない。このままじゃ皇女様の不興を買ってしまう。
「私の国は、自動で動く馬のない馬車みたいなものがありますよ!」
苦し紛れにそう言ってみました。
すると皇女様はようやく目を輝かせて、
「それは技術なのか!? それとも、魔力なのか?」
「ぎ、技術です。あの、私の世界には『魔力』はありません。私もこっちの世界に来て初めて魔力を知ったくらいですから」
「何だと……! 魔力ではなく技術で、馬のない馬車が造れたのか!?」
皇女様は目を見張って私の話に食いつきました。
隣でルルシーラ王女様まで目を白黒させています。たぶん私の話した内容が、彼女にも信じられないことだったのでしょう。
「まあ。本当なの、トキネ? それはすごいわね」
とグロリア様まで。私は少し誇らしく思って笑顔になりました。
ジュレーヌ様は腕を組みます。その真剣な顔はいっぱしの大人のようで、こちらはルルシーラ王女とは別の意味で皇女様らしくありません。
「そうか……技術でそういうものを作るのは不可能じゃないということだな。それはいいことを聞いた」
あれ、なんか十二歳らしからぬことを言っているような。
「国に帰ったら開発を考えさせよう。トキネ、その技術の細かいことを教えてくれはしまいか?」
「そ、その……ごめんなさい、私にもよく分からなくて」
車の作り方なんて知るわけありません。自転車でさえ造りはよく分かってない私です。
「うむ、そうだろうな。そなたは一介の市民然としているものな。いや、しかしそうか……技術はまだまだ進歩できるということだな」
ひょっとして私、帝国という大きな国にとんでもない火種を投じてしまったのかも……。
今さらそう思いましたが、言ってしまったことはなかったことにできません。私は「なるようになれ!」と思いつつ、心の中で悪いことにならないよう祈りました。
「それにしても今、不思議なことを言ったな? そなたは魔力があるのに、元の世界では魔力が存在しないのか」
ジュレーヌ皇女は小首をかしげます。そんなしぐさをするとかわいらしい。
「はあ。多分、魔力は本当にアルファンドジェラルド限定のものなのかと……あの、他国に出ると魔法は使えなくなるという、アレで」
今さっき得たばかりの知識で無理やりそう言ってみます。
でも、たぶん日本で魔法を使えないのは本当にそういうことなんだと思うんです。アルファンドジェラルドという土地だけが、魔力を形にすることができる。
この小さな土地の、摩訶不思議な現象なんでしょう、魔法、というものは。
アーレン様は「最初から外国で生まれた魔法士の場合、何が起こるか分からん」と言っていましたが、私はたぶんそれでも“外国”では魔法は使えないんじゃないかと思います。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる