アーテ王女の冒険における奇跡をおこなう国 すなわち「人間」・大学・企業および社会システム 社会システムの一般放送関係批判1

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第五章其の一 北の山の洞窟について

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 北の山の洞窟について

 かくしてアーテ王女の立場は立脚した。
 王女。
 アーテ王女が王女であることが判明すると、町のあちこちから、参詣する人々が、村長の家に集まったし(このとき、アーテ王女は村長の家に厄介になることになった、村長が、はじめから、アーテ王女を引き取るつもりでいたようであるし、また、『王女』を家に迎えるには、それなりの施設が必要であると、思われたからである。村長の家は、それにもってこいだったし(部屋数が十八個あった)、また、このあたりで王女が住むにふさわしい『宮殿』は、村長の家以外には、トムキンスという人の家以外にはなかったからである)、やってくる人は、この小さなわれわれの王女に、質問したりした。
 質問は、小さな男の子(アーテ王女よりも年下)からのものものもあったし、大人からのものもあった。
たとえば小さい男の子ならば、アーテ王女が住んでいた、長橋国がどこにあったのだろうかなどということだったとか、かがみの港から本当にやってきたのか、とかであった(これにはアーテ王女は自身閉口した。幾度もの人々から、同じ質問がなされたからである。かがみの港からやってきた、王女。へえ、それじゃあすごいんだ。アーテ王女「・・・・・・・・・・・・」いったいなんのことを言っているのか、わかればそれで疑問は解けるのだが、それら、アーテ王女が鏡の港からやってきたことを信奉する人々は、それを聞いては驚くばかりで、何も、アーテ王女に情報を残さなかったからである。アーテ王女はそうした人々の態度に疑問を持ったりしたし、また、いったい鏡の港と呼ばれる場所がどんな場所か、知りたくもあった)し、また、大人からの質問は、ホッブス哲学と、ルソー思想についての相違、デカルト哲学の問題点などについてだった(大人は、アーテ王女がきっと王女だから、高い教養を持っていたのだろうと、考えたようだった)。
 アーテ王女はわかる範囲でそれらの質問にこたえたし、また、答えることができた。こうしてアーテ王女は高い教養を持っていることを証明し、それにともなって、アーテ王女の社会経済的な位置づけは、日に日に増していった。
 もちろん中には、アーテ王女の王女性を疑うものもあった。それらのものは、アーテ王女が割ったガラスの問題を、追及していたものたちで、ふんと、アーテ王女を見下すようにあざ笑い、アーテ王女の持っている教養の穴などを探したりした。そうしたものたちは、アーテ王女の存在を否定して、自身の立場の立脚をもとめたのである。すなわち、アーテ王女が王女であるのにもかかわらず、犯人扱いしたことを、ひっくり返して論ずることができず、困ってのことだった。自身、間違いを認めることができなかったのである。ラビットさんも、そうしたアーテ王女批判者の一人だった。ラビットさんは、教授であるため、豊富な教養を持っており、アーテ王女に対して、いろいろ意地悪な問題ばかりした。それらに、アーテ王女が答えられないと、アーテ王女の周りの人々に言いふらしたりして、アーテ王女の株を下げようと、必死になったりした。
 しかし、アーテ王女はというと、特に、そうした人々には、関心がなかったし、相手にしても仕方がないと、おもっていた。この、アーテ王女の対応は正しかったようである。人々に、アーテ王女の尊厳を尊重させるのにかなったからである。
 村長も、アーテ王女のそうした態度には、感銘を受けていた。すなわち、アーテ王女の王女らしいおおらかな性格に、自身の半生を重ねたのである。
 アーテ王女の日常は、そうして過ぎていった。
 アーテ王女は、何かのときにとっておいた、村長の自家製のクッキーを、すぐに食べきることができたし、村長のうちの、料理に、舌鼓を打った。
 アーテ王女が食べた料理は、ほとんどロイズおばさんの家のものしかなかったから、その料理のおいしさは、同時に始めて食べた違ううちの料理だった。
 アーテ王女は手伝いをよくした。
 すなわち村長のうちの、掃除、庭の草刈、皿洗い、洗濯、お風呂掃除だった。
 このアーテ王女の行動は、アーテ王女の周囲にいる人々、すなわち町の人々の関心を引かずにはいられなかった。
 中にはあの王女はきっと民衆に好かれようとして、そんなことをしているんだとか、いったものもいたが、ほとんどの論調は、王族なのに、自身の身の回りのことをして、えらいということだった。
 こうしてアーテ王女の、『奇跡を行う国』での日々は過ぎていった。
 何のことはない、『奇跡を行う国』といっても、普通の世界ではないか。
 それがアーテ王女のここにいたっての感想だった。
 アーテ王女がそのように、『奇跡を行う国』。その問題をあっさり考えることができたのは、アーテ王女が社会経済的な裏づけを得ることができたからだった。すなわち、村長のうちにいることによって、飢え死、浮浪からの逃避が完成したからである。
 アーテ王女は自身、普通の生活を送り、そうして自身の立場を立脚することになった。
 村長はというと、なにやらいろいろな人と、日々会っていた。
 何かの計画を練っているらしいと、アーテ王女には見て取れた。
 計画。
 すなわち、年に一度の夏祭りに関してである。
 これには、アーテ王女にも、関心があって、村長が、人と会うのをやめると、いろいろ質問したりした、それによると、話の全部分はきくことができなかったが、それによると、それは、かなり大規模な、計画を必要とする、プロジェクトであることが、アーテ王女にも見て取れた。
 何でも、近くの町々からも人を呼んで行う、バンズの町の一大企画。
 アーテ王女が聞いた話によると、町の広場(アーテ王女が野球をしたところ)に、やぐらを立てて、色とりどりのちょうちんと、笛太鼓、さまざまな夜店が所狭しと並ぶ、劇に、オーケストラの演奏、バンドの歌、とにかく何もかにもをおもちゃ箱をひっくり返したように行う、お祭りだった。
 アーテ王女はそのお祭りに関心を持ったし、はやくそれをみたいと、おもっていた。
 さまざまに展開される物語は、アーテ王女から長橋国のことを、一時忘れさせた。
 しかし、アーテ王女の胸には、そのことが、一抹の不安として残っていた。
 どうしてかえることができるのだろう。
 わからない。
 ロイズおばさん、王様、デッカー次官、チェッカー少尉、彼らに、アーテ王女は再びあうことができるのか、不安であった。
 周りの人々は、そうしたアーテ王女の不安からは、無頓着だったようだった。
 やはり他人なのだろうか。
 アーテ王女は人々が、アーテ王女に何でもない質問をするごとにおもった。
 アーテ王女の気持ちをよそに、アーテ王女を祭り上げるムードにたっしていた。
 アーテ王女の物語は、そうしたアーテ王女の不安を待ってはくれなかった。
 むしろそれは、アーテ王女を長橋国から遠ざける方向へ向かっていた感がある。
 アーテ王女は帰りたいにもかかわらず、ここに定住でもしろと、そのように言われているようにおもわれた。
 アーテ王女を、『奇跡を行う国』は返さない。
 いったいそこにはどんな力が加わっているのだろうか。
 いや、人間と、人間と、人間の、力である。
 しかし、アーテ王女には、それ以上の力が、アーテ王女を『奇跡を行う国』へ繋ぎ止めているようにおもわれた。
 アーテ王女は帰りたい。
 しかし、この気持ちも、アーテ王女は複雑な中にあった。
 帰りたいともおもうが、もっとも、この、せっかく来た不思議な世界を冒険したいとも、おもっていたのである。
 もしも、今、帰る。
 そうしたら、きっともう一度、この世界にやってきたくてしょうがなくなるのではないか。アーテ王女は不安に駆られていたのである。
 それに、不思議な世界にきたのに、まだ、ほとんどその不思議を体験してはいなかった。
 出会った人間でだって、ほとんど長橋国であっている人々と同じだし、よく、御伽噺であるような、妖精や、ゴースト、ドワーフや、オーク、コルボックに、アーテ王女はあってはいなかった。確かに話をするウサギと、小人の商人、不思議なかかしには出会った。しかし、それも、はじめのうちだけであったし、いまは普通の人間と、会話を重ねているのである。
 魔法の世界なら、どこかに魔法使いがいて、そうしてこの世界を牛耳っているものである。アーテ王女はこのとき、オズの魔法使いにある、伝説の魔法使いを想定していた。あれは、確かにただのはったり魔法使いだったけど、ここはかがみの中の世界、きっと、何かもっと、不思議なものがあるに違いない。
 村長の、夏祭り計画は続いていた。
 アーテ王女は帰れるのかどうかの不安の中にありながら、不思議な世界への冒険を望む、しかし、単調な日々を送っていた。
 掃除、洗濯、水仕事の手伝い、アーテ王女は井戸から甕に何度も水を汲んだし、また、その合間には、アーテ王女を見物にやってきた、話をしにやってきた、不思議な世界の、しかし、普通に思える人々の、接客に追われていた。
 それは、そうした中で起こった事件である。
 ある日、夏祭りがいつごろ始まるのか、アーテ王女が心配しながら、草刈の仕事を任されて、村長の庭にある草を、シャベルで根こそぎ取っていると、来客があるという。
 また、アーテ王女はどこかの子供が暇をもてあまして、別の世界のことでも聞きに来たとおもっていると、もしもそうならまたあとで来てもらおうと、来客を断ると(アーテ王女はこのとき、自分の国の話を、アーテ王女よりも、年下の子供たちに行うことに、いささか飽きていた、もちろん、来客の中にも、礼儀をわきまえたものがいて、集団で、一度にアーテ王女との謁見を済ませようとおもうものも、いたらしかったが、たいていの『奇跡を行う国』の住人は、そうした配慮のない、きわめて不鮮明な人々だった、しかし今回現れた客は、)果たしてそのようではなかった。果たしておばあさんであるという。
 おばあさん?
 しかしアーテ王女はいまは草刈に熱中している、できれば日を改めてきてもらえないかと、取次ぎに言うと、そうではだめ、いま、あって話したいという。
 何か急ぎのようなのかと、取次ぎに聞くと、それは、アーテ王女にとって、このあと重要になる、用件であるという。
「・・・・・・・・・・・・?」
 アーテ王女は仕方なく、草刈の仕事を途中で切り上げ、手と、顔を洗って応接室に行くと、確かにアーテ王女を呼んだのはおばあさんである。いたのは九十は超えようという老人であった。
 アーテ王女がなんですか、と、話を聞くと、おばあさんは答えた。
「あんた、鏡の港から来なさったそうだね」
 その話は、いままで幾度となくした。
 人がやってくるたびに、あなたは鏡の港からやってきたのですか、やってきたのですか、と、聞くので、アーテ王女はあまりに盆雑におもっていたことだった。
 いつも、その話をすると、人々は、どういうわけか、へえ、という表情をして、アーテ王女に何ものをも残さず、ただ光のかなたに去っていくのである。
 そのためアーテ王女が、はい、そうです、と、気もなく答えると、
「それが、どれだけ大変なことか、あんたさんは、理解しているのかね」
「?」
「いいかい? 鏡の港とは、この世と、あの世をつなげるといわれる、不思議な鏡のある港。それは果たして別世界の入り口とも言われる、港なのだよ」
 アーテ王女は話に関心を引かれた。
『奇跡を行う国』に来て、初めてまともな話ができる人間に出会った思いがあったからである。
『奇跡を行う国』について、あなたは何か知っているの? 
 おばあさん。
 すると、おばあさんはゆっくりと、しかしはっきりとした口調で、それに答えた。
「あんたがきた、不思議な鏡の港からは、千年に一度、神童がやってくるといういわれがあってな、この国を変えに来る、魔法の子供がやってくるという伝説があるのだよ」
「・・・・・・・・・・・・」
 それが、いまがちょうど千年だと、おばあさんは言うのである。
 それから?
 アーテ王女が身を乗り出すと、
「前にも一人、鏡の港から、一人の少年がやってきて、そのときは・・・・・・」
 と、おばあさんは声を潜めた。
 まるで、それを、誰かに聞かせたら、命がないとでもいいたげな様子であった。
「・・・・・・に、簡単につぶされてしまったが、今度のあんたはどうかのう?」
「なんていったの? ・・・・・・のところ」
 アーテ王女が聞き返すと、しかしおばあさんはそれには答えず、自身の理論を追求した。
「いいかい? あんたは神童。あんたはこの世界を変えるためにやってきた、運命の子供なんだよ。いいかい? いいかい?」
 おばあさんは、アーテ王女に自分の言いたいことだけいって、かえるつもりらしかった。みると、もう、席を立ちかけている。
 おばあさんは立ち上がると、もはや何も言うことはないというように、そそくさと、玄関に向かった。アーテ王女はその後を追った。
 すると、玄関のホールで、おばあさんは、アーテ王女の方向を向き直り、
「北の山の洞窟に行きなされ、そこにおまえさんが持っているものを、表にだす、大事な大事な道具がおいてある。いいね、北の山の洞窟だよ。そこに、おまえさんが必要としているものが待っている。前に来た子供は、その存在を知らずにいて、そうしてやつらに、・・・・・・してしまったのさ。あんたは今度は、その存在を知っている、わかっているね、あんた、賢く立ち回るんだよ、賢く立ち回るんだよ。いいね。それを持って入れば、あんたの『力』ならきっと・・・・・・に、かなうだけのものをそなうだろう」
 それだけ言うと、おばあさんは、わたしにできるのはここまでといわんばかりに、応接室をでて、玄関を出て行った。アーテ王女はおばあさんの後を追った。
 待って、わたしを待っている、北の山の洞窟にあるものとはなんなの?
『力』って?
「帰りたいんだろう?」
 最後におばあさんはいった。
「ならば行きなさい、そうしてあんたにとってもっともかしこいものを手にしておいで」
 帰りたい?
 たしかにそうだった。
 しかし。
 まだ聞きたいことは山ほどあった。
 しかし、まるでそれは、雲でもきったかのようだった。
 おばあさんが、外にでると、そこにはもう人影はなくなっていた。
 夏の太陽が、さんさんと照りつける中、何ものも、そこにはいなかった。
 右を見ても、左を見ても、そこには人らしいものはひとつない。
 ただ、さんさんと照りつける太陽が、街路樹に真黒い影を作っていた。
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