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第五章 観季
第五十五話:hesitation2
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しばらくずっと、赤部を見ていた。茶髪のウェイビーボブが風に揺れていた。声を賭けようと思ったが、声が出なかった。とっさの事だったこともあり、また、赤部がすごく綺麗だったから、つい見惚れてしまっていたのだ。こういうのをクールビューティーというのだろうか。つり目のキリッとした顔立ちが冷たさと凛々しさを持ち、犯し難い美しさを醸し出していた。
赤部は、徐ろに回転すると、こちらに向かって座り始めた。赤部の背中が迫って来る。
「ちょっと、おいおい。」
「え?」
赤部は、声に驚いてこちらを振り向いた。その拍子にバランスを崩して倒れ込む。
抱き留めようとしたとき、また噂されるかも知れないという考えが瞬間浮かんだ。その一瞬の躊躇のせいか、抱き留め損ねて、赤部は、尻餅をついて後頭部を花壇のブロックに思いっきり打ち付けた。
「あ、すまん。大丈夫か?」
赤部は後頭部を押さえて呻いていたが、直ぐに治まったようで、大丈夫だからと、こちらを手で制した。
「結構強く打ってたぞ。本当に大丈夫か?」
ゴンっという音がするぐらい、思いっきり打っていたはずだ。こいつは、痛みに鈍感なのかも知れない。
「念のために、病院行っといた方がいいぞ。」
「いい。本当に私は大丈夫だから。」
そう云うと赤部は立ち上がって、立ち去ろうとする。どこ行くんだよこいつは。あ、保健室かな。それなら。
「保健室行くなら付いてくぞ。途中で倒れるかもだし。」
お節介だとは思ったが、ほんとにちょっと心配だった。それに、さっき一瞬躊躇した事に少なからず罪悪感があった。
赤部は、振り返りもせず、どんどん歩いて行った。
あーもうなんか、すっきりしねえなぁ。
食べかけの弁当を片付け、赤部の後を追う。
結局、保健室まで付いてきてしまった。途中、何を話し掛けても完全に無視を通された。別に嫌われる様な事はしてないと思うんだが。赤部は、真っ直ぐ前を睨みながら、小走りに保健室まで突き進んで行ったのだ。
保健室のドアを開けると、ベッドに誰か寝ており、保健の先生が、なにやら世話をしていた。
保健の先生に声を掛けようとする前に、赤部がベッドへ駆け寄って、寝ている生徒に声を掛けていた。
「観季。大丈夫?」
知り合いか? どんな奴だろうと二人の肩越しに覗いてみたら、あの娘だった。黒髪ショートの娘。女たらしの称号のきっかけにになったあの娘だった。保健の先生は、彼女の後頭部を保冷剤で冷やしていた。
「急に倒れたって。倒れた時に頭を打ったみたい。大事は無いと思うけど、一応検査受けた方がいいよ。家の人には連絡入れてあるから。」
保健の先生は、観季と呼ばれたあの娘と赤部、そして自分に同時に語り掛けた。
「お前は、診て貰わなくていいのか?」
元々は、赤部の打撲を診て貰いに来たはずだが、成り行きから、赤部は、ずっと観季の側でなにやら話し掛けていた。
「ん? あなたも何処か悪いの?」
「いえ、私は大丈夫です。」
おいおい。結構強く打ってただろうに。なに強がってんだこいつ。赤部は、振り向きもせず観季だけをじっと見つめていた。その表情は、苦々しいものに思えた。
「こいつもさっきこけて、後頭部を結構強く打ったんですよ。ちょっと診てやってください。」
「余計な事を云わないで!」
赤部は、こっちを振り向きも、大声で抗議した。怖え。赤部さん怖えよ。なんだよ、こっちは親切にだなぁ。
「見るからに元気そうだけど、もしもといったことがあるから、後でちゃんと病院行っときなさいよ。」
赤部の大声に気圧されたのか、保健の先生はお茶を濁して、誤魔化しやがった。まあ、確かに元気そうだし、大丈夫だとは思うんだけどな。
昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。まだ付いていたそうな赤部を、先生は授業へ行くように説得した。二人で保健室を後にして、教室へ向かった。
「あれ、この間喧嘩してた相手だろ? 仲直りしたのか?」
教室への道すがら、なんとなく尋ねた。赤部は、ずっと前を見つめながら口元が微かに震えた。何かを応えようとして、言葉を選んでいるようだった。
赤部が立ち止まったので、彼女の応えを待つ為、自分も立ち止まった。おずおずとこちらを見上げる彼女の眼は震えている。それはまるで、今から愛の告白をされるのではないかと思わせた。ただ、その身に纏っているものは、愛の告白とは程遠い、悲壮感だった。
彼女は、散々逡巡した挙句、「ちょうどいいわ、付き合って」と云った。
赤部は、徐ろに回転すると、こちらに向かって座り始めた。赤部の背中が迫って来る。
「ちょっと、おいおい。」
「え?」
赤部は、声に驚いてこちらを振り向いた。その拍子にバランスを崩して倒れ込む。
抱き留めようとしたとき、また噂されるかも知れないという考えが瞬間浮かんだ。その一瞬の躊躇のせいか、抱き留め損ねて、赤部は、尻餅をついて後頭部を花壇のブロックに思いっきり打ち付けた。
「あ、すまん。大丈夫か?」
赤部は後頭部を押さえて呻いていたが、直ぐに治まったようで、大丈夫だからと、こちらを手で制した。
「結構強く打ってたぞ。本当に大丈夫か?」
ゴンっという音がするぐらい、思いっきり打っていたはずだ。こいつは、痛みに鈍感なのかも知れない。
「念のために、病院行っといた方がいいぞ。」
「いい。本当に私は大丈夫だから。」
そう云うと赤部は立ち上がって、立ち去ろうとする。どこ行くんだよこいつは。あ、保健室かな。それなら。
「保健室行くなら付いてくぞ。途中で倒れるかもだし。」
お節介だとは思ったが、ほんとにちょっと心配だった。それに、さっき一瞬躊躇した事に少なからず罪悪感があった。
赤部は、振り返りもせず、どんどん歩いて行った。
あーもうなんか、すっきりしねえなぁ。
食べかけの弁当を片付け、赤部の後を追う。
結局、保健室まで付いてきてしまった。途中、何を話し掛けても完全に無視を通された。別に嫌われる様な事はしてないと思うんだが。赤部は、真っ直ぐ前を睨みながら、小走りに保健室まで突き進んで行ったのだ。
保健室のドアを開けると、ベッドに誰か寝ており、保健の先生が、なにやら世話をしていた。
保健の先生に声を掛けようとする前に、赤部がベッドへ駆け寄って、寝ている生徒に声を掛けていた。
「観季。大丈夫?」
知り合いか? どんな奴だろうと二人の肩越しに覗いてみたら、あの娘だった。黒髪ショートの娘。女たらしの称号のきっかけにになったあの娘だった。保健の先生は、彼女の後頭部を保冷剤で冷やしていた。
「急に倒れたって。倒れた時に頭を打ったみたい。大事は無いと思うけど、一応検査受けた方がいいよ。家の人には連絡入れてあるから。」
保健の先生は、観季と呼ばれたあの娘と赤部、そして自分に同時に語り掛けた。
「お前は、診て貰わなくていいのか?」
元々は、赤部の打撲を診て貰いに来たはずだが、成り行きから、赤部は、ずっと観季の側でなにやら話し掛けていた。
「ん? あなたも何処か悪いの?」
「いえ、私は大丈夫です。」
おいおい。結構強く打ってただろうに。なに強がってんだこいつ。赤部は、振り向きもせず観季だけをじっと見つめていた。その表情は、苦々しいものに思えた。
「こいつもさっきこけて、後頭部を結構強く打ったんですよ。ちょっと診てやってください。」
「余計な事を云わないで!」
赤部は、こっちを振り向きも、大声で抗議した。怖え。赤部さん怖えよ。なんだよ、こっちは親切にだなぁ。
「見るからに元気そうだけど、もしもといったことがあるから、後でちゃんと病院行っときなさいよ。」
赤部の大声に気圧されたのか、保健の先生はお茶を濁して、誤魔化しやがった。まあ、確かに元気そうだし、大丈夫だとは思うんだけどな。
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彼女は、散々逡巡した挙句、「ちょうどいいわ、付き合って」と云った。
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