王様のナミダ

白雨あめ

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犬猿の仲の2人

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一瞬で重苦しい空気になった室内。あやうくため息が漏れそうになり、すんでのところで押し殺す。
早く退散したくてやばい。これなら、さっきまでの気まずい沈黙の方がよっぽどよかった。
すでに戦闘体勢に入っているふたりにそんなこと言っても、無駄だろうけど。
眼前で睨みあう2人にまたもやため息が出そうになる。

「おい、なぜ貴様がこんなところにいる。ここは、貴様のいるべきところではないぞ。さっさと生徒会室へ帰れ、バ会長が。」

「あ? うっせぇな。どこでなにしようと俺の勝手だろうが。俺は今ここでコーヒー飲んでんだ。見てわかんねぇのかよ、クソ風紀。」

「貴様っ! さっさとそのコーヒーを飲み干して元来た家へ帰れ。貴様がいると余計なホコリがたつ!」

「はっ。誰がいてもホコリぐらいたつだろうが。ちぃせぇんだよ、男が。だいたい、今日俺が来たのは昨日生徒会室に届くはずだった書類がまだ来てねぇからだ。」

そう、机の下で組まれた長い足を組み替え言った会長に思わず目線が動く。

「書類? 書類とはなんのことだ。」

本当に分からないような表情をつくり、眉を寄せる幼馴染みに、さっきとは違う冷や汗が伝う。
まずいぞ。

書類、しょるい。
そう聞かれて思い付くものは山程あるが、昨日までに生徒会室へ届ける書類と聞かれて、思い付くのはアレしかない。
あの、来週転校予定の転校生名簿。
名簿と言っても一人しか載っていなかったが、そう言えば昨日期限だったような気がするようなしないような。
風紀委員長である冬至がその存在をしらないとあらば、その管理をしているのは、俺しかいないわけで。

「おい、桜庭。貴様。」

「あー。ほんとごめん! 三日くらい前に先生が渡しにきたあれだよね。転校生の書類。すっかり忘れてて。」

きっと、鬼のような表情を浮かべているだろう冬至をあえて見ずに、副委員長のデスクを探る。
たしか、ここらへんに。

指先に金属の感覚。

「あっ、あった。」

それを引き抜き、なかを確認する。よし。
紙の束はきちんとクリップで留めてあるし、抜け落ちているものもなさそうだ。

「会長。ほんとにごめんなさい!言い訳できません。」

書類を手渡しながら、ひとつ、怒声をもらうの覚悟で頭を下げる。
この忙しい時期、会長直々に風紀室へ足を運ばせてしまったのだから、これくらいの謝罪はしなければならない。
いくら、風紀副委員長になったのが不本意だからと言って、彼の仕事を邪魔する権利など俺にはないのだから。


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