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ふたりと幸せな話を
しおりを挟む「会長っ!!」
声の限り叫びながら、その背中へと手を伸ばした。
桜の木のあるその場所。届かない、触れられないとは思わなかった。
この手は、届く。彼に触れられる。
5年間も。5年もの間ずっと何にも気づかなかった俺を、ずっと好きでいてくれた。
どうしてかわからない。だけど、愛先輩が教えてくれた、どうしようもなく愛しい事実。
「......っ。」
後ろから見える赤い耳。危うく手を伸ばしそうになって慌てて空気を掴む。
その耳が赤い理由。自惚れてもいいだろうか。
彼はたぶん、恥ずかしがりやだから。
「会長、......みみ赤いですよ。」
「っ、うるせぇ!」
耳を隠しながら、こちらへ振り返る会長の目にはいつもの力がない。
ぼんやりと俺を映して、その瞳は時々下を向き。
そんな姿に、不謹慎にも可愛いと思っている自分に戸惑って。
「桜庭?」
少し下の角度から、掬うような視線を向けられれば、もう俺の身体は理性を飛び越えてしまう訳で。
「かいちょうっ!」
「は? ちょっ、おいっ!」
「ーー好きです。」
「ぇ............?」
「会長が好きです。」
腕のなかに会長を抱きしめて、好きだ。好きだ、と心が叫ぶ。
耳だけじゃなく、顔ぜんぶを赤くした会長に、可愛いなぁと頬がだらける。
「ぁ、え......さくらば。」
そう小さく呟き拳を握る会長に、つい先ほど。言うときにはなかった緊張が俺を占めていく。
「ーー......好きだ。桜庭。」
「ぁ、............うん。俺も、すきだよ。」
あーもう。顔があつい。
「あぁ、桜庭のことがすきだ。」
「え、あ、うん。俺も、......すき。」
気持ちを伝える瞬間、身体の奥から顔を出す暖かさ。言い様のない、優しさ。これがきっと。
「ていうか、会長。さっき走っていったのって、会長が俺のこと5年間」
「はっ!? ちげぇよ! 断じてそんなことはねぇからな!」
彼がもたらしてくれた、どうしようもない幸せ。
これは、たぶん。
いいや、絶対。
俺にとって、人生で一つの宝物になる。
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