57 / 57
エピローグ
しおりを挟む
この箱庭には、王様がいる。
美しく、強く、それでいて俺様な、孤高の存在。
誰にも媚びることをせず、屈することもない選ばれし者。
常に前だけを見据え、冷静沈着に物事を進めていくみなの頂点。
ーー王様。
そう、みなが口を揃えて呼ぶ彼が、涙を流すことはあるのだろうか。
もしあるのならば、それはきっと。
酷く綺麗で儚いのだろう、と。
あの時の俺はそう思っていたけれど。
ーー桜が咲いている。
「うー。こんなところ冬至に見つかったら怒られそう。」
携帯に残る大量の着信履歴を眺めつつ、憂鬱な気持ちを吐き出す。
書類片付けのなか、急にきたメールに風紀室を飛び出したのはいいものの、後のことを全く考えていなかった。
つい昨日会ったばかりなのに、彼に会えると。
そう思ったら止められなくて。
「普通に帰っても怒られそうだけどな。その着信量。」
「おわっ!?」
突如、首筋を撫でたするりとした感触に、その場で飛びはねる。
熱を持った首筋を手でおさえ、犯人を振り返る。
「ちょっ。かい......、理巧。なにするの。」
「てめぇが、ぼーっとしてるのが悪い。」
「別にぼーっとなんてしてません。」
相変わらず、俺より少しだけ高い場所にある顔を睨みつける。
と、理巧はふーん。と一言。
そして、
「......もう。」
酷く楽しげに笑うのだ。
これでは怒るものも怒れない。
これですべてを許してしまう俺は、甘いのかもしれないけど。
「ちょっと寒いな。これ羽織れ。」
たいがい彼も、俺に甘い。
「かい、......理巧。」
強制された名前呼びも、まだ馴れない。
ずっと会長と呼んでいたから、自然に名前が出てくるのはまだ難しくて。
だけど、
「錦すごい怒ってたよ。副会長なんて。」
変わらないことよりも、変わっていくことの方が断然多いから。
「あぁ、仕方ねぇだろ。愛が卒業してあいつも暇だろうし。菊地も、」
「うん。......副会長も変わったよね。」
変わる未来に、光を添えて。
「......そろそろ帰るか。」
「うん。」
小さく頷いて、黒い髪から覗く赤い耳に、思わず漏れるのは笑み。
こちらへゆっくりと差し出された手を、ぎゅっと握る。
あたたかい。
酷く綺麗で、儚く強い未来はすぐそこにーーーー、
「ねぇ、理巧。」
「あ?」
「............一緒に謝ってくれない?」
「............あぁ。」
その前に、越えなければいけない壁があるのを忘れていた。
我らが大魔王は、どんな顔をして俺たちを迎え入れてくれるだろうか。
美しく、強く、それでいて俺様な、孤高の存在。
誰にも媚びることをせず、屈することもない選ばれし者。
常に前だけを見据え、冷静沈着に物事を進めていくみなの頂点。
ーー王様。
そう、みなが口を揃えて呼ぶ彼が、涙を流すことはあるのだろうか。
もしあるのならば、それはきっと。
酷く綺麗で儚いのだろう、と。
あの時の俺はそう思っていたけれど。
ーー桜が咲いている。
「うー。こんなところ冬至に見つかったら怒られそう。」
携帯に残る大量の着信履歴を眺めつつ、憂鬱な気持ちを吐き出す。
書類片付けのなか、急にきたメールに風紀室を飛び出したのはいいものの、後のことを全く考えていなかった。
つい昨日会ったばかりなのに、彼に会えると。
そう思ったら止められなくて。
「普通に帰っても怒られそうだけどな。その着信量。」
「おわっ!?」
突如、首筋を撫でたするりとした感触に、その場で飛びはねる。
熱を持った首筋を手でおさえ、犯人を振り返る。
「ちょっ。かい......、理巧。なにするの。」
「てめぇが、ぼーっとしてるのが悪い。」
「別にぼーっとなんてしてません。」
相変わらず、俺より少しだけ高い場所にある顔を睨みつける。
と、理巧はふーん。と一言。
そして、
「......もう。」
酷く楽しげに笑うのだ。
これでは怒るものも怒れない。
これですべてを許してしまう俺は、甘いのかもしれないけど。
「ちょっと寒いな。これ羽織れ。」
たいがい彼も、俺に甘い。
「かい、......理巧。」
強制された名前呼びも、まだ馴れない。
ずっと会長と呼んでいたから、自然に名前が出てくるのはまだ難しくて。
だけど、
「錦すごい怒ってたよ。副会長なんて。」
変わらないことよりも、変わっていくことの方が断然多いから。
「あぁ、仕方ねぇだろ。愛が卒業してあいつも暇だろうし。菊地も、」
「うん。......副会長も変わったよね。」
変わる未来に、光を添えて。
「......そろそろ帰るか。」
「うん。」
小さく頷いて、黒い髪から覗く赤い耳に、思わず漏れるのは笑み。
こちらへゆっくりと差し出された手を、ぎゅっと握る。
あたたかい。
酷く綺麗で、儚く強い未来はすぐそこにーーーー、
「ねぇ、理巧。」
「あ?」
「............一緒に謝ってくれない?」
「............あぁ。」
その前に、越えなければいけない壁があるのを忘れていた。
我らが大魔王は、どんな顔をして俺たちを迎え入れてくれるだろうか。
58
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
【完結】君を上手に振る方法
社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」
「………はいっ?」
ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。
スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。
お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが――
「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」
偽物の恋人から始まった不思議な関係。
デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。
この関係って、一体なに?
「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」
年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。
✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧
✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
好きな人がカッコ良すぎて俺はそろそろ天に召されるかもしれない
豆ちよこ
BL
男子校に通う棚橋学斗にはとってもとっても気になる人がいた。同じクラスの葛西宏樹。
とにかく目を惹く葛西は超絶カッコいいんだ!
神様のご褒美か、はたまた気紛れかは知らないけど、隣同士の席になっちゃったからもう大変。ついつい気になってチラチラと見てしまう。
そんな学斗に、葛西もどうやら気付いているようで……。
□チャラ王子攻め
□天然おとぼけ受け
□ほのぼのスクールBL
タイトル前に◆◇のマークが付いてるものは、飛ばし読みしても問題ありません。
◆…葛西視点
◇…てっちゃん視点
pixivで連載中の私のお気に入りCPを、アルファさんのフォントで読みたくてお引越しさせました。
所々修正と大幅な加筆を加えながら、少しづつ公開していこうと思います。転載…、というより筋書きが同じの、新しいお話になってしまったかも。支部はプロット、こちらが本編と捉えて頂けたら良いかと思います。
僕の王子様
くるむ
BL
鹿倉歩(かぐらあゆむ)は、クリスマスイブに出合った礼人のことが忘れられずに彼と同じ高校を受けることを決意。
無事に受かり礼人と同じ高校に通うことが出来たのだが、校内での礼人の人気があまりにもすさまじいことを知り、自分から近づけずにいた。
そんな中、やたらイケメンばかりがそろっている『読書同好会』の存在を知り、そこに礼人が在籍していることを聞きつけて……。
見た目が派手で性格も明るく、反面人の心の機微にも敏感で一目置かれる存在でもあるくせに、実は騒がれることが嫌いで他人が傍にいるだけで眠ることも出来ない神経質な礼人と、大人しくて素直なワンコのお話。
元々は、神経質なイケメンがただ一人のワンコに甘える話が書きたくて考えたお話です。
※『近くにいるのに君が遠い』のスピンオフになっています。未読の方は読んでいただけたらより礼人のことが分かるかと思います。
血のつながらない弟に誘惑されてしまいました。【完結】
まつも☆きらら
BL
突然できたかわいい弟。素直でおとなしくてすぐに仲良くなったけれど、むじゃきなその弟には実は人には言えない秘密があった。ある夜、俺のベッドに潜り込んできた弟は信じられない告白をする。
【完結】口遊むのはいつもブルージー 〜双子の兄に惚れている後輩から、弟の俺が迫られています〜
星寝むぎ
BL
お気に入りやハートを押してくださって本当にありがとうございます! 心から嬉しいです( ; ; )
――ただ幸せを願うことが美しい愛なら、これはみっともない恋だ――
“隠しごとありの年下イケメン攻め×双子の兄に劣等感を持つ年上受け”
音楽が好きで、SNSにひっそりと歌ってみた動画を投稿している桃輔。ある日、新入生から唐突な告白を受ける。学校説明会の時に一目惚れされたらしいが、出席した覚えはない。なるほど双子の兄のことか。人違いだと一蹴したが、その新入生・瀬名はめげずに毎日桃輔の元へやってくる。
イタズラ心で兄のことを隠した桃輔は、次第に瀬名と過ごす時間が楽しくなっていく――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる