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1巻
1-3
取引先の相手だからか『俺』を『私』に言い換えて、昂史は笑う。
麻衣子にしてみれば、もっと気を遣うところが別にあるだろう! と思うのだが、デリカシーのなさはいまだ健在のようで、彼は悪びれもしない顔で続けて爆弾を落とした。
「でも、夫婦なのにまだあの秘密を知らないのかー。……つまり、私のほうが麻衣子のことを知ってるってことですね!」
「は?」
「昂史さん!」
麻衣子が叫び、直樹の顔が険悪どころか邪悪になったところで、昼休憩終了を知らせるチャイムがロビーに鳴り響いた。
その夜、麻衣子は夫婦になって初めてのピンチを迎えていた。
「麻衣子さん、『秘密』ってなんですか?」
背中には壁、正面には直樹という位置に正座し、麻衣子は頬に冷や汗を流していた。
両サイドには麻衣子が逃れられないように直樹の手が置かれており、少女漫画に出てくる壁ドンのような格好になっている。
不機嫌さを露わにしている直樹の顔に、麻衣子はいつもとは違う意味でドキドキした。なんだかもうドキドキというよりはドギドギといった感じである。
「い、言えません!」
「……なぜですか?」
「言えないからです!」
バレるならともかく、自分で言うのは気が引ける。
それに、昂史は『秘密』という言葉を使ったが、そんな大げさなものではないのだ。
隠していて日常生活に支障をきたすようなことではないし、人によっては気にしないことかもしれない。現に麻衣子だって昂史に指摘されるまで、そのことに思い至らなかったぐらいだ。
直樹は麻衣子に、ぐっと身体を近づける。
彼のうしろでは、でき上がったばかりの夕食がホカホカと湯気を上げていた。
食事よりも麻衣子の秘密が気になる様子の直樹である。
「俺と君は夫婦でしょう? なのに、なんで俺が知らないことを彼が知ってるんですか? 納得いきません」
「そう言われましても……」
「もしかして、その秘密をネタに脅されてるわけじゃないですよね」
「脅されてはないです。そもそも、今日会ったのだって十数年ぶりなんですよ」
「それなら、これから脅されるかも……」
「さすがにそれはないですよ」
話の方向性が徐々にずれてきているのを感じつつも、麻衣子はそう返す。
昂史はデリカシーのない男だが、そんな陰険なことをする人ではない。
彼は、無邪気に人を傷つける天才なだけだ。
「わかりませんよ。時間は人を変えますからね」
「見た感じ変わってなかったですけどね」
「いつそういうことになってもいいように、ICレコーダーを今度から複数台持っておきましょう。スタンガンと防犯ブザー、警棒も必須ですね」
「必須? それはもしかしなくとも、私が持つってことですか?」
「あたりまえでしょう。俺が持っていても仕方がありませんからね。今日中に注文して、明日には届くようにしておきますね」
何事も慎重なのは結構なことだが、無駄な行動力はいらないなぁと実感する麻衣子である。
だからといって嫌いになるわけではないのだが、もう少し手加減してもらえるとありがたい。
その状態で職務質問にかけられた日には、捕まるのは麻衣子のほうである。
直樹は心配症のギアを上げたまま、さらに続ける。
「麻衣子さん、今度から帽子とマスクとサングラスをして外に出るように! 家の鍵も増やしておきましょうか。あと一つ……二つは欲しいですね。防犯カメラも付けたほうがいいでしょうか?」
いったい彼は、どんな厳重装備を付けるつもりなのだろうか。
そもそも、鍵を増やしたり防犯カメラをつけたりだなんて過剰な防犯を、このマンションの管理会社が許してくれるかどうかもわからない。
「というか、念のため半年は外出を控えてくれませんか? もしなにかあった場合のことを考えたら……」
「なにもないですから、とりあえず落ち着いてください‼」
◆ ◇ ◆
鍵を増やすのではなく、防犯性の高いものに付け替えるという折衷案で、直樹を納得させたその数日後。
麻衣子は雑貨屋に卸す作品のデザインを確認するために会うことにした結花と、一緒に昼食を取っていた。場所はいつものカフェである。
今日はこのまま結花と夕食も食べる予定になっていた。
夕食はいつも家で直樹と取るのだが、今日は珍しく会社の送別会に参加する予定になっている。だから、ちょうど会う予定になっていた結花を、先ほど夕食に誘ったのである。
麻衣子は結花に昂史と再会したことと、数日前のことを話していた。
「あははは! 最高‼ 直樹さん、ホント最高‼」
「もー、笑い事じゃないんだから!」
目尻に涙を溜めながら大笑いする友人に、麻衣子は頬を膨らませる。
「いやー、ホントどうしてそういう思考回路になるのかわからないわぁ。心配症も極まると大変ねー」
「だから、笑い事じゃないんだって! 危うく家の鍵を五個にされるところだったんだよ? しかも、監視カメラ三台付き!」
いかに麻衣子が直樹のことが好きで、彼に甘いと言っても、譲れるところには限界というものがある。
もし、麻衣子が一人でこのマンションに住むのなら、まず鍵の付け替えなんて考えない。オートロックがある上に、マンションの管理会社が住居人が変わるたびに鍵を付け替えてくれているのを知っているからだ。監視カメラなんて、もってのほかである。
しかし、防犯を強化したいと言う直樹の主張を全部押しのけるわけにもいかないので、鍵の付け替えだけは了承した。
つまり、これでも結構譲歩しているほうなのである。
「まぁ、確かにそれは笑い事じゃないけど。でも、愛されてるって感じしない? 結局、それって全部麻衣子のためでしょう?」
「それは、そうなんだけどね……」
「なによ、煮え切らない返事ね」
目を瞬かせる結花に、麻衣子は苦笑いを零した。
思い出したのは、数日前の夕食時の直樹とのやり取りだ。
その日にした結花との会話が原因で食事中に呆けていた麻衣子は、直樹に体調が悪いのではないかと疑われ、寝室に運ばれた。
もちろん体調は悪くなかったのだが、直樹の強引さに、抵抗むなしくベッドに寝かされる羽目になった。
そこで『なにか欲しいものはありますか?』と聞いてきた直樹に、麻衣子は思い切ってキスをねだったのだが……
「結局、額にキスされただけで終わったと」
「うん」
麻衣子は納得がいかないという顔で頷いた。
「まぁ。その場合、普通唇にするわよね。麻衣子が勇気ふり絞ってるわけだし」
「そう、よね」
他から考えてもそうなのかと、麻衣子は落ち込んで頭を下げた。
「もしかして直樹さん、私とそういうことしたくないのかな……」
それならば、寝室が一緒ながらまったく手を出してこないことにも頷ける。
結婚してみたはいいが、麻衣子に対してまったく食指が動かないとか、そういうことなのかもしれない。
二人の出会いは雑貨屋だが、結婚するきっかけはお見合いだ。
きっかけがどうあれ、互いに想いあって結婚したという事実は変わらないが、二人とも両親に急かされて結婚を決めたという面もある。
もしかしたら、表情には出さないものの、直樹は結婚を急ぎすぎたと後悔しているのかもしれない。
そこまで考えて、ずーんと気が沈んだ。
「ま、ただ単に気分じゃなかったからって可能性もあるわよ。気にしなくてもいいんじゃない? それに、風邪をうつされたくないって思ったのかもしれないし」
「そう、なのかな」
「そうそう! こういうのは気にするだけ無駄よ! もしかしたら、こう、がーっと急に襲ってくるのかもしれないし!」
「それはそれで……」
麻衣子は困りながら笑う。けれど、からりと笑う結花を見ていると元気が出てきた。こういう時の彼女は本当に助けになる。
「あ、そうだ。湯川って名前で思い出したんだけど、麻衣子って同窓会いくの?」
「うーん。ちょっと悩み中」
ちょうど昨日、昂史の妹で友人の沙百合からメッセージアプリを経由して、二人を含む同窓会のグループの元に同窓会の案内が届いていた。開催は一か月後。場所は地元の大きなホテルの宴会場になっていた。
麻衣子の実家の近くなので、今住んでいるところから電車で四十分ほどはかかる。
もしも行くのならば、その日は実家に泊まったほうが良いだろう。
メッセージアプリの返信を見る限り、結構な人数が参加予定のようだった。
「沙百合には会いたいんだけど、昂史さんには会いたくないんだよねー……」
イベントが大好きな昂史のことだ。妹の送迎にかこつけて、同窓会に参加してくる可能性は十分ある。そうなれば、あのノンデリカシー大王の口からなにが飛び出すかわかったものじゃない。
それに、昂史と再会した時、直樹は嫌そうな顔をしていた。
彼を心配させてまで行くメリットが同窓会にあるのかと聞かれたら、首を捻るほかない。
「やっぱり、やめとこうかな。別に同窓会に参加しなくても、会いたい人には会えるしね」
「そっかー。麻衣子が行かないんなら私も行くのやめようかなー」
背中を伸ばしながら、結花は首を捻る。
彼女は同窓会を楽しみにしていたはずだ。
メッセージアプリの返信にも、いの一番に答えていた。
「えぇ。結花ちゃん楽しみにしてたじゃん」
「そうなんだけどねー」
「なら、行っておいでよ! 私のことは気にしないで良いからさ! 帰ってきたら、いろいろと話聞かせてくれたら嬉しいな!」
屈託のない麻衣子の笑顔に、結花は「じゃぁ、そうしようかしら」と笑みを浮かべた。
◆ ◇ ◆
隣の人間の声も聞こえないほどの喧噪の中、直樹は一人ビールのグラスを傾けていた。
目の前には、赤ら顔で芸人のものまねをする同僚と、それを見て笑う上司。周りの人間たちは、はやし立てるように手拍子を打っていた。
両隣には、妙に身体をくっつけてくる女性たち。
さっきまでは確か両隣は男性だったはずなのだが、いつの間に入れ替わったのだろうか。
「こうさかさぁん。まだビールですかぁ?」
「こっちの、赤ワインも美味しいですよぉ」
甘えた声で身体を押しつけられる。
腕に胸が当たるが、なんとも思わなかった。
彼にとって、麻衣子のものでなければ、胸などただの贅肉だ。
直樹は鬱陶しく思いながら、短く息を吐き出す。
「遠慮しときます」
「こうさかさん、つめたいー!」
「こういう場なんですから、交流しましょうよ! 交流!」
直樹は営業部で『鬼の高坂』として恐れられている人間だ。しかし、それも営業部に限っての話。他部署の女性たちから見れば、彼は顔もルックスも良くて仕事ができる、ただの優良物件なのである。
ついでに言うなら、彼女たちは直樹の面倒な性格も知らないのだ。
麻衣子と結婚してから、こういうあからさまなアプローチは減ってきたのだが、やはり酒が入ると多少緩んでしまうらしい。
それともお酒が入っているからこそ、ワンナイトラブぐらいならばあり得ると思っているのだろうか。
「こうさかさんー。そーいえば、ご結婚されたんですよね。おめでとうございますぅ」
「結婚式って営業部の方しか呼ばれないんですよね? 私も行きたかったぁ! 写真、楽しみにしてますねー」
このままでは直樹の興味が引けないと思ったのか、女性たちは話題を変えてきた。
話が結婚のことに触れ、直樹は片眉を上げる。
「奥様ってどんな人なんですかぁ」
「いつ、どこで知り合ったんです?」
その質問に直樹は短く「お見合いです」とだけ返す。
彼女たちに雑貨屋での出会いのことなど話してもしょうがないだろう。
直樹の答えに、両隣の女の子たちは小さく悲鳴を上げた。
「えー! 高坂さん、なんでお見合いなんかしちゃったんですかー! お見合いなんかしなくても、いくらでも相手見つけられたじゃないですか!」
「うちの部署でも、高坂さん良いなって人多いですよ?」
「なになに? なに盛り上がってるの?」
女性たちの甲高い声に、今度は噂と女好きで有名な広報部の白鳥が輪に加わる。
「高坂さんの結婚相手、お見合いで知り合った人らしいですよ!」
「それ俺も聞いたわ。なんか、互いの両親が知り合いとかだったんだろ?」
「えー、なにそれ! ずるーい‼」
なにがずるいのかまったくわからないが、直樹の左側に座る女性は不満げに口をへの字に曲げた。
「高坂さん、結婚相手に不満とかないんです?」
「不満なんてありませんよ」
直樹は、はっきりと言い切る。
反応が返ってきたのが嬉しかったのか、彼女たちの声は少し高くなった。
「うっそー!」
「そんなこと言いつつも、少しはありますよね? 無理矢理結婚させられたんだし!」
どうやら彼女たちの中で『お見合い=望まぬ結婚』という図式が完成しているらしい。
少々うざったく感じてきた直樹は、ビールの入っているグラスを持ったまま立ちあがる。
「彼女に不満なんてありませんよ。……それでは。俺は少し静かなところで飲みたいので、失礼しますね」
もう、席の場所なんてあってないようなものだ。現に、彼女たちも白鳥も、どこから来たのかわからない。
去って行く直樹を見ながら、女性たちは「もう、ああいうクールなところがいいのよね!」「奥さん、めっちゃ羨ましい!!」と声を上げていた。
「でもさ。聞いた話なんだけど、あいつ奥さん以外に……」
どうせまた根も葉もない噂を垂れ流しているのだろう。
白鳥の声を背中で聞きながら、直樹はそのまま比較的人の少ないところへ移動した。
店の中央付近では、先ほどからずっと変わらず同僚たちが騒いでいる。
店を貸し切りにしての送別会だからいいものの、他に客でもいればクレームにつながっていた案件だろう。
直樹は端のテーブルに移動し、息をついた。
「はぁ。……帰りたい」
先ほど結婚の話題が出たからか、頭に麻衣子の顔がちらついて離れない。元々飲み会自体もそんなに好きではないのだ。
今日だって、お世話になった先輩の送別会だから参加しただけで、ただの飲み会ならば絶対に断っていた。
グラスが空になったので、ビールを追加で頼む。すると、注文を間違えたのか、手元に日本酒のグラスがやってきた。
飲み放題のプランなので、なにを飲もうが値段が変わることはない。なので、店員になにか言うことなく、直樹は黙ってグラスに口をつけた。
すると、あっという間に身体がかっかと燃えるように熱くなってくる。
「のんでるかー?」
聞き慣れた声がして、隣に誰か腰掛ける。
見れば、赤ら顔の香川が隣に座っていた。手にはビールを持っている。
「こーさか! たのしいかー?」
呂律の回らない香川は、直樹の肩をバシバシと叩く。
昔から酒はのむよりのまれるタイプの彼だが、今日は特に酷いらしい。このままでは、家に連れ帰る役目を負わされそうだと、直樹は内心ため息をついた。
(今日は早く帰りたいのに……)
「そーいやー、芹沢コーポレーションの湯川となんか揉めたんだって?」
湯川という名前に、直樹の眉はピクリと反応する。
数日前のあの出来事は、忘れたくても忘れられない。
麻衣子と彼の間の秘密というのも気になるし、仲の良さげな二人の様子も気になる。
もしかして、二人のよりが戻るんじゃないかという不安は常に拭い去ることなどできず。ただ、麻衣子に直接『彼とよりを戻そうだなんて考えていませんよね?』なんて聞くのも女々しすぎるような気がして聞けなかった。
「奥さんが湯川の元カノとかなんだろー?」
「……なんで知ってるんですか?」
「さっき、受付の子に聞いたんだよー」
彼が指さす方向には盛り上がる女性たちがいた。
湯川と受付前でやりあったがために、一連の出来事は彼女たちにバッチリ見られてしまったらしい。
どうやら、良い噂の種を与えてしまったようだ。
直樹は香川に視線を戻した。
「別に、揉めていませんよ。ただ少し……話をしていただけです」
実際、本当に揉めていたわけではない。
あれから少し仕事の話をしたのだが、湯川も機嫌を損ねたふうではなかった。
「でも、まぁ。きぃーつけろよー」
「気をつける? なにをですか?」
「芹沢コーポレーションの湯川って、あんまり良い噂聞かないからな」
香川はビールを呷る。
「聞くところによると、女は常にとっかえひっかえだし。過去に付き合っていた女の裸の写真なんかを保存しておいて、ヤりたい時に呼び出すとかって。ああいうのなんつったっけ……確か、リベンジポルノって……」
「は?」
思わず、持っていたグラスをテーブルに叩きつけてしまう。
中に入っていた日本酒が、その衝撃で飛び散ったが、そんなことに頓着していられる程の冷静さは直樹にはなかった。
「それ、本当ですか⁉」
「いや、ただの噂だからなんともなぁ。ただ、女からの評判がめちゃくちゃ悪いのは確かだ。特に一度付き合った相手からの好感度は死ぬほど低いらしい」
「それはどこからの情報ですか?」
香川はまた、あの盛り上がっている女性陣を指さす。
「彼女の友達が湯川と付き合ってたんだってよ。んで、そういう噂を聞いたって」
少し酔いがさめてきたのか、先ほどよりはしっかりとした口調で香川は続けた。
「奥さん、本当に湯川の元カノならそういう危険があるかもしれないぞ。お前がついていれば心配ないとは思うけど、一応注意してみててやれよ。なにかあってからじゃ遅いんだからな」
直樹の表情は、みるみるうちに強張っていく。
麻衣子はどちらかと言えば、迂闊な人間だ。騙されやすそうだし、騙されても気づかないなんてこともあるだろう。
香川は、直樹が慎重な人間だから、結婚相手にも慎重な人間を選んだと思っているかもしれないが、彼が麻衣子を選んだのは、彼女が自分にないものを持っているからだ。麻衣子が慎重だなんてとんでもない。
「ま、特にこういう夜は心配だよなー」
「……なにがですか?」
「いや、だって旦那が飲み会の夜なんて、間男にはうってつけの夜だろ?」
香川は本当に軽口で言ったのだろうが、直樹はその言葉に心臓が止まる思いがした。
頭の中に、麻衣子と昂史の『秘密』が浮かび上がる。
もしかすると、その『秘密』というのは……
そこまで考えて直樹は無言で立ち上がる。そして、隅に置いてある鞄を手に取った。
「おい。どこに行くんだ? まだ送別会は……」
「帰ります」
「は?」
「緊急の用事ができました。帰らせていただきます」
そう簡潔に告げて、直樹は周りの人間が止める間もなく店を後にした。
◆ ◇ ◆
「ところでさ、昼間の話の続きなんだけど。直樹さんとどうこうなりたいなら、自分から仕掛けてみれば?」
「へ?」
突拍子もない話に、麻衣子はひっくり返った声を上げる。
二人は夕食にと、近くのバーに来ていた。バーといっても、お酒だけでなく簡単な食事も提供してくれる、比較的入りやすいところだ。
「今度は、して欲しいって言うんじゃなくて、自分からしてみるのよ!」
「へ⁉ いや、でも……」
結花の言葉に麻衣子は狼狽えた。
麻衣子にしてみれば、もっと気を遣うところが別にあるだろう! と思うのだが、デリカシーのなさはいまだ健在のようで、彼は悪びれもしない顔で続けて爆弾を落とした。
「でも、夫婦なのにまだあの秘密を知らないのかー。……つまり、私のほうが麻衣子のことを知ってるってことですね!」
「は?」
「昂史さん!」
麻衣子が叫び、直樹の顔が険悪どころか邪悪になったところで、昼休憩終了を知らせるチャイムがロビーに鳴り響いた。
その夜、麻衣子は夫婦になって初めてのピンチを迎えていた。
「麻衣子さん、『秘密』ってなんですか?」
背中には壁、正面には直樹という位置に正座し、麻衣子は頬に冷や汗を流していた。
両サイドには麻衣子が逃れられないように直樹の手が置かれており、少女漫画に出てくる壁ドンのような格好になっている。
不機嫌さを露わにしている直樹の顔に、麻衣子はいつもとは違う意味でドキドキした。なんだかもうドキドキというよりはドギドギといった感じである。
「い、言えません!」
「……なぜですか?」
「言えないからです!」
バレるならともかく、自分で言うのは気が引ける。
それに、昂史は『秘密』という言葉を使ったが、そんな大げさなものではないのだ。
隠していて日常生活に支障をきたすようなことではないし、人によっては気にしないことかもしれない。現に麻衣子だって昂史に指摘されるまで、そのことに思い至らなかったぐらいだ。
直樹は麻衣子に、ぐっと身体を近づける。
彼のうしろでは、でき上がったばかりの夕食がホカホカと湯気を上げていた。
食事よりも麻衣子の秘密が気になる様子の直樹である。
「俺と君は夫婦でしょう? なのに、なんで俺が知らないことを彼が知ってるんですか? 納得いきません」
「そう言われましても……」
「もしかして、その秘密をネタに脅されてるわけじゃないですよね」
「脅されてはないです。そもそも、今日会ったのだって十数年ぶりなんですよ」
「それなら、これから脅されるかも……」
「さすがにそれはないですよ」
話の方向性が徐々にずれてきているのを感じつつも、麻衣子はそう返す。
昂史はデリカシーのない男だが、そんな陰険なことをする人ではない。
彼は、無邪気に人を傷つける天才なだけだ。
「わかりませんよ。時間は人を変えますからね」
「見た感じ変わってなかったですけどね」
「いつそういうことになってもいいように、ICレコーダーを今度から複数台持っておきましょう。スタンガンと防犯ブザー、警棒も必須ですね」
「必須? それはもしかしなくとも、私が持つってことですか?」
「あたりまえでしょう。俺が持っていても仕方がありませんからね。今日中に注文して、明日には届くようにしておきますね」
何事も慎重なのは結構なことだが、無駄な行動力はいらないなぁと実感する麻衣子である。
だからといって嫌いになるわけではないのだが、もう少し手加減してもらえるとありがたい。
その状態で職務質問にかけられた日には、捕まるのは麻衣子のほうである。
直樹は心配症のギアを上げたまま、さらに続ける。
「麻衣子さん、今度から帽子とマスクとサングラスをして外に出るように! 家の鍵も増やしておきましょうか。あと一つ……二つは欲しいですね。防犯カメラも付けたほうがいいでしょうか?」
いったい彼は、どんな厳重装備を付けるつもりなのだろうか。
そもそも、鍵を増やしたり防犯カメラをつけたりだなんて過剰な防犯を、このマンションの管理会社が許してくれるかどうかもわからない。
「というか、念のため半年は外出を控えてくれませんか? もしなにかあった場合のことを考えたら……」
「なにもないですから、とりあえず落ち着いてください‼」
◆ ◇ ◆
鍵を増やすのではなく、防犯性の高いものに付け替えるという折衷案で、直樹を納得させたその数日後。
麻衣子は雑貨屋に卸す作品のデザインを確認するために会うことにした結花と、一緒に昼食を取っていた。場所はいつものカフェである。
今日はこのまま結花と夕食も食べる予定になっていた。
夕食はいつも家で直樹と取るのだが、今日は珍しく会社の送別会に参加する予定になっている。だから、ちょうど会う予定になっていた結花を、先ほど夕食に誘ったのである。
麻衣子は結花に昂史と再会したことと、数日前のことを話していた。
「あははは! 最高‼ 直樹さん、ホント最高‼」
「もー、笑い事じゃないんだから!」
目尻に涙を溜めながら大笑いする友人に、麻衣子は頬を膨らませる。
「いやー、ホントどうしてそういう思考回路になるのかわからないわぁ。心配症も極まると大変ねー」
「だから、笑い事じゃないんだって! 危うく家の鍵を五個にされるところだったんだよ? しかも、監視カメラ三台付き!」
いかに麻衣子が直樹のことが好きで、彼に甘いと言っても、譲れるところには限界というものがある。
もし、麻衣子が一人でこのマンションに住むのなら、まず鍵の付け替えなんて考えない。オートロックがある上に、マンションの管理会社が住居人が変わるたびに鍵を付け替えてくれているのを知っているからだ。監視カメラなんて、もってのほかである。
しかし、防犯を強化したいと言う直樹の主張を全部押しのけるわけにもいかないので、鍵の付け替えだけは了承した。
つまり、これでも結構譲歩しているほうなのである。
「まぁ、確かにそれは笑い事じゃないけど。でも、愛されてるって感じしない? 結局、それって全部麻衣子のためでしょう?」
「それは、そうなんだけどね……」
「なによ、煮え切らない返事ね」
目を瞬かせる結花に、麻衣子は苦笑いを零した。
思い出したのは、数日前の夕食時の直樹とのやり取りだ。
その日にした結花との会話が原因で食事中に呆けていた麻衣子は、直樹に体調が悪いのではないかと疑われ、寝室に運ばれた。
もちろん体調は悪くなかったのだが、直樹の強引さに、抵抗むなしくベッドに寝かされる羽目になった。
そこで『なにか欲しいものはありますか?』と聞いてきた直樹に、麻衣子は思い切ってキスをねだったのだが……
「結局、額にキスされただけで終わったと」
「うん」
麻衣子は納得がいかないという顔で頷いた。
「まぁ。その場合、普通唇にするわよね。麻衣子が勇気ふり絞ってるわけだし」
「そう、よね」
他から考えてもそうなのかと、麻衣子は落ち込んで頭を下げた。
「もしかして直樹さん、私とそういうことしたくないのかな……」
それならば、寝室が一緒ながらまったく手を出してこないことにも頷ける。
結婚してみたはいいが、麻衣子に対してまったく食指が動かないとか、そういうことなのかもしれない。
二人の出会いは雑貨屋だが、結婚するきっかけはお見合いだ。
きっかけがどうあれ、互いに想いあって結婚したという事実は変わらないが、二人とも両親に急かされて結婚を決めたという面もある。
もしかしたら、表情には出さないものの、直樹は結婚を急ぎすぎたと後悔しているのかもしれない。
そこまで考えて、ずーんと気が沈んだ。
「ま、ただ単に気分じゃなかったからって可能性もあるわよ。気にしなくてもいいんじゃない? それに、風邪をうつされたくないって思ったのかもしれないし」
「そう、なのかな」
「そうそう! こういうのは気にするだけ無駄よ! もしかしたら、こう、がーっと急に襲ってくるのかもしれないし!」
「それはそれで……」
麻衣子は困りながら笑う。けれど、からりと笑う結花を見ていると元気が出てきた。こういう時の彼女は本当に助けになる。
「あ、そうだ。湯川って名前で思い出したんだけど、麻衣子って同窓会いくの?」
「うーん。ちょっと悩み中」
ちょうど昨日、昂史の妹で友人の沙百合からメッセージアプリを経由して、二人を含む同窓会のグループの元に同窓会の案内が届いていた。開催は一か月後。場所は地元の大きなホテルの宴会場になっていた。
麻衣子の実家の近くなので、今住んでいるところから電車で四十分ほどはかかる。
もしも行くのならば、その日は実家に泊まったほうが良いだろう。
メッセージアプリの返信を見る限り、結構な人数が参加予定のようだった。
「沙百合には会いたいんだけど、昂史さんには会いたくないんだよねー……」
イベントが大好きな昂史のことだ。妹の送迎にかこつけて、同窓会に参加してくる可能性は十分ある。そうなれば、あのノンデリカシー大王の口からなにが飛び出すかわかったものじゃない。
それに、昂史と再会した時、直樹は嫌そうな顔をしていた。
彼を心配させてまで行くメリットが同窓会にあるのかと聞かれたら、首を捻るほかない。
「やっぱり、やめとこうかな。別に同窓会に参加しなくても、会いたい人には会えるしね」
「そっかー。麻衣子が行かないんなら私も行くのやめようかなー」
背中を伸ばしながら、結花は首を捻る。
彼女は同窓会を楽しみにしていたはずだ。
メッセージアプリの返信にも、いの一番に答えていた。
「えぇ。結花ちゃん楽しみにしてたじゃん」
「そうなんだけどねー」
「なら、行っておいでよ! 私のことは気にしないで良いからさ! 帰ってきたら、いろいろと話聞かせてくれたら嬉しいな!」
屈託のない麻衣子の笑顔に、結花は「じゃぁ、そうしようかしら」と笑みを浮かべた。
◆ ◇ ◆
隣の人間の声も聞こえないほどの喧噪の中、直樹は一人ビールのグラスを傾けていた。
目の前には、赤ら顔で芸人のものまねをする同僚と、それを見て笑う上司。周りの人間たちは、はやし立てるように手拍子を打っていた。
両隣には、妙に身体をくっつけてくる女性たち。
さっきまでは確か両隣は男性だったはずなのだが、いつの間に入れ替わったのだろうか。
「こうさかさぁん。まだビールですかぁ?」
「こっちの、赤ワインも美味しいですよぉ」
甘えた声で身体を押しつけられる。
腕に胸が当たるが、なんとも思わなかった。
彼にとって、麻衣子のものでなければ、胸などただの贅肉だ。
直樹は鬱陶しく思いながら、短く息を吐き出す。
「遠慮しときます」
「こうさかさん、つめたいー!」
「こういう場なんですから、交流しましょうよ! 交流!」
直樹は営業部で『鬼の高坂』として恐れられている人間だ。しかし、それも営業部に限っての話。他部署の女性たちから見れば、彼は顔もルックスも良くて仕事ができる、ただの優良物件なのである。
ついでに言うなら、彼女たちは直樹の面倒な性格も知らないのだ。
麻衣子と結婚してから、こういうあからさまなアプローチは減ってきたのだが、やはり酒が入ると多少緩んでしまうらしい。
それともお酒が入っているからこそ、ワンナイトラブぐらいならばあり得ると思っているのだろうか。
「こうさかさんー。そーいえば、ご結婚されたんですよね。おめでとうございますぅ」
「結婚式って営業部の方しか呼ばれないんですよね? 私も行きたかったぁ! 写真、楽しみにしてますねー」
このままでは直樹の興味が引けないと思ったのか、女性たちは話題を変えてきた。
話が結婚のことに触れ、直樹は片眉を上げる。
「奥様ってどんな人なんですかぁ」
「いつ、どこで知り合ったんです?」
その質問に直樹は短く「お見合いです」とだけ返す。
彼女たちに雑貨屋での出会いのことなど話してもしょうがないだろう。
直樹の答えに、両隣の女の子たちは小さく悲鳴を上げた。
「えー! 高坂さん、なんでお見合いなんかしちゃったんですかー! お見合いなんかしなくても、いくらでも相手見つけられたじゃないですか!」
「うちの部署でも、高坂さん良いなって人多いですよ?」
「なになに? なに盛り上がってるの?」
女性たちの甲高い声に、今度は噂と女好きで有名な広報部の白鳥が輪に加わる。
「高坂さんの結婚相手、お見合いで知り合った人らしいですよ!」
「それ俺も聞いたわ。なんか、互いの両親が知り合いとかだったんだろ?」
「えー、なにそれ! ずるーい‼」
なにがずるいのかまったくわからないが、直樹の左側に座る女性は不満げに口をへの字に曲げた。
「高坂さん、結婚相手に不満とかないんです?」
「不満なんてありませんよ」
直樹は、はっきりと言い切る。
反応が返ってきたのが嬉しかったのか、彼女たちの声は少し高くなった。
「うっそー!」
「そんなこと言いつつも、少しはありますよね? 無理矢理結婚させられたんだし!」
どうやら彼女たちの中で『お見合い=望まぬ結婚』という図式が完成しているらしい。
少々うざったく感じてきた直樹は、ビールの入っているグラスを持ったまま立ちあがる。
「彼女に不満なんてありませんよ。……それでは。俺は少し静かなところで飲みたいので、失礼しますね」
もう、席の場所なんてあってないようなものだ。現に、彼女たちも白鳥も、どこから来たのかわからない。
去って行く直樹を見ながら、女性たちは「もう、ああいうクールなところがいいのよね!」「奥さん、めっちゃ羨ましい!!」と声を上げていた。
「でもさ。聞いた話なんだけど、あいつ奥さん以外に……」
どうせまた根も葉もない噂を垂れ流しているのだろう。
白鳥の声を背中で聞きながら、直樹はそのまま比較的人の少ないところへ移動した。
店の中央付近では、先ほどからずっと変わらず同僚たちが騒いでいる。
店を貸し切りにしての送別会だからいいものの、他に客でもいればクレームにつながっていた案件だろう。
直樹は端のテーブルに移動し、息をついた。
「はぁ。……帰りたい」
先ほど結婚の話題が出たからか、頭に麻衣子の顔がちらついて離れない。元々飲み会自体もそんなに好きではないのだ。
今日だって、お世話になった先輩の送別会だから参加しただけで、ただの飲み会ならば絶対に断っていた。
グラスが空になったので、ビールを追加で頼む。すると、注文を間違えたのか、手元に日本酒のグラスがやってきた。
飲み放題のプランなので、なにを飲もうが値段が変わることはない。なので、店員になにか言うことなく、直樹は黙ってグラスに口をつけた。
すると、あっという間に身体がかっかと燃えるように熱くなってくる。
「のんでるかー?」
聞き慣れた声がして、隣に誰か腰掛ける。
見れば、赤ら顔の香川が隣に座っていた。手にはビールを持っている。
「こーさか! たのしいかー?」
呂律の回らない香川は、直樹の肩をバシバシと叩く。
昔から酒はのむよりのまれるタイプの彼だが、今日は特に酷いらしい。このままでは、家に連れ帰る役目を負わされそうだと、直樹は内心ため息をついた。
(今日は早く帰りたいのに……)
「そーいやー、芹沢コーポレーションの湯川となんか揉めたんだって?」
湯川という名前に、直樹の眉はピクリと反応する。
数日前のあの出来事は、忘れたくても忘れられない。
麻衣子と彼の間の秘密というのも気になるし、仲の良さげな二人の様子も気になる。
もしかして、二人のよりが戻るんじゃないかという不安は常に拭い去ることなどできず。ただ、麻衣子に直接『彼とよりを戻そうだなんて考えていませんよね?』なんて聞くのも女々しすぎるような気がして聞けなかった。
「奥さんが湯川の元カノとかなんだろー?」
「……なんで知ってるんですか?」
「さっき、受付の子に聞いたんだよー」
彼が指さす方向には盛り上がる女性たちがいた。
湯川と受付前でやりあったがために、一連の出来事は彼女たちにバッチリ見られてしまったらしい。
どうやら、良い噂の種を与えてしまったようだ。
直樹は香川に視線を戻した。
「別に、揉めていませんよ。ただ少し……話をしていただけです」
実際、本当に揉めていたわけではない。
あれから少し仕事の話をしたのだが、湯川も機嫌を損ねたふうではなかった。
「でも、まぁ。きぃーつけろよー」
「気をつける? なにをですか?」
「芹沢コーポレーションの湯川って、あんまり良い噂聞かないからな」
香川はビールを呷る。
「聞くところによると、女は常にとっかえひっかえだし。過去に付き合っていた女の裸の写真なんかを保存しておいて、ヤりたい時に呼び出すとかって。ああいうのなんつったっけ……確か、リベンジポルノって……」
「は?」
思わず、持っていたグラスをテーブルに叩きつけてしまう。
中に入っていた日本酒が、その衝撃で飛び散ったが、そんなことに頓着していられる程の冷静さは直樹にはなかった。
「それ、本当ですか⁉」
「いや、ただの噂だからなんともなぁ。ただ、女からの評判がめちゃくちゃ悪いのは確かだ。特に一度付き合った相手からの好感度は死ぬほど低いらしい」
「それはどこからの情報ですか?」
香川はまた、あの盛り上がっている女性陣を指さす。
「彼女の友達が湯川と付き合ってたんだってよ。んで、そういう噂を聞いたって」
少し酔いがさめてきたのか、先ほどよりはしっかりとした口調で香川は続けた。
「奥さん、本当に湯川の元カノならそういう危険があるかもしれないぞ。お前がついていれば心配ないとは思うけど、一応注意してみててやれよ。なにかあってからじゃ遅いんだからな」
直樹の表情は、みるみるうちに強張っていく。
麻衣子はどちらかと言えば、迂闊な人間だ。騙されやすそうだし、騙されても気づかないなんてこともあるだろう。
香川は、直樹が慎重な人間だから、結婚相手にも慎重な人間を選んだと思っているかもしれないが、彼が麻衣子を選んだのは、彼女が自分にないものを持っているからだ。麻衣子が慎重だなんてとんでもない。
「ま、特にこういう夜は心配だよなー」
「……なにがですか?」
「いや、だって旦那が飲み会の夜なんて、間男にはうってつけの夜だろ?」
香川は本当に軽口で言ったのだろうが、直樹はその言葉に心臓が止まる思いがした。
頭の中に、麻衣子と昂史の『秘密』が浮かび上がる。
もしかすると、その『秘密』というのは……
そこまで考えて直樹は無言で立ち上がる。そして、隅に置いてある鞄を手に取った。
「おい。どこに行くんだ? まだ送別会は……」
「帰ります」
「は?」
「緊急の用事ができました。帰らせていただきます」
そう簡潔に告げて、直樹は周りの人間が止める間もなく店を後にした。
◆ ◇ ◆
「ところでさ、昼間の話の続きなんだけど。直樹さんとどうこうなりたいなら、自分から仕掛けてみれば?」
「へ?」
突拍子もない話に、麻衣子はひっくり返った声を上げる。
二人は夕食にと、近くのバーに来ていた。バーといっても、お酒だけでなく簡単な食事も提供してくれる、比較的入りやすいところだ。
「今度は、して欲しいって言うんじゃなくて、自分からしてみるのよ!」
「へ⁉ いや、でも……」
結花の言葉に麻衣子は狼狽えた。
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