四季を彩るアルビノへ

夜月 真

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二章 冬

金色

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「気をつけてよ」
 正面から向かってくる車のヘッドライトがやけに眩しかった。
「見て、今日の月」
 道の先、空の低い位置に吊されている月に目を向ける。半月よりかは少し膨らんでいるようだ。
「優しい半分こ、みたいな月だね」
「どういった意味?」
 そう言った意図を尋ねる。

「あの見えない部分は、隠れているんじゃなくて、別の誰かに渡しちゃったみたいに見えない? ということはさ、半分とちょっとだけを私たちに見せてくれているから、思いやりがあるように見える。だから、優しい半分こ」
 いつからか、僕はきっとこの感性を聴くのが楽しみになっていたんだと思う。ふたりで空を見ては、そこから感じる価値観を共有することが、僕の幸せの一つなのだろう。
「すごい良い考え。本当にそう思えてくる」
 そうでしょ、と彩音は言って微笑んだ。貴方には今日の月をどう見えているの? そう訊かれ、考える。
「うーん、さっきのもの以上が思いつかないからなぁ……」
 再び信号で立ち止まる。邪魔をするかのように月よりも前の位置で電線が視野に入る。
「高校生くらいの月?」
「高校生?」
 彩音はプッと吹き出した。
「そう、新月が子どもだとしたら、満月は大人。大人とも子どもとも言えないあの月は、高校一年生くらいってところかな」

「私達、おかしな考えね。けど確かにそうも見える」
 交差点を仕切る色が変わり、横断歩道を渡る。シャッターの閉まったお店の看板、コンビニの窓から漏れ出す冷たい明かり。それらを見つけては、お互いの見え方をぶつけ合った。彩音の家までは、残り徒歩五分ほどだった。
「今日はありがとうね」
 僕の言おうとしたことが、彩音の口から飛び出した。
「どうして彩音が? それは僕の台詞だよ」
 黙って首を振って、少し長い髪が揺れていた。
「私が勝手に貴方の家まで行ったのに、ここまで来てもらっちゃったし。貴方とお話ができて良かったよ」
 カーブミラーの顔が、可哀想なほどに歪んでいるのに気がついた。何かをぶつけられたような歪み方だ。

「ううん。誕生日を祝ってもらえたんだから、このくらいはさせて。それに、誕生日を、迎える瞬間が彩音と一緒で良かったよ。ひとりぼっちは寂しいし」
「ひとりぼっちの夜景になるところだったね」
 僕らはクスッと笑う。自然と歩く速度が落ちているような気がしていた。
「今日はこの後、何をする予定なの?」
 何もない一日を想像しながら首を傾げて考える。
「うーん、誰宛てとは言わないけど、手紙でも書こうかな。誰宛てとは言わないけどね」
 彩音は再び、クツクツと笑った。

「そうなんだ。じゃあ私も届くかもしれない手紙を楽しみに待ってようかな」
「そうしてて」
 家の前の、最後の交差点に差し掛かった。また、信号だ。
「ここまででいいよ。ありがとう」
 少し寂しげに感じる表情に別れを告げられる。左手を左右に振りながら急足で点滅する信号を渡り切った先でも、大きく手を上げてその存在を示していた。お返しをするように、右腕を大きく上げて、左右に振った。
 駅までの道のりが、やけに輝いて見えた。隣にはもう誰もいないのに、昂った感情が落ち着かない。タクシーで帰宅した家の中は、いつもと変わらないはずなのに、不思議な特別感があった。
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