【完結】好きでもない私とは婚約解消してください

里音

文字の大きさ
8 / 12

8 幼なじみ登場

彼にエスコートされて劇場から出た。見たかった劇だけど、その前の事で頭がいっぱいでなにも覚えていない。

劇場の高位貴族のための個室に入る前にフェルマン様のもう1人の幼なじみに会った。彼が話があるというので私だけ先に部屋に入って2人は扉の前で話をしていた。

「ミラが………。」
「関係ない。」
「恋人…だろう。それに……聞いている。」
「確かに……だ。だけど……ない。婚約は……。」
「好きなのか?」
「ああ。……会う……。」
「伝えとくよ。」

扉越しで切れ切れに聞こえてくるその内容はフェルマン様の元恋人が帰ってきた。と教えるものだろう。それに対してフェルマン様はまだ彼女の事が好きで友人に会う段取りをお願いしたのだろう。


私の思い出づくりもここまでね。部屋に入って来たフェルマン様にいつもの笑顔を向けているつもりだけれど、彼の顔を見ると上手く笑えていないようだ。
こんな事で狼狽えてるなんてフェルマン様を解放してあげる事が出来るのかしら?




会場の外に出た。たくさんの人で賑わっている。そこで聞こえてきたのは

「フェルマン、やっと会えた。会いたかったわ。」

こちらを見て涙を流している彼女はフェルマン様の元恋人だろう。噂でしか聞いた事がなかったが美しい人だ。涙を流してこちらを見る姿など庇護欲を掻き立てる。
フェルマン様は隣にいる婚約者に気を遣っているのか、平坦な声で彼女を呼んだ。
そんな彼の言葉を彼女は聞きたくないのだろう。遮るように話す。

「ノイマン伯爵夫人。「あの人とは離縁して帰ってきたの。だからミラと呼んで。」

幼なじみとはいえ婚約者のいる男性、それも元恋人に昔のように呼び捨てで呼んでと言うなんて常識では考えられない。
しかもここにはたくさんの人がいるのに。それがわかっているのだろうフェルマン様は冷たく突き放すように言われた。

「ミラ嬢、おれには婚約者がいます。いくら幼なじみとはいえ、その婚約者をおいて他の女性を呼び捨てで呼ぶなんてできませんよ。」

「フェルマン、昔の事をまだ怒っているの?別の人と結婚したのは悪かったわ。でもあれは仕方なかったのよ。わたしは貴方の事を忘れたことはなかったわ。わたしは今でも貴方のことが好きよ。貴方も好きでもない婚約者とは別れて、今度こそ2人で幸せになりましょう。」

元恋人に多くの人の前でここまで言ったのだ。
彼がそれを突っぱねれば、彼女は政略で嫁いだ夫に裏切られて離縁され、ずっと想っていた元恋人にも捨てられた哀れな女に、私はそんな想いあっている2人を政略で引き裂く悪女って噂になる。
反対にフェルマン様が彼女を選べば引き裂かれていた恋人たちが紆余曲折あったが再び結ばれた美談となる。
その一方で今フェルマン様には私という婚約者がいる。元恋人を取ると美談だけでは済まないだろう。彼は婚約者を捨てた不誠実な人だと、私は捨てられた可哀想な傷もの令嬢と噂されてしまう。
人は他人の醜聞が好きなのだから。

あなたにおすすめの小説

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

婚約者が私にだけ冷たい理由を、実は私は知っている

潮海璃月
恋愛
一見クールな公爵令息ユリアンは、婚約者のシャルロッテにも大変クールで素っ気ない。しかし最初からそうだったわけではなく、貴族学院に入学してある親しい友人ができて以来、シャルロッテへの態度が豹変した。

あなたの愛はいりません

oro
恋愛
「私がそなたを愛することは無いだろう。」 初夜当日。 陛下にそう告げられた王妃、セリーヌには他に想い人がいた。

もう演じなくて結構です

梨丸
恋愛
侯爵令嬢セリーヌは最愛の婚約者が自分のことを愛していないことに気づく。 愛しの婚約者様、もう婚約者を演じなくて結構です。 11/5HOTランキング入りしました。ありがとうございます。   感想などいただけると、嬉しいです。 11/14 完結いたしました。 11/16 完結小説ランキング総合8位、恋愛部門4位ありがとうございます。

大好きな恋人が、いつも幼馴染を優先します

山科ひさき
恋愛
騎士のロバートに一目惚れをしたオリビアは、積極的なアプローチを繰り返して恋人の座を勝ち取ることに成功した。しかし、彼はいつもオリビアよりも幼馴染を優先し、二人きりのデートもままならない。そんなある日、彼からの提案でオリビアの誕生日にデートをすることになり、心を浮き立たせるが……。

女性として見れない私は、もう不要な様です〜俺の事は忘れて幸せになって欲しい。と言われたのでそうする事にした結果〜

流雲青人
恋愛
子爵令嬢のプレセアは目の前に広がる光景に静かに涙を零した。 偶然にも居合わせてしまったのだ。 学園の裏庭で、婚約者がプレセアの友人へと告白している場面に。 そして後日、婚約者に呼び出され告げられた。 「君を女性として見ることが出来ない」 幼馴染であり、共に過ごして来た時間はとても長い。 その中でどうやら彼はプレセアを友人以上として見れなくなってしまったらしい。 「俺の事は忘れて幸せになって欲しい。君は幸せになるべき人だから」 大切な二人だからこそ、清く身を引いて、大好きな人と友人の恋を応援したい。 そう思っている筈なのに、恋心がその気持ちを邪魔してきて...。 ※ ゆるふわ設定です。 完結しました。

守るために婚約者を手放した王太子は、彼女がもう戻らないことを後から知る

あめとおと
恋愛
王太子である彼と、公爵令嬢である彼女は、誰もが認める婚約者同士。 人前では距離を保ちながらも、二人は確かに想い合っていた。 ――あの日、“聖女”が現れるまでは。 国と民に求められる存在である聖女。 彼女を拒めば、王太子としての立場は揺らぐ。 そして何より、大切な婚約者を巻き込んでしまう。 だから彼は選んだ。 彼女を守るために、距離を取ることを。 冷たく振る舞い、関係を曖昧にし、あえて突き放す。 それが最善だと信じていた。 だが彼女は、すべてを理解していた。 だからこそ何も言わず、 ただ静かに――婚約解消を申し出た。 「それが殿下のご判断であれば、従います」 彼女は最後まで優しく微笑んでいた。 そして、すべてが終わった後で彼は気づく。 守られていたのは、自分の方だったのだと。 もう遅い。 彼女は今も穏やかに微笑んでいる。 ――その微笑みが、自分に向けられることは、二度とない。

私の夫は妹の元婚約者

テンテン
恋愛
私の夫ミラーは、かつて妹マリッサの婚約者だった。 そんなミラーとの日々は穏やかで、幸せなもののはずだった。 けれどマリッサは、どこか意味ありげな態度で私に言葉を投げかけてくる。 「ミラーさんには、もっと活発な女性の方が合うんじゃない?」 挑発ともとれるその言動に、心がざわつく。けれど私も負けていられない。 最近、彼女が婚約者以外の男性と一緒にいたことをそっと伝えると、マリッサは少しだけ表情を揺らした。 それでもお互い、最後には笑顔を見せ合った。 まるで何もなかったかのように。