命を詠う華

YUE

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雷撃を受けた者、逃げ惑う者、辺りに悲鳴が響き渡る。
「・・・拳ってのはなあ」
天は拳を握り、頭目を睨み上げる。
その視線と、自分の鉄拳がまったく効かないことに対して恐怖した頭目は後退りした。
「こうすんだよ!」
天は拳を容赦なく頭目の脇腹に叩き込んだ。
頭目の脳裏には、硬い物が折れる鈍い音がこだまする。
瞬く間に、叫ばずにはいられない激痛が全身に広がり、膝まづき脇腹を押さえて動けなくなった。
天は止め一撃を蹴り上げようとした瞬間、
「動ける者は逃げよ!」
ただならぬ雰囲気で叫ぶ巫女の声に硬直する。
「天!お主も早う逃げよ!」
「き、急にどうしたんですか?」
天は巫女の剣幕に目を白黒させる。
「この感じ、妖が近付いておる!」
巫女の注意は既に賊ではなく、更なる悪気に向いていた。
「な、なんだこれは!?」
「畜生!進めねえぞ!?」
賊達の叫ぶ先、まるで見えない壁が在るかのように、空中を叩く姿がった。
それは円を描くように周囲を囲い、殴っても、刃で切りつけても、すり抜けられる者はいなかった。
「ちっ。既に結界の中か」
「巫女様、これは?」
巫女と天は再び背合わせに立ち、周囲を警戒する。
「ここは既に、妖の領域よ。すまぬな、もう少し早く気付いておれば、お主だけでも・・・」
「何言ってるんですか巫女様」
詫びの言葉を続けそうな巫女の言葉を遮り、
「貴女を置いて、俺だけ逃げる訳ないですよ」
天は腹を括る。
「おいお前」
天はうずくまる頭目を見下ろし、
「余計なこと考えたり、手出しはするな。食われて死ぬぞ」
忠告する。
頭目には呻きながら首を縦に振る以外の選択肢は無かった。
「きっひっひっひっ、大漁大漁」
突如響いた若い女の笑い声に、賊達は半狂乱で騒ぎ出す。
それは巫女が見据える先、見えない壁の向こうに居た。
青い着物で身を包み、伸びた髪は地面に付きそうな程だ。
俯き加減で、口元を袖で隠し、獲物を前に怪しく笑う。
「人間だあ、人間だあ、早く食う」
間の抜けた声をだしながら、雑木林から出てきたものは、細く、背の高い体に、不釣り合いな太く長い腕を揺らした、単眼の異形。
「焦るな。まずは捕らえて帰り、献上してからだ」
次いで現れたのは、山伏の様な風体だが、烏の様な頭に、背には黒い翼を生やした異形。
「こんな所で互いに潰しあっているとはな、人間とは愚かな者よ」
最後に現れたのは、見た目こそは人間の青年の様だが、血のように赤い目をし、鉤爪の様に鋭い指先、額に1本の角を生やした異形。
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