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「お待たせ、茨城」
天は上衣を着直しながら笑みを浮かべる。
2人の娘は、今度は天にじゃれついている。
「御客様が、天様に挨拶しに参りました」
茨城は恭しく頭を下げる。
「これはこれは、遠路はるばる良く来てくれたね。俺は天。一応ここの長をやってます」
天は握手を求めるように手を出す。
頼光は感情を圧し殺しながら、
「私は源頼光。この中で先導をやらせてもらっています」
握手に応じた。
「この度は、この大江山にて修行をさせて頂きたく、御挨拶に伺いました」
「ああ、そうなんだ。大江山で良ければ自由に歩き回って良いよ。修行頑張ってね」
「はい。ありがとうございます」
「でも1つだけ」
「何でしょう?」
「意見の衝突で喧嘩とかするのは仕方ないけど、殺し合いはやっちゃ駄目だよ?みんな仲良く笑顔が一番。ってね」
天はほがらかに注意する。
「分かりました。肝に命じておきます」
「まあまあ、そこまで固くならなくていいさ」
天は振り返り、
「ねえ茨城、白湯の用意は?」
「既にさせております」
「さすがだねえ」
茨城の返答に満足する。
「いえ、今日は挨拶に伺っただけですので、御構い無く」
頼光は天のもてなしを丁重に断る。
「え?そう?遠慮しなくて良いよ?」
「今日はもう少し歩いて、修行に良さそうな場所を探したいと思いますので」
「ああ、そういうことなら、無理に引き留めるのは悪いね。そうだ。もし良ければ、この寺に寝泊まりしても良いからね」
「御配慮感謝します」
頼光達は挨拶もそこそこに、1度寺を離れることにした。
頼光達が居なくなると、
「ところで天様?」
黒い障気を出しながら、茨城が迫る。
「ど、どうしたんだい?そんな怖い顔をしてさ?」
天は嫌な汗をかきながらも、笑顔の交渉を試みる。
「なぜあの様な場所に居らしたんですか?」
茨城の顔は笑っているが、雰囲気はそうではない。
「いやぁ、そのぅ・・・あの辺雨漏りがするって言ってたから、塞ごうかなあ?なんて・・・」
天がしどろもどろに答えると、
「なぜそれを長たる貴方自らがやってるんですか!」
茨城が吠えた。
「待て待て!落ち着け茨城。寺の修繕は皆でやろうって決めたじゃないか?」
「屋根の修繕は空を飛べる者に頼めば済む話でしょう!」
「わ、わわわ悪かったって、だから落ち着こう?な?な?」
茨城の剣幕にたじたじな天。
「修繕中に屋根から落ちて怪我をしたのが長だなんて、笑い話にもならないんですよ!?」
「いや、屋根から落ちたくらいじゃ俺は平気で・・・」
「そう言う問題じゃないんですよ!」
「はいっ!」
「それでは皆に示しがつかないと言ってるんですよ!」
「ご、ごめんなさい!」
天は反射的に正座していた。
「ああぁ、天様可愛いなぁ」
2人をやり取りを遠巻きに見ていた燐童が、うっとりと頬を染めながら呟く。
「叱られてる時の天様可愛いぃ」
隣に居る琴葉も同意見の様で、嬉しそうに尻尾をぱたぱたさせている。
「まったく。奥方様が戻られた時に、貴方が余計な怪我をしていら、私達が御叱りを受けてしまいますよ」
「え?空はそんなに狭い器量じゃないよ?」
「我等の面子の問題でもあるのです!」
「はいっ!」
「今貴方がやるべきは、御子様との接し方や、教育方針を学ぶことなんですからね。長たる者、御自身の御子様を立派に育てるのは義務なんです」
「はい。精進します」
天は正座したまま背筋を伸ばす。
天は上衣を着直しながら笑みを浮かべる。
2人の娘は、今度は天にじゃれついている。
「御客様が、天様に挨拶しに参りました」
茨城は恭しく頭を下げる。
「これはこれは、遠路はるばる良く来てくれたね。俺は天。一応ここの長をやってます」
天は握手を求めるように手を出す。
頼光は感情を圧し殺しながら、
「私は源頼光。この中で先導をやらせてもらっています」
握手に応じた。
「この度は、この大江山にて修行をさせて頂きたく、御挨拶に伺いました」
「ああ、そうなんだ。大江山で良ければ自由に歩き回って良いよ。修行頑張ってね」
「はい。ありがとうございます」
「でも1つだけ」
「何でしょう?」
「意見の衝突で喧嘩とかするのは仕方ないけど、殺し合いはやっちゃ駄目だよ?みんな仲良く笑顔が一番。ってね」
天はほがらかに注意する。
「分かりました。肝に命じておきます」
「まあまあ、そこまで固くならなくていいさ」
天は振り返り、
「ねえ茨城、白湯の用意は?」
「既にさせております」
「さすがだねえ」
茨城の返答に満足する。
「いえ、今日は挨拶に伺っただけですので、御構い無く」
頼光は天のもてなしを丁重に断る。
「え?そう?遠慮しなくて良いよ?」
「今日はもう少し歩いて、修行に良さそうな場所を探したいと思いますので」
「ああ、そういうことなら、無理に引き留めるのは悪いね。そうだ。もし良ければ、この寺に寝泊まりしても良いからね」
「御配慮感謝します」
頼光達は挨拶もそこそこに、1度寺を離れることにした。
頼光達が居なくなると、
「ところで天様?」
黒い障気を出しながら、茨城が迫る。
「ど、どうしたんだい?そんな怖い顔をしてさ?」
天は嫌な汗をかきながらも、笑顔の交渉を試みる。
「なぜあの様な場所に居らしたんですか?」
茨城の顔は笑っているが、雰囲気はそうではない。
「いやぁ、そのぅ・・・あの辺雨漏りがするって言ってたから、塞ごうかなあ?なんて・・・」
天がしどろもどろに答えると、
「なぜそれを長たる貴方自らがやってるんですか!」
茨城が吠えた。
「待て待て!落ち着け茨城。寺の修繕は皆でやろうって決めたじゃないか?」
「屋根の修繕は空を飛べる者に頼めば済む話でしょう!」
「わ、わわわ悪かったって、だから落ち着こう?な?な?」
茨城の剣幕にたじたじな天。
「修繕中に屋根から落ちて怪我をしたのが長だなんて、笑い話にもならないんですよ!?」
「いや、屋根から落ちたくらいじゃ俺は平気で・・・」
「そう言う問題じゃないんですよ!」
「はいっ!」
「それでは皆に示しがつかないと言ってるんですよ!」
「ご、ごめんなさい!」
天は反射的に正座していた。
「ああぁ、天様可愛いなぁ」
2人をやり取りを遠巻きに見ていた燐童が、うっとりと頬を染めながら呟く。
「叱られてる時の天様可愛いぃ」
隣に居る琴葉も同意見の様で、嬉しそうに尻尾をぱたぱたさせている。
「まったく。奥方様が戻られた時に、貴方が余計な怪我をしていら、私達が御叱りを受けてしまいますよ」
「え?空はそんなに狭い器量じゃないよ?」
「我等の面子の問題でもあるのです!」
「はいっ!」
「今貴方がやるべきは、御子様との接し方や、教育方針を学ぶことなんですからね。長たる者、御自身の御子様を立派に育てるのは義務なんです」
「はい。精進します」
天は正座したまま背筋を伸ばす。
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