命を詠う華

YUE

文字の大きさ
49 / 71

49

しおりを挟む
「お待たせ、茨城」
天は上衣を着直しながら笑みを浮かべる。
2人の娘は、今度は天にじゃれついている。
「御客様が、天様に挨拶しに参りました」
茨城は恭しく頭を下げる。
「これはこれは、遠路はるばる良く来てくれたね。俺は天。一応ここの長をやってます」
天は握手を求めるように手を出す。
頼光は感情を圧し殺しながら、
「私は源頼光。この中で先導をやらせてもらっています」
握手に応じた。
「この度は、この大江山にて修行をさせて頂きたく、御挨拶に伺いました」
「ああ、そうなんだ。大江山で良ければ自由に歩き回って良いよ。修行頑張ってね」
「はい。ありがとうございます」
「でも1つだけ」
「何でしょう?」
「意見の衝突で喧嘩とかするのは仕方ないけど、殺し合いはやっちゃ駄目だよ?みんな仲良く笑顔が一番。ってね」
天はほがらかに注意する。
「分かりました。肝に命じておきます」
「まあまあ、そこまで固くならなくていいさ」
天は振り返り、
「ねえ茨城、白湯の用意は?」
「既にさせております」
「さすがだねえ」
茨城の返答に満足する。
「いえ、今日は挨拶に伺っただけですので、御構い無く」
頼光は天のもてなしを丁重に断る。
「え?そう?遠慮しなくて良いよ?」
「今日はもう少し歩いて、修行に良さそうな場所を探したいと思いますので」
「ああ、そういうことなら、無理に引き留めるのは悪いね。そうだ。もし良ければ、この寺に寝泊まりしても良いからね」
「御配慮感謝します」
頼光達は挨拶もそこそこに、1度寺を離れることにした。
頼光達が居なくなると、
「ところで天様?」
黒い障気を出しながら、茨城が迫る。
「ど、どうしたんだい?そんな怖い顔をしてさ?」
天は嫌な汗をかきながらも、笑顔の交渉を試みる。
「なぜあの様な場所に居らしたんですか?」
茨城の顔は笑っているが、雰囲気はそうではない。
「いやぁ、そのぅ・・・あの辺雨漏りがするって言ってたから、塞ごうかなあ?なんて・・・」
天がしどろもどろに答えると、
「なぜそれを長たる貴方自らがやってるんですか!」
茨城が吠えた。
「待て待て!落ち着け茨城。寺の修繕は皆でやろうって決めたじゃないか?」
「屋根の修繕は空を飛べる者に頼めば済む話でしょう!」
「わ、わわわ悪かったって、だから落ち着こう?な?な?」
茨城の剣幕にたじたじな天。
「修繕中に屋根から落ちて怪我をしたのが長だなんて、笑い話にもならないんですよ!?」
「いや、屋根から落ちたくらいじゃ俺は平気で・・・」
「そう言う問題じゃないんですよ!」
「はいっ!」
「それでは皆に示しがつかないと言ってるんですよ!」
「ご、ごめんなさい!」
天は反射的に正座していた。
「ああぁ、天様可愛いなぁ」
2人をやり取りを遠巻きに見ていた燐童が、うっとりと頬を染めながら呟く。
「叱られてる時の天様可愛いぃ」
隣に居る琴葉も同意見の様で、嬉しそうに尻尾をぱたぱたさせている。
「まったく。奥方様が戻られた時に、貴方が余計な怪我をしていら、私達が御叱りを受けてしまいますよ」
「え?空はそんなに狭い器量じゃないよ?」
「我等の面子の問題でもあるのです!」
「はいっ!」
「今貴方がやるべきは、御子様との接し方や、教育方針を学ぶことなんですからね。長たる者、御自身の御子様を立派に育てるのは義務なんです」
「はい。精進します」
天は正座したまま背筋を伸ばす。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です1~またクビになったけど、親代わりのメイドが慰めてくれるので悲しくなんてない!!~

あきくん☆ひろくん
ファンタジー
仕事を失い、居場所をなくした青年。 彼に仕えるのは――世界を救った英雄たちだった。 剣も魔法も得意ではない主人公は、 最強のメイドたちに守られながら生きている。 だが彼自身は、 「守られるだけの存在」でいることを良しとしなかった。 自分にできることは何か。 この世界で、どう生きていくべきか。 最強の力を持つ者たちと、 何者でもない一人の青年。 その主従関係は、やがて世界の歪みと過去へと繋がっていく。 本作は、 圧倒的な安心感のある日常パートと、 必要なときには本格的に描かれる戦い、 そして「守られる側の成長」を軸にした 完結済み長編ファンタジーです。 シリーズ作品の一編ですが、本作単体でもお楽しみいただけます。 最後まで安心して、一気読みしていただければ幸いです。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

魅了の対価

しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。 彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。 ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。 アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。 淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

女神様、もっと早く祝福が欲しかった。

しゃーりん
ファンタジー
アルーサル王国には、女神様からの祝福を授かる者がいる。…ごくたまに。 今回、授かったのは6歳の王女であり、血縁の判定ができる魔力だった。 女神様は国に役立つ魔力を授けてくれる。ということは、血縁が乱れてるってことか? 一人の倫理観が異常な男によって、国中の貴族が混乱するお話です。ご注意下さい。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...