異世界に来たんだから自分の欲望に忠実に生きる!

修ですが

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16話 人命救助とお金

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 短剣を引き抜き俺は駈けだした。
 安全に慎重にと言っていたはずなのに。
 俺は駈けだした。
 怖くて。
 あれだけの喧噪も今は虫の声が聞こえるのみ。先程まで微かな呻き声も今はない。

 スキルを使用せずただ駈けた。
 夕方近くに辿り着いた川が見えてきたが止まらずに川沿いを下流向かって走り抜ける。
 息が上がりヨロヨロと歩きだし大きな木の下に腰を下ろす。

 「全滅だよね?」

 確認はしていない。確認は出来なかった。もし確認してまた殺害するような事にでもなれば俺の精神が持たない。
 
 「あれは人助け。」

 あれは善意の行いだと言い聞かせた。
 喉が渇き川の水を飲もうと両手で水を掬ったらほんのり赤い。血が川に流れ込んだようだ。

 水を飲むのを辞め、月明かりの中ジッと水面を眺めた。水面を幾筋もの血が流れているのが解り上流を見た。

 「ひょっとしたら、まだ…。」

 確認はしていないが声も聞こえなかった。が、確認はしていない。
 今勇気を出して行動すれば助けられる命があるかも知れない。
 怖いよ、そりゃあ怖いよ。戻っても後悔するだけかも知れない。
 しかし、何もせずに悔いるなら出来る事をしてから後悔しよう。
 
 俺はスキルに意識を向けて上流へ歩き出した。風向きが変わったのだろうか上流に向かって直ぐに血の臭いを感じた。
 一歩また一歩と歩く度に血の臭いが強く感じる。ビビっている俺は逃げ出したいのを我慢して歩いた。
 進んだ距離以上に疲れが出たが急げば間に合う、急げば間に合うとブツブツ呟きながら歩いた。
 「気配察知」に反応があった、前方の川辺の辺りだ。反応はあるが動きはない。
 『忍び足』を使い慎重に接近した。
 辺りは静まり返っていたが反応がある。
 
 「見つけた!」

 川辺に倒れていたのは女性のようだ。
 全身が水で濡れており小刻みに震えていた。
 「大丈夫ですか?」

 女性を水辺から上げて草地の上に横たえる。
 声を掛けながら躰を揺すったが反応はない。意識を失っているようだ。
 再度声を掛けるが反応がない。

 『気配察知』に反応する気配はもう辺りからは感じられなかった。
 女性を横たえたまま上流の方へ移動し探索を始める。
 第一は生存者の確認だが『気配察知』に反応がない事から望み薄だ。
 では何を探しているのかと言えば着替えになりそうな物や衣類だ。
 女性の躰を拭く物や着替えが必要だと思いながら探索した。
 物が散乱していたがめぼしい物は無く戻ろうとした時に躓いた。躓いた物は布製の巾着袋だ。手に持つズッシリと重い。
 中身は硬貨が入っていた。金色、銀色、土色の硬貨だ。

 「金貨、銀貨、銅貨かな?」

 必要ないと手放そうとしたが思い直した。今後必要になる物なのは間違いないのだから持って行く事にした。
 物物交換が主流の世界ではなく貨幣が流通している世界なら尚更だ。
 
女性の元に戻った、まだ女性は意識を失ったままだ。とりあえずこの場を離れて少しでも安全な場所へ移動する事にした。
 意識のない相手をどう運ぼうか迷う。右手には短剣があり左手には硬貨が入った袋。効率的に運ぶには…。
 結局、女性のお腹の上に袋を置き短剣は袋に入れた。『気配察知』があるので何か異変が起きても対処出来るだろう。
 右手で肩を抱き左手を膝の裏側に差し込む。所謂「お姫様抱っこ」で運ぶ事にした。
 「よっこらせ」
 見た目は若返えったが精神はアラフィフなので意識してないと年寄り臭い事を言ってしまう。
 格好良く抱き上げて颯爽と駆け出すイメージだったのだが、現実はヨタヨタと覚束ない足取りで移動した。
 衣類が水を吸って思いのほか重いのだ。
 勿論、俺の体力が劣っていることも理由だが。移動に時間が掛かり汗だくになりながらも移動を続ける。何処が安全かキョロキョロしながら。
 川に沿っての移動は体力を使う。ゴロゴロと石が転がっているから歩きにくい。
 歩きにくいが月明かりが無ければ歩く事もままならないので少し歩いては休憩を繰り返しながら進んだ。
 川から少し離れた場所に大きな岩が折り重なって転がっている場所まで辿り着いた。岩の上に女性を横たえて休憩を取る。
 岩と岩の間は俺達が入っても十分な広さがあるので此処で夜を明かす事にする。
 まずは森から枯れ草を運び横になれるように形を整え更にその上に葉っぱの付いた枝をクッション代わりに敷いた。
 岩の上のに居る女性を運び女性を横たえる。俺は森から枯れ枝と薪になりそうな木を何度も運び火を点けた。
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