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49話

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 エミリオが臨時で雇われた理由は他の街に行く為に参加したらしい。

 「なんで他の街に?」
 快活に話していたエミリオはモジモジし始める。
 「どしたの?」

 貧乳が向かった街はこの国でも比較的に大きな街らしい。それなりの力を持った領主が治めており治安の問題も少ない。
 人口も多く活気もある。
 
 命が安いこの世界では安全な街と言うだけで価値があるだろう。それでもエミリオは他の街に行きたいらしい。何故だろう?

 「それは…あたしの…評判が…」
 途切れ途切れで何を言ってるのか解らないが自分の評判が悪いと言っているらしい。

 話してみた感じ嫌な気分にもならないし寧ろ俺は好ましいと思っていたが。

 「初めて冒険者パーティーに参加した時…」

 エミリオが初めて冒険者パーティーに参加した時に色々ミスをしてしまい他のメンバーから怒られたそうだ。

 それ位の事を気にしても仕方ないと思う。
 初心者はミスをするものだ。
 ミスをする前提でサポートしなければ。
 
 「それで…夜にお詫びを…しろ…」
 エミリオは初めて冒険者パーティーに参加した夜に同じパーティーメンバーの相手をしたと言いたいらしい。

 「責任を取れと言われ断れなく…」
 エミリオは依頼任務が終わるまでの間毎日代わる替わる相手をさせられたそうだ。
 街に戻って来てもからも周りから色々言われたらしい。
 「あいつは誰でも跨がせる公衆便所…」

 エミリオは涙目になりながら語りだす。

 「あたしは初めてだったんですよ!」
 それなのにと泣き出す。
 「相手をしたのもその時…だけです。」
 なのに。
 俺にもヤらせてよとか言われたんだろうな。

 俺は優しく抱き寄せ頭を撫でてやる。
 
 「辛い時は泣いても良いんだよ!」
 エミリオは声をだして泣き出す。

 頭を撫でながら俺は意外と早くヤレそうだと嗤う。街では居場所がないらしい。
 ならば俺がエミリオの居場所を作れば良いだろう。
 「グフフフ」
 心の中で下衆い感情が芽生えた。


 泣き疲れたエミリオはそのまま寝てしまった。
 起きたばかりなのにまた寝るの?と少し呆れた。
 多分だが、貧乳のエミリオへの態度からして罰金はエミリオに課せられるな。
 で、支払えずに奴隷落ちという流れになるだろう。

 では、どうするか?
 ①このまま街に行きエミリオが奴隷に落ちてから俺が買い取る。
 ②街に行くが罰金を払わずに逃げる
 ③街には行かずに逃げる

 ①は確実にエミリオが手に入るし俺の所有物なのだからどんな行為でも許される。が罰金が痛い。それにもう少し時間が有れば確実に出来そうなのに金貨を払う必要があるのかな?
 お金で奴隷が買える世界なのだエミリオに飽きた時に他の奴隷を買える資金は残すべきだと考え①は無いと断ずる。

 ②は多分だが、貧乳からギルドにはもう報告が行っているだろう。しかも依頼が失敗したのは冒険者パーティーに非があると捏造されている可能性もある。
 下手したら街に入る時に兵士に囲まれて問答無用で犯罪者扱いを受けそうだ。俺的には無いが②は保留しよう。

 ③が一番オススメだと思う。貧乳にはエミリオの存在が知れているが街に向かう途中の夜営で魔物に襲われて亡くなったと言えば良いだろう。ようは、見付からなければ良いたけだ。
 冒険者パーティーが全滅しているならば責任の所在が曖昧になる。最終的にはギルドが斡旋したのだからギルドの責任になるだろう。

 エミリオが目を覚ましたら相談するとしよう。


♢  ♢  ♢

 「え!あたしがですか?」
 エミリオは驚いて聞き返してくる。

 「俺は間違いないと思う。」
 どんな社会であっても責任の追及は有るだろう。今回は自分のミスを揉み消す為に貧乳が積極的に動くはずだ。

 大勢の目がある中で罪を糾弾するだろう。
 冒険者パーティーのミスで依頼者に危険が及んだと。
 「でも、あたしは臨時ですよ!」
 臨時も正規も関係ない。生け贄が必要なだけだ。
 「ギルドが黙ってませんよ!」

 甘い考えだと俺は言った、ギルドも何故そのパーティーメンバーを承認したのかと非難を受けるのは避けたいはずたと。 
 ギルドは守ってくれないだろう。

 「悪いようにはしません」
 等と言い罪を認めさせようとするはずだ。ギルドに矛先が向かう前に収めたいしな。

 「あたしは、とうすれば…」

 「俺が様子を探ってこよう。」
 街の様子を俺が見て来るよとエミリオには答えた。
 俺の予想が当たっててもハズレててもどっちでも良い。エミリオの冷静な判断力を奪えれば俺の勝ちだ!
 
 頼る相手が居なくなれば必然的に俺に依存する事になる。
 
 「田村さんはどうして?」
 何故私にそんなに親切にしてくれるのかとエミリオは聞いてきた。

 「俺は悪が許せないだけだ!」
 俺はエミリオの目を見て、罪の無い人を助けるのは当たり前だと答えておく。

 「田村さん…ありがとう。」
 また泣き出しそうな顔になっていた。
 人の良い人は俺の言葉を真に受けるだろう。

 エミリオは俺の真意に気付けないだろう。

 あと少し、あと少しだなと嗤う。



 
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