世界の中心は君だった

KOROU

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四章

過去―急転の低学年―

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 狐は小学校の入学式を経験したことがない。
 人生初という経験で貴重な機会を、風邪で欠席してしまったのだ。
 だからこそ、皆から数日遅れで狐は小学校に登校した。

 ランドセルも希望の物とは違ったけれど、それでも新品の綺麗なランドセルだった。
 本当はピンクや赤の女の子らしさがあるランドセルが欲しかったのだが、それは親戚と家族一同に却下されて説得された。
 そのランドセルを背負って、狐は小学校に通っていた。

 低学年の時の先生は凄く優しく穏やかだった。少し小太りだったが可愛らしさがある先生だった。
 狐は先生の言う事は守るように努めていた。素直で物分かりの良さはこの頃から今もある一生物の個性だ。
 また、保育園の時から言われていた面倒見が良い世話焼きな面も小学校では役に立った。

 班ごとの発表会や普段のお知らせなど、そういった面で他の子が気付いていない所や他の子が分かっていない所を教える事が得意だった。
 そんな事もあってか、成績は大体九十点から百点を行ったり来たりと好成績だった。
 本を読む事も皆と遊ぶ事も好きだった。
 読書の時間では読書感想文などが掲示されたり、読書記録がクラスで一番だった。
 皆との遊びにはいつも参加していた。クラスの子達の大半と遊ぶ仲でもあった。

 勉強も遊びも手を抜かず、家に帰っても勉強と遊びをバランス良く行っていた。母親の家事や炊事を手伝うなどもしていた。

 これだけを見れば、何の異常も、何も困り事がないかのような低学年の生活だった。
 しかし、いじめの原因となった転校生がやってきて、段々と性別を意識するようになり、保健の授業があってから、狐の生活は急転する。

 性別を意識するようになっていったのは、保健の授業からだ。
 保健の授業で行われた性知識としての授業。その授業から狐も周りも性別などを気にするようになる。
 その授業で、狐は「一生性別は変わらないのか」という質問をした。それはその場で何事もなかったかのように終わったが、後日、それがいじめに反映されるようにもなる。

 かといって、性知識の授業が悪いとは狐は思っていない。むしろ悪いのは、いじめをしていた転校生達だ。
 転校生達は一人を対象として陰でいじめをしていた。それをたまたま見かけて狐は止めに入ったのだが、そこから狐へのいじめが始まった。

 最初は筆箱や小道具がゴミ箱に捨てられるなど、嫌がらせ的な物が多かった。次に、死ねとか消えろとか女みたいな奴といった暴言だ。そこから暴力が始まり、最終的には性的被害に遭った。

 狐は一年程は耐えていた。しかし、味方になってくれていた保健の先生の産休と決定的ないじめが重なったのだ。

 そのいじめは、狐が知る中でも酷かった。
 服を無理矢理脱がされて、殴られ蹴られ、暴言を吐かれた。そして、いじめっ子達が見ている目の前でオナニーのまねごとをさせられた。
 それらを写真に撮られて、翌朝皆に発表するとまで言われた。実際、写真は先生の机に置いてあり、狐は泣きながら回収して近所のゴミ捨て場に廃棄した。

 その時の狐の思いは、自分も推し量るに余りある。記憶を持っていても、受けたのは自分ではない。狐本人だ。その思いは、およそ小学校四年生が知るには大きすぎて深いものだったとしか言いようがない。

 ましてや、今でいうLGBT的な要素を持つ狐は、世界観や価値観ではなく、存在の拒絶として受け取ったのだろう。『私は存在していてはおかしい存在なのだ』と。

 それが結果的に、自殺企図へと繋がる。
 狐は十一歳にして、自殺を図った。死ぬ事は出来なかったが、それが幸なのか不幸なのかは定かではない。
 十一歳の手で握りしめた包丁の柄は、どれほど冷たかったのだろうか。どれほどの思いが両手に握られていたのか。残念ながら、自分にはそれが分からない。

 その自殺企図と未遂を境に自分達は狐の中に現れるようになったが、狐の悲惨な現実はこれだけではない。
 不登校になり、心をなくしてもそれはまだ尚続いた。
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