りゅうはきっと、役に立つ。ピュアクール幼児は転生AI?!最強知識と無垢な心を武器に、異世界で魂を灯すためにばんがります!

ひつじのはね

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162 繊細かどうか

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「りゅー、しやべてきた。この島の名物、ここよこを食べる」
「ここよこ……? ああ、ココロコか。よくとれるやつだな」
「我、それ知らない。美味いものであれば所望する!」

おや……? 名物なのだから、美味いのだろうと思ったのだけど。
確かに、観光の本ではなかったから、そういったニュアンスではなく『よく食されているもの』書かれていた。名物とはまた違うのだろうか。

「ココロコは別にマズくはねえけど、美味いかっつうと……独特?」
「じゃあ我、別の美味いものがいい!」

すぐさま意見を翻したファエルをじろりと睨み、じっくり考える。
そうなのか……。とびきり美味しくないのは残念だけれど、でもせっかくだから、地方でしか食べられないものを食べるべきだろう。
だって、ここを逃したら二度と食べられないかもしれない。
違うものがいいと駄々をこねるファエルを連れ、私たちは来た道を戻って港町へやって来た。
カバンから出してもらったパンたちも、ご機嫌に周囲を散策している。

「ここよこ、どうちてりゅーたちの居た島でとえない?」
「さあな? 海の環境が違うんじゃねえ? そもそもあんまり他所では見ねえよ」

正直、ココロコの情報はとても少ない。
よく食されている、ということ、そして赤色をしている、と書いていたくらい。
もちろん挿絵などなかったので、それが植物なのか生き物なのかもわからない。
でも、リトの口ぶりからするに、海中でとれる何かだろう。
知りたくてうずうずする身体を押さえて、『楽しみ』を楽しむことにする。
詳細を聞けば早いだろうけれど、聞かない。
早く見て、食べてみたくて、落ち着かない。私は、これが楽しいことを知っているから。
ああ、堪らない。
もしココロコが美味しくなくても、それでいい。
だって、今、とても楽しいから。

だんだん早くなってくる足がついに駆け出して、大喜びのパンが弾みながら隣を走る。
その背中から弾き出されそうなキンタロが、スタントマンのように私に飛び移った。
勢いよく飛びつかれて、私の身体が大きく揺れる。
わた、わた、と乱れた足が、それでもきちんとバランスを取り直して体勢を戻した。
素晴らしい、人間の感覚と運動能力。こんな難しいことを、いとも簡単に。

「りゅー、しゅごい」
「何が凄いのやら……? 我なんて、飛べるんですけどぉ?」
「がるーも、飛べる」
「あれは鳥でしょぉ?! 飛べるものなの! そういう形!」

確かに? ファエルは、どうしてそんな形なのに飛べるんだろう。だから、飛ぶのにも微かに魔力を消費するのか。
まあ、この世界には理不尽な生き物がたくさんいる。
きっと、リト学の世界に生きる生き物たちなんだろう。

「我は、ルミナスプゆえ……。この翼は、誇りと共にこの背にあるのよ!」
「そえは、答えなない。ふぁえる、飛ぶの遅い。るみなしゅぷ、野生で生きらえない」

飛ぶのが上手になったガルーに比べて、ファエルはちっとも機敏じゃないから。飛んでも走っても、速くない。

「弟子に言われたくないですけどぉ?! 待ってその前に、どうして野生で生かそうとするわけ?! 文明社会で生かしてあげて?!」

そうか、ルミナスプも『人』に近い生き物だった。何せ見た目はカエルだから。

「って言うかぁ、弟子なんて野生だと秒も生きてられないと我思う!」
「りゅー、ちょっと生きてた」

秒ということはない。ペンタという助けと、ラザクという移動手段を使ってではあるけれど。

「やめてくれ……思い出したら足が震える」

呻いたリトが、両手で顔を覆ってしまった。どうやら、私はリトにトラウマを植え付けてしまったよう。だから、過保護なのか。
どの辺がダメなのだろう。マーシュドルがダメということはないだろうし、ラザクがどうこうでもないだろう。
じゃあ、マーシュドルの口が爆発したところ? それとも、その口から私の脚がはみ出していたところ?
それは、私の大事な服が破れるよりも、辛いことだったのかもしれない。
私は、脚の力が抜けるほどの衝撃を受けたことがないから。

リトが黙って私を抱き上げ、そっと抱きしめて息を吐いた。
いつもより早い鼓動を感じて、かわいそうだと思う。
汗ばんでぺたぺたした手で、リトの頭を撫でた。
リトの毛がいっぱいくっついてくるけれど、構わず撫でた。

「りと、大丈夫。こわいない」
「怖いわ、馬鹿」

即答で返され、困って眉尻を下げると、何と言うべきなのか考える。
リトが怖いというなら、怖いのだろう。
今、私はリトがここにいるのを知っているから、ちっとも怖くないけれど。でも、リトは怖いのだ。

「りとが怖いこと、りゅーはわかやないけど、理解ちた。でも今、安全を確認済み。大丈夫」
「そうじゃねえんだよなあ……」

苦笑して顔を上げたリトは、また煮詰まりそうな銀の瞳を揺らめかせ、私を見つめた。
ちょっと上手になったと思ったのに、まだまだらしい。

「やっぱり、りゅーがちゅよくなる必要がある。りと、ちょっちょ心配」
「うっ……! うるせえ! 俺は結構繊細なんだよ!」
「はーん、そんな図体してよく恥ずかし気もなく言――アアーッ」

ピン、と指で弾かれたファエルが、前方へ飛んで行った。
そうなのだろうな。人間はAIよりも、今の私よりも、たくさん感情があるだろうから。
きっと、こんなに大きいリトだから、感情も小さい私よりたくさん詰まっているに違いない。
クリームパンだって、大きい方がたくさんクリームが入っている。

「りゅーも、大きくなって繊細になる」
「い、いや……そこは、ならんでもいいっつうか……」

お前は、そのくらいがちょうどいい、なんて言って笑う。
そうか、ちょうどいいならそれでいい。リトにとって、ちょうどいい方がいい。

「繊細さにかけては右に出るものナシの我を抜いて、その話題ができようか!」

真正面からビビビビッと飛んで戻って来たファエルが、私の懐に飛び込んだ。

「お前のどこが繊細だ」
「何を異なこと妙なこと! 我ってば頭の先からしっぽの先まで、繊細でできてますけどぉ?!」
「ふざけんな。頭の先からしっぽの先までウザいが詰まってるわ!」

たい焼きのあんこのようだな、と思った私の口から、たらりとよだれがこぼれる。
クリームパンやら、たい焼きやら、美味しそうなものばっかり出てくるものだから。
ココロコは、甘いだろうか。
赤いというから、もしかすると不思議な果実かもしれない。レッドジェムの美味しさを思い出して、反対側の口の端からもよだれが落ちる。
ぐいっとリトの服で拭ったところで、気付かれた。

「おいぃ?! なんでお前、そんなヨダレまみれになってんだよ?!」
「美味ししょうな会話だった」
「美味さにかすりもしてない罵倒でしたけどぉ?! 我、弟子の感性がわかんないっ!」

べったりと色の変わった自分の服を見て、リトがしわしわの顔になる。
アクルマフルスできれいになると思うけれど、でも、きっとまた拭くから。
せっかくだから、まだ残しておこうと小さく笑ったのだった。


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文学フリマ等で余分に発注した分を少しだけ『ひつじのはね』ショップに出しましたので、買いそびれた方はよろしければ~!

そして本日、なろうさんで新作の予約でへまをして投稿が開始されてしまいました!!どうにもならないので読んでいただけると嬉しいです!!!告知ゼロ!!
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