りゅうはきっと、役に立つ。ピュアクール幼児は転生AI?!最強知識と無垢な心を武器に、異世界で魂を灯すためにばんがります!

ひつじのはね

文字の大きさ
32 / 184

31話 カッコいい

しおりを挟む
旅にも色々あるだろうけれど、リトはどのような方法を――いや、この世界ではどのような旅の種類があるのだろうか。
今のところ自動車らしきものは見たことがないけれど、飛行機や電車に該当するものはあるのだろうか。

周囲を見回しても歩く人ばかり。馬がいるのだから、最低限馬車らしきものはあるだろう。
ただ、路面が悪い。
もし私の知る自動車があったとして、この路面では快適に走るとはいかないのではないか。少なくとも、スピードを出せる状態ではない。

旅について詳細を聞いておかなくてはいけない。
そう思ったところで、リトはひょいと並ぶ店の中に入った。

外の強い光が遮られ、急に明度の変わった視界に目を瞬かせる。
そうして視界に飛び込んできたのは、所狭しと並ぶハンガーラックと、そこへぎゅう詰めに掛けられた服。
壁際の棚には、大きなロールの布地が並んでいた。

「さて……来たものの、お前に何が必要なのか、俺には分からんな」

さっと店内を見回したリトは、早々に諦めたらしく店員を呼んだ。

「何かお探しですか?」
「この通り1着もまともな服を持ってないから、こいつに必要なもの全部揃えたい。俺は不慣れでな、頼めるか?」
「全部ですか?! ええと、何着くらいをお考えでしょう……?」
「そういうのも分からねえから、任せていいか?」

年若い、と言うよりもまだ子供らしさの残る女性は、途端に目を丸くして年上の店員を呼びに行った。
親し気な様子から、親子なのかもしれない。

「失礼いたしました、店長のマリーナです。当店でお子様の服を揃えて下さるとのこと、ありがとうございます」

マリーナさんはさっとリトの全身に目を走らせた。恐らく彼の服と価格帯や雰囲気を合わせる形で案内してくれるのだろう。

「お下着は何かご希望ございます? なければ一般的なものをお持ちします。最低限として普段着は上下3着ほど、ですがお子様ですので、上はたくさんあるに越したことはありません。お出かけ用などは――」

若い店員が空のハンガーラックを持ってくると、マリーナさんはものすごい勢いで話しながら、店内を歩き回った。
そして過積載感満載のハンガーラックから魔法のように次々何か選び出しては、空のラックに掛けていく。

「では、まずこちらから3着選んでくださいますか? 少し大きめですが、それでも来年には着られないと思いますので、そこを念頭に置いて選んで下されば」

ふんふんとただ頷くだけだったリトが、言われてぎょっとしたようにハンガーラックを見つめた。空だったそこには、既にたくさんの服がかかっている。
そして頼みのマリーナさんはすでに別の空ラックを用意してまた次々服を抜き出しては掛け始めていた。

「……リュウ、どれがいい?」
「りゅーは、どえれもいい」
「うっ……そう言うなよ、なんでもいいから3つ選んでくれ!」

そう言って下ろされたものの、私は一体何を基準に選べばいいのだろうか。
明らかにリトの服より小さな服は、きっとどれも私のサイズに合っているのだろうし。

「ふふ、好きな色とか、手触りとか、ないかな? こんな可愛い子にうちの服を着てもらえるなんて、嬉しいな!」
「りゅー、かわいい?」
「ええ、とっても可愛いわよ!」

にこにこする若い店員は、嘘を言っている風には見えない。私には、『可愛い』が戻ってきたのだろうか。

店員の登場にやれやれと安堵しているリトを見上げ、また店員を見上げた。

「りとは、かわいい?」

リトは、見目が整っていると思う。私もそうであれば良いと思ったのだけど、店員は私の指した先を見て、しどろもどろになった。

「えっ? あの、その、可愛いと言うか、カッコいいです。その、とても」

みるみる店員の顔が赤くなり、こんな表情もあるのかと少し驚いた。顔の筋肉だけでなく、色を変えることで表現する場合もあるのか。
一体、どうやって。
私は、まだまだ修練が足りないらしい。

「お前な、言わせるなっつうの。悪いな、ありがとよ」

リトが苦笑して片手を挙げた。
似たようなものだと思っていたけれど、その二つは何が違うのだろうか。見目が整っているという意味だと思っていたけれど。

「りゅーは、かっこいいくない?」

リトの方を向いてしまった店員を引っ張ると、慌てて屈みこんでくれた。

「えっ? あ、ごめんね! 君はまだ小さいから、『可愛い』でいいの。だけど、カッコよくなりたいなら服選びも頑張らないとな~?」

そう言ってラックに掛かった服を広げてみせる。

「きれいな髪と瞳の色だから、服も合わせるとかわ……カッコいいのよ! この柔らかいミントグリーンとか、すごく素敵だと思うわ! ピュア感と柔らかさを引き立てる白系もすっごく素敵!」
「りゅー、そえにすゆ!」

なるほど、瞳の色や髪の色を考慮して選択すればいいのか。
町ゆく冒険者であろう人たちは、割と茶色っぽい煤けた雰囲気の衣服だった気がするけれど、それは私と色が違うからなのだろう。

選び出された数着を抱えると、リトがマリーナさんと何かやり取りしながら振り返った。

「決まったか? ならもう、今着せてもらえ」

簡単に言われ、私はぎゅっと抱えた服に、視線を落とした。

着ても、いいのだろうか。

これは、私の服。
私のための服。

服を着替えるだけのことが、こんなにも心臓を弾ませるものだと、私ははじめて知ったのだった。

しおりを挟む
感想 311

あなたにおすすめの小説

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化! 転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。 どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。 - カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました! - アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました! - この話はフィクションです。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜

るあか
ファンタジー
 僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。  でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。  どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。  そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。  家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

処理中です...