りゅうはきっと、役に立つ。ピュアクール幼児は転生AI?!最強知識と無垢な心を武器に、異世界で魂を灯すためにばんがります!

ひつじのはね

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ちらり、と振り返った黒い瞳が、『ちゃんとついてきているか?』と確認して満足そうに前を向く。
太くて短い足がぱたぱた動いて、白い尻と、巻き上がった短いしっぽがふりふり揺れる。
大分足腰のしっかりしたパンは、得意げに私たちの前を行く。

「おいこら、ちび犬、そっちじゃねえぞ」
「ぱん、こっち!」

慌てて駆け戻って来ても、やっぱり前に行く。
どうしても、先陣を切りたいらしい。
その背中には、四肢でがっぷりとパンを掴んで一体化しているキンタロがいる。多分、寝ている。
ガルーは、私の肩でおまんじゅうのようになっていた。
道行く人が、楽しそうにパンたちを振り返るから、やっぱりみんなパンたちが好きなのだろう。

時刻はもう昼前。やっと3体が起きてきたと思ったのに、キンタロはまたすぐ寝てしまった。
だけど、キンタロは賢い。今は、使えるだけ魔力を使って成長している、そんな気がする。現に、姿が変わった。
ひとまわり大きくなったのみならず、当初リスザルモデルであったはずの顔が、ニホンザルに近いものになっている。人間の赤ん坊のようで、とてもかわいい。
多分、小さいのは嫌だったのだろう。きっと、大きくなる。

「りと、みんな大きくなったら、どうちたらいい?」
「どう、って何だ。別に、構わねえだろ? 犬は結構デカくなるか? つっても、知れてるだろ」

私は、少し首を傾げた。知れている、とはどのくらいのことを指すんだろう。
私が知っている中で大きいのは、魔物。

「まもも、大きいのはまーしゅどるくらい?」

以前、私とラザクを食べようとした、大きな大きなトカゲ。あのくらいは、『知れている』範囲だろうか。

「でけえ魔物なんざ、とんでもないぞ。小山のようなやつもいる」
「どうやって、町に入る?」

そんなに大きいのか、と驚いて3体に視線をやった。

「そんなもんが町に入ってみろ、大変なことに――」

釣られるように視線を巡らせながら、リトがふいに言葉を切った。
至極真面目な顔で私を見つめて、たらりと汗を一筋。

「まさかとは思うが……本当に、まさか、そんな馬鹿なことはねえと思うんだけどな? まさかそんなにデカくなる可能性がある……のか? この弱っちいヤツらが?」

そんなに『まさか』を多用しているのを、初めて聞いた。
ちゃんと言葉を理解しているパンが、ピンと耳を立てて振り返る。リトが弱っちいと言ったから、怒っているかもしれない。

「可能性、はもちよんある。でも、そんなに大きいと、一緒にいやえない」
「そ、そうだぞ?! いいか、よく聞け? 図体ばっかりデカくなってもしょうがないからな?! 宿の部屋を見てみろ、あそこに入れなかったらイヤだろ? 扉のサイズを考えろよ?! そもそも、そんなサイズになったら町の外に捨てていくぞ」

捨てては行かないけれど。
リトがそんなことを言うから、寝ていたはずのキンタロまでが、思案するように顔を上げてこちらを見ていた。そんなに大きくなりたかったんだろうか。
小山のようになろうと思ったら、ものすごい年数が必要だと思うけれど。多分、私が生きている間には無理ではないだろうか。

「我、召喚獣が強いのは大歓迎ですけどぉ? いいじゃん、デカけりゃ送還しとけばいいだけですしぃ~」
「ああ、そうか。なるほど、それならまあ……」

安堵した様子のリトとファエル、そして顔を見合わせる私と三体。
(……どうする?)三体が、そう言った気がして、少し笑った。良かった、大きくなることよりも、私といることを望んでくれる。
強くなりたい、だけど、一緒にいたい。だって、一緒にいたいから強くありたいのだ。
私と同じきもちが、伝わってくる。
ぎゅっとリトの首を抱きしめて、頬をすり寄せた。

「りゅーは召喚獣なないから、大きくなっても、ちちんとお部屋に入る!」
「そりゃそうだ。はは、心配すんな。もしお前が小山のように大きくなったら、俺が外に居る」

何でもないように、そう言ったリトの言葉。私は、しがみついたまま、大きく目を見開いて息を止めた。
すごいな、リトは。
こんなにも、私を嬉しくする。
リトは、ずっとそばに居る。私が、どうなっても。

「りと、りゅーも、そうする」
「ふ、お前はそんなことしなくていいぞ。俺は、ひとりで大丈夫だ」
「りと、大丈夫なない。りゅーは、そばにいる」

リトが、ぴくっと動いて、少し言葉につまづいた。

「…………大丈夫じゃ、ねえかもしれないけどな。でも、そういうもんだ」

リトは、そう言って大事に私を抱きしめたのだった。




結局、市場に着くまでにパンも寝てしまったので、パンとキンタロは私が抱えている。
そして私を、リトが抱えている。
パンの上にキンタロとガルーを乗せ、抱えながら魔力を注いでおいた。今のところ、魔力はアクルマフルスでしか使っていないから、かなり召喚獣たちに渡せる。

魔力操作のステップアップは、もう後半まで来てしまった。ただ、この辺りまでくると結構難しい。
ただ循環させるのでなく、思う通りに動かす、一部だけ動かす、そんな困難な課題が出始めたから。
これらをできなくとも魔法は使えるけれど、質を高めることになるのだとか。

「そいつら寝てる間に、昼飯にするか?」
「賛成! 我お腹すいた!」

いつの間にか賑やかな市場にさしかかっており、私が返事をする前にファエルが飛び上がった。
異論のない私も頷いて、色々な匂いを吸い込んでみる。
海と、生の魚の匂いがして、あまりいい匂いじゃない。だけど、知っている。これは、少し焼いただけでいい匂いになるのだ。
案の定、少し奥に入れば、香ばしい匂いが漂い始める。
リトの腕ほどもある大きな魚が、でんと網に置かれて皮目をぱりぱりさせている。

どうやって食べるのだろうと思ったら、一部を荒くほぐして粥にドン、と載せて渡していた。
焼いた海の魚は、大体塩味。きっとあれは塩気が強くて、お粥は甘くて。
じわっと口の中に唾液が溢れた。
じっと見つめていると、リトが私を揺すり上げた。

「あれを食うか?」

頷いて、いっぱいの唾液を飲み下す。
リトは同じお粥と、魚の団子をたくさんフライにしたものと、肉の挟まれたパン。ファエルは、リトの分から少しずつ。
相変わらず果物しか食べないペンタは、常にお弁当持参だ。
まだ起きない三体は、パンがリトの膝上、キンタロとガルーは、お盆の上で寝ている。そんな所に乗せたら、食材みたいだと思うのだけど。

「ん~~良きかな。鋭利な塩気をまろやかに包み込む、粥のとろみと甘み。良い塩梅である。古酒の供にも相応しきかな」
「古酒か、確かに……」

古酒は、別に古いお酒のことではないらしい。そういう種類なんだとか。
ファエルもお酒を飲むことに驚きつつ、そう言えばお酒を飲んだことがないなと思う。だけど、幼児の味覚には大概合わないそうだから、まあいい。

「きゃうっ!」

リトの膝で目を覚ましたパンが、小さい身体をめいっぱい伸ばしてテーブルに前足を乗せた。
必死に顔を寄せて、匂いでテーブルの上を探ろうとしている。

「落ちるぞ、危ない」
「ぱん、おしゅわり」

ハッとしたパンが、しっぽをふりふりきちんとお座りした。しきりと舌なめずりする口元から、たらっとよだれが溢れて、汚ねえとリトに怒られた。
どうやら、パンはこれらを食べられるらしい。


~~~~~~~~~

デジドラkindle版、発売しました!
『りゅうはきっと、役に立つ。ピュアクール幼児は転生AI?!最強知識と無垢な心を武器に、異世界で魂を灯すためにばんがります!1 ――デジタル・ドラゴン花鳥風月――』

紙書籍の方は、期間を決めて受注制作方式をとろうかなと思っています。
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