27 / 54
ゲーム前
乱入
しおりを挟む
「はーい、そこまで!」
パンパンと手を叩きながら近寄ってきたのは、呆れたような顔をしたサミュエルだった。
「ちょっと兄貴やり過ぎ。
人ん家でいちゃいちゃしないでもらえますか?」
そう、今日お茶会が開催されてるのは、アンドロフ公爵家のサロン。
「まぁ、そう言うなサミュエル。
お前が家で行われているお茶会に兄貴を誘った瞬間から、こうなることは分かっていたことだ。
あの、姉御に会えないとえげつないオーラを出していた兄貴に比べれば…」
そう言って、遠い目をして話すのはニコル。
「ヴィルフェルム!お兄ちゃんにもそうやって甘えていいんだぞ!遠慮はいらん!さぁ!」
言わずもがな、これはアラン殿下。
おかしいな、ゲームではこんなアホっぽいキャラではなかったのに、メインヒーローがこんなんで大丈夫なのか?
既にキャラ崩壊してる気がするけど。
「…」
キリアンは一言も発さず、無表情で立ってるのみ。
内心は、大勢の女性を前にして固まってるだけなのを知っている。
めちゃめちゃ初なのよ、この子。
今思い出した。
それなのに最初の頃、私にはよく突っ掛かって来れたわよね。
………解せん。
すっと背後から温もりが消えた。
ちらりと振り返ると、先程の柔らかい笑顔が嘘のような表情の抜け落ちた顔。
ルー様が何かを告げようとした瞬間、私とルー様を背後にして、サミュエルやニコルたちと対峙するように華奢な後ろ姿が私たちの前に立ちふさがった。
「ちょっとお兄様…」
俯き加減に声を低く震わせながらサミュエルに声を掛けるその人は、アンドロフ公爵令嬢。
「お兄様!」
「な、何だよ。カレン」
カレンとは、アンドロフ公爵令嬢のことである。
問い掛けるサミュエルは、妹であるカレン様にやや圧され気味な感じが否めない。
「せっかく…、せっかくいいところでしたのに!
何故邪魔をするのです!」
「え?」
「お茶会の度に恋する乙女のようにヴィルフェルム様を語るユリアーナ様は、まさに恋の宣教師!
人を愛するということはこういうことなのだと、教えていただけて、今日は目の前で2人のふれあいを見られるという奇跡が起こりましたのに!
くぅ!もっと見ていたかったのに!!
お兄様のせいで、今日のお茶会のテーマが半分パァですわ!!!」
「お、お茶会のテーマ…?」
「そうですわ!
ここにいる方々は、愛する人に全力で愛を捧げるユリアーナ様をお慕いしている者の集いですのよ。
もちろん、会長はこの私!
会員は今爆発的に増加中ですのよ。
近々、ユリアーナ様とヴィルフェルム殿下をモデルに会員限定で物語を発行する予定ですのよ。
お茶会の度にネタを提供してくださるから、もう私ニマニマが止まらなくて、それを隠すために必死だったんですの」
あぁ、それでニヤリとした読めない顔になっていたのか。
「って、そうじゃなぁぁぁい!」
「まぁ、ユリアーナ様。いかがなさいました?」
混乱する私に、カレン様が笑顔で振り返る。
瞳をキラキラ輝かせて、頬は少し紅潮しているのは気のせいだろうか。
しかし、色々衝撃的な発言が多すぎてどこから突っ込めばいいのか、もはや分からず項垂れるしかない。
「もしや、勝手に物語のモデルにしたことを怒ってらっしゃるの?」
不安そうに見上げてくるカレン様。
攻略対象の妹だけあって、すごい美少女なのだ。
その美少女にうるうると見上げられると、とてもいけないことをしたような気分になるのは、きっと私だけではないはず。
「い、いえ。
その物語で、ヴィルフェルム殿下のことを分かってくださる人が出てくる可能性があることを考えると、嬉しくは思っても怒ったりはしません」
「では、勝手に会を設立したことが不満でいらっしゃる?」
「…そこまで好感を持っていただけるのが不思議だというだけで、不満とまでは…」
「まぁ!それは、あれのせいですね!
ヴィルフェルム殿下を少し悪く言わないと、ユリアーナ様ったら全然惚気て下さらないから、当番制で悪役を回していましたの。
申し訳ないと、皆お茶会の後に落ち込んでは、窺った話で傷を癒していたのです。
でも、間違いなく私たちは、ユリアーナ様をお慕いしていますわ。
お兄様たちが姉御と呼ばせていただいていますが、私たちには是非ともお姉様と呼ばせていただく、許可を!」
確かに、最近嫌味を言われる度に相手が逆に泣きそうになっていることが多くて、誰かに言わされてるのかなとは思っていたけど、まさかこういうことだったとわ。
それに、お母様の同伴も減ってきて、私一人で参加するお茶会も増えてきたのはこういうことか。
そういうお茶会は、母親からゴーサインが出た令嬢一人で参加するもので、そういうものだとは思ってたけど、まさか自分を慕っている会も発足していたなんて、誰が想像できよう。
カレン様の後ろに、いつの間にか令嬢たちが同じように目を輝かせながら、一心に私を見つめてくる。
こうなったら、自棄糞だ。
「よ、呼ばれるくらいでしたら…」
いいですよ、と言い終わるか言い終わらないうちに、サロン中が女子たちの歓喜の声で満たされた。
「ただし!」
私の一言でピタリと止まる。
「1つだけお願いがあります。
ルー様を悪く言うのは止めてくださいね」
「はい!もちんですわ、お姉様!!」
令嬢たちの声がキレイに重なって響いた。
パンパンと手を叩きながら近寄ってきたのは、呆れたような顔をしたサミュエルだった。
「ちょっと兄貴やり過ぎ。
人ん家でいちゃいちゃしないでもらえますか?」
そう、今日お茶会が開催されてるのは、アンドロフ公爵家のサロン。
「まぁ、そう言うなサミュエル。
お前が家で行われているお茶会に兄貴を誘った瞬間から、こうなることは分かっていたことだ。
あの、姉御に会えないとえげつないオーラを出していた兄貴に比べれば…」
そう言って、遠い目をして話すのはニコル。
「ヴィルフェルム!お兄ちゃんにもそうやって甘えていいんだぞ!遠慮はいらん!さぁ!」
言わずもがな、これはアラン殿下。
おかしいな、ゲームではこんなアホっぽいキャラではなかったのに、メインヒーローがこんなんで大丈夫なのか?
既にキャラ崩壊してる気がするけど。
「…」
キリアンは一言も発さず、無表情で立ってるのみ。
内心は、大勢の女性を前にして固まってるだけなのを知っている。
めちゃめちゃ初なのよ、この子。
今思い出した。
それなのに最初の頃、私にはよく突っ掛かって来れたわよね。
………解せん。
すっと背後から温もりが消えた。
ちらりと振り返ると、先程の柔らかい笑顔が嘘のような表情の抜け落ちた顔。
ルー様が何かを告げようとした瞬間、私とルー様を背後にして、サミュエルやニコルたちと対峙するように華奢な後ろ姿が私たちの前に立ちふさがった。
「ちょっとお兄様…」
俯き加減に声を低く震わせながらサミュエルに声を掛けるその人は、アンドロフ公爵令嬢。
「お兄様!」
「な、何だよ。カレン」
カレンとは、アンドロフ公爵令嬢のことである。
問い掛けるサミュエルは、妹であるカレン様にやや圧され気味な感じが否めない。
「せっかく…、せっかくいいところでしたのに!
何故邪魔をするのです!」
「え?」
「お茶会の度に恋する乙女のようにヴィルフェルム様を語るユリアーナ様は、まさに恋の宣教師!
人を愛するということはこういうことなのだと、教えていただけて、今日は目の前で2人のふれあいを見られるという奇跡が起こりましたのに!
くぅ!もっと見ていたかったのに!!
お兄様のせいで、今日のお茶会のテーマが半分パァですわ!!!」
「お、お茶会のテーマ…?」
「そうですわ!
ここにいる方々は、愛する人に全力で愛を捧げるユリアーナ様をお慕いしている者の集いですのよ。
もちろん、会長はこの私!
会員は今爆発的に増加中ですのよ。
近々、ユリアーナ様とヴィルフェルム殿下をモデルに会員限定で物語を発行する予定ですのよ。
お茶会の度にネタを提供してくださるから、もう私ニマニマが止まらなくて、それを隠すために必死だったんですの」
あぁ、それでニヤリとした読めない顔になっていたのか。
「って、そうじゃなぁぁぁい!」
「まぁ、ユリアーナ様。いかがなさいました?」
混乱する私に、カレン様が笑顔で振り返る。
瞳をキラキラ輝かせて、頬は少し紅潮しているのは気のせいだろうか。
しかし、色々衝撃的な発言が多すぎてどこから突っ込めばいいのか、もはや分からず項垂れるしかない。
「もしや、勝手に物語のモデルにしたことを怒ってらっしゃるの?」
不安そうに見上げてくるカレン様。
攻略対象の妹だけあって、すごい美少女なのだ。
その美少女にうるうると見上げられると、とてもいけないことをしたような気分になるのは、きっと私だけではないはず。
「い、いえ。
その物語で、ヴィルフェルム殿下のことを分かってくださる人が出てくる可能性があることを考えると、嬉しくは思っても怒ったりはしません」
「では、勝手に会を設立したことが不満でいらっしゃる?」
「…そこまで好感を持っていただけるのが不思議だというだけで、不満とまでは…」
「まぁ!それは、あれのせいですね!
ヴィルフェルム殿下を少し悪く言わないと、ユリアーナ様ったら全然惚気て下さらないから、当番制で悪役を回していましたの。
申し訳ないと、皆お茶会の後に落ち込んでは、窺った話で傷を癒していたのです。
でも、間違いなく私たちは、ユリアーナ様をお慕いしていますわ。
お兄様たちが姉御と呼ばせていただいていますが、私たちには是非ともお姉様と呼ばせていただく、許可を!」
確かに、最近嫌味を言われる度に相手が逆に泣きそうになっていることが多くて、誰かに言わされてるのかなとは思っていたけど、まさかこういうことだったとわ。
それに、お母様の同伴も減ってきて、私一人で参加するお茶会も増えてきたのはこういうことか。
そういうお茶会は、母親からゴーサインが出た令嬢一人で参加するもので、そういうものだとは思ってたけど、まさか自分を慕っている会も発足していたなんて、誰が想像できよう。
カレン様の後ろに、いつの間にか令嬢たちが同じように目を輝かせながら、一心に私を見つめてくる。
こうなったら、自棄糞だ。
「よ、呼ばれるくらいでしたら…」
いいですよ、と言い終わるか言い終わらないうちに、サロン中が女子たちの歓喜の声で満たされた。
「ただし!」
私の一言でピタリと止まる。
「1つだけお願いがあります。
ルー様を悪く言うのは止めてくださいね」
「はい!もちんですわ、お姉様!!」
令嬢たちの声がキレイに重なって響いた。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
悪役令嬢発溺愛幼女着
みおな
ファンタジー
「違います!わたくしは、フローラさんをいじめてなどいません!」
わたくしの声がホールに響いたけれど、誰もわたくしに手を差し伸べて下さることはなかった。
響いたのは、婚約者である王太子殿下の冷たい声。
わたくしに差し伸べられたのは、騎士団長のご子息がわたくしを強く床に押し付ける腕。
冷ややかな周囲のご令嬢ご令息の冷笑。
どうして。
誰もわたくしを信じてくれないまま、わたくしは冷たい牢の中で命を落とした。
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
谷 優
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。
ただ、愛されたいと願った。
そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。
◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。
『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています
六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。
しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。
「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした
ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!?
容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。
「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」
ところが。
ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。
無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!?
でも、よく考えたら――
私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに)
お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。
これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。
じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――!
本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。
アイデア提供者:ゆう(YuFidi)
URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる