隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが

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1年生編:1学期

第24話 放課後のゲームセンター

 期末テストの返却がすべて終わった日の放課後、昼間まで張り詰めていた緊張が嘘のように、ゆるくほどけた空気が漂っていた。

「……やっと終わったな」
 晴は椅子に深く腰掛け、背もたれに体重を預けたまま天井を見上げた。
 息を吐くと、胸の奥に溜まっていたものが一気に抜けていく気がする。

「ほんとそれ。今日はもう何も考えたくない」
 隣の美羽も、机に突っ伏したまま、くぐもった声でそう言った。
 その指先は、さっきまで握っていた答案用紙の角を無意識に折っている。

 良かった科目もあれば、反省点の残る科目もあった。
 それでも――「終わった」という事実だけが、三人の肩から重りを外していた。

「ねえ、」
 美羽がふいに顔を上げる。少しだけ悪戯っぽい目をしていた。

「このあと、ちょっと3人で遊びに行かない?」

「遊びに?」
 晴が聞き返すと、美羽は椅子を引いて立ち上がり、窓の外を指さす。

「駅前のゲームセンター!今日くらい、いいでしょ!テストも終わったんだし」

 すると、後ろの席の紗耶が口を開いた。
「いいね!実は私、最近、ゲーセンとか行く機会なくて……」

 そう言って、紗耶は少しだけ視線を落とした。
 けれど次の瞬間、顔を上げると、その瞳は期待にきらきらと輝いている。

「晴くん、ゲームセンター行こ?」
 控えめなのに、どこか強い意思を感じさせる紗耶の一言だった。

 晴は一瞬だけ迷ったものの、結局小さく肩をすくめる。

「……そうだね、遊びに行こうか!」

 こうして三人は、制服のまま、駅前のゲームセンターに向かった。

 駅前のゲームセンターは、いつもより少し賑やかだった。
 自動ドアが開いた瞬間、電子音と派手な光が一気に押し寄せてくる。

「うわ……」
 晴が思わず足を止める。

「音すごいね、なんか懐かしい感じがする。」
 紗耶はきょろきょろと辺りを見回した。

 クレーンゲームのアームが動く音、メダルが転がる音、画面越しの歓声。
 それらが混ざり合って、独特のにぎやかさを作っている。

「じゃあ、まずはプリクラを撮りに行こ?」

 美羽は迷いなく、奥の一角を指さす。
 カラフルな装飾と、女子高生たちの笑い声が集まっている場所だ。

「え、俺も一緒に撮るの?」
 晴は思わず一歩引いた。

「当たり前でしょ!」
 美羽は即答だった。

「三人で来たんだから。晴くんだけ外で待つとか、なしだからね」

「……はいはい」

 半ば諦めたように答えながら、晴はプリクラ機の中へ押し込まれる。

 プリクラ機の中は、思っていた以上に狭かった。
 肩と肩が自然に触れる距離で、晴は無意識に背筋を伸ばす。

「近い近い……」

「晴、動かないで顔切れるから!」

 その言い方があまりに慣れていて、晴は口を閉ざした。
 一方、紗耶はそのやり取りを見て、くすっと小さく笑う。

「晴くん、緊張してる?」

「してねーよ……」
 そう言いながら、表情が硬いのは自覚していた。

 画面にカウントダウンが表示される。

「はい、笑ってー!」

 シャッター音が鳴るたび、光が瞬く。
 美羽は自然な笑顔で、紗耶は少し控えめに、そして晴は――どうしてもぎこちない。

「……晴くん、顔固すぎ」
 撮り終わった直後、紗耶が即座にツッコミを入れた。

「仕方ねーだろ!」
 晴は思わず声を荒げる。

 落書きタイムでは、美羽が迷いなくペンを取った。

「じゃあ、落書きしていくね~」

 そう言って、頭の上に妙な王冠と星を描き足す。

「なんで俺だけ……!」

「晴くん、似合ってるよ(笑)」

「よし、できた!そしたら印刷するね~!」
 そう言われた瞬間、紗耶は胸の前で手を組み、少しそわそわする。

「ちゃんと撮れてるかな……?」

「大丈夫、可愛く撮れてるよ!」
 美羽が即答すると、紗耶はほっとしたように笑った。

 次に向かったのは、UFOキャッチャーのコーナーだった。

「これ……かわいい」
 紗耶が、小さなぬいぐるみをじっと見つめる。

「取ってあげよっか?」
 晴が紗耶に声をかけた。

「え、いいの?」
 そう聞き返しながらも、紗耶の声には期待がにじんでいた。

「まぁ、取れるか分からないけど.....」
 晴は肩をすくめて、100円を入れる。

 アームがゆっくりと動き出す。
 狙いは悪くなかった――が。

「あ、」
 持ち上がったぬいぐるみは、途中で力尽きたように落ちてしまった。

「惜しい!」
 思わず、紗耶が声を上げる。

「晴、交代して!私が取ってあげる!!」
 美羽は慎重にアームの角度を微調整する。
 ボタンを押すと、アームが伸び―― ころん、と軽い音を立てて、景品が落ちた。

「よし、取れた!」
 美羽は小さくガッツポーズを作る。

「やった!!ありがとう、美羽ちゃん!」
 紗耶は目を輝かせながら、ぬいぐるみを受け取った。

「良かったね」
 大事そうにぬいぐるみを胸に抱えるその姿を見て、晴は少しだけ肩の力を抜いた。

 しばらく遊んだあと、三人はゲームセンターを出た。
 空はすっかり暗くなり、駅前の喧騒もどこか柔らかく感じられる。

「楽しかったね」
 紗耶が、ぽつりと言った。

「うん。結構楽しかったな!」
 晴も、素直にそう答える。

 美羽は二人の様子を見て、ゆっくりとうなずいた。

「こういう時間も、大事だよね!また遊びに行こうね!!」

 並んで歩く三人の影が、夕暮れの道に長く伸びていった。
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