紫電の射手 勇者パーティで無能扱いされて追放しかし、雷に打たれて世界最強の魔法剣士に!

秋水

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第一章 紫電の射手

act.6 ギルド認定と空回りの恋模様

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 今までイグナールもモニカも2年間の旅で強くなった。しかしろくな準備もせず、未知の力頼りで進むのは危険だ。

「焦る気持ちはわかる。けど準備も必要だし、私たち二人だけじゃ厳しいわ。ギルドの認定も受けなきゃいけないしね」

 魔王討伐の大義の名のもと、多くの人間が魔界へと乗り込んだ。そしてその大多数が帰らぬ人となった。それでも身の程知らずのならず者は後を絶たず、無謀と勇気をはき違えた愚か者が勇み足にならぬようにと設立されたのが討伐ギルドである。

「ディルクみたいな勇者じゃない私たちはギルドの依頼をこなして、魔界で戦える証を立てないと」

 ギルドでは魔王出現に伴う魔物の異常繁殖や凶暴化で起こる問題の依頼を受け付けている。魔王討伐のための人材育成と、報酬と言う形で旅や装備の資金を支給するのだ。

 だが、勇者は世界でもギルドでも特別だ。

「勇者は国の代表だもんな」

 一国がその強さを認め、国の威信を示すために送り出される特別な人間。それが勇者である。そして勇者個人の裁量が討伐ギルドの認定と同程度の価値を有する。つまり勇者が認め、同行を許可すれば魔界へと乗り込むことが可能なのだ。

「ディルクはすぐに魔王討伐に出向くことが出来たんだ。でも俺の成長を2年も待ってくれた。だけど俺は、その期待に応えることが出来なかった……」
「あまり気に病まないで」
「いや! 俺に期待して勇者パーティに迎え入れてくれたこと、魔法が使えない俺に剣術を教えてくれたこと、そして俺の身を案じて置いていったこと……俺はまだディルクに何も返していない! だから、俺は強くなる!」
「そうやって常に上を向いて走り出していけるイグナールのこと、私好きよ――」

 モニカは自分から零れた一言に気が付き大きく手を振り、顏を赤らめる。

「ち、ちが! そういうのじゃなくて! 仲間として頼りにしてるって意味で……特別な意味なんてこれっぽっちも……ないこともないけど……」

 だんだんと萎んでいく声では、最後までイグナールには届かない。

「俺だってモニカのこと好きだぜ!」

 屈託のない笑顔を見せながらイグナールはモニカにはっきりとした口調でそう言う。打ち上げられ、酸欠状態の魚のように口をパクパクとしながら顔をより紅潮させるモニカ。

「友人として、仲間としてすっげぇ信頼してるからよ。これからもよろしく頼む!」

 真っ直ぐな瞳で堂々と言う言葉に嘘偽りはないのだろう。だからこそモニカは落胆の色を隠せなった。

「あ、うん……よろしくね」
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