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「しかし、まだあの事故の影響が残っているかもしれません。このままご令嬢の寝室に居座るご無礼を承知のうえで、わたしが少しみてみましょう」

…ん?

「ええ、お願い。わたくしも心配だもの…」

金髪の女のひとが憂えるように目を伏せる。

んんん?

イヤな予感がしている私を放って、銀髪さんがさも気遣わしげに言う。

「夫人も少し顔色が悪いように見受けられます。アリス様がお目覚めになるまで気が休まる時もなかったでしょう。少しお休みになられてはいかがですか?」

「わたしたちも奥様のご心労が心配です。是非ともお休みください」

扉付近で控えていた全力悲鳴の女のひとも駆け寄ってきて心配げに眉尻を下げた。おいなんだこの流れ。

「そうね…少し休むわ。お部屋にお茶の準備をしてくれる?」

「かしこまりました。旦那様達にもお嬢様がお目覚めになったとご連絡致しますね!」

え、ちょっと待って、もしかしてこの銀髪のかっこいいけど何考えてんのかわかんないひとと二人きりにされる!? いやそれはマズイよ! ここが何処かも、この状況もさっぱりわからないけど、今あのひとと二人きりにされるのだけはヤバイってことはわかる!

「あ、あのっ…」

意を決して声をあげる。緊張しすぎて思いっきり裏返った。恥っず…。

「どうしたの?」

「そんな、みてもらわなくても…」

「いけません」

大丈夫です。と言いかけた声はすかさず銀髪さんに遮られた。それは綺麗な相貌に憂いを乗せて切々と訴えられる。

「アリス様がお目覚めになるまで皆それは心配したのですよ」

言いながら銀髪さんが視線を扉に投げるのに倣う。扉の向こうからは大勢のひとの気配がする。話し声がしているわけではないが、沢山のひとが固唾を呑んでこちらを窺っているのが姿が見えなくてもわかった。そういえばさっき大勢のひとの足音が聞こえていたな。

「勿論、わたしもです。わたしを安心させると思ってお願いできませんか」
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