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しおりを挟む昨夜は周囲の人達に怪しまれないように細心の注意を払って、それこそ言われた通り大人しく過ごした。
だけど、内心いつバレるだろうかとビクビクしていた。なにしろ、こんな広いお屋敷に住んでいるお嬢様の生活なんて想像もできない。
まず、食事。
いかにも晩餐という名にふさわしい晩ごはんが出てきそうという予想に思い至り血の気が引いた。
食事のマナーなんてわからないけど! どうする!? フォークやナイフの使い方なんて切って刺すしかできないけど!
戦いていたら「事情は奥様や猊下様より聞き及んでおります。本調子にお戻りになるまで、食事はお部屋にお運びしましょうね」と、近所のお肉屋さんのおばさんそっくりな恰幅の良い女性--ここまできたらわかる、彼女は職業メイドさんだ--があとはすべてお任せあれ。と言わんばかりに笑った。
その時になって、私の脳裏に深刻な表情で話し込んでいた銀髪の男と夫人と呼ばれていた金髪の女性のひとの姿が浮かんだ。
あの銀髪さん、何だか上手く説明してくれたらしい。
出された料理も、前に誕生日祝いに家族で行ったレストランで出たリゾットみたいなご飯だった。スプーンも出てきたからマナー云々問題も大丈夫だったし、ご飯はめちゃくちゃ美味しかった。
さて、第一関門だった食事のマナーについては、解決はしていないもののクリアしたとして、次に立ち塞がったのは、服の着替え問題である。
映画とか小説でよくあるフリルやレース満載の華美なドレスばかりだったらどうしよう。量販店の服しか着たことのない身にはハードルが高すぎる。ギチギチに身体を締め付けるコルセットをつけることになった日には間違いなく身体の中身が飛び出す。などと戦々恐々としながらクローゼットを「勝手に開けてごめん、アリス」と言いつつ開けてみて少なからず驚いた。
アリスに似合いそうな綺麗なドレスは確かにあった。
けれどそれらはクローゼットの奥に仕舞われ、前の取りやすい場所に収納されていたのはワンピースだった。それも想像していたお姫様が着るような綺羅きらしいものではなく、控えめながら上品なものばかりだ。
中でも特に驚いたのはズボンやシャツ等の動きやすい機能性重視の衣服もあることだった。
構えていただけに拍子抜けしながらも有り難く服を拝借した。よかったー! と安堵していたら、生地がびっくりするくらいすべらかでボタンを留める指が思いっきり震えた。シルクでしょこれ…。
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