限界社畜さんは怪異となかよし

乗り間違い

4.

「－－－－はっ！」

びくっと身体が痙攣し目を覚ました。
手の中から滑り落ちそうになったスマホをわたわたと慌てて空中キャッチする。

集まる周りの視線に恥ずかしくなりながら、逃れるようにして窓を向く。

－－－－…夢。

まったく変な夢をみたものだ。
大体猫のキャラクターってなんなんだ。やっぱり疲れてんのかなあ、私。
一際大きな欠伸をこぼし、滲んだ涙を拭おうとした時だった。

がたん、と車体が揺れて止まった。と同時に、車内にアナウンスが入った。


『－－－－…先ほど前を走る快速特急より、人との接触が発生したとの連絡が入りました。そのため、この電車も運転を一時停止します。繰り返します…』


「え、人身事故？」
「ええ…またあ？」
「最近多いよね～」

小声で交わされる乗客のやり取りが耳を通り過ぎていく。

－－－－…オレん時とはまた違って、最近はあんたみたいな若いもんが多いんだよなあ…
－－－－連れ出すのが間に合わなかったんだろ
－－－－助けを呼ぶのが先だろうが

－－－－間違えちまいやした
－－－－場所が近えからって許されるようなことじゃねえんだぞ

訳のわからなかったあのねこたちの会話が次々と思い起こされていく。

…まさか。

拭うことを忘れた目もとから滲んだ涙が滑り落ちていった。



end