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第二章 俺の外れスキルは『ものマネ』 ~ジェミニ王国のディオの場合

第20話 決別(ざまぁ回その壱)

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~~レダとジャヴェロットが離れて行った所まで時間は巻き戻る~~

「――スクロイ! 俺と話すことなど無いんだよな? 俺もだよ、稽古を付けてやる。今まで一度も俺に勝てなかったお前が、あれからどれくらい強くなったのかお兄ちゃん・・・・・が見てやるよ」

「黙れ、くそ兄貴、『外れスキル』の分際で俺様を舐めるなよ!」

 スクロイは大剣を構えた。

「くらえ『脳天割のうてんわり』!」

 俺はそれを『円月斬リ』で受け流しスクロイの腕を少しだけ斬りつける。

≪ピコン! 『脳天割のうてんわり』をマネました。スロットに空きがありません。入れ替えますか?≫
 いやこのままでいい。不要だ。

「ぐぁ、痛っ、くそっ」

 スクロイは斬られた腕に腰の道具袋からポーションを出し掛ける。

「ならば喰らえ!『骨砕ほねくだき』ぃぃぃ!」

 俺はそれを『円月斬リ』で受け流しスクロイの足を軽く斬りつける。

≪ピコン! 『骨砕ほねくだき』をマネました。スロットに空きがありません。入れ替えますか?≫
 いやこのままでいい。不要だ。

「ぐぁぁぁ、痛っ、な、なんで!?」

 スクロイは斬られた足に腰の道具袋からポーションを出し掛ける。

「こ、これなら! 『削岩斬さくがんぎり』ぃぃぃぃぃ!」

俺はそれを『円月斬リ』で受け流しスクロイの腹を斬りつける。

≪ピコン! 『削岩斬さくがんぎリ』をマネました。スロットに空きがありません。入れ替えますか?≫
 いやこのままでいい。不要だ。

「ぎゃぁぁぁぁ、くそ、くそ」

 スクロイは斬られた腹に腰の道具袋からポーションを出し掛ける。

 次の攻撃が来ないのでスクロイを見るとハァハァと肩で息をしている。

「ん? これで終わりか?」

「ま、まだだ! く、喰らえ俺様の最強の技『岩石粉砕斬がんせきふんさいざん』んんんんんんん!」

俺はそれを『燕返し』で受けスクロイの背後に回り背中を深く斬りつける。

≪ピコン! 『岩石粉砕斬がんせきふんさいざん』をマネました。スロットに空きがありません。入れ替えますか?≫
 いやこのままでいい。要らない。

「痛だぁぁぁぁぁ、くそ、くそ、くそ、くそ」

 スクロイは斬られた背中に腰の道具袋からポーションを全部出して掛けた。

「はぁはぁはぁはぁ」

 スクロイは肩で息をしていて、俺を睨みつけるだけで動かなくなった。勝てる作戦も無く、ポーションを使い切ったようだし、どうすればいいか悩んでいるのだろう。

 それにしても餞別に技の一つでもマネようと思っていたが、大した技じゃ無かった。『剛剣』って上位に入るレアなスキルという話だったのにな。

「で? 終わりか? まあ『祝福の儀』以降、少しは特訓したようだな」

「だよ、なんで全然相手にならないんだよ! おかしいだろ? お前のスキルは外れなんだろう! それに俺様のジョブは『上級職』の『剣豪』だ。今の俺様はステータス補正で五倍以上の強さになっているんだぞ! 負けるはずがないインチキだ! お前はズルをしているんだ! 正々堂々と戦え! この卑怯者!」

「はぁ、勝手に人のジョブやスキルを外れ扱いし、挙句の果てには卑怯者か……、俺のスキルが外れなら、それに手を足も出ないお前のスキルはゴミ以下だぞ」

「何だと! くそぉ、黙れぇぇぇぇ」

 スクロイは大剣を振り上げ突っ込んできた。

「『ライトニング』!」

 スクロイの頭上に雷撃が落ちる。『ギャー』と悲鳴を上げて倒れた、プスプスと黒い煙が立ち昇っている。

「な!? ま、魔法まで使えるのかよ……」

「レダさんの方も気になるし、そろそろ終わりにしよう」

 俺が剣を振り上げると、スクロイは大剣を置き土下座をし、俺に懇願してきた。

「ディオ、い、いや兄貴、俺が悪かった。謝るから……次期領主も兄貴に譲るよ。武器だって置いた、ほら、もう何もできないよ、だから殺さな――」

「――だめだ、お前の配下は、仲間は死んだぞ、見ろ! お前の為に、いやお前が命令したから」

 俺はスクロイの配下達の死体があった方を見ながら言った。

「死ねぇぇぇぇぇぇ」

 スクロイは俺の隙を付き、いつの間にか大剣を拾いそれを投げつけてきた。
 俺はそれを『円月斬リ』で受け流し、くるりと身体を回転させ大剣をそのままスクロイに投げ返した。

 ズバッ

「ぎあぁぁぁ、腕がぁ腕がぁ」

 投げ返した大剣がスクロイの利き腕を切断し飛んでいく。ボトリと腕が落ちた。

「血がぁ血がぁこんなに、もうポーションもないんだよ、嫌だ、死んじゃう、死にたくないよ、これからは良い子にするから、ねぇお願いだよ、兄ちゃん」

 涙と鼻水を垂らしながらスクロイが、弟が俺の足元にしがみついてきた。

 兄ちゃんか……実際に言われると懐かしいな……そういえばこいつ小さい頃は泣き虫だったよな、飼っていた小鳥が死んだ時も、犬に噛まれた時も、転んで足を怪我した時も、おねしょをした時もすぐ泣いていた。そしていつも母上に抱き着いて慰めてもらっていたな。俺は兄ちゃんだからお前が母上を一人占めしても我慢していたんだぞ、本当は俺だって、ははっ。

 あれ? そうだ、こいつの泣き顔観たのって母上が亡くなった時が最後じゃないか……。それ以来泣いているところを観たこと無いな……。
 そっか、きっと父上も、俺もスクロイへの接し方を間違えていたんだろうな。母上が要れば、いや、俺達が領主や次期領主としてではなく、ちゃんと家族として接していたらこんな男には、ならなかったんじゃないかな……。

 もうなんか考えるのが面倒くさくなった。恨みも憎しみ怒りも全部……。俺は自分の道具袋からポーションを取り、切断されたスクロイの利き腕に掛けた。

 普通のポーションでは欠陥部位は治らない。こいつはもう剣士としては終わりだ、多分領主としても……。まあ、欠陥部位を再生できる薬や魔法があると聞いたことがあるが、手に入れるのはそう簡単な事ではないはずだ。

「兄ちゃん……」

「スクロイ、俺はポルックス家に戻る気はない。だからお前は好きにすればいい……じゃあな、もう会う事もないだろう」

 丁度そこへレダさんが駆けつけてきた。

「レダさん! 無事でしたか」

「ああ、そっちも終わったようだな……、でいいのか?」

 レダさんはスクロイをチラリと見て言った。

「はい、もう関わる事も無いですし、疲れました、帰ってもう休みましょう」
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