33 / 55
第二章 俺の外れスキルは『ものマネ』 ~ジェミニ王国のディオの場合
第19話 大嘘
しおりを挟む
~プロプスダンジョン二十一階層 レダ視点side
「おい、結構離れたしここら辺でいいだろ? これ以上進むと壁が邪魔になる」
私の声を聴いて先頭を歩いていたジャヴェロットが振り向き槍を構える。
私も刀を構えた――なるほど強いな。
……
二人は互いに地面を蹴り、一気に間合いを詰める。当然ジャヴェロットの武器の方がリーチは長いが『はやぶさ斬り』で槍の穂を攻撃し上方にいなし、更にそこからジャヴェロットの体を連続で斬りつけた。しかしジャヴェロットはいなされた勢いを利用し槍を反転させ槍の尻、石突だけで私の二撃目を受け止め、そして三撃目は私と身体を入れ替えるようにヒラリと躱した。
―――――――――――――
『はやぶさ斬り』:高速で3連続攻撃をする。
―――――――――――――
何だ、この男の動きは? 何かのスキル技を使っているわけではなく、まさか戦闘センスだけで私のスキル技に対抗しているのか?
「次は俺っちの番だぜ」
そう言いジャヴェロットは無造作に槍を突き出した。一瞬反応が遅れたが『円月斬り』を使って受け流そうとした。刹那、槍の穂がバリバリと音を立てて光り、私の刀に雷撃が走った。バックステップで私はジャヴェロットと距離を取った。
「へー、すごいぜ 普通の剣なら今の攻撃で刃が腐食して崩れ落ちるんだぜ、もしかしてそっちも名の有る刀だったりするのか?」
まただ、また技名を叫んでいないのに技を繰り出した。どういう事だ? 『無詠唱魔法』とかそういう類のスキルなのか? それとも槍の能力なのか?
「何だよ、無視はつれないぜ、もっと会話を楽しもうぜ――」
――返事をしない私に向けて高速で槍を投げつけてきた。
私は間一髪でそれを避けた。投げた槍はそのまま飛んで行きダンジョンの壁に深く突き刺さった。
馬鹿な!? 破壊不可能なはずのダンジョンの壁が突き刺さった槍を中心に深く抉られている――い、いやそれよりも今が好機だ。奴は武器を持っていない!
地面を蹴り一気に間合いを詰めジャヴェロットを刀の間合いに入れる。
「『兜割り』」
―――――――――――――
『兜割り』:破壊力を大幅に上げた一振りで攻撃する。
―――――――――――――
ジャヴェロットに向かって飛び込み渾身の一撃を脳天に振り下ろす。が、なにか嫌な予感がし、このままただ思い切り振り下ろせば終わるはずの『兜割り』を途中で『キャンセル』した。
カキンッ
え? 力の乘っていない私の刀の一撃をジャヴェロットは槍で受け止めた。そしてすかさず槍を物凄い勢いで突いてきた。しかし技を途中で『キャンセル』したおかげで次の行動に移れ、辛うじて躱すことができ、私は一旦距離を取った。
痛っ、ほほから血が流れている。躱しきれなかったか。
さっきまで槍が突き刺さっていた壁をチラリと見た。――槍が無い……。
困惑している私にジャヴェロットが口を開く。
「引っかからなかったかぁ、よく避けたな、凄いぜ。今までの奴らは槍を手放すとすぐ馬鹿みたいに突っ込んで来てくれて、それで終了だったんだけどなぁ」
「これも魔槍の能力か?」
「これも?――ああそういう事か。今までの奴らはあれこれと考える暇もなく死んでいった様だからそんな質問されたのは初めてだぜ」
「と言う事は私の質問に答えてくれるのかな?」
「ははは、いいぜ、俺っちの相棒『魔槍・グングニル』は所有者が望めばどんなに離れていても所有者の手元に戻ってくるんだぜ、ダンジョンの壁を破壊できたのも相棒の能力だぜ。ただお嬢さんが一番聞きたいであろう、技名を叫ばなくても技を繰り出せるのは相棒の能力ではないぜ」
「なんだと!?」
「おっ? 驚いているぜ、魔法の詠唱ならともかく、格ゲーや漫画じゃないんだぜ、いちいち叫ばなくても技は出せるぜ、逆にいちいち技名を叫んでいたら相手にばれてしまうぜ、そんなの馬鹿だぜ」
「格ゲーや漫画?……なんだそれは?」
「ああ、気にするな、お嬢さんには関係のない話だぜ、他に質問が無いなら暗くなってきたしもう終わらせるぜ」
やはりこのエリアは時間の概念があるようだ。ただ地上よりは時間の進み具合が早いのだろう。先ほどよりかなり暗くなっている。
ジャヴェロットが槍を連続で繰り出してきが、『はやぶさ斬り』で槍をいなすと、ジャヴェロットは体制を崩し隙が出来た。すかさず二撃目、三撃目をジャヴェロットに繰り出す。槍の石突で受け止めたがそのままジャヴェロットごと吹っ飛ばす。
私は更にジャヴェロットを追い「『兜割り』」を叩きこむ。ジャヴェロットは躱しきれず肩口を斬られ血を流す。刹那、私に向けて槍を投げてきたので距離を取る。
「おいおい、どういう事だ!? さっきと動きも威力も違うぜ、なんかのスキルか? あっ!? しかもさっき付けたほほの傷が治っているぜ」
「……」
「だんまりかよ、俺っちは色々教えてやったのにずるいぜ――あれ!? いつの間にかその刀全体に黒い靄が纏っているんだぜ――この感じまさか……」
「……『妖刀』だ、この刀は私の相棒『妖刀・昼行燈』――能力は周りが闇に染まれば染まるほど所有者の能力を上げる。そしてもう一つ、血を吸う事で所有者を回復させることができる」
「『妖刀』だと! やっぱりか、その刀はどこで手に――いや誰だ? 誰から貰った?」
「なんだ気になるのか? この刀は師匠から貰った。師匠の名は『村正』だ」
「師匠!? 村正? 村正だと、はははっ、そうか、そうかお嬢さんの師匠は村正か、なるほど、なるほど」
「もしかして貴様、師匠を知っているのか?」
「いーや知らないぜ、そんな女」
いつの間にか手元に戻っていた槍を持ちこちらに向かってきた。突き出して来た槍を『円月斬り』で受け流そうとしたが手元に槍を引き、刀を透かされた。
体制を崩した私は腹に槍の石突を叩きこまれ、今度は私が吹っ飛ばされた。ゴロゴロと転がり、そこから即座に立ち上がり刀を引き、足を踏ん張りジャヴェロットの胸に向け構える。そして一呼吸置いた後――。
「『刺突放鷹』はぁぁぁぁぁ!」
刀を素早く前に突き出しジャヴェロットに向けヒュンと音を飛ばす。ジャヴェロットの心臓を音が貫く。ジャヴェロットは一瞬ニヤリと笑みを浮かべが、右の口角から赤いものがドロリと流れるのが見えた。そして両膝が静かに地面に付き――倒れた。
―――――――――――――
『刺突放鷹』:切っ先から力を込めた突きを音速で放つ。
―――――――――――――
ふぅ、なんとか勝てたか……私の方もこれ以上は体力が持たなかった、やはりお弁当は肉にするべきだったか。私はゆっくりとジャヴェロットに近づいた。まだ息はあるようだ。警戒はしているが流石に心臓を貫いたんだ。もう無理だろう。
私が近づいて来た事に気づき、ゆっくりと顔を私の方に向けて呟いた。
「お嬢さん強いな、俺っちこうみえても毎朝特訓をしていたんだぜ、それなのに負けたぜ」
「そうか意外と努力家なんだな、でも私は朝も晩も毎日特訓しているけどな」
「はは、そうか……俺っちも次に生まれ変われたら……そう……する……ぜ……」
そしてジャヴェロットはそのまま動かなくなった。
「ふぅ 終わったか……、本来なら戦利品としてその武器、しかも『神話級の魔槍』なので絶対に貰って帰りたいところだが貴様の『相棒』だしな、その気持ちは私にも分かる――だから今回は置いていく」
そして私は少年の元に急いだのだった――。
――それから数分後、先程まで死体だった物がもぞもぞと動き出す。
それはゆっくりと立ち上がり、辺りを見渡し誰もいないことを確認すると、服を脱ぎだした、そして脱皮でもするかのように皮も脱ぎだした。
すると、その中からもう一人のジャヴェロットが裸で出てきた。
「いてててて、あーあ、肩の部分が斬られてしまっているな」
それは腰の小さな袋からポーションを取り出し傷口に掛ける。
「特殊な糸で編んだ『リアルアバター用肉襦袢君3号』が斬られてしまうとは、流石妖刀だな」
それは斬られた箇所を手でこすっている。
「これは後で直してもらわないとダメだな、それにしても着てきたのが『リアルアバター用肉襦袢君3号』でよかったよな、ちゃんと相手が思うような死に方を見せられたようだし、それ以前の肉襦袢君は死んだふり機能は付いていないからな。ただこの『一人称を変える』とか『語尾を変える』とかのおまけ機能は要らないな、試しに『俺っち』とか『だぜ』とかにしてみたけど話す度に笑いそうになったわ、はは」
それは『リアルアバター用肉襦袢君3号』を丁寧に折りたたんで小さな袋にしまう。この袋は『魔法の袋』で見た目よりたくさん物が入る、いわゆる『マジックバック』と言うものだ。
「しかし今考えると恥ずかしいよな、サービスで最後に思わず熱血格闘マンガみないセリフを言ってしまった。あー、あとはあれだな『刺突放鷹』って技だっけ? あの技だけは村正が使うとこを見たことがあるから知っていたけど、全然威力が違ったな。村正が使った『刺突放鷹』は前方にある物全て綺麗に吹き飛ばしていたのにな。なんだよ、心臓を貫くだけって、笑いを堪えるのが大変だったわ」
それは『マジックバック』から着替えを取り出した。
「そもそもあの村正が弟子を取り、しかも妖刀を渡すとはな。俺にはあのお嬢ちゃんがそこまでの強者とは思えないんだが……まあ聞いた事のない名前の妖刀だったし、なんか企んでいるんだろうなぁ。今回は同じ刀匠が打った武器を使っているって事で、ある意味、義兄妹とも言えなくもないから見逃してやったけど、これで貸し借り無しでいいよな」
着替え終わったそれは、少し明るくなってきた空を見上げる。
「はぁ、ここの『虹色に光るクリスタル』は欲しかったんだけどなぁ、出来たばかりのダンジョンなら抜いてもそこまで大事にならないから。まあ、仕方がないか。他のダンジョンを探すか」
それは、そう独り言を言うとどこかに消えて行った――。
「おい、結構離れたしここら辺でいいだろ? これ以上進むと壁が邪魔になる」
私の声を聴いて先頭を歩いていたジャヴェロットが振り向き槍を構える。
私も刀を構えた――なるほど強いな。
……
二人は互いに地面を蹴り、一気に間合いを詰める。当然ジャヴェロットの武器の方がリーチは長いが『はやぶさ斬り』で槍の穂を攻撃し上方にいなし、更にそこからジャヴェロットの体を連続で斬りつけた。しかしジャヴェロットはいなされた勢いを利用し槍を反転させ槍の尻、石突だけで私の二撃目を受け止め、そして三撃目は私と身体を入れ替えるようにヒラリと躱した。
―――――――――――――
『はやぶさ斬り』:高速で3連続攻撃をする。
―――――――――――――
何だ、この男の動きは? 何かのスキル技を使っているわけではなく、まさか戦闘センスだけで私のスキル技に対抗しているのか?
「次は俺っちの番だぜ」
そう言いジャヴェロットは無造作に槍を突き出した。一瞬反応が遅れたが『円月斬り』を使って受け流そうとした。刹那、槍の穂がバリバリと音を立てて光り、私の刀に雷撃が走った。バックステップで私はジャヴェロットと距離を取った。
「へー、すごいぜ 普通の剣なら今の攻撃で刃が腐食して崩れ落ちるんだぜ、もしかしてそっちも名の有る刀だったりするのか?」
まただ、また技名を叫んでいないのに技を繰り出した。どういう事だ? 『無詠唱魔法』とかそういう類のスキルなのか? それとも槍の能力なのか?
「何だよ、無視はつれないぜ、もっと会話を楽しもうぜ――」
――返事をしない私に向けて高速で槍を投げつけてきた。
私は間一髪でそれを避けた。投げた槍はそのまま飛んで行きダンジョンの壁に深く突き刺さった。
馬鹿な!? 破壊不可能なはずのダンジョンの壁が突き刺さった槍を中心に深く抉られている――い、いやそれよりも今が好機だ。奴は武器を持っていない!
地面を蹴り一気に間合いを詰めジャヴェロットを刀の間合いに入れる。
「『兜割り』」
―――――――――――――
『兜割り』:破壊力を大幅に上げた一振りで攻撃する。
―――――――――――――
ジャヴェロットに向かって飛び込み渾身の一撃を脳天に振り下ろす。が、なにか嫌な予感がし、このままただ思い切り振り下ろせば終わるはずの『兜割り』を途中で『キャンセル』した。
カキンッ
え? 力の乘っていない私の刀の一撃をジャヴェロットは槍で受け止めた。そしてすかさず槍を物凄い勢いで突いてきた。しかし技を途中で『キャンセル』したおかげで次の行動に移れ、辛うじて躱すことができ、私は一旦距離を取った。
痛っ、ほほから血が流れている。躱しきれなかったか。
さっきまで槍が突き刺さっていた壁をチラリと見た。――槍が無い……。
困惑している私にジャヴェロットが口を開く。
「引っかからなかったかぁ、よく避けたな、凄いぜ。今までの奴らは槍を手放すとすぐ馬鹿みたいに突っ込んで来てくれて、それで終了だったんだけどなぁ」
「これも魔槍の能力か?」
「これも?――ああそういう事か。今までの奴らはあれこれと考える暇もなく死んでいった様だからそんな質問されたのは初めてだぜ」
「と言う事は私の質問に答えてくれるのかな?」
「ははは、いいぜ、俺っちの相棒『魔槍・グングニル』は所有者が望めばどんなに離れていても所有者の手元に戻ってくるんだぜ、ダンジョンの壁を破壊できたのも相棒の能力だぜ。ただお嬢さんが一番聞きたいであろう、技名を叫ばなくても技を繰り出せるのは相棒の能力ではないぜ」
「なんだと!?」
「おっ? 驚いているぜ、魔法の詠唱ならともかく、格ゲーや漫画じゃないんだぜ、いちいち叫ばなくても技は出せるぜ、逆にいちいち技名を叫んでいたら相手にばれてしまうぜ、そんなの馬鹿だぜ」
「格ゲーや漫画?……なんだそれは?」
「ああ、気にするな、お嬢さんには関係のない話だぜ、他に質問が無いなら暗くなってきたしもう終わらせるぜ」
やはりこのエリアは時間の概念があるようだ。ただ地上よりは時間の進み具合が早いのだろう。先ほどよりかなり暗くなっている。
ジャヴェロットが槍を連続で繰り出してきが、『はやぶさ斬り』で槍をいなすと、ジャヴェロットは体制を崩し隙が出来た。すかさず二撃目、三撃目をジャヴェロットに繰り出す。槍の石突で受け止めたがそのままジャヴェロットごと吹っ飛ばす。
私は更にジャヴェロットを追い「『兜割り』」を叩きこむ。ジャヴェロットは躱しきれず肩口を斬られ血を流す。刹那、私に向けて槍を投げてきたので距離を取る。
「おいおい、どういう事だ!? さっきと動きも威力も違うぜ、なんかのスキルか? あっ!? しかもさっき付けたほほの傷が治っているぜ」
「……」
「だんまりかよ、俺っちは色々教えてやったのにずるいぜ――あれ!? いつの間にかその刀全体に黒い靄が纏っているんだぜ――この感じまさか……」
「……『妖刀』だ、この刀は私の相棒『妖刀・昼行燈』――能力は周りが闇に染まれば染まるほど所有者の能力を上げる。そしてもう一つ、血を吸う事で所有者を回復させることができる」
「『妖刀』だと! やっぱりか、その刀はどこで手に――いや誰だ? 誰から貰った?」
「なんだ気になるのか? この刀は師匠から貰った。師匠の名は『村正』だ」
「師匠!? 村正? 村正だと、はははっ、そうか、そうかお嬢さんの師匠は村正か、なるほど、なるほど」
「もしかして貴様、師匠を知っているのか?」
「いーや知らないぜ、そんな女」
いつの間にか手元に戻っていた槍を持ちこちらに向かってきた。突き出して来た槍を『円月斬り』で受け流そうとしたが手元に槍を引き、刀を透かされた。
体制を崩した私は腹に槍の石突を叩きこまれ、今度は私が吹っ飛ばされた。ゴロゴロと転がり、そこから即座に立ち上がり刀を引き、足を踏ん張りジャヴェロットの胸に向け構える。そして一呼吸置いた後――。
「『刺突放鷹』はぁぁぁぁぁ!」
刀を素早く前に突き出しジャヴェロットに向けヒュンと音を飛ばす。ジャヴェロットの心臓を音が貫く。ジャヴェロットは一瞬ニヤリと笑みを浮かべが、右の口角から赤いものがドロリと流れるのが見えた。そして両膝が静かに地面に付き――倒れた。
―――――――――――――
『刺突放鷹』:切っ先から力を込めた突きを音速で放つ。
―――――――――――――
ふぅ、なんとか勝てたか……私の方もこれ以上は体力が持たなかった、やはりお弁当は肉にするべきだったか。私はゆっくりとジャヴェロットに近づいた。まだ息はあるようだ。警戒はしているが流石に心臓を貫いたんだ。もう無理だろう。
私が近づいて来た事に気づき、ゆっくりと顔を私の方に向けて呟いた。
「お嬢さん強いな、俺っちこうみえても毎朝特訓をしていたんだぜ、それなのに負けたぜ」
「そうか意外と努力家なんだな、でも私は朝も晩も毎日特訓しているけどな」
「はは、そうか……俺っちも次に生まれ変われたら……そう……する……ぜ……」
そしてジャヴェロットはそのまま動かなくなった。
「ふぅ 終わったか……、本来なら戦利品としてその武器、しかも『神話級の魔槍』なので絶対に貰って帰りたいところだが貴様の『相棒』だしな、その気持ちは私にも分かる――だから今回は置いていく」
そして私は少年の元に急いだのだった――。
――それから数分後、先程まで死体だった物がもぞもぞと動き出す。
それはゆっくりと立ち上がり、辺りを見渡し誰もいないことを確認すると、服を脱ぎだした、そして脱皮でもするかのように皮も脱ぎだした。
すると、その中からもう一人のジャヴェロットが裸で出てきた。
「いてててて、あーあ、肩の部分が斬られてしまっているな」
それは腰の小さな袋からポーションを取り出し傷口に掛ける。
「特殊な糸で編んだ『リアルアバター用肉襦袢君3号』が斬られてしまうとは、流石妖刀だな」
それは斬られた箇所を手でこすっている。
「これは後で直してもらわないとダメだな、それにしても着てきたのが『リアルアバター用肉襦袢君3号』でよかったよな、ちゃんと相手が思うような死に方を見せられたようだし、それ以前の肉襦袢君は死んだふり機能は付いていないからな。ただこの『一人称を変える』とか『語尾を変える』とかのおまけ機能は要らないな、試しに『俺っち』とか『だぜ』とかにしてみたけど話す度に笑いそうになったわ、はは」
それは『リアルアバター用肉襦袢君3号』を丁寧に折りたたんで小さな袋にしまう。この袋は『魔法の袋』で見た目よりたくさん物が入る、いわゆる『マジックバック』と言うものだ。
「しかし今考えると恥ずかしいよな、サービスで最後に思わず熱血格闘マンガみないセリフを言ってしまった。あー、あとはあれだな『刺突放鷹』って技だっけ? あの技だけは村正が使うとこを見たことがあるから知っていたけど、全然威力が違ったな。村正が使った『刺突放鷹』は前方にある物全て綺麗に吹き飛ばしていたのにな。なんだよ、心臓を貫くだけって、笑いを堪えるのが大変だったわ」
それは『マジックバック』から着替えを取り出した。
「そもそもあの村正が弟子を取り、しかも妖刀を渡すとはな。俺にはあのお嬢ちゃんがそこまでの強者とは思えないんだが……まあ聞いた事のない名前の妖刀だったし、なんか企んでいるんだろうなぁ。今回は同じ刀匠が打った武器を使っているって事で、ある意味、義兄妹とも言えなくもないから見逃してやったけど、これで貸し借り無しでいいよな」
着替え終わったそれは、少し明るくなってきた空を見上げる。
「はぁ、ここの『虹色に光るクリスタル』は欲しかったんだけどなぁ、出来たばかりのダンジョンなら抜いてもそこまで大事にならないから。まあ、仕方がないか。他のダンジョンを探すか」
それは、そう独り言を言うとどこかに消えて行った――。
0
あなたにおすすめの小説
ハズレスキル『自動販売機』を授かって婚約破棄されましたが、 実は回復薬も魔力食も出せる最強スキルでした
暖夢 由
ファンタジー
十八歳の成人儀式で授かったのは、誰も聞いたことのない《自動販売機スキル》。
役立たずと嘲られ、婚約者レオンには即座に婚約を破棄され、人生が崩れ落ちたように思えた。
だがそのスキルには、食べ物を作り、摂取すれば魔力を増やし、さらに“治癒効果”を付与できるという隠された力があった。
倒れた母を救い、王都の名門・ヴァルセイン伯爵夫人を救ったことで、カミーラは“呪詛”という闇の存在を知る。伯爵邸で出会った炎の力を持つ公爵家次男レグナスとの出会いが、彼女の運命を大きく変えていく。
やがて王都全体に“謎の病”が蔓延。カミーラは治癒スープの炊き出しを行い、人々を次々と回復へ導く。
一方、病の裏で糸を引いていたのは………。
“無価値”と嘲られたスキルが、いま世界を癒し、未来を照らす光となる――。
魔法筆職人の俺が居なくなったら、お前ら魔法使えないけど良いんだよな?!
川井田ナツナ
ファンタジー
俺は慈悲深い人間だ。
だから、魔法の『ま』の字も理解していない住民たちに俺の作った魔法筆を使わせてあげていた。
だが、国の総意は『国家転覆罪で国外追放』だとよ。
馬鹿だとは思っていたが、俺の想像を絶する馬鹿だったとはな……。
俺が居なくなったら、お前ら魔法使えなくて生活困るだろうけど良いってことだよな??
『無能な聖女』と婚約破棄された私、実は伝説の竜を唯一従える『真の守護者』でした。~今さら国に戻れと言われても、もう遅いです~
スカッと文庫
ファンタジー
「魔力値たったの5だと? 貴様のような偽聖女、この国には不要だ!」
聖女として国を支えてきたエルナは、第一王子カイルから非情な婚約破棄を言い渡される。隣には、魔力値を偽装して聖女の座を奪った男爵令嬢の姿が。
実家からも見捨てられ、生きては戻れぬ『死の森』へ追放されたエルナ。しかし、絶望の中で彼女が目覚めさせたのは、人間には測定不能な【神聖魔力】だった。
森の奥で封印されていた伝説の銀竜を解き放ち、隣国の冷徹皇帝にその才能を見出された時、エルナを捨てた王国は滅びの危機に直面する――。
「今さら謝っても、私の結界はもうあなたたちのために張ることはありません」
捨てられた聖女が真の幸せを掴む、逆転劇がいま幕を開ける!
魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした
たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。
死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。
英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~
ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。
彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。
敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。
この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。
「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」
無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。
正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。
ざまぁ代行いたします ―追放聖女の復讐録―
橘 あやめ
ファンタジー
15年間王国に尽くした聖女が、王太子の謀略によって「力を偽っていた」と断罪され、国を追放された。
海を渡った先の異国で、イレーネ・ヴァルクロアが始めたのは輸入雑貨店「月影亭」。
そして、その裏に密かに掲げた看板が、【復讐代行業】
「ご安心ください。後悔するのはあちら側ですわ」
謎の美少年ティオを相棒に、今日も誰かの理不尽な相手へ、元聖女が鉄槌を下す。
※短編連作です。第一章完結。第二章製作中。
役立たず聖女見習い、追放されたので森でマイホームとスローライフします ~召喚できるのは非生物だけ?いいえ、全部最強でした~
しおしお
ファンタジー
聖女見習いとして教会に仕えていた少女は、
「役立たず」と嘲笑され、ある日突然、追放された。
理由は単純。
彼女が召喚できるのは――タンスやぬいぐるみなどの非生物だけだったから。
森へ放り出され、夜を前に途方に暮れる中、
彼女は必死に召喚を行う。
呼び出されたのは、一体の熊のぬいぐるみ。
だがその瞬間、彼女のスキルは覚醒する。
【付喪神】――非生物に魂を宿らせる能力。
喋らないが最強の熊、
空を飛び無限引き出し爆撃を行うタンス、
敬語で語る伝説級聖剣、
そして四本足で歩き、すべてを自動化する“マイホーム”。
彼女自身は戦わない。
努力もしない。
頑張らない。
ただ「止まる場所が欲しかった」だけなのに、
気づけば魔物の軍勢は消え、
王城と大聖堂は跡形もなく吹き飛び、
――しかし人々は、なぜか生きていた。
英雄になることを拒み、
責任を背負うこともせず、
彼女は再び森へ帰る。
自動調理、自動防衛、完璧な保存環境。
便利すぎる家と、喋らない仲間たちに囲まれた、
頑張らないスローライフが、今日も続いていく。
これは、
「世界を救ってしまったのに、何もしない」
追放聖女の物語。
-
あなたはダンジョン出禁ですからッ! と言われた最強冒険者 おこちゃまに戻ってシェルパから出直します
サカナタシト
ファンタジー
ダンジョン専門に、魔物を狩って生計を立てる古参のソロ冒険者ジーン。本人はロートルの二流の冒険者だと思っているが、実はダンジョン最強と評価される凄腕だ。だがジーンはある日、同業の若手冒険者から妬まれ、その恋人のギルド受付嬢から嫌がらせを受けダンジョンを出入り禁止にされてしまう。路頭に迷うジーンだったが、そこに現れた魔女に「1年間、別人の姿に変身する薬」をもらう。だが、実際には「1歳の姿に変身する薬」だった。子供の姿になったジーンは仕方なくシェルパとなってダンジョンに潜り込むのだが、そんな時ダンジョンい異変が起こり始めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる