異世界でも油こそ正義!!

雑食ベアー

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準備編

第7話 異文化体験

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 日も傾き始めた頃にミチオは商人協会に滑り込む。
急いで、ミスティを探したが見つからない.. 徐々に焦ってくる。

「ミチオ様、こちらにお願い致します」
声の方向に顔を向けるとそこにはミスティがやや引きつった表情をしていた。
競歩レベル速さで窓口に向かい、即、頭を下げるミチオ

「遅くなり、申し訳ございませんでした」

「いえいえ、どうやら支店の方に顔を出したみたいですから、今まで市場調査してきたんですよね~」

「はい!そのとおりであります!!」

「クスクス、では、屋台が置いている場所へと赴きましょう。
着いて来てくださいね」
奥の方へ向かうミスティに付いていくと、個室らしき部屋や窓口のバックヤードらしき所が見えた。しばらくすると外に出た。

「ここは協会の裏口になります。こちらは職員と職員の同行者以外は使用できませんのでご注意ください」

「了解」
その後、大きな倉庫に辿り着き、ミスティは警備員らしき人に扉の開閉をお願いしていた。そして、扉が開き中に入る。

「こちらが、協会で保有している屋台になります。気に入った屋台をお選びください」
倉庫の中は主に商品と思わしき木箱が積みあがっていた。その端で屋台が纏まって整列している。ミチオは手前にあった屋台の中を見てみる。そして、色々とミスティに質問してみる。

Q「基本的には屋台の中身などは同じなのか?」
A「大半は同じとなっております」

Q「屋台の改修はできるのか?」
A「改修した場合は買取になります」

Q「屋台が破損または延焼した場合はどうなるのか?」
A「屋台を回収した上で、修繕費を支払っていただきます」

Q「屋台を保管できる場所はあるか?」
A「支店の倉庫にて有料でお預かりいたします」

Q「調理器具などは備わってないのか?」
A「申し訳ないですが、備わってません」

Q「生ごみなどはどこで処理できる?」
A「支店で有料で回収しております」

etc..

 小一時間ほど、質疑応答と屋台の操作方法を終えてから、最初から気になっていた屋台の前に出た。

「こちらでよろしいでしょうか?」

「ああ、こいつでいい!」

「それでは、手続きをしておきますね。本日からご使用されますか?」

「数日程、預かってもらえませんかね?」

「かしこまりました。お引取りの際はお声がけくださいませ」

「ああ! それと..」
ミチオは不足している調理器具などが、売っている場所を聞き出してから協会を出ると既に外は薄暗くなっていた。宿に戻り風呂でも入るかと思い、宿へと向かったミチオであった。

 宿に戻ったミチオは部屋に戻り、セポマから下着類を購入した。
本日は半日中歩き回り服が汚れている上、汗をかいている状態だ。

「服が欲しいな.. あと洗濯だな。モルトさんに聞いてみるか~」
購入した下着類をもって1階の風呂場に直行する。

 風呂場の入り口に入ると脱衣所がある。日本の脱衣所では木の棚に籠を置いてあり、貴重品は鍵付きのロッカーで管理するのが一般的だ。
 
 一方、こちらの世界ではオープンクローゼットにハンガーが沢山あり、着ている服などをハンガーにかけるようだ。

 これだと他の服が汚れていたら、『汚れが移るのでは?』とミチオは思ったが、
後ろから来た人の行動で謎は解けた。

 魔法だ! 脱衣所の入口付近にある水晶玉みたいなものに手をかざしたら衣服がしばらく輝き、手をかざした人は流れるように脱衣場所に移動した。

 ミチオも先程の動作を真似てみたら、なんと土埃で汚れていた服がきれいになったので、ミチオも脱衣して全裸となり、浴場へ赴いた。

 浴場を一目見たミチオの感想は『映画で見たローマの浴場に似てるな..』
まさか自分が利用できるとは、ミチオはため息をついた。

 かけ湯をしたいのだが桶みたいなものが無い.. どうやらそのまま入るみたいだ。
日本人としては抵抗があるが郷に入っては郷に従えとの格言があるので、浴槽に入るミチオ。

 1日ぶりのお湯に感激していた後、辺りを観察していたら浴場入口付近に脱衣所にあった水晶玉が設置されていた。しばらくすると他の人がその水晶玉を使用した所、体に存在していた水滴が取り除かれた。ミチオは『やっぱ、ファンタジーだな…』と再認識をして、この水晶玉が日本あれば便利だろうと考えながら湯に浸かった。

……

 浴場から上がってきたミチオはその足で、カウンターに居るモルトを見つけ話しかけた。

「魔法の練習をしたいのだが、どこでやれば良いの?」

「お前さんは大魔術師では無いからな.. 訓練所があるからそこだな。まぁ、生活魔法ぐらいならば宿の裏庭でも良いがな。その場合は声かけろ」

「了解」

「で、明日の予定はどうなっている?」

「本日と同じく露店巡りと商売道具を見てくるよ」

「頑張れよ」

「ありがとさん」

 ミチオは聞きたいことが聞けたので部屋に戻る。

「レコ、サポートプログラムで使用した空間? は利用可能か?」

【不可、あの空間は管理者権限ではないと利用できません】

「そうか、なら今度のサポセンで要請してみるかな? まぁ、朝に申請した結果で考えるか.. 明日も早いからもう寝る、レコ、毎朝起こしてもらえる?」

【マスター、かしこまりました。では、おやすみなさいませ】

「ああ、お休み..」

 異世界生活1日目はこれで終了..

……


 暗闇から日光が差して明るくなってくると共に、一部の場所などでは人の往来が盛んになっているが、ほとんどの人は寝ている時分。協会にいるマティーは一人で3枚の報告書に目を通している。ミチオの調査報告書だ。各報告書の要点をまとめると

◆◆

【1枚目】
・見たことのない灰色のキレイな肌着らしきものを所持していた。
・魔法の練習がしたいとのこと。
・明日は。露店巡りと商売道具を見てくるとのこと。

【2枚目】
・使用する屋台が決定、数日後引き取りにくるとのこと。
・出身地について訊ねると「遠い場所」とのこと。
・調理器具などを販売している場所を聞かれました。

【3枚目】
・対象は屋台商のピートと会話、詳しい話は聞けなかった。
・支部に赴き、両替と協会員の支援内容を聞いた。
・屋台を巡り、それぞれの食品を購入し自身で全て食べた。
・再度、ピートの屋台に赴き、味について会話をしていた。
・大浴場の魔道具の使い方がわからなかったみたいだ。

◆◆

「ふむ、まだ砂糖と塩を売りに出さないのかい.. 調理器具の売っている場所を聞いてきたか、それよりもこのピートとやらが怪しいね..」

 報告書を一通り読んだマティーは、気になったピートの身辺調査を手配をする。

「しかし、あの砂糖と塩を協会で専売できないかね~」
マティーは協会への更なる貢献として、ミチオがもたらした真っ白い砂糖と塩を専売しようと虎視眈々と狙っているのだ。

「最悪、ミチオを仲卸人にして取引するしかないか.. それとどうやら他にも商品があるみたいだしね..」

 砂糖・塩に次いで、今度は色の付いたキレイな肌着.. 金の匂いがプンプンとするが、同時に新たな謎が生まれる。

「体つきからして、行商している感じではないし、錬金術師の様な感じでもない..
一体、何者なんだい、アイツは!?」

 そもそも、『ミチオは嘘を付いている』とマティーが思っている時点で、このような勘違いを抱えてしまっているのであった。
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