異世界でも油こそ正義!!

雑食ベアー

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準備編

第9話 食文化体験

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 ミチオは食事処の扉を開け、カウンター席に腰を下ろした。
ウェイトレスがメニューを持ってきて、ミチオはメニューとしばし睨めっこしていた。

(う~ん、エールとメイン一品でいくか..)
ミチオはウェイトレスを呼び、エールとチキンの香草焼きを注文した。
注文後、店内を観察していると先にエールが届いたので、早速飲んでみた。
こちらのエールは『庶民のエール』よりもえぐみが抑えられたものだった。
これならば、日本の発泡酒の方が断然と美味しい。

(それにしても、飲み物全般が温いな.. 魔法で何とかできないのだろうか?)
物体を冷やし、凍らせる程の魔法のレベルの者は、大抵は上流階級に出仕または高額で請け負っているのだ。ここのような中流~庶民レベルの店ではとてもじゃないが提供できない。

 考えながらエールを飲んでいると、チキンの香草焼きが来たのだが..
「あの.. カトラリーは?」思わず、ウェイトレスに問いかけた。

「当店ではカトラリーはないよ、お客様自身で用意するか、手掴みだよ」

(わぉ、マジですか!)
ミチオは軽い衝撃を味わった。まさか、ナイフやスプーンとフォークも無いとは..
恐る恐る、チキンを鷲掴みして肉を口にした。

(う! これならピートさんの串焼きの方が美味いぞ.. 肉の下処理に焼き方が良くない。香草の種類が多くて口の中でアンハーモニー状態だ。口が喧嘩状態の所にエールを流し込むがとてもじゃないが仲直りできない..)

 この内容で料金が露店の倍近い値段だ。もう訪れることもないだろう..
しかし、ミチオは自分の料理が売れると強く確信できた。
その後、料金を払って食事処を出たミチオは宿に戻り、風呂に入って部屋に戻ってきた。

「屋台繁盛の希望は持てるが、問題もある」
当初のプランでは屋台の傍に、生活魔法で作った土台を基にした竈で調理する予定だったが、石が手で持てるサイズしか生成されないのでこのプランは諦めた。

「明日、携帯用の竈が無いか聞いてみよう。最悪は揚げたては諦めるしかないか..」
やはり、揚げ物は揚げたてが一番美味しいのだ。それを提供できるようにしないといけない気がするのであった。

「あとは、飲み物はどうするかな.. セポマで購入したビールを紙コップ一杯で販売、値段は強気の価格であのエールの倍値でいくか」
日本で揚げ物のお供はビールと決まっている!? (異論は認める)
ので、SPが取得されなくてもビールは提供したいのはミチオの信条だ。

「さて、今日はこれで寝るか.. レコ、おやすみ~」

【おやすみなさいませ。マスター】

夢の住人に変貌するミチオであった。

……


 早朝の時間帯の商人協会で3枚の報告書を読んでいるマティーは、
思わずため息をついた。

◆◆

【1枚目】
・宿の裏庭に案内して、生活魔法の練習をしていた。
・魔法は生活魔法レベルとのこと。

【2枚目】
本日は対象とは遭遇せず。

【3枚目】
・昨日続き、ピートの屋台で話し合い
・金物屋で大きな合金の大鍋を購入後、雑貨屋にて木製の匙などを購入
・宿の裏庭で独り言をしながら生活魔法を使用
・食事処『ブラウン亭』にて食事

◆◆

「今日も砂糖と塩を売りに出さなかったし、仕入れた形跡も無しかい..」
協会による専売を目論むマティーはヤキモキしている。
もう、ミチオに話を付けた方が早いかとも思うが、ここは我慢のしどころである。
そう、落ち着かせる。

「合金製の大鍋に匙かい.. まさか奴は錬金術師なのか? 売れると見込んでニッカウで錬金する腹か?」
この世界における錬金術とは、主に物体から混じり物を取り除いたりするのだが、その現象は化学反応に基づいているので一般人では使用できない。化学反応を的確にイメージするには専門の知識(現代化学)が必要だ。
もし、ミチオに錬金術の権限があればこの世界の歴史に名を遺すほどであった。

 マティーは一息ついて、ピートにまつわる報告書へと目を通す。

◆◆

名前:ピート
出身:ニッカウ(渡航商人の3男)
協会ランク:ブロンズ
備考:
 対象とは、屋台の串焼きを購入している場面が周りから証言されている。
父親が西大陸への渡航商人であることが判明、取扱い商品について調査を開始。
対象も渡航してきた可能性あり、そちらも調査いたします。

◆◆

「ふむ、もしかすると西大陸で精製されたものかね.. 探りを入れてみるかい」
西大陸にある商業都市への探りの手紙を書き始めた。

マティーの勘違いは今日も続いていく..
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