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sing
しおりを挟むあのライブの日以来毎日のようにCDショップに通うようになっていた。
杏と一緒に行くことも何度かあったが、
今日は1人でCDショップに足を運んだ。
「また来たの!」
そう言いながら笑って歓迎してくれる
奏斗の空間が心地よかった。
「今日さ、もうこれで仕事交代だからこの後ご飯行かない?」
「行く!」
即答した私を見てケラケラ笑っている
彼はすぐ支度をして、2人で店を出た。
10分ぐらい歩いただろうか、奏斗が口を開いた。
「ここ俺達がよく練習してた場所」
そこには小さな多目的ホールがあった。管理人に頼めば誰でも借りられる場所。普通開いていない時は鍵が掛かっているはずなのだろうが、私はその扉に向かう。
待てよと言われたが気にせず扉に
手をかける。
ガラガラガラと開き、誰もいなかった。
中はひんやりしていて静かだ。
私は思いついたように彼に問いかける、
「ここでsing歌おうよ」
最初は驚いた顔をしていたがすぐ笑って奏斗はギターを取り出してくれた。
singはVANZの新曲で文化祭の時も歌っていた曲。
ギターの音色を聴きながら私は口を開く、それに合わせて彼も歌う。
初めて一緒に歌っているのにそれを感じさせない雰囲気に包まれる。
彼に目線を向けると、優しい顔で私を見つめながら歌っていた。
私は奏斗に出逢ってから、いつも楽しくて彼が笑っていると私も笑っていたかった、これからもこの先も。
そんな感情が芽生えていたことに気付いたらもうsingを歌い終わっていた。
「歌音って歌上手いんだな」
この感情に気付いてしまったことによって、その言葉だけでドキドキし始める。
「歌音の歌声好きだな、俺」
鼓動が激しく高鳴り体温が上昇している。これじゃあ、まるで。
「今思ったけど、歌音って名前お前にピッタリだよな!いい名前もらったな」
笑顔が眩しい。
そして名前を褒められたことなんて一度もない。
もうそれで確信してしまった。
私、奏斗のことが好きだ。
小さい声でありがとうと言うと頭に手を置かれ、どういたしましてと優しく微笑む彼。
顔が赤くなっていることに気付かれたくなく、不意に口を開く。
「奏斗だって歌ってる時本当に楽しそうだし諦めてなかったらちゃんと歌手だったよ」
その時、急に表情が硬くなる彼を見て私の上昇していた体温は一気に下がった。
触れてはいけなかったのかと思い謝ろうとしたが、
「ありがとう、そろそろ行こうか」
と言って私に何が食べたいか聞いてくる。
しばらく黙っていたが、
「ハンバーグ」
と言って2人で近くのレストランに向かった。
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