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第4話 彼の命令
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服を着ている間に、彼の様子を窺います。
彼は、明らかに、私の身体に対して興味を示していました。
しかし、じっと見つめるのは気が引けるのか、私の方を見ては目を逸らしています。
自分が目の前の女に欲情していることを、認めたくないのかもしれません。
哀れな男だ。そう思いました。
私に裸になるように命じておきながら、本当に脱いだら、それを堂々と見ることもできないとは……。
その程度の度胸もなく、幼い少女を集めて喜んでいるなど、あまりにも惨めだと思わないのでしょうか?
「……お前の名前は?」
私が元のとおりに服を身に着けると、彼は平静を装いながら尋ねてきました。
「スピーシャです」
「そうか。いいか、スピーシャ? お前が、俺の『召使い』としてコレクションに加わりたいと言うなら……ミーシャと共に、連れて行ってやろう」
「ありがとうございます」
私は頭を下げました。
彼が言う「召使い」が、通常の使用人とは異なり、お給料を頂くことのできない、奴隷と同じような立場であることは明らかでした。
私は、彼のコレクションの1つになるのです。
しかし、私は満足していました。
これで、ミーシャと共に旅をすることができるからです。
「お前は……俺のことを、御主人様と呼べ。ミーシャと同じ呼び方だ。どうだ、嬉しいだろう?」
彼は、何かを期待しているような口調で言いました。
おそらく、嬉しいはずがない、と私に言わせたいのでしょう。
彼は、何でもいいから、私が嫌がるところが見たいのです。
ですから、私は言いました。
「かしこまりました。ありがとうございます、御主人様」
「……」
彼は、私の顎に指をかけ、持ち上げました。
そして、忌々しそうに、私を睨みます。
「いいか? お前は、俺の命令に従え! あらゆる命令に、絶対服従だ! たとえ、俺が……公衆の面前で、全裸になるように命じても、だ! どうだ、耐え難いだろう!」
彼は、またしてもゲラゲラと笑いました。
この男は……どうして、ここまで非道なことを思い付くのでしょう?
きっと、私が激しく嫌がり、涙を浮かべながら慈悲を乞うことを、期待しているに違いありません。
「かしこまりました、御主人様」
私は、そう言ってやりました。
彼は、言葉を失いました。
「……お前は、俺がそんな命令をするはずがない、とでも思っているのか?」
「滅相もございません」
「……本当に命じるぞ? 従わなければ、処分するからな?」
「かしこまりました」
「……」
彼の顔に、初めて……恐れのようなものが表れました。
私が本気だということが、伝わったのでしょう。
私には、駆け引きのようなことをした経験がありません。
口先だけで偽りを述べたとしても、簡単に見破られてしまうでしょう。
ですから、私は覚悟を決めていました。
今後は「使用人」として、彼の命令には感情を封印して従おう、と。
この男は、もっと非道なことを思い付くかもしれません。
そして、それを告げた相手が嫌がり、慈悲を乞うのを見て、嗜虐心を満たすでしょう。
であるならば、私は、この男が喜ぶような反応をしてはなりません。
どのようなことを命じられても、一切の感情を排除して、淡々と応じることが、この男に勝つための、唯一の方法なのです。
「……ならば、命じてやろう」
彼は、私に気圧された様子のままで言いました。
「はい」
「お前は、俺以外の男を喜ばせるようなことをするな。俺以外の男の前で笑うな。他の男に触れるな、肌を見せるな」
「はい」
「そして……お前は、自分の美しさを損なうことをするな。自分が、俺のコレクションとして相応しい美しさを保っているか、常に注意するんだ。分かったか?」
「かしこまりました、御主人様」
「……」
彼は、私を完全に服従させているのに、あまり嬉しそうではありませんでした。
むしろ、大変追い詰められていて、精一杯の虚勢を張っているように見えます。
この男は、女を苦しめることに喜びを覚え、優越感を得るのでしょう。
私は、この男に魂を踏みにじられなかったことについて、満足していました。
彼は、明らかに、私の身体に対して興味を示していました。
しかし、じっと見つめるのは気が引けるのか、私の方を見ては目を逸らしています。
自分が目の前の女に欲情していることを、認めたくないのかもしれません。
哀れな男だ。そう思いました。
私に裸になるように命じておきながら、本当に脱いだら、それを堂々と見ることもできないとは……。
その程度の度胸もなく、幼い少女を集めて喜んでいるなど、あまりにも惨めだと思わないのでしょうか?
「……お前の名前は?」
私が元のとおりに服を身に着けると、彼は平静を装いながら尋ねてきました。
「スピーシャです」
「そうか。いいか、スピーシャ? お前が、俺の『召使い』としてコレクションに加わりたいと言うなら……ミーシャと共に、連れて行ってやろう」
「ありがとうございます」
私は頭を下げました。
彼が言う「召使い」が、通常の使用人とは異なり、お給料を頂くことのできない、奴隷と同じような立場であることは明らかでした。
私は、彼のコレクションの1つになるのです。
しかし、私は満足していました。
これで、ミーシャと共に旅をすることができるからです。
「お前は……俺のことを、御主人様と呼べ。ミーシャと同じ呼び方だ。どうだ、嬉しいだろう?」
彼は、何かを期待しているような口調で言いました。
おそらく、嬉しいはずがない、と私に言わせたいのでしょう。
彼は、何でもいいから、私が嫌がるところが見たいのです。
ですから、私は言いました。
「かしこまりました。ありがとうございます、御主人様」
「……」
彼は、私の顎に指をかけ、持ち上げました。
そして、忌々しそうに、私を睨みます。
「いいか? お前は、俺の命令に従え! あらゆる命令に、絶対服従だ! たとえ、俺が……公衆の面前で、全裸になるように命じても、だ! どうだ、耐え難いだろう!」
彼は、またしてもゲラゲラと笑いました。
この男は……どうして、ここまで非道なことを思い付くのでしょう?
きっと、私が激しく嫌がり、涙を浮かべながら慈悲を乞うことを、期待しているに違いありません。
「かしこまりました、御主人様」
私は、そう言ってやりました。
彼は、言葉を失いました。
「……お前は、俺がそんな命令をするはずがない、とでも思っているのか?」
「滅相もございません」
「……本当に命じるぞ? 従わなければ、処分するからな?」
「かしこまりました」
「……」
彼の顔に、初めて……恐れのようなものが表れました。
私が本気だということが、伝わったのでしょう。
私には、駆け引きのようなことをした経験がありません。
口先だけで偽りを述べたとしても、簡単に見破られてしまうでしょう。
ですから、私は覚悟を決めていました。
今後は「使用人」として、彼の命令には感情を封印して従おう、と。
この男は、もっと非道なことを思い付くかもしれません。
そして、それを告げた相手が嫌がり、慈悲を乞うのを見て、嗜虐心を満たすでしょう。
であるならば、私は、この男が喜ぶような反応をしてはなりません。
どのようなことを命じられても、一切の感情を排除して、淡々と応じることが、この男に勝つための、唯一の方法なのです。
「……ならば、命じてやろう」
彼は、私に気圧された様子のままで言いました。
「はい」
「お前は、俺以外の男を喜ばせるようなことをするな。俺以外の男の前で笑うな。他の男に触れるな、肌を見せるな」
「はい」
「そして……お前は、自分の美しさを損なうことをするな。自分が、俺のコレクションとして相応しい美しさを保っているか、常に注意するんだ。分かったか?」
「かしこまりました、御主人様」
「……」
彼は、私を完全に服従させているのに、あまり嬉しそうではありませんでした。
むしろ、大変追い詰められていて、精一杯の虚勢を張っているように見えます。
この男は、女を苦しめることに喜びを覚え、優越感を得るのでしょう。
私は、この男に魂を踏みにじられなかったことについて、満足していました。
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