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第28話 南の高原
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「俺達は、これから南の高原を通り抜けて、次の街に向かう」
翌朝、彼が朝食の後で、そう言いました。
私は、驚いてしまいます。
この辺りの、南にある高原といえば……ゴーラス高原でしょう。
あそこは、強力な魔物が何匹も生息している危険地帯だったはずです。
「お待ちください! 南の高原を通らなくても、迂回すれば良いはずです!」
「直進すれば2~3日だ。だが、迂回すれば5日以上はかかる」
「ですが……ミーシャ達は、短期間で繰り返し戦うことが出来ないと伺いました! 大量の魔物が押し寄せてきたら、対応できないはずです!」
「……お前は、ゴーラス高原のことを、今でも魔物の巣窟のままだと勘違いしているのか?」
「えっ……?」
「高原に生息していた魔物は、数十年かけて、かなり数を減らしている。まだ、完全に駆除されたわけではないが……俺の女達の力があれば、簡単に通り抜けることができるはずだ」
「しかし……夜に襲われることも、考えねばなりません」
「安心しろ。そういったことへの対応にも、俺達は慣れている」
「……」
彼は自信満々に言いましたが、私は不安なままでした。
私の、大切な妹達を、強力な魔物と戦わせるなど……。
「食料は充分に買ってある。水は、魔法で生み出すことが可能だ。少しの間、我慢を強いることになるが……お前達の活躍には期待しているぞ?」
「任せて、お兄ちゃん! 私なら、どんな魔物が来ても楽勝よ!」
ナナは、彼の役に立ちたいようです。
他の少女達も、士気は高いように見えました。
彼のような男のために、積極的に戦おうとする少女達を見ると、胸が痛みます。
私達は、南に向かって出発しました。
高原は、木が生い茂っており、見通しが良くありません。
一体、ここにはどのような魔物が生息しているのでしょうか?
「そんなに不安そうな顔をするな。お前は、自分の妹達のことを信用して、任せればいいんだ」
彼は私の様子を見て、そう言いました。
「ですが……この子達の力があっても、不意討ちを受ければ、無事では済まないはずです」
「何だ、そんな心配をしているのか。俺の女達の能力を、甘く見てもらっては困るな」
「……師匠! あちらから、何かが接近してきます!」
レミが、進行方向の右側を指差しながら叫びました。
私は、慌ててそちらに注意を向けます。
言われてみれば、何か大きな生き物が動いている時のような、音や振動が伝わってきます。
レミは、そういったものに敏感であるようでした。
「ドロシー、馬車を停めろ」
「はい」
ドロシーは、彼の言葉に従って馬車を停めました。
足音は、どんどん大きくなってきています。
「よし。レミ、吹き飛ばせ」
「はい、師匠!」
「セーラは、レミが魔法を放つのと同時に、俺達を隔離しろ」
「……」
レミは、進行方向の右に向かって両手を伸ばしました。
セーラは、無言で頷き、レミの様子を窺っています。
私は、とても嫌な予感がしました。
「では、いきます! 消し飛べ!」
そう叫んで、レミは両手から、大きな光球を放ちました。
セーラは、その瞬間に、馬車の周囲を取り囲むように光壁を展開します。
その後の光景は、まるで幻のようでした。
光の壁の向こうで、爆風が荒れ狂う様子が見えます。
私達には音も振動も伝わってきませんでしたが、それは、セーラの障壁によって完全に隔離されているからなのでしょう。
爆風が収まり。
障壁が解除されると、辺りの光景は一変していました。
草木は消し飛び、地表は剥ぎ取られ、荒野と化しています。
あまりの破壊力に、私は茫然としてしまいました。
「どうですか、師匠!」
「いつ見ても、素晴らしい威力だ。さすがは俺の弟子だな」
「ありがとうございます!」
レミは、自分の実力を発揮できて、とても嬉しそうです。
彼は、そんな彼女の頭を撫でました。
これほどの威力の魔法は、この高原のように、人のいない場所でしか使えないでしょう。
もしも、街中で放ったら……。
それを考えると、背筋が寒くなりました。
翌朝、彼が朝食の後で、そう言いました。
私は、驚いてしまいます。
この辺りの、南にある高原といえば……ゴーラス高原でしょう。
あそこは、強力な魔物が何匹も生息している危険地帯だったはずです。
「お待ちください! 南の高原を通らなくても、迂回すれば良いはずです!」
「直進すれば2~3日だ。だが、迂回すれば5日以上はかかる」
「ですが……ミーシャ達は、短期間で繰り返し戦うことが出来ないと伺いました! 大量の魔物が押し寄せてきたら、対応できないはずです!」
「……お前は、ゴーラス高原のことを、今でも魔物の巣窟のままだと勘違いしているのか?」
「えっ……?」
「高原に生息していた魔物は、数十年かけて、かなり数を減らしている。まだ、完全に駆除されたわけではないが……俺の女達の力があれば、簡単に通り抜けることができるはずだ」
「しかし……夜に襲われることも、考えねばなりません」
「安心しろ。そういったことへの対応にも、俺達は慣れている」
「……」
彼は自信満々に言いましたが、私は不安なままでした。
私の、大切な妹達を、強力な魔物と戦わせるなど……。
「食料は充分に買ってある。水は、魔法で生み出すことが可能だ。少しの間、我慢を強いることになるが……お前達の活躍には期待しているぞ?」
「任せて、お兄ちゃん! 私なら、どんな魔物が来ても楽勝よ!」
ナナは、彼の役に立ちたいようです。
他の少女達も、士気は高いように見えました。
彼のような男のために、積極的に戦おうとする少女達を見ると、胸が痛みます。
私達は、南に向かって出発しました。
高原は、木が生い茂っており、見通しが良くありません。
一体、ここにはどのような魔物が生息しているのでしょうか?
「そんなに不安そうな顔をするな。お前は、自分の妹達のことを信用して、任せればいいんだ」
彼は私の様子を見て、そう言いました。
「ですが……この子達の力があっても、不意討ちを受ければ、無事では済まないはずです」
「何だ、そんな心配をしているのか。俺の女達の能力を、甘く見てもらっては困るな」
「……師匠! あちらから、何かが接近してきます!」
レミが、進行方向の右側を指差しながら叫びました。
私は、慌ててそちらに注意を向けます。
言われてみれば、何か大きな生き物が動いている時のような、音や振動が伝わってきます。
レミは、そういったものに敏感であるようでした。
「ドロシー、馬車を停めろ」
「はい」
ドロシーは、彼の言葉に従って馬車を停めました。
足音は、どんどん大きくなってきています。
「よし。レミ、吹き飛ばせ」
「はい、師匠!」
「セーラは、レミが魔法を放つのと同時に、俺達を隔離しろ」
「……」
レミは、進行方向の右に向かって両手を伸ばしました。
セーラは、無言で頷き、レミの様子を窺っています。
私は、とても嫌な予感がしました。
「では、いきます! 消し飛べ!」
そう叫んで、レミは両手から、大きな光球を放ちました。
セーラは、その瞬間に、馬車の周囲を取り囲むように光壁を展開します。
その後の光景は、まるで幻のようでした。
光の壁の向こうで、爆風が荒れ狂う様子が見えます。
私達には音も振動も伝わってきませんでしたが、それは、セーラの障壁によって完全に隔離されているからなのでしょう。
爆風が収まり。
障壁が解除されると、辺りの光景は一変していました。
草木は消し飛び、地表は剥ぎ取られ、荒野と化しています。
あまりの破壊力に、私は茫然としてしまいました。
「どうですか、師匠!」
「いつ見ても、素晴らしい威力だ。さすがは俺の弟子だな」
「ありがとうございます!」
レミは、自分の実力を発揮できて、とても嬉しそうです。
彼は、そんな彼女の頭を撫でました。
これほどの威力の魔法は、この高原のように、人のいない場所でしか使えないでしょう。
もしも、街中で放ったら……。
それを考えると、背筋が寒くなりました。
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