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3 公務員の法律
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「……これか」
私は、事務の担当者が言っていた法律の該当箇所を発見した。
「……当該子が三歳に達する日(非常勤職員にあっては、当該子の養育の事情に応じ、一歳に達する日から一歳六か月に達する日までの間で条例で定める日(当該子の養育の事情を考慮して特に必要と認められる場合として条例で定める場合に該当するときは、二歳に達する日))まで、育児休業をすることができる」
確かに、1歳から1歳半と書かれている。
「え、どういうこと?」
私はその部分を3回くらい読み返した。
事務の担当者は、非常勤職員の育休が、子供が1歳になってから始まるようなことを言っていたが、それはこの文章を誤解しているのだろうと思う。
よく読めば、この文章は、休みが始まるタイミングが1歳とは言っていない。
スタートはおそらく0歳、正確には産休明けの日からと考えられる。
そこから、短ければ1歳まで、長ければ1歳半までの休みが取れるが、具体的な期間は条例で定めるように、という意味で書かれているように、私には思えた。
条例……市の条例ということは、市役所の担当部署に問い合わせるのが一番早いだろう。
しかし、担当部署ってどこだ?
よく分からなかったので、とりあえずお昼休み、代表番号に電話をかけてみた。
『はい、倭市役所です』
私は、市役所の人に今までの経緯を説明した。
『……ああ……なるほど……。では、えー、少々お待ちいただけますか?』
「はい」
保留音が流れ、結構長いこと待たされた。
それで担当部署の人に変わってくれるのかと思いきや、またさっきと同じ人と繋がった。
「すみません、その件につきましては、担当の者が近いうちに直接ご説明に伺いますので、それまでお待ちください」
「え……、はい……」
市役所は病院のすぐ近くにあった。
私としては、電話で良いのですぐに話を聞きたかったが、たぶんそう言っても無駄なのだろう、と思った。
それから、今日来るか、今日こそは来るか……と思い続けて数日が経過した。
結局一週間が経ち、ただ待っているのがつらくなってきた頃、病院の企画調整室というところの女性が私を訪ねてきた。
「まずはお話を聞かせていただけますか?」
市役所の人が来ると思っていたのに……と不満に思いながらも、私は子供ができたので産休と育休を取りたいこと、だがパートの育休は前例がなく取れないと言われたことなどを話した。
「それはつらいですね。ただでさえ今大変な時期でしょうに……」
その女性は、今まで対応してくれた男性達にはなかったいたわりをみせてくれた。
その言葉を聞いた途端、なんだかホッとして、涙腺が緩んだ。
「あの……、この法律に、1歳から1歳半までの間で育休が取れるって書いてある気がするんですけど、これって、条例がなくても1歳までは休みが取れるってことなんじゃないんですか? 人事院というところも、1年は休みが取れるようにしなさいって通達を出してるみたいじゃないですか」
私は涙を堪えながらそう訊いた。
市役所の人が来るのを待つ間にネットで見つけてプリントアウトしておいたその文書を、女性に渡す。
「確かに書いてありますね……。ちょっとこれを元に、市役所の方と話してみます。お身体大事にしてください」
女性は最後まで私を気遣ってくれた。
私は救われた気持ちになり、その後の経過に対しても希望を抱いた。
だが、その数日後にかかってきた電話は無情なものだった。
私は、事務の担当者が言っていた法律の該当箇所を発見した。
「……当該子が三歳に達する日(非常勤職員にあっては、当該子の養育の事情に応じ、一歳に達する日から一歳六か月に達する日までの間で条例で定める日(当該子の養育の事情を考慮して特に必要と認められる場合として条例で定める場合に該当するときは、二歳に達する日))まで、育児休業をすることができる」
確かに、1歳から1歳半と書かれている。
「え、どういうこと?」
私はその部分を3回くらい読み返した。
事務の担当者は、非常勤職員の育休が、子供が1歳になってから始まるようなことを言っていたが、それはこの文章を誤解しているのだろうと思う。
よく読めば、この文章は、休みが始まるタイミングが1歳とは言っていない。
スタートはおそらく0歳、正確には産休明けの日からと考えられる。
そこから、短ければ1歳まで、長ければ1歳半までの休みが取れるが、具体的な期間は条例で定めるように、という意味で書かれているように、私には思えた。
条例……市の条例ということは、市役所の担当部署に問い合わせるのが一番早いだろう。
しかし、担当部署ってどこだ?
よく分からなかったので、とりあえずお昼休み、代表番号に電話をかけてみた。
『はい、倭市役所です』
私は、市役所の人に今までの経緯を説明した。
『……ああ……なるほど……。では、えー、少々お待ちいただけますか?』
「はい」
保留音が流れ、結構長いこと待たされた。
それで担当部署の人に変わってくれるのかと思いきや、またさっきと同じ人と繋がった。
「すみません、その件につきましては、担当の者が近いうちに直接ご説明に伺いますので、それまでお待ちください」
「え……、はい……」
市役所は病院のすぐ近くにあった。
私としては、電話で良いのですぐに話を聞きたかったが、たぶんそう言っても無駄なのだろう、と思った。
それから、今日来るか、今日こそは来るか……と思い続けて数日が経過した。
結局一週間が経ち、ただ待っているのがつらくなってきた頃、病院の企画調整室というところの女性が私を訪ねてきた。
「まずはお話を聞かせていただけますか?」
市役所の人が来ると思っていたのに……と不満に思いながらも、私は子供ができたので産休と育休を取りたいこと、だがパートの育休は前例がなく取れないと言われたことなどを話した。
「それはつらいですね。ただでさえ今大変な時期でしょうに……」
その女性は、今まで対応してくれた男性達にはなかったいたわりをみせてくれた。
その言葉を聞いた途端、なんだかホッとして、涙腺が緩んだ。
「あの……、この法律に、1歳から1歳半までの間で育休が取れるって書いてある気がするんですけど、これって、条例がなくても1歳までは休みが取れるってことなんじゃないんですか? 人事院というところも、1年は休みが取れるようにしなさいって通達を出してるみたいじゃないですか」
私は涙を堪えながらそう訊いた。
市役所の人が来るのを待つ間にネットで見つけてプリントアウトしておいたその文書を、女性に渡す。
「確かに書いてありますね……。ちょっとこれを元に、市役所の方と話してみます。お身体大事にしてください」
女性は最後まで私を気遣ってくれた。
私は救われた気持ちになり、その後の経過に対しても希望を抱いた。
だが、その数日後にかかってきた電話は無情なものだった。
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