2 / 5
2 公務員内格差
しおりを挟む今まで私が調べていた法律は、一般企業に適用される「育児・介護休業法」だった。
しかし、公務員に対しては別の法律がある。
地方公務員の場合は、「地方公務員の育児休業等に関する法律」が適用されるらしい。
「この法律ではですね、常勤職員の育休は3年までと決まっているんですが、非常勤職員は、子供が1歳になってから1歳6か月までの間で、条例で定めた期間に育休が取れるということになっているんです。非常勤の方の場合、お子さんが1歳になる前に契約が切れますし、そもそも倭市には、期間を決める条例がありませんので、育休は取れないんですよ」
1歳から1歳半って何だ。0歳から1歳どうしたコラ。
怒りが湧いた。
そんな馬鹿な話があるか。きっとこの担当者は、その法律をきちんと理解できていないのに違いない。
しかし、私は公務員の法律については調べてきていない。
論破しようにも、その材料がなかった。
お前じゃ話にならん。もっと詳しい奴はいないのか――喉まで出かかった言葉を飲み込み、
「ちょっと調べてまた来ます」
それだけ言って私はその場を後にした。
――知らなかった。
常勤とパートでは、仕事内容以上に給与で差があるような気は薄々していたが、育休にまでこんなに差があるとは。
常勤職員は3年も休めるのに、パートは一般企業と同じ1年の休みを取るためにさえ、これほど苦労しなければならないのか。
公務員は、色々な点で一般企業より優遇されていると思っていたのに、それは常勤の人だけで、非常勤の扱いは一般企業以下なのだ。
ここで働き始めた時、私にはまだ付き合っている人すらおらず、結婚、ましてや出産、子育てのことなど全く考えていなかったから、育休がないことに気付かなかった。
せっかく子供ができて嬉しかったのに、その喜びに水を差された気分だった。
政府は少子化を何とかしたいのではないのか。
なぜこんな現状を放置している?
国家公務員ではなく地方公務員とはいえ、公務員なら国の方針には真っ先に従い、子育て世代への配慮をもっとすべきだろうに。
前例を変えたくないのが公務員か。
そんなことだから、世間の流れから遅れているんだ。仕事しろ。
……頭の中で文句を並べていたが、少し時間が経って怒りが収まってくると、悲しくなってきた。
ただでさえ最近、つわりで気分が悪い時間が増えてきて、精神的にもやや不安定になっているというのに、さらにこんな面倒な調べ物や交渉までしなくてはならないとは。
いい職場だと思っていた。
給料は格別良くもないが悪くはないし、何より一緒に働く同僚達のことが好きだ。
だから出産後も、身体が回復したら戻ってきたいと思っていた。
育休が取れれば、保育園も決まりやすいだろうし、改めて就職活動する必要もないから、安心して子育てに専念できる。
先輩や上司は、一度退職してもまた戻ってくればいいよ、と言ってくれるが、再就職が保障されているわけではないのがつらい。
……いや、ただ嘆いていても仕方ない。
とりあえず、その公務員の法律とやらを調べよう。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる