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第壱話
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知里(25)
実篤の妻。実篤に溺愛されている。結婚して3年経つが、子供が出来ないのが悩み。童顔。
権堂 実篤(26)
旧家の出身。古臭い自分の名前が嫌いだが、妻に「さぁ君」と呼ばれると胸がキュンとなるらしい。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
明かりを落とした部屋の中、知里は今宵も夫が与える快楽に翻弄されていた。なすすべもなく、ただ夫の逞しい体に縋って嬌声を上げる。
「ああっ!」
彼が腰を動かすたびに淫猥な水音がして彼女の蜜口からは2人の体液が混ざり合ったものが溢れ出ている。男は既に彼女の中に2度も欲望を吐き出しているにもかかわらず、肉棒は一向に衰える気配はない。
「ああぁぁん!」
夫の長大なもので最奥を穿たれ、艶やかな髪を振り乱しながら彼女は大きく体をしならせる。彼女が絶頂に達し、クタリとその体から力が抜けると、男は気遣わし気にその顔を覗き込んだ。
「知里?」
「……さぁ……くん」
甘えたような妻の呼びかけに男の鼓動が跳ね上がる。汗で張り付く髪をかき上げ、チロリと乾いた唇をなめる。いつもは冷静な切れ長の瞳に欲情の熱が宿ると、もう自制などきくはずもない。
麗しい妻の唇を貪るように己の唇を重ねると、ねっとりと舌を絡める。そして口腔内を隅々まで堪能すると、腰の動きが激しさを増して再開される。
「知里……知里……」
狂おしいまでに妻の名を呼びながら男は明け方まで妻の体を貪り続けた。
「はぁぁぁ……」
知里はゆったりとしたソファーに寝転び、お気に入りのクッションを抱きかかえたまま盛大なため息をついた。
原因はつい先刻かかってきた実家の母親からの電話だった。
「知里が無理することはないのよ」
知里の母親は元々この結婚に反対だった。夫、実篤の実家は国内でも有数の複合企業の創業家。一方、知里の実家は多少裕福でも一般家庭であることには変わりない。
母親は知里が苦労するに決まっていると決めつけ、事あるごとに帰ってくるように言ってくるのだ。
「まだできないのでしょう?」
身内の言葉は遠慮がない分残酷でもある。
結婚して3年。子供が出来ないのを知里が誰よりも気にしているのに、母親は無遠慮に踏み込んでくる。
「由緒ある御宅だもの、きっと気になされているはずよ。あれこれ嫌味を言われていじめられる前に帰っていらっしゃい」
ただ単に心配してくれているだけで、当人には悪気はないのだろうけれど、今の彼女には母親の一言一言が胸に突き刺さった。
頭が真っ白になってその後どう返したかも覚えていない。いつもならば言い返すなりたしなめるなりするのだが、今日は日が悪かった。
狂いなく来る月経の3日目。お腹がしくしく痛み、薬を飲んで少し横になろうと矢先に電話はかかってきていた。
無遠慮な母の言葉にまたもや子を宿すことが出来なかった現実に、知里の思考はどんどん悪い方に傾いていた。
「知里、知里」
揺り起こされて気が付くと、実篤が心配げに顔を覗き込んでいた。少し横になるつもりがあのまま眠りこんでいたらしい。窓の外は既に暗い。夫が帰ってきているのに洗濯物も取り込んでいないし、ご飯の支度もしていない。一気に血の気が引いていく。
「ご、ごめんなさい、私……」
「いいよ、いいよ、無理しないで。体、辛いんだろう?」
優しい夫はすぐに起き上がろうとする彼女を止め、額に軽く口づける。
「ごめんなさい、本当に何も出来ていないの……」
「気にしなくていいよ。さっき、呼ばれて実家に寄ったら御袋にこれを渡された」
実篤が手にしていた紙袋を手渡す。中を覗くと美味しそうな総菜の匂いが漂ってくる。
「余程つらいのだろうから持って行ってやれってさ」
今日は義母と一緒に出掛ける予定だったのだが、あまりにも辛かったので延期してもらっていた。どうやら心配して夕飯を御裾分けしてくれたらしい。
まだ少し痛みがあるが、薬が効いているのか昼間ほどひどくない。とにかく仕事をして疲れて帰ってきている夫にご飯の用意するのが先だった。
「ごめんね、すぐに準備するね」
まずはダイニングテーブルに袋の中身を広げてみる。具沢山の炊き込みご飯に筑前煮。きんぴらや和え物といった常備菜。漬物も数種類入っている。義母の心遣いが嬉しいと同時に気を使わせて申し訳なかった。
「後でお礼言わないと……」
「気にしなくて大丈夫だよ。お袋も好きでしてるんだし」
上着を脱ぎ、ネクタイを外すと実篤もキッチンへやってくる。袖をまくっているところを見ると手伝うつもりらしい。恐縮しつつ皿を並べてもらい、その間に冷蔵庫にストックしていた出汁と生麩、三つ葉で簡単なお吸い物を作り、昨夜の残りの唐揚げを温めなおした。それでどうにか体裁は整った。
「来月、本家へ出かけるのは言ったと思うけど、今年は君も連れて行くことになった」
「私も?」
食事が終わり、いつものようにお茶を飲んでいると、実篤がそう切り出した。毎年、節分に本家で祭りが行われ、分家したそれぞれの家からも代表者を出して参加するのが習わしになっていると教えてもらっていた。
本家は地方の山奥にある上に旧家ならではの仕来りもある。今までは実篤が知里の同伴をやんわり断ってくれていたのだが、そうも言っていられなくなったらしい。
「親父が散々自慢するものだから本家の長老が君に会いたいと言っているらしい。実家に寄ったのもこの話があったからなんだ」
「だ、大丈夫かな?」
知里は不安になって夫を見上げる。彼は彼女を抱き寄せるとその額に優しく口づけた。
「お袋は太鼓判押してくれているよ。だけどな……君をあいつらに会わせたくない」
祭りには実篤の幼馴染も集まると聞く。彼が今まで知里を連れて行かなかったのは、彼女を誰にも見せたくないという独占欲が一番の理由だった。
「長老に挨拶した後は部屋に籠っておく手もあるな……」
実篤は真剣に知里を幼馴染に合わせない方策を考えていた。
実篤の妻。実篤に溺愛されている。結婚して3年経つが、子供が出来ないのが悩み。童顔。
権堂 実篤(26)
旧家の出身。古臭い自分の名前が嫌いだが、妻に「さぁ君」と呼ばれると胸がキュンとなるらしい。
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明かりを落とした部屋の中、知里は今宵も夫が与える快楽に翻弄されていた。なすすべもなく、ただ夫の逞しい体に縋って嬌声を上げる。
「ああっ!」
彼が腰を動かすたびに淫猥な水音がして彼女の蜜口からは2人の体液が混ざり合ったものが溢れ出ている。男は既に彼女の中に2度も欲望を吐き出しているにもかかわらず、肉棒は一向に衰える気配はない。
「ああぁぁん!」
夫の長大なもので最奥を穿たれ、艶やかな髪を振り乱しながら彼女は大きく体をしならせる。彼女が絶頂に達し、クタリとその体から力が抜けると、男は気遣わし気にその顔を覗き込んだ。
「知里?」
「……さぁ……くん」
甘えたような妻の呼びかけに男の鼓動が跳ね上がる。汗で張り付く髪をかき上げ、チロリと乾いた唇をなめる。いつもは冷静な切れ長の瞳に欲情の熱が宿ると、もう自制などきくはずもない。
麗しい妻の唇を貪るように己の唇を重ねると、ねっとりと舌を絡める。そして口腔内を隅々まで堪能すると、腰の動きが激しさを増して再開される。
「知里……知里……」
狂おしいまでに妻の名を呼びながら男は明け方まで妻の体を貪り続けた。
「はぁぁぁ……」
知里はゆったりとしたソファーに寝転び、お気に入りのクッションを抱きかかえたまま盛大なため息をついた。
原因はつい先刻かかってきた実家の母親からの電話だった。
「知里が無理することはないのよ」
知里の母親は元々この結婚に反対だった。夫、実篤の実家は国内でも有数の複合企業の創業家。一方、知里の実家は多少裕福でも一般家庭であることには変わりない。
母親は知里が苦労するに決まっていると決めつけ、事あるごとに帰ってくるように言ってくるのだ。
「まだできないのでしょう?」
身内の言葉は遠慮がない分残酷でもある。
結婚して3年。子供が出来ないのを知里が誰よりも気にしているのに、母親は無遠慮に踏み込んでくる。
「由緒ある御宅だもの、きっと気になされているはずよ。あれこれ嫌味を言われていじめられる前に帰っていらっしゃい」
ただ単に心配してくれているだけで、当人には悪気はないのだろうけれど、今の彼女には母親の一言一言が胸に突き刺さった。
頭が真っ白になってその後どう返したかも覚えていない。いつもならば言い返すなりたしなめるなりするのだが、今日は日が悪かった。
狂いなく来る月経の3日目。お腹がしくしく痛み、薬を飲んで少し横になろうと矢先に電話はかかってきていた。
無遠慮な母の言葉にまたもや子を宿すことが出来なかった現実に、知里の思考はどんどん悪い方に傾いていた。
「知里、知里」
揺り起こされて気が付くと、実篤が心配げに顔を覗き込んでいた。少し横になるつもりがあのまま眠りこんでいたらしい。窓の外は既に暗い。夫が帰ってきているのに洗濯物も取り込んでいないし、ご飯の支度もしていない。一気に血の気が引いていく。
「ご、ごめんなさい、私……」
「いいよ、いいよ、無理しないで。体、辛いんだろう?」
優しい夫はすぐに起き上がろうとする彼女を止め、額に軽く口づける。
「ごめんなさい、本当に何も出来ていないの……」
「気にしなくていいよ。さっき、呼ばれて実家に寄ったら御袋にこれを渡された」
実篤が手にしていた紙袋を手渡す。中を覗くと美味しそうな総菜の匂いが漂ってくる。
「余程つらいのだろうから持って行ってやれってさ」
今日は義母と一緒に出掛ける予定だったのだが、あまりにも辛かったので延期してもらっていた。どうやら心配して夕飯を御裾分けしてくれたらしい。
まだ少し痛みがあるが、薬が効いているのか昼間ほどひどくない。とにかく仕事をして疲れて帰ってきている夫にご飯の用意するのが先だった。
「ごめんね、すぐに準備するね」
まずはダイニングテーブルに袋の中身を広げてみる。具沢山の炊き込みご飯に筑前煮。きんぴらや和え物といった常備菜。漬物も数種類入っている。義母の心遣いが嬉しいと同時に気を使わせて申し訳なかった。
「後でお礼言わないと……」
「気にしなくて大丈夫だよ。お袋も好きでしてるんだし」
上着を脱ぎ、ネクタイを外すと実篤もキッチンへやってくる。袖をまくっているところを見ると手伝うつもりらしい。恐縮しつつ皿を並べてもらい、その間に冷蔵庫にストックしていた出汁と生麩、三つ葉で簡単なお吸い物を作り、昨夜の残りの唐揚げを温めなおした。それでどうにか体裁は整った。
「来月、本家へ出かけるのは言ったと思うけど、今年は君も連れて行くことになった」
「私も?」
食事が終わり、いつものようにお茶を飲んでいると、実篤がそう切り出した。毎年、節分に本家で祭りが行われ、分家したそれぞれの家からも代表者を出して参加するのが習わしになっていると教えてもらっていた。
本家は地方の山奥にある上に旧家ならではの仕来りもある。今までは実篤が知里の同伴をやんわり断ってくれていたのだが、そうも言っていられなくなったらしい。
「親父が散々自慢するものだから本家の長老が君に会いたいと言っているらしい。実家に寄ったのもこの話があったからなんだ」
「だ、大丈夫かな?」
知里は不安になって夫を見上げる。彼は彼女を抱き寄せるとその額に優しく口づけた。
「お袋は太鼓判押してくれているよ。だけどな……君をあいつらに会わせたくない」
祭りには実篤の幼馴染も集まると聞く。彼が今まで知里を連れて行かなかったのは、彼女を誰にも見せたくないという独占欲が一番の理由だった。
「長老に挨拶した後は部屋に籠っておく手もあるな……」
実篤は真剣に知里を幼馴染に合わせない方策を考えていた。
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