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ラシードの事情
第4話
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この場も高圧的な態度で出ればすぐに相手はひれ伏すくらいに考えているのだろう。だが、つい先ほど叔父は私に帝位を譲る書類に署名した。それにより彼らが笠に着ていた権力は既に消え失せている。
私は叔父から署名をもらってすぐにジャリルを筆頭にした高位貴族達を更迭するよう命じていた。私達を失脚させるために冤罪をでっち上げただけでなく、この10年の間に不当な権力の乱用により私腹を肥やしてきた。その証拠も仲間たちはきっちり揃えてくれている。
正妃の身で不貞を働いたのが明らかとなったモニールは、帝室への背反行為とみなされてその身分がはく奪される。それは彼女の産んだ子供達にも類が及び、帝室の正当な血が流れているのか疑惑が生じる彼らも帝室に留めておくことが出来なくなるからだ。皇太子として独立した離宮を与えられている皇子も、成人してアルマース派の貴族の元に降嫁している皇女の元にも身柄確保のために別動隊を既に差し向けていた。
「随分と高圧的な態度をとっておられますが、ご自身の立場をご理解しておられますか?」
「お前は……まさか……」
問いかけた私を見てジャリルが目を見張り、遅れて視線を上げたモニールは表情を凍り付かせる。ジャルディードの長の話では、今の私の姿は亡き父の若い頃によく似ているらしい。死んだと思い、記憶のかなたに追いやっていた人物が現れたのだから驚くのも当然だろう。それに畳みかけるようにカリムが宣言する。
「先ほどジャッシム1世は退位され、アブドゥル殿下に帝位を譲られた」
「わしは知らんぞ! そんな事認められるか!」
「そうよ! 第一、あの女が産んだ子供は死んだのよ! 皇帝の血を引いているかどうかも怪しいあの子供はね!」
2人がすんなりと認めるはずもなく、口汚くののしってくる。それにしても自分がしていることを棚に上げて母の事を貶めるとは、腹が立つと同時に呆れてしまう。
権力志向の強い野心家のこの女は元々父の側妃候補で、皇帝の正妃という地位に固執していた。母が私を身籠ったことでその話は立ち消えとなり、彼女は相当母を恨んでいたらしい。その後、叔父の愛妾となった彼女は彼に取り入る事でその地位を上げていき、嫡子を産んだことでその正妃の地位を勝ち取った。そしてジャリルをも味方に付け、その凄まじい執念により叔父を皇帝の地位に付けたのだ。
「貴公らに認めて頂く必要はない。既に決まった事だ」
カリムが先ほど叔父が署名した書類を広げてみせると、2人は驚愕して目を見開く。だが、すぐに拘束を振りほどこうともがき始める。どうやらあの書類を破り捨て、この事実をなかった事にでもしようとしているのだろう。
だが、彼らの周囲を固めているのは近衛の屈強な兵士。実際にはその場から動くこともできなかった。
私は叔父から署名をもらってすぐにジャリルを筆頭にした高位貴族達を更迭するよう命じていた。私達を失脚させるために冤罪をでっち上げただけでなく、この10年の間に不当な権力の乱用により私腹を肥やしてきた。その証拠も仲間たちはきっちり揃えてくれている。
正妃の身で不貞を働いたのが明らかとなったモニールは、帝室への背反行為とみなされてその身分がはく奪される。それは彼女の産んだ子供達にも類が及び、帝室の正当な血が流れているのか疑惑が生じる彼らも帝室に留めておくことが出来なくなるからだ。皇太子として独立した離宮を与えられている皇子も、成人してアルマース派の貴族の元に降嫁している皇女の元にも身柄確保のために別動隊を既に差し向けていた。
「随分と高圧的な態度をとっておられますが、ご自身の立場をご理解しておられますか?」
「お前は……まさか……」
問いかけた私を見てジャリルが目を見張り、遅れて視線を上げたモニールは表情を凍り付かせる。ジャルディードの長の話では、今の私の姿は亡き父の若い頃によく似ているらしい。死んだと思い、記憶のかなたに追いやっていた人物が現れたのだから驚くのも当然だろう。それに畳みかけるようにカリムが宣言する。
「先ほどジャッシム1世は退位され、アブドゥル殿下に帝位を譲られた」
「わしは知らんぞ! そんな事認められるか!」
「そうよ! 第一、あの女が産んだ子供は死んだのよ! 皇帝の血を引いているかどうかも怪しいあの子供はね!」
2人がすんなりと認めるはずもなく、口汚くののしってくる。それにしても自分がしていることを棚に上げて母の事を貶めるとは、腹が立つと同時に呆れてしまう。
権力志向の強い野心家のこの女は元々父の側妃候補で、皇帝の正妃という地位に固執していた。母が私を身籠ったことでその話は立ち消えとなり、彼女は相当母を恨んでいたらしい。その後、叔父の愛妾となった彼女は彼に取り入る事でその地位を上げていき、嫡子を産んだことでその正妃の地位を勝ち取った。そしてジャリルをも味方に付け、その凄まじい執念により叔父を皇帝の地位に付けたのだ。
「貴公らに認めて頂く必要はない。既に決まった事だ」
カリムが先ほど叔父が署名した書類を広げてみせると、2人は驚愕して目を見開く。だが、すぐに拘束を振りほどこうともがき始める。どうやらあの書類を破り捨て、この事実をなかった事にでもしようとしているのだろう。
だが、彼らの周囲を固めているのは近衛の屈強な兵士。実際にはその場から動くこともできなかった。
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