群青の空の下で(修正版)

花影

文字の大きさ
上 下
121 / 435
第1章 群青の騎士団と謎の佳人

111 想いはいつしか6

しおりを挟む
 グロリアの部屋を出て居間に戻ったマリーリアとフロリエは、装飾品を身につけたまま、改めて姿見の前に立つ。
「当日は殿方の視線が釘付けになりそうですね」
 ジーンの楽しそうな言葉に2人は少し頬を染める。
「さ、そろそろ着替えましょうか?」
 年配の侍女がそう声をかけてきたので、オルティスは気を利かせて居間を出て行く。マリーリアとフロリエは侍女達に手伝ってもらって装飾品を外し、ドレスを脱いで元の服に着替えた。
 2人が着替えている間、コリンシアはソファに腰かけ、やっともらった箱を開けてみる。中に入っていたのは髪を留める金製のピンだった。ピンの頭にはそれぞれ色の異なる小粒の宝石が付けられており、実に色鮮やかだ。嬉しくてたまらない姫君は、喜び勇んでフロリエに報告する。
「おばば様にもらった箱の中、こんなにきれいなのが入ってたの」
「良かったですね、コリン様」
 嬉しそうなコリンシアの様子に、高価な宝飾品を外してホッとしたフロリエもマリーリアもつられて顔がほころぶ。あまりにも嬉しそうにしていたので、フロリエはコリンシアの髪を軽く結って青い宝石のピンで彩った。
「コリンもきれい?」
「きれいですよ」
 髪を結うとちょっと大人になった気分になるらしく、コリンシアは嬉しそうに姿見に映る自分を見ていた。だが、急に眉根を寄せて大人しくなる。
「おばば様もう寝ちゃったかな?」
 どうやらピンを譲ってくれたグロリアにも見て欲しいらしい。その意を汲んだ侍女長がグロリアの部屋へ伺いに行き、戻ってくるとそっと手招きしてくれる。コリンシアはパッと笑顔になると、小走りでグロリアの部屋へ入って行く。
「やはり女の子ですね。ああいった物がお好きなのは……」
 ジーンが言うと、他の2人もうなずく。そこへオルティスがお茶を用意して現れ、フロリエと客人達にお茶を出す。高価な宝飾品を身につけて、緊張して喉が渇いた2人は、入れたてのお茶で早速喉を潤した。
「おばば様が綺麗だって言って下さった」
 グロリアの部屋から戻ってきたコリンシアは、うれしそうにその場でターンをして見せるので、3人は拍手を小さな姫君に贈った。
「さあ、そろそろ戻りましょうか?」
 気付けばもう日が傾きかけている。いつまでもロベリアを留守にできない竜騎士2人はそう言って立ち上がる。外に出ると2頭の飛竜はティムによって装具を調えられ、運び出されていた荷物も既に積んであった。
「それでは失礼致します」
 フロリエや見送りに出てくれた一同に頭を下げると、先に仕立屋をカーマイン乗せた後に2人は飛竜にまたがって総督府へと帰っていった。



 その日、フロリエはまた夢を見ていた。
『きれいです、お姉様』
 目の前に花嫁姿の女性が立っていた。赤みがかった栗色の髪を結い上げたその人は、幸せそうに微笑んでいる。
『ありがとう』
『いいなぁ』
 自分は憧れを込めて彼女を見ていた。
『きっとあなたにもすてきな男性が現れて、こんな日が訪れますよ』
 彼女は微笑んで頬に触れた。式が始まる刻限が迫ったと、侍女らしき人物が呼びに来た。
『さ、行きましょうか』
 花嫁衣裳の彼女は立ち上がり、戸口に向かう。自分はその彼女のヴェールをささげ持っていた。幸せな暖かな気持ちで満ちた瞬間だった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



すっかり娯楽となっているフロリエの衣装選び。今回はマリーリアの分もあったので、グロリアも随分と張り切った模様。さり気なく家宝のティアラをフロリエに譲っています。

12時に次話を更新します。
しおりを挟む

処理中です...