掌中の珠のように Honey Days

花影

文字の大きさ
11 / 45

桜色の幸せ2

しおりを挟む
 気付けば体を清められ、きちんと夜着を着せられた状態でベッドに横になっていた。先ほどの激しい情交は夢ではないかと錯覚してしまいそうだが、体の中にまだ義総が入っているような感覚がまだ残っている。そろそろと体を起こしてみると、あのコテージの寝室の中で、テラスに続くカーテンはきっちりと閉められていた。
 ベッドから降りて窓に近寄り、カーテンを開けると、高く昇った太陽でより鮮やかに照らされたあの桜色の景色が広がっている。目に痛いくらいの鮮やかなピンクの景色を眺めていると、後ろからふわりと抱きしめられる。馴染んだ体温と纏う匂いは義総のもので、沙耶は振り返って相手を見上げる。
 カジュアルシャツにジーンズ姿の彼は朝から存分に沙耶の体を堪能したせいもあり、どこか満足げでそして壮絶な色気を放っている。彼女は頬を染めて彼を見上げる。
「義総様……」
「沙耶」
 義総はそのまま体を屈めて沙耶に唇を重ねる。軽くついばむように重ねてすぐに離し、彼女の体を抱きしめる。沙耶の纏う香りを嗅いでいると、オスの欲求が頭をもたげてくる。このまま、またベッドへ逆戻りしたくなるが、頑張って今日の休日を確保したのに、それだけで終わらせたくは無かったので辛うじて我慢した。
「向こうに食事の用意をさせる。着替えてからおいで」
 名残惜しそうに義総は沙耶の額に口づけると、彼女から体を離した。彼女は頬を染めたまま小さく頷いた。



 義総が寝室から出ていくと、沙耶は用意されていた着替えに袖を通した。シンプルなワンピースから下着に至るまで、用意されているものは全て義総の好みが反映されている。鏡の前で最後に身だしなみをチェックし、寝室を後にする。
 隣の部屋に行くと、すぐに義総が沙耶をエスコートして席に案内してくれる。外の景色が良く見える窓際にテーブルがセットされていて、2人分の食事が用意されていた。窓の外に向かって2人が並ぶようにセットされているのだが、なぜか2つの席は必要以上にくっついている。
 朝食と昼食を兼ね、見た目も素材も春を感じる和洋折衷の弁当仕立てになっている。筍の炊き込みご飯と雑穀米のご飯は沙耶には一口サイズのおにぎりに。鰆の西京焼きに菜の花のお浸し、山菜の炊き合わせ。和食の定番、茶わん蒸しと蛤のお吸い物も添えられている。和牛のステーキに鴨のローストも一口サイズにカットされ、季節の花を添えて見目良く盛りつけられていた。沙耶の膳には桜餅と苺のムースがデザートとして添えられている。
「おいしそう……」
「頂こうか」
「はい」
 ここ数日間、義総の仕事が忙しかったこともあり、こうして一緒に食事をするのは久しぶりだった。他愛もない会話を交わしながら、料理長、黒崎の渾身の花見弁当を2人は堪能する。
 一足先に食べ終えた義総は、沙耶に合わせてグレープフルーツジュースを飲んでいたが、不意に彼女を抱き上げると自分が彼女の席に移り、その膝の上に彼女を座らせる。
「義総様?」
「気にするな。続けなさい」
 あれだけ激しく交わったのに、どうやら彼はまだスキンシップが足りないらしく、食事中の彼女の腰に腕を回し、その首筋に顔を埋める。当然、食事どころではない。
「あの……食べにくい……です」
「どうして?」
「その……義総様が、その……」
「私の所為か?」
「……」
 邪魔だとは言えずに沙耶は口籠る。義総はニヤリと笑うと沙耶の箸を手に取り、食べやすくカットされているステーキを一切れつまんで彼女の口元へ運ぶ。
「え?」
「口あけて」
「……」
 何をしようとしているか察した沙耶は頬を赤らめると目を閉じて口を開けた。その中へ彼はステーキを入れる。
「……子供じゃ……ないのに」
 沙耶はどうにか咀嚼して飲み込むと、ちょっとだけムッとして義総を見上げる。彼は気にせずにまだ残っていた筍ご飯のおにぎりをさらに小さな塊にして口元へ運んだ。
「案外、これも楽しいな」
 どこがどう楽しいのだろうかと思いながらも、結局沙耶は彼に残りの食事を食べさせてもらった。半強制的に食べさせられて、ちょっとお腹が苦しい。それでも満足した彼は終始ご機嫌だったので、沙耶はまあいいかと自分を納得させたのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


本編でもよく出て来たけれど、食事シーン多いなぁ……。
作者が食い意地がはっているからでしょうか。(苦笑)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです

沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!

Blue Bird ―初恋の人に再会したのに奔放な同級生が甘すぎるっ‼【完結】

remo
恋愛
「…溶けろよ」 甘く響くかすれた声と奔放な舌にどこまでも落とされた。 本宮 のい。新社会人1年目。 永遠に出来そうもない彼氏を夢見つつ、目の前の仕事に奮闘中。 なんだけど。 青井 奏。 高校時代の同級生に再会した。 と思う間もなく、 和泉 碧。 初恋の相手らしき人も現れた。 幸せの青い鳥は一体どこに。 【完結】 ありがとうございました‼︎

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

4番目の許婚候補

富樫 聖夜
恋愛
愛美は家出をした従姉妹の舞の代わりに結婚することになるかも、と突然告げられた。どうも昔からの約束で従姉妹の中から誰かが嫁に行かないといけないらしい。順番からいえば4番目の許婚候補なので、よもや自分に回ってくることはないと安堵した愛美だったが、偶然にも就職先は例の許婚がいる会社。所属部署も同じになってしまい、何だかいろいろバレないようにヒヤヒヤする日々を送るハメになる。おまけに関わらないように距離を置いて接していたのに例の許婚――佐伯彰人――がどういうわけか愛美に大接近。4番目の許婚候補だってバレた!? それとも――? ラブコメです。――――アルファポリス様より書籍化されました。本編削除済みです。

俺と結婚してくれ〜若き御曹司の真実の愛

ラヴ KAZU
恋愛
村藤潤一郎 潤一郎は村藤コーポレーションの社長を就任したばかりの二十五歳。 大学卒業後、海外に留学した。 過去の恋愛にトラウマを抱えていた。 そんな時、気になる女性社員と巡り会う。 八神あやか 村藤コーポレーション社員の四十歳。 過去の恋愛にトラウマを抱えて、男性の言葉を信じられない。 恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。 そんな時、バッグを取られ、怪我をして潤一郎のマンションでお世話になる羽目に...... 八神あやかは元恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。そんな矢先あやかの勤める村藤コーポレーション社長村藤潤一郎と巡り会う。ある日あやかはバッグを取られ、怪我をする。あやかを放っておけない潤一郎は自分のマンションへ誘った。あやかは優しい潤一郎に惹かれて行くが、会社が倒産の危機にあり、合併先のお嬢さんと婚約すると知る。潤一郎はあやかへの愛を貫こうとするが、あやかは潤一郎の前から姿を消すのであった。

一億円の花嫁

藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。 父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。 もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。 「きっと、素晴らしい旅になる」 ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが…… 幸か不幸か!? 思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。 ※エブリスタさまにも掲載

お隣さんはヤのつくご職業

古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。 残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。 元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。 ……え、ちゃんとしたもん食え? ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!! ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ 建築基準法と物理法則なんて知りません 登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。 2020/5/26 完結

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

処理中です...