掌中の珠のように Honey Days

花影

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★アドベンドカレンダー1

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タイトルから察せるとおり、クリスマスネタ。


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12月1日

今年も大倉家の玄関ホールに特大のクリスマスツリーがお目見えした。沙耶の希望で昨年と同様、シンプルに緑の葉に金のオーナメントと赤いリボンが映える飾りつけとなっている。
「沙耶様、最後の仕上げをお願いします」
 昨年同様、天辺に飾る大きな星飾りを頼まれる。沙耶は塚原からそれを受け取ると、彼に手を引かれて足場に上り、それを取り付けた。
「素敵……」
 昨年は学校に行っている間にほぼ飾り付けが終わっていたが、今年は沙耶も手伝ったのでその達成感がある。足場の片付けに邪魔にならないよう、壁際で満足した様子でツリーを見上げる。



「ああ、完成したんだね」
 気付けば傍らに幸嗣が立っている。今日は部屋に籠って論文作成をしていると聞いていたので、急に声をかけられて沙耶はびっくりして彼を見上げる。
「騒がしかったですか?」
「いや。一息入れようと思って。見せたいものもあるし、沙耶も一緒にどう?」
「ええ」
 時間は既に午後の3時。魅力的なお誘いに沙耶も断る理由などない。もちろん笑顔でそれに応じる。
「じゃ、行こうか」
 幸嗣は沙耶の頬に口づけると、彼女の手を取って彼女の部屋へと足を向ける。
「うわぁ……」
今朝まで普段と変わらなかった部屋の様子が一転していた。壁はリースやガーラントで飾り付けられ、ソファに置かれたクッションは赤や緑といったものが置かれていつの間にかクリスマス仕様に様変わりしていた。どうやら、沙耶が玄関のツリーの飾りつけを手伝っている間に模様替えが行われていたらしい。
「さあ、どうぞお座りください」
 沙耶のお気に入りのカウチにもクリスマス柄のカバーがかけられ、赤いクッションが乗っている。その隣には沙耶の背と同じ高さのツリーと小さな引き出しがたくさんついた1メートルほどの高さの箪笥のような小物入れが置いてあった。だが、ツリーに飾りがほとんどついていない。時間が足りなかったのなら、お茶を頂いた後はこれを飾ろうかなどとおもいながらそのツリーを眺める。
「気になってるみたいだね」
 幸嗣が笑みを浮かべ、彼の小物入れの隣に立つ。気にならない方がおかしいのだが、そこはあえて触れないでおいて沙耶は小さく頷いた。
「これね、アドベンドカレンダーになっているんだ」
「アドベンドカレンダー?」
「一日1つ開けてクリスマスまでの日にちを数えるカレンダーだよ」
 沙耶もそのくらいは知っている。ただ、目の前にあるものが彼女の記憶している物と一致しなかったからだ。でもよく見れば、引き出しの取手には小さく数字が入っている。
「それは知ってるけど……」
「中身はね、沙耶へのプレゼントも兼ねて俺と兄さんで選んだんだよ」
 要は沙耶の為の特注品らしい。自分にそんなにお金をかけるのはもったいないと思うよりも先に彼等らしいと思えてしまうのはここでの生活にすっかり慣れてしまった証拠だろうか。もう何を言っても無駄と諦め、促されるまま引き出しに手をかける。
「あ、本来は当日までの日にちを数えるものだから、大きい数字から開けて」
 1番の引き出しに手をかけようとすると、そう言って幸嗣に止められる。そういうものかと納得し、沙耶は24番の引き出しを開けた。
「かわいい」
 中にはクリスマスらしいスノーマンのパッケージの棒付きのチョコレートと赤いガラスの玉のオーナメント3個入っていた。もっと高価なものが入っているのではないかと心配したが、それは杞憂だったようだ。
「それぞれの引き出しにプレゼントとオーナメントが入っているんだ。そのオーナメントを毎日このツリーに飾り付けていったらイヴに完成するよ」
「なんだか楽しそう。ありがとう、幸嗣さん」
 幸嗣に促され、赤いガラス球を隣にあるツリーに飾る。まだ貧相だがクリスマスまでに完成すると思うとなんだかワクワクしてくる。
「そのチョコはこのまま食べてもいいけど、ホットミルクに溶かして飲んでもおいしいらしいよ」
「そうなの?」
「やってみる?」
 沙耶が頷くと、幸嗣はすぐに側に控えていた綾乃にホットミルクを頼む。程なくしてクリスマスの光景を描いたマグカップに入ったホットミルクが運ばれてくる。幸嗣用のコーヒーも用意していた綾乃は焼き菓子を乗せた皿と共にそれらを置くと静かに退出していった。
 チョコレートをホットミルクに入れ、棒を持ってかき回していると徐々に溶けて色が変わる。完全に溶けたところで一口飲んでみると、優しい甘さに気持ちがほっこりしてくる。
「美味しい……」
「そう? 俺にも味見させて」
 幸嗣に躊躇いなくマグカップを差し出そうとしたのだが、それは制されて代わりに沙耶が引き寄せられる。そして唇が重なる。
「ん……」
 沙耶の口腔内に幸嗣の舌が割り込んできて中をまさぐられる。舌を絡められると、それだけで体の奥が熱くなる。
「ん……美味しい」
「も、もう……」
 唇を離すと、不意打ちの口づけに沙耶は恥ずかし気に頬を染めるが、幸嗣は甘い口づけに満足してペロリと唇をなめた。
「もっと味わっていい?」
「え、でも……」
 幸嗣の誘いに沙耶は躊躇う。だが、迷っている間に沙耶はソファに押し倒されていた。そして再び唇が重なる。そして更に行為に及ぼうといたところで無機質なアラーム音が鳴り響く。
「あ……」
 論文作成の合間の休憩だったので、あらかじめセットしておいたアラームが鳴ったらしい。明日からは義総の手伝いに駆り出されるので、論文は今日中に済ませておかないと期限に間に合わない。幸嗣はため息をつくと、名残惜しそうに沙耶から体を放した。
「残念。続きは夜に……かな」

 その夜、沙耶は宣言通り、無事に論文が完成した幸嗣に心行くまで貪られたらしい。


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長くなるので幸嗣とのエッチシーンは省略。ごめん、幸嗣。

幸嗣:それって酷くない?
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