掌中の珠のように Honey Days

花影

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★親孝行?

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本編、「掌中の珠の様に2」読了後 推奨


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「アジサイって青とピンクだけだと思っていたけど、白いのもあるんですね」
「そうだな」
 遊歩道の両脇に植えられたアジサイを眺めながら、沙耶は珍しい種類を見付けるたびに感嘆の声を上げていた。義総はその様子を満足そうに眺めている。
 2人は大倉家の敷地内に昔からある夏のコテージに向かっていた。母屋から最も近いそのコテージに続く遊歩道は、両脇にアジサイを初めとした夏を彩る植物が品よく植えられており、2人はそれらを堪能しながら歩いていた。
「疲れてないか?」
「大丈夫」
 梅雨の最中という事もあり、今にも振り出しそうな天気なのだがちょっと蒸し暑い。少し歩いただけで汗ばんでくる。義総は沙耶を気遣うが、久しぶりに義総と過ごせる沙耶は嬉しくて仕方なく、そんな事も気にならない。
 実のところ、この1月ほど彼はまともに休みを取れていない。今日はどうにか休みをねん出できたので、2人でゆっくりと過ごそうと決めたのだ。
 腕を絡めながら風情ある石段を登り、ようやく和の雰囲気でまとめたコテージに到着する。涼やかな風鈴の音に歓迎され、2人は中に入った。
「嬉しそうだな」
「だって……久しぶりなんですもの」
 先回りしていた塚原により、涼やかな居間に2人分のお茶の支度が整えられていた。今日はコテージに合わせて良く冷やした新茶が出され、沙耶には夏らしい意匠の和菓子が添えられている。2人はそれで喉を潤していたのだが、いつになく嬉しそうな沙耶に義総も自然と顔がほころぶ。
「おいで」
 義総に招かれて彼にそっと寄り添えば、沙耶はたちまち膝の上に抱えあげられる。視線を絡ませると自然と唇が重なる。
「沙耶……」
 幾度か重ねているうちに自然と口づけも深くなっていく。舌を絡めているうちに義総も我慢が出来なくなってきたのか、夏物のワンピースの裾から手が入り込み、そのすべすべとした太ももを撫でていく。
「ん……」
 もう片方の手は胸元をはだけさせ、そのふくらみを堪能している。思わず沙耶が声を漏らすと、義総は首筋へ舌を這わせ、その耳たぶに甘噛みする。
「汗、流さなきゃ……」
「気にしない」
 まだ日が高いので沙耶は躊躇っているが、義総の愛撫ですっかり高ぶってしまっている。横抱きの状態から義総が自分の体をまたぐように体勢を変えても彼女はすんなり従った。
「ああ……」
 ワンピースの裾をまくりあげ、ショーツの上から秘所を撫でる。既に湿り気を帯びており、沙耶は甘い吐息をこぼした。緩やかに指を動かしながら別の手で彼女の胸元をはだけて器用にブラジャーのホックを外す。露わになった胸の先端は既にとがっており、義総を誘うように濃く色づいていた。拒む理由などなく、義総はためらうことなくその先端に強く吸い付いた。
「ん、あぁっ」
 同時にショーツの中に指を忍ばせる。秘所は既に濡れており、義総の指を難なく受け入れた。ゆるゆると指を動かしながら吸い付いていた胸の先を舌で転がす。その快楽に沙耶は体を震わせる。
「あああっ!」
 軽く達した沙耶の体を畳に押し倒し、グッショリと濡れたショーツをはぎ取った。義総もベルトを緩めてスラックスの前をくつろげる。そして既に高ぶりきった自身を取り出そうとしたところで無機質な音楽が彼のスマホから流れてくる。
「……」
 動きが止まった義総は深く、深くため息をつくと、諦めたように沙耶から体を離してスマホを取り出す。沙耶は達した余韻で体を震わせていたが、のろのろと体を起こすと彼の電話のやり取りを眺めていた。

「ごめん、仕事になった」
「……はい」
 2人で過ごす休日は中止となった。それでも沙耶は不満の1つも言わずに彼を送り出した。彼女が不満を述べたところで仕事が無くなることはない。それが分かっている彼女は寂しいと思いながらも、何も言わずに彼を送り出した。



「今日、休みだったよね?」
 オフィスで仕事をしていると、幸嗣が不機嫌そうに顔を出した。
「仕方ない」
 振り返れば単純なミスだった。それが拗れてしまったがために義総が出なければならない事態になってしまったのだ。
「片はついたの?」
「一応は」
 幸嗣は深くため息をつくと、懐からおもむろに封筒を取り出して義総に差し出す。
「何だ?」
「プレゼント」
 幸嗣の答えに義総は眉をしかめて封を開ける。中に入っていたのは壮麗な装飾が施されたカードが1枚。表面には手書きで「お手伝い券」と書かれていた。
「……ふざけているのか?」
「大真面目なんだけど?」
 義総の眉間の皺が一層深くなる。だが、幸嗣は動じることなくその鋭い眼光を受け止めた。
「後は引き受けるよ。青柳も了承してくれた」
「……」
「今日は沙耶と過ごすつもりだったんだろう? きっと、待っているよ」
 義総がピクリと反応する。彼女は何も言わなかったが、きっと寂しがっているのは容易に想像できた。
「そのカードは24時間有効。ま、どうしても俺が対処できないときは連絡するかもしれないけど、呼びつけるような真似はしないから」
「いいのか?」
 明日は元々、幸嗣が沙耶と過ごす予定で彼のスケジュールは開けてあったはずだ。それを丸々自分の為に使ってくれると言うのだ。
「ま、父の日のプレゼントという事で」
 言われて気付けば明日は6月の第3日曜日。あまり縁のないイベントなのですっかり失念していたし、こんな形で贈り物をされるとは思ってもみなかった。
「有り難く使わせてもらおう。この埋め合わせは……」
「俺には必要ないよ。その分、沙耶を甘やかしてやって」
「分かった」
 幸嗣の粋な計らいに感謝して、義総は引継ぎを大急ぎで済ませると荷物をまとめる。
「幸嗣、ありがとう」
「どういたしまして、パパ」
 おどけて応える幸嗣に軽く拳骨をすると義総は大急ぎでオフィスを後にした。



「ふう……」
 雨がしとしと降っていた。沙耶は暮れ行く窓の外を暗澹たる気持ちで眺めていた。義総が忙しいのはわかっている。それでもお休みの日ぐらいはゆっくりしてもらいたかった。だが、それは建前で、自分が寂しいのが一番だとわかっていた。それが余計に浅ましく感じ、沙耶は深いため息をついた。
 バタン
 勢いよくドアが開き、驚いて振り向くと息を弾ませた義総が立っていた。
「義総様?」
「沙耶……」
 彼は部屋に入ってくると、固まったままの彼女を強く抱きしめた」
「お仕事……は?」
「幸嗣が変わってくれた」
「幸嗣様が?」
「ああ。父の日のプレゼントらしい」
 幸嗣にもらったお手伝い券を見せると、沙耶はクスリと笑った。
「24時間有効らしい」
「じゃあ……」
「休暇のやり直しをしよう」
 嬉しくて沙耶は義総に抱きついた。彼はその華奢な体を難なく受け止め、互いに見つめあうと深い口づけを交わしたのだった。


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大倉家の敷地には四季をそれぞれ楽しむためのコテージがある。
元々はそれらの別荘があった山に、後から義総が屋敷を建てた。
夏のコテージ以外は案外離れているので車で移動。
自分で考えておいてなんだけど、広すぎるよ大倉家。
いつか他の秋と冬のコテージも出せればいいな。
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