転生するのにベビー・サタンの能力をもらったが、案の定魔力がたりない~最弱勇者の俺が最強魔王を倒すまで~

葛来奈都

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第1章 異世界《エムメルク》の歩き方

第6話 魔法とクラスは男のロマン

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「おっしゃ! やってやるぜ!」


 さっそく手を正面に突き出して呪文を唱える。


「『大爆発魔法イクスプリジッド』!」


 ……だが、何も起こらない。


 ただ、爆発音の代わりに横でノアが「ブハッ!」と吹き出している。


「何をしてるんだ貴様……自分の魔力を見てみろ」


 必死に笑いながらもノアは前足を振ってステータスボードの画面を変える。そこで確認できた魔力に俺は絶句した。



「さ……三だって?」


 何度見ても結果は同じ。俺の魔力はたったの三しかなかった。


「どういうことだよ三って! これじゃなんも魔法打てないじゃねえか!」


 ステータスボードを指差してノアに詰め寄るが、ノアはかったるそうに息をつく。


「仕方がないだろ。貴様のクラスがそういうアビリティなのだから」


「俺のクラス?」


 クラス……そのキャラクターの職業や肩書きのようなもので、ゲームでよくあるのは「剣士」「魔法使い」「騎士」などなど。そのキャラクターの特色や強みが顕著に現れる職能のようなものだ。


 それにしても転生して得たクラスにそんな魔力に影響するだなんて……いったいどんなクラスなのだ。


 緊張しながら、クラスの項目を探す。そして見つけたクラスの内容に俺は目を疑った。


「……【赤子の悪魔ベビー・サタン】?」
 なんだこの聞いたことのあるワードは。それに、手前の余計な単語はなんだ。


「これはもしや……強力な魔法が使えるけど、まだ赤ん坊だから魔力が足りなくて全然扱えないってこと?」


 助けを求めるようにノアに訊くがノアはそれこそ悪魔のような笑みを浮かべて、深く頷いた。


「ちょっと待て! なんだよこのクラス! モンスター職もありかよ!」


「私が知るものか。貴様に適性だったクラスがこれだった」


「なんだよ適性って! なんでこれから魔王倒しに行く奴の適性が魔王側のクラスなんだよ! どう見てもハズレだろ!」


「しょうがないだろう。結果がそれなんだから。それに、【赤子の悪魔ベビー・サタン】を馬鹿にするな。そいつだって生きてるのだ。ぞんざいに扱うのではない」


「俺の命をぞんざいに扱った奴に言われたかねえよ!!」


 余すことなくツッコミを入れるが、ノアは鬱陶しそうに自分の肉球で耳を塞ぐ。


 それでも俺は構わずにノアに向かって前のめりになって捲し立てた。


「どうするんだよこれ! 強力な魔法持っていても使えなきゃ意味ねえじゃん!」


「待て待て、よく見ろ。使える魔法もあるだろ」


 ノアは前足を上げながらステータスボードを指す。


 すると、確かに彼女の言う通り上記二つ以外にも使える魔法があった。


 ・自己犠牲魔法サクリファイド……魔力・零


 絶 対 使 い た く な い 。


 というか、使えても一発死亡ゲームオーバーじゃねえか。


 渋い顔をしていると、ノアが俺の胸内を察したように口を開いた。


「まあ、発展途上とはいえ、最初から強い魔法を持っているのだ。貴様の望み通りではないか。それに、一人くらい悪魔系の勇者がいたっていいだろ?」


「確かに『悪魔の子』と呼ばれてる勇者いたけどよ。むしろ俺の知ってるゲームの最新作それだけどよ」


 ツッコミは入れるが、頭は自然とうなだれた。なんだか俺、ノアに会ってからずっと突っ込んでばかりな気がする。


「もう……わかったからさっさと街にでも行こうぜ」


 ツッコミ疲れからか、俺の口からは深いため息が出た。
 街についたら、温かいベッドに横になって休みたい。


 そんなことを思いつつ、俺は一歩踏みだした。その時だ。


「ピギャ!」


「……ぴぎゃ?」


 聞いたこともない甲高い鳴き声と足元の柔らかい感触に思わず歩みを止める。


 嫌な予感がした。まるで沼に足を突っ込んだようなぬめり感と冷たさ。それでいて、足元でもがくようにバタつく確かな生命体……。


 これは、もしかしなくても――……。


 恐る恐る下を見る。そして、そこで見てしまったモノに思わず息を呑んだ。


「のわぁぁ!?」


 ワンテンポ遅れてその場を退く。だが、一部始終見ていたノアはとても冷静で、「お~」と呑気な様子で眺めていた。
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